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    美枝mie

    成人済 hdavhdを書きます
    書くものは、hdavの表現が多め
    雑食で、左右どちらも有り得ると思って書いておりますので、苦手な方はご注意ください。

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    美枝mie

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    スパダリhd×ピュア先生の初夜5話の幕間エピソード

    時系列としては幕間の最初になります
    終始夜の生活の話しかしていませんが、本番どころか全然エッチなシーンはありません
    またしても偏った知識と思考で悩み始める先生と振り回されるハド様

    初めてのお誘い初めて2人が口付けを交わし、恋人として触れ合った日から数日。
    確かに気持ちは通じ合い、絆は深まったのだが、、
    結果としては初夜失敗。そして、無理をすることは望まないと互いの想いを確認しあった二人。
    ハドラーとしては、最後まで繋がるのは先の話になるとしても、何度でもアバンに触れていたいのだが、照れ屋の恋人の意向がよく分からず二の足を踏んでいた。そして相変わらずそれぞれのベッドで眠る日々が何事も無かった様に続いていた。


    そして、ある夜。
    「あ…あの。こ、今夜は。…そのっ…!私もあなたのベッドで、や、休んでもいいですか?」
    ハドラーの寝室に、寝巻き姿の元勇者があらわれた!
    両手で自分の枕をギュッと抱きしめ、声は震え、目線はずっと床を向いている。
    二度目を誘ってよいものか迷っていたハドラーには願ってもない申し出だった。そうか、そうか!アバンも俺と触れ合う事を望んでいたのだな!俺がさっさと誘ってやるべきであったな。
    「無論だ。遠慮なくこちらへ来るといい」
    寝そべっていた身体を起こし、手を差し伸べて寝台へ招く。するとアバンはたった数歩の距離を時間をかけて近寄り、ほんの隅に腰かけた。
    「独り寝は寂しかったか?」
    肩を抱きながら訊ねてやると、コクリと小さく頷いた。耳まで赤くなっている。ああ!今すぐに押し倒して可愛がってやりたい!
    「えと、あの。1人だと寒く、て…」
    「うむ。かまわぬ」
    言い訳などせんでも良いのに。だがその奥ゆかしいところもアバンの愛らしい所だな。よしよし、俺がしっかりと温めてやろう。
    「それなら、もっとこちらへ来ると良い」
    ベッドの奥へ移動し、毛布を持ち上げて招き入れる。
    アバンはポンポンと自分の枕を整えると、ハドラーにピタリと寄り添ってきた。
    「お邪魔…します。ふふ、ちょっと緊張しますね。でも、嬉しい。」
    念願叶ったとでも言うように幸せそうに眼を細める。
    自分から求めるとは、なんといじらしい。もちろん、たっぷり可愛がってやろう。ハドラーの雄に力が漲る。…とは言え、何と言っても触れ合う事自体がまだ二度目だ。徐々に慣らすのがよかろうな。
    腕の中に抱き込み、安心させる様に身体を撫でていると、緊張の為か多少強張っていたアバンの身体から力を抜けハドラーに重みがかかる。
    ……そろそろ口付けてもよいだろうか?
    「ハドラー…ぁ」
    アバンが自分からハドラーの首元に顔を寄せてくる。
    うむ。頃合いであろう。上を向かせる為に手のひらで頬を包み込もうとすると。
    アバンは心底嬉しそうに目を閉じ、
    「ん…はどらぁ…す、き……」

