言い訳しとしとと降る雨を見ながら、呆然と立ち尽くす。
「降ってるなぁ」
「ドーシマス?」
本当は、傘、あるけど。
「濡れて帰るのもな」
「断固拒否ですわ」
入ってく?って言えばいい?
でも折り畳みだし……二人で入るのは、狭すぎる……よな。
「止むまで待つ?」
そうすれば、もう少し一緒に居られる。
「もう誰も残ってないぞ」
二人きりの学校で。
「先生はまだいるでしょ。あと部活やってる奴らもいるし」
それはそうなんだけど、でも今ココには二人きりだし。
「教室でなら、ゆっくり待てる、か?」
誰もいなかったし、教室なら。
「……雨のせいか、暗いよな」
電気付けなければ、薄暗いから。
「これ以上暗くなる前に、帰った方がいいのかも……」
傘はあるけど、でも。
「……でも、だいぶ向こうの空、明るい気がする」
気がする……程度ではあるけれども。
「教室に」
カバンの中の傘をきゅっと掴んで。
「戻らないか?」
「戻りませんか?」
お互いの視線を絡めたら、多少ひきつった笑いに見えたのは気のせいか。
「雨が止むまで」
止まなければ、傘があるけど。
「少し時間を潰すか」
少しだけで良いから、もう少しだけ、二人で。
踵を返して教室を目指す。
廊下には誰も見当たらない。遠くで部活の音が聞こえるけど、雨音で消えかけている。
だから、教室の音だって、誰にも聞こえない……ハズ。
「いつ止むかな」
実は傘持ってましたと言ったら、どんな顔をするだろう。
「さぁな」
カバンを机の上に置き、雨の音を聞きながら、そっと手を伸ばす。
雨も傘も、全部言い訳の材料でしかない。