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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。ルチに『かわい子ちゃん』と言われたいという願望です。ほんのちょこっとだけTF5の牛尾さんルートのネタバレがあります。

    ##TF主ルチ

    所有の言葉 リビングへ入ると、真っ先にソファに向かった。身体が鉛のように重くて、これ以上は動けそうにない。横になるように倒れ込むと、すぐ近くに佇むルチアーノを見た。
    「ルチアーノ」
     声をかけると、彼はちらりとこちらに視線を向けた。面倒臭そうな様子ながらも、目と目を合わせて返事をする。
    「なんだよ」
    「よしよしして」
     単刀直入に伝えると、彼は呆れたようにため息をついた。僕が上半身を起こしてスペースを作ると、呆れた混じりの声で言う。
    「またか? 全く、君ってやつは甘えん坊だな」
     文句は言うものの、断るつもりはないようだった。僕の隣に腰を下ろすと、にやりと笑いながら両手を広げる。
    「ほら、おいで」
     普段からは信じられないほどの、甘ったるくて優しい声だった。その声に誘われるままに、僕は彼のお腹に抱きつく。子供特有の温もりが伝わったと思うと、両手を胴体へと回された。
     ルチアーノの小さな手が、僕の頭へと伸びてくる。髪を掻き分けるように潜り込むと、わしゃわしゃと頭頂を撫で回した。もう片方の手は背中に回され、小刻みにとんとんと叩いている。その様子は、僕が彼を宥めるときの手付きと同じだった。
    「君はよくやったよ。これからも、僕の期待を裏切らないでほしいな。君は、僕のお気にいりなんだから」
     甘い声で囁きながら、ルチアーノは僕の頭を撫でる。声が少し震えているのは、僕に対して優越感を感じているからなのだろう。子供相手に醜態を晒している自覚はあるが、不思議と恥ずかしさは感じなかった。
    「もっと褒めて」
     勢いのままに言うと、彼はきひひと笑い声を上げた。くすくすと笑い声を漏らしながら、楽しそうに言葉を発する。
    「僕によしよしされてるなんて、どっちが子供だか分からないな。案外君の方が子供っぽかったりするんじゃないか?」
     笑い声を上げながらも、彼は僕を撫でることをやめなかった。彼は彼なりに、僕を甘やかすことが楽しいらしい。僕も甘えたい気分だったから、そのまま温もりに身を委ねていた。
     ルチアーノの温かい手のひらが、とんとんと僕の背中を叩く。肌から伝わる温もりが、服越しに僕の身体を温めた。幼い姿をしているからか、彼は僕よりも体温が高いのだ。腕の中に収まっていると、だんだん眠たくなってしまった。
     目を閉じてうとうとしていると、不意にルチアーノが口を開いた。囁くような声色を保ちながらも、はっきりとした声で言う。
    「……なあ、君って、俗に言う『かわい子ちゃん』ってやつなのか?」
    「えっ?」
     急な発言に、僕は間抜けな声を上げてしまった。彼には似ても似つかないような言葉が、その口から出てきたのだ。衝撃的すぎて、言葉を返すことすらできなかった。
    「この前、牛尾と話してただろ。孤児院の子供たちは、『かわい子ちゃん』だって。庇護対象をそうやって呼称するなら、君も『かわい子ちゃん』だよな」
     戸惑う僕を横目に、ルチアーノは言葉を続ける。当たらずとも遠くない解釈を差し出されて、どこから訂正していいか迷ってしまった。
    「うーん。それは、ちょっと違うんじゃないかな。あの時の言葉は、ルチアーノをからかうための言葉の綾だった訳だし」
     言葉を選びながら答えると、ルチアーノは不満そうに息を吐いた。見上げると、ちょっと拗ねたような顔をしている。相変わらずかわいらしい表情だった。
    「知ってるよ。君たちは、僕を騙そうとしたんだよな。わざと僕を挑発するような言葉を使ってさ」
     咎めるような言葉に、ちょっと嬉しくなってしまった。あの時はお咎め程度で済んだのだが、やっぱり気にしていたらしい。
    「まさか乗ってくるとは思わなかったから。ルチアーノは、そういうの気にしないタイプだと思ってたし……」
     そう。当時の僕は知らなかったのだ。ルチアーノが、普段見せている何百倍も嫉妬深いということを。一度僕の浮気を疑うと、彼の知性は半分以下にまで下がるのだ。今ではすっかり慣れてしまったし、少し嬉しいとさえ思ってしまう。
