馬鹿ども。魚塚はいい奴だった。
頭が良くて、地元で悪いことをする時は大体魚塚が段取りを考えて、俺達はそれに乗っかって実行するだけ。分け前も不満が出ない程度に分配するのが上手くて、何より安全だった。そう、魚塚は無謀なことをしなかった。思い切りも良く大胆ではあったが、必要最小限の動きとリスクで済むように計画を練っていた。俺達は高校もまともに通っていない阿呆ばかりだったので、魚塚の立てた計画に穴なんて無いと本気で信じていた。結果的に見れば、俺達は誰一人として警察に捕まりはしなかったのだから、その信頼は正しかったと言えるだろう。そういった思考停止の全幅の信頼を、魚塚自身がどう思っていたのかは、わからない。
ただ、いつまでも順風満帆でいられたわけではないのは確かだ。呑気な俺達はまったく予想もしなかったことであるが、計画の穴というものは最初から開いているのではなく突発的に開くものであり、そしてそれは大抵気付くことが出来ないほど小さく、かつ致命的であることを、思い知らされる出来事が起こったのだ。
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