    ……眠ってしまった。

    な、な、なんだと?ちょっと待て!恋人が共に寝たいと言うのは、交わりたいと同義ではないのか?!!
    ……だが残念なことに、性的知識レベル1がやっとレベル5ぐらいになったばかりのアバンは、まだ遠回しな夜のお誘いは習得していなかった…。
    馬鹿な……俺の、この滾りをどうしてくれるのだ…!
    しかし、己の早とちりで穏やかに眠る恋人を起こすのも忍びない。
    数日前にはあれ程俺の腕の中で乱れていたというのに、なぜ同じ床に入り何もせず安眠出来るのだ?人間はそういった欲求は起こらんのか?
    俺などこの柔らかい肌を感じるだけで、匂いを嗅ぐだけで、今すぐ繋がれそうな程なのだぞ!
    ……いや、しかし。そもそもアバンは雄なのだ。先日も元々はと言えば、俺に合わせてくれただけ。
    本来、自分より大きな雄に性的興奮を覚える事は無くて当然かも知れん。
    ………だが!番いの寝床に無防備に入ってくる方が悪いのだ。責任を取ってもらおうではないか!
    いや、待て。俺は昔の俺ではないのだ。欲望のままに襲う様な真似は、武人として断じてできぬ。例え想いあっていても、身体の触れ合いをアバンは望んでいないのであろう。
    ……………口付けるだけならよいだろうか?
    いやいや、それだけで耐えられる訳がない。
    …………クソっ!仕方ない。虚しいが、とりあえず自分で放って落ち着くか。
    ………アバンの身体が邪魔だ。ピッタリくっつかれていて手が動かしにくい。
    アバンの柔らかい身体に擦り付け……いくらなんでもそれでは変態であろう!そもそも、この密着した状態でゴソゴソしておれば、気付かれぬはずかない。
    …………諦めて俺も眠るか。そうだ、アバンは単にここに居るだけだ。普通に眠れば良いのだ。
    …出来るかぁっっ!!

    結局、ハドラーは朝まで眠れず、一晩中ベリーハードな精神修行の時を過ごす事となった。
    そんな恋人の理性と欲望の激闘の一夜を何も知らずにぐっすり眠ったアバンはと言うと、ハドラーの温もりに嬉しそうに身体をすり寄せしばらく抱きついていると思ったら、「ハドラー、おはようございます。ベッドに入れてくれて、ありがとうございました。おかげで良く眠れました」と告げ、晴れやかな顔で起き上がりさっさと身支度を始め、気がつくと
    「今日は朝から大事な会合がありまして!朝ご飯用意してありますから!」
    慌しく出かけてしまった。
    呆然と取り残されたハドラーは、寝具に残るアバンの温もりと匂いを感じながら一晩中留め置かれていた精を放ち
    もう遠慮はせんぞ!今夜は必ずお前を隅々まで味わってやる!そう決意したのだった。
    そしてその日からアバンのベッドはあまり使わなれなくなった。
    ハドラーが毎晩の様にアバンを自分のベッド引っ張り込み、そうでない日もアバンが共に寝て欲しいと勝手に潜り込んでくる様になったのだった。



    私、アバン=デ=ジニュアールⅢは最近悩みがあるのです。
    端的に言いますと、恋人であるハドラーに触れられるのが気持ち良すぎるのです。
    簡潔すぎましたね。もう少し説明しましょう。
    初めて床を共にしたのは二週間ほど前でしょうか…結局最後までは出来なかったのですが、その後も何度となくベッドに優しく連れ込まれ、大切に大切に抱きしめられ、蕩ける様な口付けを繰り返されるのです。それから、そっと服を脱がせながら身体中を指で唇で舌で愛撫され、そして、巧みに絡まる大きな手に高みにまで押し上げられてしまうのです。
    えっと…私が、どれだけ困っているか伝わっているでしょうか…?
    ベッドに運ばれる時からすでに高鳴る胸の鼓動はうるさいほどで、身体は期待に震えてしまうのです。横たえられた時には、今度こそいやらしく恥ずかしい姿など絶対に見せない様に、冷静さを保とうと強く身構えているのに。抱きしめられるとハドラーの体温と匂いに包まれる安心感にスルスルと力が抜けてしまう。それでもここまでなら、辛うじて平静を保てている、はず、なのです。
    けれどキスされると、もうどうしようもなく全身がトロトロになって、大きな身体に縋り付くしか出来なくなる。「ここが、好きだな?」頭の中に直接流し込む様に耳元で低い声が囁くと、快感は強く身体中に広がって「はぁぁ…ん、すき…」耐えていた声もあっさり漏れ出してしまう。元魔王の声には、やはり魔力があるのかも知れません。
    そうこうしているうちに下半身はしっかりと勃ち上がり、、恥ずかしいのに、こんな事はいけないと思うのに、どうしても触って欲しくて堪らなくなるのです。
    見られたくない。でも、イきたい…。淫らだと思われたくない。けれど触って欲しい…。
    そんな私の葛藤も見透かされている様で「快感に蕩けるお前はとても愛らしいぞ?」感じて良いのだと優しく教えられるのです。
    「恥じらうお前も素晴らしい…」といつまでも慣れない私が毎回抵抗してしまう事にも面倒がらず、急ぐ事なく待ってくれる。
    どうしても羞恥心が勝り本気で拒否してしまった時ですら「急ぎすぎであったな。よく教えてくれた」とふんわり毛布にくるまれ、頭を撫でられてしまったのですよ?
    どんな態度を取っても肯定され甘やかされ、気持ちの良い事だけを教え込まれ…自制心の強さには自信があるはずの私もどんどん我慢がきかなくなっています。
    日ごろは昔より随分紳士的になったとはいえ、やはり俺様で。私の事など便利な小間使いか何かとしか思っていないのではないかという様な扱いなのですよ?それなのにベッドの中でだけ。
    いくらなんでも、おかしくないだろうか?私の元魔王がこれ程優しい訳がないのです。一体どうしてしまったのだ…。

