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    oooon_02

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    5/22 Webオンリー
    『年中どこでもキスをして』

    展示小説

    くちなおし 珍しく早く仕事が終わる事ができ……とはいえそれでも定時は過ぎているがいつもよりは断然早い。
     待ち合わせ場所にはすでに銃兎が待っており、そのまま食事を済ませて、帰る道中にあるコンビニへと寄った。
     コンビニでコーヒーなどの買い物を終えて店から出ると、店の前に設置されている喫煙スペースで一服している夜空に向けて紫煙を吹き出している銃兎の姿がそこにはあった。
     買い物を終え、店内から出てきた独歩に気が付いた銃兎は口元に笑みを浮かべる。
    「買い物は終わりましたか?」
    「はい、終わりした!」
    「ちゃんとアレも買いましたか?」
     そう聞けば独歩は一気に顔を赤く染め「か、かいました……ッ!」と答えた。アレとは二人がこれから夜を過ごすには必要なモノだ。
    「ふふ、ちょっと待っててください。すぐに消すので」
    「あ、いいですよゆっくりで。俺は先に車に乗っていますから鍵開けてもらってもいいですか?」
     銃兎が長い指で挟んでいる煙草はまだ新しく、吸い始めたばかりなんだろう。急がせるつもりは全くないので独歩がそう言えば、銃兎はその場から車のキーを取り出し、鍵を開ければ独歩は定位置である助手席に乗り込んだ。
     買った物は足元に置き、その中から久々に食べたいなと思って買った色とりどりの小さなアメが入った袋を取り出す。最近コンビニで売られているアメは食べきりサイズでチャック付きで売られている。少し食べたいなという時に丁度いい。早速封を開け、口の中の一粒転がす。爽やかで甘酸っぱいレモンの味が口中に広がった。
     口の中でコロコロとアメを転がし、その味を楽しみつつ独歩は車内から銃兎に視線を向けた。コンビニの店先で煙草を吸っているだけだというのにその立ち姿はまるでどこかのモデルのよう。
    「ただ煙草吸ってるだけなのにかっこいいってずるい人だなぁ」
     そうぼやいていると涼しい顔で肺に満たした紫煙を吹き出す銃兎と不意に目が合う。すると銃兎にふっと笑いかけられ、独歩も釣られてへらっとぎこちなく笑顔を浮かべた。
     あまりにぎこちない独歩の笑い方に銃兎は面白そうに目を細めると、すっかりと短くなった煙草を灰皿に押し付け火を消し、それから銃兎は運転席へと乗り込んだ。その際、その身に煙草の香りを纏ったままでふわりと煙草の匂いが鼻腔を掠めた。決して不愉快な匂いではない。溶けるように匂いが混ざり銃兎の匂いへと変わる。
    「すみません、お待たせしました」
    「んぐ、そんなに待ってませんよ」
    「おや何か食べているんですか?」
    「アメをちょっと」
    「珍しいですねアメなんて」
    「久々にちょっと食べたくなって。入間さんも食べますか?」
    「そうですね、口直しにもらおうかな」と言った銃兎に独歩はアメが入った袋を差し出した。しかし伸ばされ銃兎の手はアメの袋を素通りし、独歩の小さな顎を掴んだ。
     は?と驚く暇もなく、グイッと小さな顎を引っ張り、「いるまさ……ンッ!」と驚く独歩の言葉を飲み込むように銃兎は独歩の唇を塞いだ。
     僅かに開いていた唇の隙間から侵入してきた銃兎の舌が素早く独歩の舌をアメごと絡め取った。ついさっきまで吸っていた煙草特有の苦味がピリピリと舌を通じて伝わってきたが、すぐレモンの甘酸っぱさで気にならなくなる。
     舌の上で転がるアメは二人の熱でとろとろとゆっくりと溶け、お互いの唾液と混ざり合い、ただひたすら甘酸っぱい。隙間から時折溢れる熱い吐息と艶かしい水音が車内を支配する。
     ここは車内。外から丸見えでいつ人に見られてもおかしくない。
     溢れそうになったどちらのかも分からなくなった甘い二人分の唾液は独歩の喉をコクリっと音を鳴らし奥へと流し込んだ。
     これ以上していたら止まらなくなる……というとこで銃兎はゆっくりと唇を離した。離れ際、器用に舌でアメを自分の口に移して。
    「いい口直しができました」
    「入間さん、な、にするんですか、っ」
    「口直しにもらいますって言ったじゃないですか」
    「言ってましたけど!だからってなんで俺が舐めてるやつじゃなくても……!」 
    「あはは、だって観音坂さんからもらいたかったので」
     ついさっきまでで独歩の口の中で転がっていたアメが銃兎の口の中でコロンっと音を立てて転がった。煙草の味をレモンの味がさらに上書きされていく。
     久々に口にしたアメの味は甘酸っぱい。
    「久々にアメを食べましたが甘いですねぇ」
    「……アメですから。入間さんは苦かったですけどー」
     嫌味を込めてそう言えば「嫌いじゃないでしょ?」とクスクスと笑いながら答えた。全くもってその通り嫌いじゃない。嫌いだったらキスなんてしていない。それ以上は何も言えなくなり独歩は席に深く座り直した。
    「じゃあ行きましょうか」と満足そうにほほ笑んだ銃兎は車を発進させた。
     
     
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