消えたい雪夜きんと 冷え込む銀世界
しんと 静まる午前二時
ぼんやり ぼんやり
くっきり ぴかぴか
雲から月が 顔覗く
足跡ふたつに 影ふたつ
「あぁ 寒いったらありゃしねェ」
「おれのマフラー貸しましょか」
くるくるふわり 片結び
「それじゃ てめェはどうすんだ」
「こんくらいがちょうどいいんです」
「…風邪ひいてもしらねェぞ」
さくさく ぎゅむぎゅむ
ぎゅむ ぎゅむ ぎゅむ
「なぁ、おい」
「はぁい?」
「手ェ貸せ」
「ほい」
ぎゅっと握った 悴む手
「冷たいですねェ」
「お前もな」
さくさく ぎゅむぎゅむ
ぎゅむ ぎゅむ ぎゅむ
「お空のお月がぴかぴかだ」
「雲も多いし隠れるぞ」
「ぼんやりしたのもきれいでしょ」
「朧月夜か たしかにな」
さくさく ぎゅむぎゅむ
ぎゅむ ぎゅむ ぎゅむ
「さあさそろそろ帰りましょ」
「いやだといったらどうすんだ」
「行きたいとこまでついてきます」
「……そんなら家帰る」
「熱い風呂を沸かしましょう」
「布団に湯たんぽいれとけよ」
「はいはい ほらほら行きますよ」
さくさく ぎゅむぎゅむ
ぎゅむ ぎゅむ ぎゅむ
冷たい雪夜に 消えたいふたり
ふたりならんで 家帰る