    それに、自分ばかりが気持ちいいのも申し訳ない。
    本来ならハドラーは私の体内で放つはずなのでしょうが、最初に試した時どうしても受け入れられず、あれからは後ろに触れようともしない。確かにその方が私としてはありがたくもあるのですが…
    ハドラーは最後に自分で刺激して出している様なので、これではハドラーは私に気を遣いながら触れている手間が増えるばかりで彼のメリットが少しも見当たりません。
    忘れかけていましたが、そもそも身体を合わせようとした目的は、ハドラーにこれ以上我慢させない為だったはず。
    私は一体どうすれば、、

    あ!そうです。もちろん、私からも何とか触ってお返しをしようとは思うのですよ?でもね、私が欲を吐き出した後は余韻に頭がフワフワしているうちに手早く身体を清められ、大きな身体に包み込まれてしまうのです。これが良くない。いえ、最高なのですが、そこが問題なのです。
    「よしよし、いい子だ。」「気持ち良かったな。よくできた」「何も心配するな、俺がここにいる。ゆっくり休め」
    まるで子ども扱い。本来なら馬鹿にするなと怒る場面なのでしょうが。でも、でも。髪をゆったり撫でられ、世界の全ての苦しみから守るとでも言うかの様に力強い腕が背中に回されて。暖かい腕の中はあまりに心地良くて、あっさりと眠りの世界へ誘われ、気が付けばもう朝になってるんです…。

    そして、翌朝も。
    実は、ですね。お恥ずかしい話、私は目覚める瞬間が…怖いのです。
    覚醒して意識がはっきりするまでの、ほんの数秒。その夢と現実のほんの隙間に、ハドラーの復活は私の願望が見せた夢で現実には私は一人きり。そんな考えが毒針の様に細く鋭く心の奥深く突き刺さってしまって……
    いえ、すぐに現実を理解出来ますし、取り乱したりする訳ではないのです。それでも、どうしてもその一瞬が恐ろしいのです。
    だから、ハドラーの腕の中で目覚める事が出来ると、不安に思う間もなく伝わってくる体温や匂いや大きな手が私を撫でる動きは、確かに生きて側に居てくれると実感できて、たまらなく嬉しく安心できて。
    不安感など、奇跡の様な現実に慣れれば消えるだろうとただ耐えていたのですが、 あの幸せな目覚めを経験してしまうと、、
    耐えきれずに情けない恥ずかしいと思いながらも自分からハドラーのベッドを訪ねてしまったほどです。
    お互い何も言いませんが、恐らく私の不安はハドラーにはバレてしまっていると思うんですよね。私の態度からか、もしかしたら寝言で呼んでしまっているのかも。だって、、最近などは私が覚醒する前から、しっかりと抱き寄せられていて。よく覚えてはいないのですが、アバン、大丈夫だ。俺はここに居る。安心して俺の元へ戻って来い。そんな風に夢の中に声が聞こえている気がするんです。
    私が目を開いた時に、そっと甘いキスをされた時の幸福感などは、そのまま達してしまいそうになる。少なくとも心は絶頂していると思います。

    ……やはり、この様な淫らな行為に溺れたり、相手の優しさに依存したり、堕落した日々を過ごすのは許されない事ですよね?どうしたら、我慢できる様になるのでしょう?



