白に煙る、朝はまだ来ず 息をひそめながら歩くふたりの髪を濡らす雨はまだ止む気配を見せなかった。イレブンの足取りは重く、カミュがその遅さに何も言わず合わせている。故郷や生家、近所付き合いといったものと無縁であるカミュはイレブンの本当の心などわかりはしないが、わからないなりに歩み寄ろうとして、何度かその力の抜けた肩に手を置いていた。
――イシの村は酷い有様であった。そのような単純な言葉で言い表してしまうのは憚られるほどに。潰滅の限りを尽くされたかつての村には瓦礫と土埃、そして火薬の匂いが積み重なって、さながら家屋の墓場の様相を呈している。
大滝の前で祖父と実母からの手紙を読んだイレブンは暫く、瞳に少しばかりの光を宿していたようにカミュには感じられたが、それも雨の中を彷徨ううちに流されてしまった。
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