キスをしたい「伊弉冉、キスがしたい」
「んぇ?!」
流石外国の血が半分流れているだけあるのかストレートな言葉に顔を赤くした一二三からは変な声が飛び出した。
「ダメか?」
「いや、だめ、じゃないんだけどーそんなストレートに聞かれるとは思わなかったからさ」
「貴殿が嫌ならしない」
「ううん嫌じゃないからー。俺っちも理鶯くんとキスしたい」
控えめにコクリと一二三は頷く。すると理鶯は一二三の腰に手を回し抱き寄せると顔を近付け、そっと唇に触れた。
「伊弉冉、口開けてくれないか」
「ん、口……」
恐る恐る、口を開けばその僅かな隙間から理鶯の舌が侵入。一瞬腰が引けそうになったが回されたたくましい腕により更に密着度が高くなる。
理鶯の熱さを纏った舌が一二三の舌を優しく絡めとった。舌と舌が絡まりくちゅくちゅとテント内には唾液の濡れる音が響いていた。
「ふぁ……り、おうく……んッ」
すぐ目の前の理鶯の大きな胸板を一二三はぐっと押し返そうとしたがその手からはすっかりと力が抜け、一切ビクともしない。理鶯と一二三の体格さは見ての通り。
「んっ……は、っ」と一二三から時折聞こえてくる甘さと艶を含んだ吐息は理鶯を欲を密かに煽る。理鶯から注がれ続けるキスは思考をもいとも簡単に奪っていく。
夢中になってキスを繰り返し、二人分の唾液がこくり、っと一二三の喉を鳴らし奥へと流れ、強く舌を吸われてからゆっくりと口が解放された。二人の間にツゥーっと細い銀の糸が張り、プツリと途切れる。
高揚した頬に潤んだ瞳。はぁーはぁーっと必死に息を整える一二三の口端から流れるどちらのかも分からない唾液を理鶯は親指の腹で優しく吹き上げた。力が抜けきり一二三は理鶯の胸の中にぐったりともたれかかった。
「む、すまない。無理をさせすぎた」
「ん、ん、だい、じょうぶ」
「しかし……」と心配する声色が頭上から降ってくる。背中をさするてはとても優しく、とても温かい。
「大丈夫だって〜。俺っちりおーくんとするキス、すごく好きだからー」
そう言いながら一二三は顔を擦り寄せた。すると理鶯の体が一瞬だけ強ばるのを感じ顔を上げた。するとまるで何かに耐えているような理鶯の姿が。どうしたんだろうか?と不思議そうに一二三は首を傾げた。
「りおーくん?」
「小官も貴殿とするキスが好きだ」
「へへ、やったね」
にこっと微笑んだ一二三の頬を理鶯は優しく撫でればその大きな手に気持ちを良さそうに一二三は目を細め頬を擦り寄せる。そして再び理鶯は顔を近付けるとおでこにちゅっちゅっと唇を押し付けた。そして瞼、鼻先、と順番に下へと下がって行き唇の寸前で止まると理鶯は「……また、いいか」と。
それに答えるように一二三は微笑み、理鶯の首に腕を回した。