    ハァ、、
    ……こんな風に誰かに相談出来れば少しは楽になるのだろうか?いくらなんでもこんな恥ずかしい事、誰にも話せない。立場と言うものもある。
    いっそ教会に懺悔に行ってみますかね。……やっぱり無理でしょうね。建前では秘密厳守だけれど、大勇者が只の夜の生活に悩む人間である様に、司祭様だって一人の人間だ。いくらなんでも元魔王が復活していて大勇者と同棲しているとか、その時点で大騒ぎだろう。
    と言うか、そもそも元魔王を愛してしまった事を懺悔すべきでは??

    ……やはり他人に話すのは諦めよう。
    けれど、こんな事を毎日の様に繰り返され、快感は日に日に増し、このままでは自分を保てる自信が無い。自分の行動が理性で制御できないなど、あってはならない事だ。
    では、どうすれば?本当は分かっている。ハドラーのベッドへ行くのを、触れ合うのをやめればいいのだけなのだ。ハドラーは私が嫌だと言えば無理強いしたりしないのは分かっているのだから。
    でも、 確実に喜んでいる自分がいて、誘われればどうしても拒否出来ないのだ。そして、そして最近など一晩に、二回も…その…イってしまった。一度達した後にもキスをしていたら…また。ついさっき放ったはずなのに身体が反応しまったのだ。きっと私はどんどん淫らになっているのだ。それとも、気付いていなかっただけでこれこそが私の本性なのかも知れない…
    いや、そんな筈は……!
    必死の思いであの世から連れ戻し、やっとのことで恋人になれたハドラーに触れられる嬉しさが強くて断れないだけだ。……今夜は断ろう。そう、その気になれば我慢できるはずだ。いや。必ず、してみせる…!



    共に過ごす夜を重ねる毎に、俺の指や舌に悦び、淫らに花開くアバンのなんと愛らしく美しいことか。
    たまらぬ。このところ夜が来るのが楽しみでならん。
    本当は朝だろうが昼だろうが一日中アバンを離したくはないのだが、明るいだとか相応しい時間というものを人間とはとても気にするようだ。身体が汚れているというのも非常に抵抗があるらしいので、誘うのはアバンが家事を済ませ風呂から上がった後、ここが最もすんなりベッドへ移動できる確率が高い。近頃はそのタイミングで自分からそっとそばに座ってきたりもする。その恥じらいと期待の入り混じった表情がなんともそそられる。
    ……が、今日は近寄って来ぬな。さりげなく距離を置かれている気さえする。
    「アバン、そろそろ寝室へ行かぬか?」
    意味なく戸棚の整理をしている様に見えるアバンに近づき、背後から腕を回してみる。
    一体どうしたのであろう?この程度のスキンシップであれば緊張もしなくなってきていたはずが、今日は随分と硬くなっている。
    「あ、あの…今日は、ちょっと…ごめんなさい」
    そういう気分ではないのだろうか?仕方あるまい…
    「そうか、ではまたにしよう。だが、共に眠るのは許してくれるか?」
    「はい…」
    どうも様子がおかしいが、、疲れているのだろうか?まあ、確かに連日深夜までアバンの身体を楽しんでしまっている。疲れておるなのなら早く寝かせてやるべきだな。
    今夜も俺は眠れそうにないが……それでも少しでもアバンに触れていたい。
    ひょい、と抱き上げ寝室に運ぶとアバンを寝台に下ろした。
    「そ、それじゃ、おやすみなさい」
    「ああ、ゆっくり休め」
    いつもの様に腕枕をして抱いてやろうとしたが、俺に背を向け丸まってしまった。
    ……どうしたと言うのだ?この間など、単に共に眠りたいという理由だけで自分からこちらへやってきた程だ。
    俺は何か怒らせただろうか?
    理由を聞こうにも無言の背中からは完全に拒絶の気配が漂っていて、とりつくしまもない。



    ……だめだ。眠れない。
    元々、私は寝つきが良い方だと思う。森だろうがダンジョンだろうが周囲がうるさかろうが、必要な時に安全を確保できたタイミングでさっさと眠れないと、体力魔法力の回復に支障が出る。若い頃からずっと旅を続けてきた経験から来る特技に近い。
    その筈なのに。背中に感じるハドラーの体温が毎晩の触れ合いを思い出させ、それだけで全く気持ちが落ち着かない。
    ……あの腕の中に包まれれば、どんなに心地良いだろう。キスしたときの震える様な快感。大きな手でそっと撫でられただけで、たまらなくなる。
    あ、あぁ、ダメだ。本格的に意識してしまった。身体が勝手に反応してしまう。こんな事ではいけない!
    ギュッと縮こまり力をいれて耐えるが、こんな事をしていては余計に眠れる筈もない。
    大体ハドラーがこんなにも近くに居るのが良くないのだ。今日は自分のベッドで寝ると言えばよかった。
    「アバン?眠れぬのか?」
    んんっ…!
    優しく響く声が今は辛い。余計に熱が煽られる。
    「そ、そうなんです。あの、今夜はやはり自分のベッドで寝ようと思います!」



