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    ikasoumen11

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    POIPOI 21

    ikasoumen11

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    ポメガバの尾勇
    書きたいとこ書いただけ感

    ポメガバースポメガバース…
    人間には根底に「愛されたい」「ちやほや可愛がって欲しい」という自己肯定と他者からの承認欲求、そして「安全に守られて生きたい。」という欲求、そして、寝る食うの生命維持欲求がある。
    人は疲労とストレスが頂点に達すると、生命の危機を感じそれらの欲求が爆発しそれが叶うための姿へと変貌する。それがポメガバース性である。
    人類に最初のポメガバース性が発見されたのは
    およそ約百年以上前、とある軍人が抑圧された軍生活と過酷な訓練が原因で犬化したのが始まりであった。
    それから人類は、このある日振って沸いた人間に新たに付随された新機能、ポメガバース性(通称ポメガ)に振り回されることになる。
    ストレスや疲労が極限に達したとき、生命を守る防衛本能としてポメガバースは発動し、人類はポメラニアン化する。
    身体変化は見た目何処からどう見てもポメラニアンになる。ふわふわもこもこ、愛くるしい姿になる。ごく稀にシーズー、トイプー、フレンチブル、チワワといった小型犬に変化するものもいるが、大半はポメラニアンである。
    カラーはその人間の外的特徴または性格が反映されると言われているが、はっきりしたことは分からないし、法則性等があるわけではない。
    またポメガバース性の発動条件はストレスと疲労である。しかしストレスや疲れも個人差がある。またストレスコントロールや体調管理が上手い人間やそもそもストレスや疲労と無縁タイプは一生犬にならずに終わる人もいる。逆に一生の大半犬姿で過ごす人もいる。
    ようは極限まで疲れたら愛くるしい小型犬になり、可愛がってストレスが消えるまで人には戻れないというものである。

    滴等社発行飯加源太教授著
    『人類とポメガバース』より抜粋


    やってしまった…
    勇作は自室のベッドでうなだれた。
    勇作の立派な180越えの長身は、今は三十センチ程しかない。つるつるの肌の代わりに、もこもこふわふわの立派な毛並み。白いわたあめのようなボディ。
    ポメガを起こしてしまったのだ。勇作は今、可憐で愛くるしい小型犬ポメラニアンになってしまっていた。

    『情けない。自分で管理ができない証明だ!』
    子供の頃、学校と習い事と剣道の試合の多忙さでポメガバースでポメラニアンになってしまったとき、勇作は父にこっぴどく叱られた。
    疲れてポメガバース性を引き起こし、ポメラニアンになってしまうことは情けないこと。
    それから極力犬にならないよう勇作は気を遣ってきた。
    ストレスは運動や筋トレで発散し、良く食べ良く寝て疲労は溜めない、を心がけてきた。
    しかし年齢を重ねるとそれもなかなか難しくなる。大学生活、塾講師のバイト、レポートの提出…
    疲れも、ストレスも感じる。
    正直、『いっそめちゃくちゃ疲れて一旦ポメって、そっから三日くらい可愛がられて本能のまま生きて全てリセットした方がスカッとする。』
    と、とある友人は言っていたが、勇作はそういうわけにもいかなかった。理解ある家族はいない。友人にも迷惑は掛けられない。
    そして勇作は、良くないと思いつつつい手を出してしまった。
    レッ◯ブル(抑制剤)に。
    あまり良くないと言われていたが、飲むと多眠しなくても身体が動き疲労感がその時はなくなった。お陰で多少の無理が利く。
    しかし、ここのところ忙しくてつい多飲してしまったのだ。
    レッ◯ブルは、先の気力の前借り。多飲は良くない。そして、必ず代償を払うことになる。
    先輩がそう言っていたのを、今更ながら思い出す。こういうことだったのか…!
    勇作は項垂れた。どうしよう。
    一日二日で戻らなかったらマズイ。
    一日くらいなら誤魔化せても、三日四日はさらにマズイ。学校にも行けないし、バイト先にも迷惑を掛ける。幸い今日は日曜で学校もなく、バイトも勇作の担当はたまたま休みだった。
    今日中に戻らねばならない。
    せめて母に…と思ったが、母に言えばそこから父に伝わる。
    きっと情けない!とまた怒られるだろう。
    何とかせねば。
    服とスマフォをベットの下に隠し、クッションをベッドに詰め寝ているように偽装する。
    母は今日は友人と会うと言ってたので夕方まで帰らないだろう。父は不在のようだ。助かった。
    『外出します、夕飯は結構です』と慣れない口でチラシの裏にマジックで手紙を書く。多少不審がられはするだろうが、ベットも偽装してきたから帰りが遅くても部屋を見れば「もう帰って寝てるのか」となるだろう。…たぶん。母を欺くのは少し良心が痛むが、これで明日の朝までは誤魔化そう。
    こうして勇作は家を出た。

