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    てんてんです

    @higashikawaiine

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    てんてんです

    DONEネロファウ未満くらいの短編。休日に二人で遊ぶ予定だったのにファウストが体調を崩しちゃった話です。
    【いていな展示】秋の風邪とホットワイン その日の嵐の谷は名前に似合わず快晴で、柔らかい秋の日差しが窓から差し込む、心地の良い昼下がりだった。
     こんなに気持ちが良く涼しい休日に、静かな場所で居心地の良い友人と二人。のんびりとつまみでも作りながら昼から酒を開けてしまいたい絶好の日だが、いや、元々そのつもりだったのだが、今日はそれどころでは無かった。
    「先生、熱測れた」
    「うん」
    家主は寝巻きになりベッドの中で上半身を起こし、緩慢に体温系を脇から取り出すとネロに渡した。既に結構熱が出ているが、毛布をぎゅっと引き寄せて寒そうにしているのでまだもう少し上がるかもしれない。
    「その……何か欲しいものとかある」
    つい数刻前まで何事もなく元気そうにしていたのに、突然体調を崩してしまったファウストに、ネロはどうしていいのか分かりかねていた。何か食べたいと言われれば作ってやることはできるけれど、他に何をしたら良いのか分からない。辛そうにしている友人にしてやれることがあればいいのだが、こんな時に何かしてもらった覚えが記憶の中に無いネロは、何をするのが正解なのか分かりかねていた。
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    てんてんです

    DONEファウストがネロの飯屋を成り行きで手伝うことになる話。全年齢です。
    後編は12月目処でまとめて上げるか本にできたら……できたらいいなぁ

    【!注意!】
    ・キャラの死(ネロ、ファウスト意外)に関する表現があります
    【いていな展示】五線譜の上、旅は続く (前編) 長い人生の中でひとつひとつの別れにいちいち心を傾けて擦り減っていては生きていけないことくらい、分かっているつもりだった。
     どのみち、あと十年も経たないうちに離れるつもりの場所だった。流れた時間に対して変わらない見た目に不信感を抱かれる前にその土地を一度離れる必要があるのだから。世界の変化には良い風が吹いていたけれど、こんな東の辺境の地で凝り固まった価値観はたったの十数年で変わるものでもない。あと数十年経って、古い考えの人間達がこの世から去ってしまうまでは、悲しいことに。
     十数年で離れるつもりの土地だったとはいえ、分かっていた別れと、突然突きつけられる別れではダメージが違う。あれは昨日の出来事で、店を畳むことになった原因は自分の不注意としか言いようがない。夜明け頃、だれもいないだろうと慢心して店の裏口に箒で降り立った時、がしゃんと皿が割れる音がした。裏口に呆然と立っていたのは常連客の、よく一人で店にくる純朴で明るい青年だった。しばらく病気で臥せっている妹のために、ネロの店のミネストローネが好きだからと店に来る度に持ち帰りで頼み、律儀にお礼のメモを付けた皿を夜のうちに返しに来ている子だった。
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