    ……どうしたのか聞く間もなく逃げられてしまった。
    やはり、毎夜はやり過ぎであっただろうか?
    最大限優しく触れていたし、明らかにアバンも感じていたはずなのだが。
    今もアバンからは俺を求める時の匂いがしていた。
    ……人間の考えはよく分からぬ。

    しばらく経ったが、アバンは眠れているだろうか?
    気配を探るとやはり様子がおかしい気がする。
    その時。
    「ハド、ラー」呟くような細い声だが、夜の静けさの中、魔族の耳には確かに届いた。
    何故だ?俺を拒みながら、俺を呼ぶ。アバンの考えがさっぱり分からぬ。
    クソっ、答えの出ない事をいつまでも考えるのは性に合わぬ。
    ベッドから起き上がり、静かにアバンの元へ向かう。
    近づく程に感じる、番いを求める発情の匂い。
    だがアバンはと言うと、何かに耐える様に枕に顔を埋め、毛布を抱き締めている。
    「アバン?」
    「っ!ハドラー?ィヤッ……」
    さらに身を硬くして。まるで肉食獣の前でなす術もなく縮こまる小動物の様に。初めての時よりずっと酷い。
    いくら何でもおかしい。アバンほどの男が?どれほど窮地に立たされても諦めない勇者が。抵抗すらせずにただ震えているなどあり得ぬ。
    「アバン、俺は誓って何もせぬ。側に行っても良いか?」
    枕に押し付けたままの顔を横に振っている様だが……埒があかぬな。
    寝台の横まで行き、背中に触れてみるとビクッと大袈裟なほどに反応する。
    「アバン?こちらを向いてくれぬか?」
    「何でもありません。大丈夫です、から」
    そんな訳があるか。アバンがこんな下手な誤魔化し方しか出来ない時点で相当おかしい。まあ、詳細は分からぬが大方理解した。またしても性的な事柄で勘違いでもして一人悩んでいるのであろう。コイツがこれ程まで自分で対処出来ずにオロオロしている事など他に考えられぬ。すぐに心を閉ざして背負い込もうとするのはアバンらしいとも言えるが。……つつましいのも悪くは無いのだが、本人がこれほど苦しんでしまうのは、まったく困ったものだ。
    「こんなお前を、このまま放っておけるはずがなかろう」
    じっと待っていると、そろそろと顔を上げた。
    ……なんと不安そうな顔をしておるのだ。
    そっと頬に触れてみるが、もう逃げようとはしなかった。
    「アバン、大丈夫だ。何を考えているか俺には分からぬが、お前がそんな顔をする必要など一つもない。」
    寝台の端に腰を下ろし、肩のあたりをそっと撫でる。
    「俺が触れるのは嫌か?」
    勢いよく首が横に振られる。俺の存在が直接の原因ではないらしい事に安堵し、それならと膝の上にアバンを抱き上げる。抵抗はしないが、相変わらず何かに怯えるように固まったままだ。
    そのままの体勢で静かに背中を撫でていると。震える小さな声で話し出した。
    「わたし、わたし……ダメなんです」
    「ん?何が駄目だ?」
    「あなたに、触れられると、私、き…気持ち良くなってしまうんです」
    ……?それの何がダメかさっぱり分からぬ。こちらは気持ち良くさせようと努力しているのだから。不快だとか怖いと言うならともかく。分からんが、先ずは全て聞いてみるかと先を促す。
    「うむ。それで?」
    「それで、毎日どんどん気持ち良くなってきていて、あなたと触れ合うのが嬉しくて断れなくて。だから、今日はぜったい我慢しようと思ったんです。なのに、隣で横になっているだけで、あなたを意識してしまって、全然眠れなくて。だから、あなたと離れたのに、まだ触れてほしいと考えてしまうんです」
    なるほど。今日の不自然な態度はそういう事か。なんと嬉しい事を言ってくれるのかと感動に浸りたい所だが、話している当人は今にも泣き出さんばかりだ。
    「キスしたとか、たくさん触れられたなら、まだ分かるんですが、今日なんか何もしてないのに、わたし……」
    アバンが落とした視線の先を辿ると、寝間着の股の部分が緩く膨らんでいる。俺が感じている匂いも間違いではなかった様だな。
    夜毎可愛がって開発した成果がしっかり出ている訳だ。俺にとっては喜ばしい限りだが、アバンにはまだ理解の範疇外だったか……
    「こんなになってしまうなんて……今こうしているだけで身体が痺れる様で。わたしは、私は、い、い…淫乱な身体なんですっ!」
    叫ぶ様に言い終わると、俺の胸に顔を埋めてしまった。
    そんな言葉だけは知っているのか…
    さて、どうしたものか。