    『…困ったな…』
    うなだれてしょんもりした姿で勇作はぽちぽち歩く。やはり友人を頼るか…しかし身分証的なものを持ってきていないし、分かってくれるか…
    ポメセンターには連絡されたら父に連絡が行く。それは困るしできたら避けたい。
    ポメセンターは独り身や出先でポメった人を保護して家庭に戻したり、元に戻るまで預かってくれる施設だ。一般人もポメラニアンを保護したらここに通報義務がある。
    しかし、お金も持ってきてないのでヒーリングクラブ、ポメ化した人を戻すことをお金を取って行う所…とかを利用することもできない。いや、お金があってもああいった所を利用したことはないので何ともだ。
    困った…
    そうだ、河原とか広いところで1日走り回ったりしたら戻らないだろうか?
    走り回って遊んで身体を動かせば、ストレスが発散されてもとに戻るかもしれない!
    そう考え知っている河原の方向へポチポチ歩く。そのときだった。
    「わんちゃーん!かわいい!!」
    不意を突かれた。思考に集中して背後の気配に気がつかなかった。
    勇作はぬいぐるみのように軽々抱き上げられ、頬擦りされる。
    「かいぬしいない、じゃあ、あたしの!!」
    回りを見回し、誰もいないと察した女児はそう叫ぶ。
    『いえそれは困ります!!』
    しかし、女児はお構い無しに勇作を抱き締め走り出した。
    「ふふふ、かーわいい!」
    女児は力加減を知らなかった。そして、捕まえた私のわんこに対しての溢れんばかりの愛情をフルパワーで向けてきた。
    「ぐえっ…」
    微かに潰れた声で呻いて、勇作は白目を向いた。死ぬ…
    死にかけのまま連れていかれた先は公園。
    「良いでしょー!!」
    女児はやっと腕の力を緩め、公園にいた仲間にたった今捕らえた愛犬を見せ自慢する。
    「触らせて!」
    「いいよ!」
    無数の手による蹂躙が開始される。四方から手が伸び、勇作の身体に無遠慮に触れてくる。
    『いやぁ!やめてくださいっ!痛いっ!やめっ…!』
    毛を掴まれもみくちゃにされ、手足を掴まれ広げられる。嫌だと首を振るが、その手たちは止まることなく勇作に襲い掛かる。
    「毛、ふわふわー!」
    「俺も触りたい!」
    「次、俺!」
    『ううっ、痛いです、そんなところ掴まないでください…ああっ!乱暴しないでぇ…!』
    きゅうぅぅん、きゅうぅぅん!!
    と悲しげに泣きながら子供たちの容赦ない責めは止まらなかった。
    「かわいいー!」
    「さっきそこで見つけたの!」
    「いいなー!!」
    口々に触らせてーと言いながら、子供もどんどん集まってくる。ポメラニアンの姿の勇作を真ん中に、加減を知らずヒートアップする子供たち。
    どうしよう、この人数相手にしてたら途中壊されてしまうのでは。勇作の背中に冷たい汗が流れる。

