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    ka2chahan

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    ka2chahan

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    ブレが逆バニー衣装を見せて「これ着てバイトする」と言い出した話

    「おれ、明日から新しいバイト始めるんだ」
     そう言ってブレが見せてきた服に俺は言葉を失った。何かの間違いではないのか、と理解不能な頭から声を絞り出してブレに問うと、嘘じゃないよ、と真面目な顔で返ってきた。
     嘘だろ。
     ブレが手にしていたのはいわゆる『逆バニー』と呼ばれているキワドイ衣装。これを着なければいけないバイト先って何なのだろう。ブレに聞くと「まぁ、そういうとこ」と濁された。勤務時間は夕方から深夜にかけてらしいので、俺の想像は当たっていると思う。
    「ブレ……正気か?」
    「もちろん」
     俺はドアの向こうから空か時が「ドッキリ大成功〜!」と看板を持って現れてくるのではないかと気配を伺った。しかし人が待機してそうな気配は全くない。ドッキリであればどれだけいいか。真面目なブレがこんな衣装を着るバイトを選ぶに至った思考が俺にはさっぱりわからない。
     止めなければ。
     ブレをバイトに行かせるわけには行かない。
     俺の可愛いブレの体がモブおじ達の餌食になるなんて断固拒否だ。
    「何でそんなバイトしようと思ったんだよ?」
     いきなり引き止めようと思ったが、まずは冷静になるべきだ。理由を聞いてから止めればいい。どうしてブレが、ブレの性格に似つかわしくないバイトを選んだのが聞かなきゃならない。
    「え、だって…稼げるし」
    「ブレそんなにお金に困ってたか?」
    「こないだバイク事故って壊れただろ?新しいの買いたくてさ」
     最近新しいバイクが欲しいとよく言ってるのは聞いていた。せっかく買うなら前よりいいやつを買いたいと、ネットで色々探していたのも知っている。大体いくらかかるかも聞いていたので、お金が必要だというのは理解できる。
     違うんだブレ、理解できないのはそこじゃない。
    「他にもバイトあるだろ?」
     せめて夜の仕事だとしても、コスプレをしなくていい店にしてくれ。ブレの顔の良さならホストクラブでも充分通用する。ホストクラブにしても接客じゃなくて黒服以外してほしくはないが。
    「あるけど、ここがいいなって思って」
    「こんな衣装を着るのがそんなにいいのかよ?」
    「おれ、似合うと思うよ」
     それはそうだろう。逆バニー衣装はブレによく似合う。なんなら、普通のバニー衣装だって似合う。似合うからイヤなんだ。この衣装を着てセクシーポーズなんてキメたら、世の中のモブ達のムスコが黙っちゃいない。
    「ブレさ、恥ずかしくねえの?」
    「恥ずかしいけど…それでお金がもらえるならいいよ。別に触られたりエロいことされるわけじゃないみたいだし」
    「いやいやそんなわけねーよ」
     バイト募集に真実なんて書くわけないだろ。お触りアリ、やばい店なら奥にアレコレのための部屋もあってご奉仕までさせられる可能性もある。
     ブレが逆バニー姿でモブおじのムスコを咥えてるのを想像してしまい、空想のモブおじにだけでなくブレにまで嫌悪感を抱きそうになる。
     お願いだから俺にお前を嫌いにさせないでくれ。
    「ブレお前騙されてるよ」
    「ちゃんと確認したし」
    「とにかく俺は絶対に反対だからな」
     契約違反だろうと何だろうと知ったこっちゃない。制服が買い取りなら俺が支払ってやるし、店に断りに行きづらいのなら俺が代わりに行ってやる。ここは何としてでも止めなければならない。
    「トワはさ…おれの逆バニー姿見たくないの?店に来てとは言わないけど、おれ…トワが望むなら家でも着てあげたっていいよ」
    「あのなぁ…」
     そんなの見たいに決まってるだろ。めちゃくちゃ可愛いのは確実だし、俺の前で逆バニー姿で誘って欲しいに決まってるだろ。
     俺はモブおじ達にお前の逆バニー姿が見られるのがイヤなんだ。俺が見たくないわけじゃない。そこはわかってくれブレ。決してお前の逆バニーが似合わないとか破廉恥だとか見苦しいとか言いたいんじゃないんだ。
     ってか、何でわかってくれないんだよブレ。お前だって俺が逆バニー姿でバイトするって言い出したら止めるだろ?
     止める……のか……?
     ブレは止めないかもしれない。バイトしてきていいよと送り出すかもしれない。
     いやいや、そんなわけないだろ。カレシがそんな淫らな格好して夜の店で働くのを止めないカレシがどこにいるんだよ。
    「あのさ、ブレだってさ、俺がその店で逆バニーのカッコして働くって言い出したら止めるだろ?」
    「え?止めないけど?」
    「止めないのかよ?!!」
     そこは止めてくれ。全力で拒否ってくれ。俺がこの衣装を着て接客して、モブおじに掘られるかもしれないんだぞ?俺が掘られていいのかよ?
    「トワが本気で考えてバイトしたいって決めたのなら、おれはトワを応援する」
    「あのなぁ…」
     もうダメだ。このブレに何を言っても考えを改めさせられる気がしない。
    「それにおれ、トワが着てるとこちょっと見てみたいかも」
    「はぁ?」
     ブレは一体どうしちまったんだ。熱にうかされてるわけでもなさそうだし、いつものブレと変わりはないが、何かがおかしい。
    「俺の?」
    「トワの。着てみてよ」
     おいおいこんな展開は予想してないぞ。振ったのは俺だけど、何で俺が着る流れになってるんだ。
    「ねえ、着てみてよトワ。おれトワの恥ずかしいカッコ見たいなぁ」
     やめろブレ、そんな子猫みたいな目で見つめてくるんじゃねえ。これはあれだろ、ガキの頃に見た消費者金融のCMのチワワだ。あのチワワすげえかわいかった。
    「…わかったよ。ブレがそんなに言うなら着てみりゃいいんだろ」
    「ありがとトワ!」
     だからそんなあからさまに嬉しそうなリアクションをするんじゃねえよ。
     ったく、意味わかんねーよ。俺の逆バニー姿に需要なんてブレ以外どこにもねえだろ?
     ま、ブレだけに見せるんだし構わねえか。俺の逆バニー姿がXにアップされるわけじゃねえし。
    「着てみるだけだぞ?すぐ脱ぐからな?」
    「そのままヤってくれてもいいのに」
    「……ところでさ、ブレ」
    「何?」
     逆バニー衣装をよく見たら、尻に穴が開けられている。付属の尻尾をよく見たら、先っちょが円錐形になった球体のものがついている。
    「これもか…?」
    「そうだよ。尻に差し込んでね」
     俺は逆バニー衣装と尻尾プラグを手にしてブレを見つめた。ブレの可愛い顔が更に可愛く仕立て上げられて、俺に向かって微笑んだ。
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