    勢いでハドラーに全てぶち撒けてしまってから、どんな反応が返ってくるか恐ろしくなる。
    やはり、呆れられるだろうか?軽蔑されるだろうか?
    「淫乱、な。……では…仮に、だ。誰でも良い、俺以外の男と口付けする所を想像してみろ」
    「へ?キスを、ですか?」
    「軽く触れる様な口付けではないぞ。口の中に舌を入れられ、感じる所を舐められる、と」
    どうしていいかわからず、ただハドラーの厚い胸に顔を埋めていると、優しく、けれど重々しく命じられる。
    「な、なんですかそれ?なんでそんな事」
    「良いからやってみろ。お前は自分で実感せんといくら言っても理解せんだろう」
    「そ、そんな事考えたことも。誰でも良いと言われても」
    「そうだな、出来るだけ親しいお前が好意的な奴にしろ。仲間とか弟子とか居るだろう」
    何をさせられているのか皆目分からないが、有無を言わせないハドラー態度に渋々従ってみる。
    弟子たちと、など想像するのも罪深い…
    えっと……
    じゃあ、大魔道士?
    とりあえずハグして………キ、キス、して……舌が、口のな、か…………うわあぁぁ!!!
    慌てて思考を中断する。
    「……気持ち良かったか?」
    「そんっ!そんな訳ないでしょう!なんて事させるんですか!」
    「では、俺との口付け、思い出してみろ」
    ハドラーとの、キス…
    もう何度もしてる……
    そっと触れると暖かくて、弾力があって、それから自分より唇が分厚くて大きいのを実感する。
    唇を舐められて、少し開くと舌が入り込んできて、差し出した舌にねっとり絡みつかれて、深く合わさると少し牙が当たって、それから……
    想像するだけで、身体の芯が熱くなる。
    本物が欲しくて、口が少しずつ開き始める。
    ……やはり。私はいやらしい人間なのだ
    「ご、ごめんなさい。私やっぱり…。想像しかしていないのに……」
    「だから、なんでそうなる」
    少し強引に頬を掴まれると、目を合わせてハドラーが続ける。
    「いいか?お前は例え好意的な相手であろうと俺以外とは想像するのも不快だったろう?」
    「は、はい」
    「で、俺となら感じるのだろう?番いである俺にしか反応しない。むしろ貞淑ではないか」
    そ、そうなのか?
    でも確かに。ハドラーと接している時以外は普通に過ごせるのだ。私がおかしくなるのはハドラーとの事だけ。
    「……それにな。例えばお前が自分から俺のベットにやってきた日、覚えてるか?」
    「はい、あ、あの日は大丈夫だったのです!ちゃんと良く寝られました」
    なのに。今日はこんなに…やっぱり…!どんどんいやらしくなってる……
    「あの夜、腕の中でただ眠るお前を感じながら、俺がどんな思いだったか、分かるか?」
    「え?いえ、あの…」
    一緒に朝まで眠っていたとばかり…
    「一睡もできなんだ。俺はな、あの日もお前に口付けもっと隅々まで触れたかった。もちろんお前の体温を間近に感じ性的興奮も覚えておった。お前の方から来てくれてどれほど嬉しかったか。だが、お前はそうではないのだと、求めているのは俺だけだと痛感して、、まあ、なんだ、、そこそこ辛かったぞ?」
    「あ…の、え…私そんな……」
    「いや、お前に悪気が無いことは分かっておる。知識も経験も乏しくては、共寝とそういった行為が繋がらなくても仕方ない。だから、近頃はお前が感じている様を見せてくれて喜んでいたのだ。今も、お前が俺と同じ様に共にベッドに入っただけで眠れぬほど意識して、俺に感じておったと知って嬉しく感じる。……だが、その事がお前を苦しめてしまっていたのだな」
    そう…か。淫らな自分を責めてばかりで、ハドラーかどう感じているのかは、思考から外れてしまっていた。
    「どうしたい?俺の存在を意識して辛いなら、俺がこの家を出て行けば、お前は楽になるか?」
    「イヤだ!!」
    思わず自分でも驚く様な大声が出て、全力でハドラーの首にしがみついていた。
    「いや…いやだ…ごめんなさい。ごめんなさい」
    「分かった。お前を置いて行ったりせんから落ち着け。それに謝らんで良い。お前は何も悪くないだろう」
    宥める様に背中を撫でられる。私は一体何をしているんだ……。本当にハドラーを拒むのが正しい事なのか分からなくなってきた。でも。
    「こんな、淫らな快楽に負けるなんて…許されない事でしょう?」
    「許されない?」
    俯いたまま返事をしていると、グイッと顎を持ち上げられた。
    「そんな事は知らん。良い。他の誰が許さずとも、このハドラーが許す。俺の前でだけ淫らになれ」