    「…おい、嬢ちゃん。」
    低い声に、子供だかりの真ん中の女児が振り返る。
    同時に顔を上げた勇作は、その声の主の顔を認めたと同時に希望を瞳に取り戻した。
    『あ、兄様っ!』
    勇作には腹違いの兄がいる。
    兄、尾形百之助。
    父が母と再婚する前に結婚してた方との間に生まれた、少し年上の兄。
    兄弟が欲しかった勇作は何かにつけて兄に構っていたが、当の兄はちょっと迷惑そうでそっけなかった。が、無視や拒否はされないのでやはり構うのを勇作は止めなかった。
    なんという運命。しかし、偶然でもなんでもいい。気づいて欲しい。いや、気がつかなくてもいいのでせめて子供たちの手から取り返して欲しい。助けて兄様!
    「くーんっ!!きゅーん!!」
    『兄様っ!助けてください!お願いいたします!どうかっ…』
    勇作は哀れな声と、必死の瞳で訴えた。
    それが通じたのか、尾形はゆっくり女児に語り掛ける。
    「…そいつは俺のだ。返してくれ。」
    「えー!?やだっ!」
    「…そいつはポメった人間で犬じゃねぇ。今探してたんだ。返してくれ。」
    「…おじちゃんのなの?」
    「そう。」
    そう言われて女児は渋々勇作を尾形に引き渡した。渡された勇作はガクガク震えながら尾形にしがみついてくる。
    「クゥーン…」
    「どうした?誰か知らねぇけどポメってしまったんですか?目がめちゃくちゃ訴えてきたから思わず助けちまった…俺の知り合いか??」
    そうです!よく知ってます!弟です!
    しかし今言葉は通じない。
    「よしよし…落ち着け。」
    抱き抱えられながらぽんぽん、と尻を軽く撫でられる。
    「えらく毛並みも綺麗なポメラニアンだな…ポメった人間なのかホンモノのポメなのか?」
    人間です!ポメった人間です!勇作です!!
    貴方の弟です!
    しかし、いまの勇作には人の言葉がない。
    「とりあえずポメセンターに連絡しとくか。」
    それを聞いてぶんぶんっ!と首を振る。
    「…イヤなのか?」
    コクコク、と肯定する。ポメセンターはまだ待って欲しい。ワガママだが、今日中に戻れれば大事にならずに日常に戻れる。
    「仕方ないな…」
    兄様にその分迷惑をかけてしまうことになるのは申し訳ないが、身内なので一日、その情けでどうか助けて欲しい。くうーん…と悲しげな声で懇願する。
    「1日たって戻らなかったら、ポメセンターには連絡するぞ?それとも本当に俺の知ってるやつなのか?
    っても誰なのか分からねぇもんな…」
    頭をかきながらそう言う尾形にこくこく、と頷く。なんとか一日、その間に戻りたい。
    「それにしても、野間?三島?二階堂?
    んー…土方組の連中…?
    鶴見部長だったらイヤだな。
    ちょっと気品があるとこがぽい。」
    じーっと勇作の顔を見ながら、知り合いの名をポツポツ浮かべる。
    気品がある、か。
    じっと胸の中のポメラニアンを見つめた尾形に一人の人物が過った。
    「勇作さん…?」
    自分の名が出たことに驚きつつも、首を高速に縦に振る。そうです、勇作です兄様。
    しかし言葉は通じない。
    まさか、勇作さんが…?
    「…んなわけないか。」
    勇作がポメるわけない。あの、ノー天気な弟にストレスなんかないだろうし、たとえあってポメっても家族や友人が我先にとちやほやしてきっとすぐに戻るだろう。
    しかしほっとくわけにもいかない。この世界ポメった人間の保護をせずほったらかした場合、かなりの重罪に問われるのだ。
    とりあえず、自宅保護。
    勇作と知らぬまま尾形は、助けたポメラニアンを抱えて自宅へ向かった。


