厄介な/待っていて/ぐずぐず「おはようございます」
ちょうど椅子に掛けた彼の頭に声をかけると「あァおはよう」と短く返事が返ってくる。今朝も彼は煙草の灰を積もらせて新聞に目を通していた。私の一日は朝刊をこのテーブルに載せておくことから始まる。ついでなんてふりをして彼に朝の挨拶をするのも忘れずに。なおも煙をくゆらせる副船長に、すこしくらいこっちを向いてよなんて思っていた頃が懐かしい。厄介なこの恋心を抱え始めたのはいつだったかいまではもう思い出せない。いつの間にか好きになっていたのだ。なんてありがちでべたな話だと我ながら思う。
第一印象は海賊らしいデカくておっかない顔した人だと感じてた。でも実際は怖い時もあるけど理不尽に怒ることなんてなかったしあの低く穏やかな声が不思議と優しく聞こえてくるようになるまでそう時間はかからなかったと思う。
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