    「気にするに決まってるだろ。君たちが、所有の意図を持って語ってる相手なんだから」
     僕の言葉に噛みつくように、彼は言葉を続けた。なんだか聞き慣れない表現が出てきて、僕は首を傾げる。話の方向がおかしな方へと進んでいる気がした。
    「待って、何の話をしてるの?」
     止めに入ると、彼はくすくすと笑い声を上げた。片手で無理矢理僕の顔を上げさせると、にやにやと笑いながら言う。
    「だって、そうだろ? 『かわい子ちゃん』っていうのは、男が自分の所有物に対して呼ぶ言葉だ。だから、あの時の牛尾は子供たちを所有の言葉で呼んだんだよ」
     また、独特な解釈をしていた。騙された以上本来の意味を知ってるだろうとは思っていたが、そんな解釈をしていたなんて予想外だ。彼は上位存在だし、上下関係の厳しい世界に生きているから、そう考えるのもおかしくはないのかもしれない。
    「うーん。所有の言葉っていうのは、ちょっと違う気がするけどなぁ。だって、恋人は恋人という関係なわけであって、自分のものになるわけじゃないでしょ?」
     正面から否定すると、彼はきひひと笑い声を上げた。甲高くて甘ったるい声が、僕の両耳を刺激する。にやにやと目を細めたまま、ルチアーノは楽しそうに言葉を続けた。
    「何言ってるんだよ。恋人は所有物だろ。映画に出てくる人間たちも『俺の女』だの『私の男』だの、所有の言葉で示してるじゃないか。『かわい子ちゃん』も、それと同じだろ?」
    「うーん。そうなのかな……」
     畳み掛けるように言われて、僕は反論の言葉を失ってしまう。なんだか間違っているような気もするが、間違っていないような気もするのだ。彼の知識の源になっているのは、ホラー洋画のカップルたちだろう。海外の人は感情表現がストレートだから、所有表現を使うことも多いのだ。
     そこまで考えてから、僕は頬を染めた。こうしている間にも、ルチアーノは真っ直ぐに僕を見つめている。そろそろ、上から見下ろされてることが恥ずかしくなっていたのだ。
    「そうだよ。人間という生き物は、他者を所有したがるようにできてるんだ。だから僕も、君は誰にも渡さないぜ。君は、僕のお気にいりなんだから」
     何が面白かったのか、ルチアーノはくすくすと笑い声を上げる。いつものからかうような声じゃなくて、甘やかすような声だった。とんとんと背中を叩くリズムも相まって、自分が赤子か何かになったように感じる。さすがに、これ以上は恥ずかしかった。
    「あのさ、もうそろそろ、荷物を片付けようと思うんだ。撫でてくれてありがとう」
     小さな声で言うと、ルチアーノはくすくすと笑った。僕の本心を察しているのだろう。にやにや顔で僕を見下ろしながら、子供をあやすような声色で告げる。
    「なんだ? もういいのか? もっと甘えてもいいんだぞ」
    「もう、十分癒されたから。大丈夫だよ」
    「ふーん。そうか」
     そう言うと、彼はあっさりと手を離してくれた。普段はもう少しからかってくるのに、今日はやけに素直だ。不思議に思いながらリビングから出ようとすると、背後から甘ったるい声が聞こえてきた。
    「明日もよろしく頼むぜ。『僕のかわい子ちゃん』」
     唐突に向けられた発言に、僕は頬を赤く染めてしまった。心臓がドクドクと音を立て、動きがぎこちなくなってしまう。一瞬だけ足を止めてしまい、すぐにまた踏み出す。ルチアーノに動揺を悟られたら、何を言われるか分からないのだ。
     洗面所に向かい、使ったハンカチをカゴの中に放り込むと、さっきの発言を反芻する。今の会話の流れを踏まえると、それはただの甘い言葉とは考えられなかった。彼にとっては最大級の、所有の言葉ということになる。お気にいりのおもちゃに名前を書くように、彼は僕を所有の表現で呼んだのだ。
     それにしても、と、僕は思う。ルチアーノの口から発せられる甘い言葉は、破壊力に満ち溢れていた。しばらくは思い出してしまうし、恥ずかしくなってしまうだろう。相手が年下であることも、倒錯的な甘さを生み出している。
     僕は、ルチアーノにとんでもない言葉を教えてしまったのかもしれない。まだ音を立てている心臓を押さえつけながら、そんなことを考えてしまった。
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