    お前は、俺の物だ。

    暗闇の中で紅い眼が鋭く見据え、魔王が命じる。
    ゾクゾクッと背中に痺れが走った。
    この男は、私の頭を一杯にしていた大量の常識や理屈など、こんなにあっさりと無意味な物にしてしまう。
    頭の隅で、また甘えるのかと勇者の私が咎める。
    ああ……それでも。
    「……ハドラー………はい。わかりました」

    私は、もう。あなたのものだから。

    「うむ。それで良い」
    自然に二人の腕がお互いの背中に回り、少しでも身体を密着させようと擦り付け合う。
    これだけの事が、なんて幸せ。

    「アバン、それでな。頼みがあるのだが」
    真面目な声でハドラーが話しかけてきた。
    「えっ、はいっ、なんでしょう?」
    「俺の恋人に口付ける事を、許してはもらえぬだろうか?服を脱がせて裸体を眺め、そしてその肌に触れ、全身を隅々まで味わい、快感を与えて啼かせ、絶頂まで導く事を、許すと言ってくれぬか?」
    ……ああ、あなたには勝てないな。けれど、それでも良いと思ってしまう。
    そうだ。許していなかったのは誰でもない、私自身。
    変に身構えていた力が抜けて行く。
    「もう、、私が許す事、多くないですか?」
    鼻先が触れ合うような距離で、二人でクスクスと笑い合う。
    「駄目か?」
    「いいえ。全て許します。あなただけに」
    「感謝する」
    少し上を向いて目を閉じると、待ち侘びた唇が合わさりすぐに重なりが深くなる。口の中を這い回る舌がたまらなくきもちいい…。
    そう。ハドラーとこうしていると気持ちが良い。
    もちろん身体も快感を得ているけれど、同時に心が信じられないくらい幸せに包まれる。
    そして、満たされているはずが、もっともっとと求めてしまう。
    胸の奥が締め付けられる様に切なくて、どうしようもなくハドラーが欲しくなる。
    必死で舌に絡み合わせ吸い付き、ハドラーの広い背中を忙しなくまさぐる。
    いつの間にか、他には考えられないというほどガチガチに組み上げて悩んでいたはずの思考は、サラサラと崩れ落ちていた。私はどうしてハドラーを拒まなくてはいけなかったのだろう?
    ……その代わりに心に広がるのは、知らなかった激しい感情と欲望。
    もっと。もっとハドラーが欲しい。強い飢餓感が狂おしく身を焦がす。
    ハドラーも私にこんな気持ちを感じて、押し殺していてくれたのだろうか。
    「ハドラー、ハドラーぁ……!」
    「ああ、アバン」
    恥ずかしいけれど。今日こそ、きちんと伝えよう。
    伝えないといけない事が、あったはず。


    「あ、あ、あの……今夜は……一緒に、気持ち良くなりませんか?あなたと、私で」


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