    「自宅にきたねぇまま上げるわけに行かないので。」
    と、尾形は白い足をくいと持ち上げ、ウェットティッシュで丁寧に拭き上げる。肉球と毛の間や爪先も四本綺麗に拭き上げて床にゆっくりおろされる。
    いつもと違う兄の優しい目線と、丁寧な動作に勇作は少しドキドキする。
    兄はこんな顔をするのかと。
    『兄様…』
    「誰か知らんが、て言うか知り合いかどうかも分からんが…法律だしな。まぁ、そんなこといって本当の迷子ポメラニアンだったらそれはそれでどうしようかって話だが。」
    『知り合いです!てか弟です!敬語じゃない兄様って新鮮ですね!』
    前に二、三回押し掛けたことのあるマンションの一室。シンプルでスッキリしている。ちょっと殺風景な位だ。壁に飾った数丁のモデルガン位しか装飾や娯楽的なものも無い。
    「ガキにもみくちゃにされてるから、風呂に
    いれるぞ。メスではないからまぁ、大丈夫だよな。」
    『み、見られてたのですね。お恥ずかしい。』
    照れながらちょっと内股になる勇作。よいしょ、と再び尾形はそのふわふわボディを抱え、風呂場に連れていく。
    モコモコの身体にモコモコの泡で更にモコモコになりながら勇作は尾形に丁寧に洗われていた。とても心地よい。勇作は適温の湯のぬくもりと洗う手の動きにうっとりしながら身を任せる。
    『はぁー…気持ちいいです…』
    「風呂好きなんだな。抵抗するやつじゃなくて良かった。」
    綺麗に濯がれ、大きめのたらいにお湯をたっぷり溜めたものにゆっくり浸かる。
    手足がのびのび伸ばせる広さに勇作はリラックスして浸かっていた。
    毛並みがワカメのように水面にゆらゆらたゆたうのを、兄が指を絡めて遊ぶ。
    その目線がとてと穏やかで勇作はまたドキドキした。兄は犬が好きなのだろうか?
    こんな表情の兄を見たことがない。
    嬉しいのかしっぽが自然と動く。
    「そうそう、尻尾が自然に動くくらいのことを重ねていけば戻るぞ。」
    そう言いながらくしゃくしゃっと撫でられる。
    尻尾はさらに高速で動き、パチャパチャとたらいで水音を立てていた。

    丁寧に拭かれ、ドライヤーを全身かけられた勇作の身体はふこふこ感1.5倍増しだった。
    「可愛いな。」
    とまた撫でられて、勇作はさらに尻尾をふさふさ振り嬉しさを表す。
    お水と自宅に帰る前にコンビニで買ったポメガバ用ドックフードをお皿入れてくれ、どうぞ、と勧められる。
    水はともかくポメガバ用ドックフードはちょっと抵抗があったが、鼻先のいい匂いには勝てずぱくっと一口食べたら、もう止まらなかった。
    美味しい、ご飯美味しい。
    身体はさっぱり綺麗にしてもらって、美味しいご飯も食べている。幸せ。
    食べ終わった皿を下げる兄の足の回りに、お手伝いますと纏わりつく。
    が、そのまま抱き抱えられソファーに座らされてしまった。
    ううむ、困った。せめて言葉が通じれば。お座りして考え込む勇作の背後に、ぱふっとした感触がある。
    皿を洗い終えた尾形が、勇作の背中を撫でていた。
    「…土方のジジィほどは上手くないが…」
    そう言いながらぽふぽふ、と背中から尻の流れに沿って撫でられる。
    き、気持ちいい。思わず力が抜け、ごろっとなる。するとそのまま尾形の手がお腹に回る。
    「よしよしよし、よーしよし。」
    低い心地いい声であやされながらお腹を適度な強さと柔らかさで撫でられる。
    気持ちいい。こんなに気持ちいいなんて。初めて感じる快楽に戸惑いながらもそれを享受し、
    うっとりしながら勇作は尻尾を振る。
    「んー…ここか?ここか?」
    『そ、そこです!あっ、あっ…♡気持ちいい♡』
    なんなんだろう、これ。凄く気持ちいい。はしたないのにあまりに気持ち良くて、何だかイケないことをしているような感覚に陥る。でも、この手を拒むなんてできない。
    「イイコだ。うりうり…」
    『あ、兄様ぁ…♡♡』
    スマフォのシャッター音が聞こえる。
    しかし、そんなことはどうでもいい。勇作は兄の指に酔わされていた。
    「誰か知らんが、知り合いならこのはしたねぇ姿を後でネタにユスったろ。」
    そんな風に兄が考えてるともつゆ知らず、ついにキュンキュンと切なげに鳴きながら、勇作の尻尾は千切れんばかりに振りきれていた。
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