フィガ晶♂SS学パロバレンタイン 落ち着かない気持ちで午前の授業を終えた、バレンタイン当日。賑やかな教室。鞄の中の弁当箱と、もうひとつの包みを見比べ、晶は観念して後者を手に取った。
洒落たパッケージに華を添えるリボン。露骨なデザインが友人たちの目に触れないよう、ブレザーの内側に隠して、向かった先は保健室だ。
心のなかで平常心と唱えているうちに、 ノックの力加減すら分からなくなって、部屋の前でみっともなく深呼吸をした。ドアを叩くと、すぐに返事がくる。
「どうぞ」
「……失礼します」
声に心臓の鼓動が乗らないよう気を張った。机に向かっていた先生が、事務椅子にかけたままこちらを振り向く。
「ああ、いらっしゃい」
怪我も病気もない身でこの部屋を訪ねるのは、あまり褒められたことではないかもしれない。ただ、来訪者の顔が分かると僅かばかり柔らかくなる彼の表情が、いつも晶を自惚れさせた。
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