それは対策不足です本日はバトルタワーで月に一度のジムリーダー定例会議が行われていた。
司会進行のリーグ委員長であるダンデの元、予算についてや巡回の話などなど、盛りだくさんな議題が滞りなく進んでいく。
時刻は現在17時。
会議も終盤に差し掛かっていて、もう間もなく終了しそうだ。
これが終われば明日はキバナとダンデは揃って休み。
直帰出来るよう手配をしておいたから、このままデリでも買って帰宅して、早くたくさんいちゃいちゃしたい。
浮き足立つ心を抑え、キバナは真面目な顔で喋るダンデを見つめていた。
チャンピオンの時のユニフォームもえっちだったけど、オーナー様のフォーマルな格好もえっちだよなぁ…早く帰ってひん剥きてぇ…
ひん剥いて、一糸纏わぬ姿のダンデも鍛え抜かれた身体が美しくて芸術品みたいで愛おしいけれど、もっと素敵になるようにフリルやレースで飾りたいな。
フリルやレースとは…女性物下着、いわゆるランジェリーのこと。
対ダンデ限定でランジェリーを着てもらってセックスすると大変興奮するという性癖を開花させているキバナは、ことある事にどうにかランジェリーを着てもらおうと躍起になっているのだけれど、今日も今日とてダンデの美しい身体をさらに自分好みに染めてやりたくて、コレクションの中から何を着てもらおうか考える。
ダンデは俺様のおねだりに弱いから、なんだかんだいいつつ絶対着てくれる。
優しい優しい俺様のたんぽぽちゃん。そういう所が大好きだ。
愛しい人とのめくるめく休日を想って思わずにやけてしまうキバナの頭には会議のことは入ってこない。
そんなキバナに気づき、横に座るルリナが蹴りを入れるも妄想の世界から戻ってこないキバナ。
キバナを妄想の世界に残したまま、また来月の会議もよろしく頼むぜ!というダンデの言葉で定例会議は幕を下ろした。
今この瞬間からキバナとダンデは休日に突入である。
幸いナックルジムに関わることではなかったからよかったものの、会議の話は聞いていなかったくせしてそういう事には目敏いキバナは、会議が終わった瞬間にダンデを連れ去ろうと動き出した。
突如目にも止まらぬ速さでテーブルの上に乗っていた資料やら筆記用具やらを片付けるキバナにルリナやメロンがため息を吐くもなんのその。
カバンにしまいぱっと顔を上げると、何故か愛おしい人が慌てて部屋を出ていく姿が見えて反射的に追いかけた。
この後も仕事あんのか?
「ダンデ?!」
声をかけられても気づいてないのか止って振り返ることもなく走り出したダンデ。
ちらっと見えた横顔が何だか赤く染っていて…もしかして熱でも?
体調悪いなら無理すんなってあれほど言ってんのに!
角を曲がって行ったダンデを猛ダッシュで追いかけるとトイレに入っていく後ろ姿。
気分悪ぃのかな…
リーチが長い分ダンデより足が早いキバナは、顔を顰めると目にも止まらぬ速さでトイレに飛び込み、個室に入ろうとしてるダンデの腕を掴んで引き止めた。
「っ…何する…!!キバナ!?」
突然腕を掴まれて驚いて振り返り、咄嗟に殴ろうとしたのか拳を握るダンデはキバナの姿を捉えると慌てて拳を引っ込める。
「驚かさないでくれ…」
相手がキバナだとわかってほっとした様子のダンデに構わず、キバナは額に触れた。
熱はなさそうだな…
「お前、体調悪いのか?」
「そんなことないぜ」
「じゃあ漏れそう?」
「そんなわけ…あっ、いや!そうなんだ!今すぐ致したいから腕を離してくれないか?」
振りほどこうとして全く離す気の無いキバナに腕を掴まれたまま、ダンデはそわそわしていてキバナと目を合わせない。
アヤシイ…
さっきからなんだか焦っていて妙だな。
頬を赤くして目を泳がせるダンデはご飯をつまみ食いしたとか、キバナに対してやましい事がある時のそれとそっくり。
「ダァーン」
浮気とかはねぇと思うけど、俺様に対してやましい事があるなら白状させる他ない。
ぎゅっと腕を強く掴み直し、有無を言わさない笑顔で吐けと促せば、戸惑うように目を泳がせていたダンデは言わなきゃ離して貰えないと観念したのか、キバナをちらりと上目遣いで見つめた。
「あ、あのな…紐パンの紐が…片方…解けてしまって…」
「は…?」
紐パンが??
片方??
解け……????
紐パン履いてんの!!!!?????
ぽかーんとしたまま、衝撃に固まるキバナに気が付かず、ダンデは頬を真っ赤に染めて恥ずかしそうに笑う。
「久しぶりに揃って休みだから今夜はサービスしようと思って君の好きなベビードール着て、紐パンも履いてたんだ。そしたら会議が終わったタイミングで片方解けてしまって…直すから手を離してくれないか?」
もじもじと膝頭を擦り寄せて落ち着かないと眉を下げるダンデに、キバナの頭の中でぶちっと何かが切れる音がした。
「キバナ?」
動かないキバナにこてんと首を傾げるダンデの可愛さに、キバナは衝動のまま、掴んだままの腕を引いて2人揃って個室の中に入る。
「えっ??なんで君まではいってくるんだ?!」
慌てて追い出そうとキバナの身体を押し返すダンデに構わず、後ろ手に鍵をかければ、その音にダンデの身体がびくんと跳ねた。
「なぁ、直すとこ、みせて」
耳元に顔を寄せ、低く掠れた声で囁くキバナに、ダンデは顔を真っ赤にして睨みつける。
「は?何をばかなこと言ってるんだ!出ていてくれ!」
「やだ」
「…っ!!」
押し返すダンデの腕を掴み、見下ろすキバナの視線にダンデが息を飲む。