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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。ルチを抱き枕にしたいっていうだけの話。

    ##TF主ルチ

    抱き枕 冬は長い。夏の熱さも長いことで有名なのだけど、冬の寒さもそれに負けず劣らず長いのだ。十一月の終わりには姿を現し始め、入学式が始まる四月の頭まで続く。町に子供が溢れる春休みになっても、気温は凍えるように寒かった。
     自分の部屋に向かうと、僕はそそくさと布団の中に入る。お風呂上がりの布団は、身体が熱を放っているおかげですぐに暖まるのだ。部屋は暖房をつけないことにしているから、ここでは布団の中だけが温もりを発している。柔らかな羽毛の感触に包まれると、もうそこからは出られなかった。
     布団の中で寝返りを打つと、ルチアーノが僕の顔を覗き込んできた。ちょっと呆れたような表情で、真上から僕を見下ろしている。目と目が合うと、彼は小さな声で言った。
    「また布団の中にいるのかよ。君は本当に寒がりだな」
    「僕が寒がりなんじゃないよ。この部屋が寒いんだ。ちゃんと身体を温めておかないと、風邪を引いちゃうかもしれないんだよ」
     僕が答えると、ルチアーノは黙って口を閉じる。彼にとって、僕が風邪を引くことは不安の種であるらしい。この話を持ち出すと、何も言い返さなくなるのだった。
     それに、僕の言ったことも完全に嘘であるとは言えなかった。目覚まし時計によると、この部屋の気温は十三度しかないのである。防寒を怠れば、本当に風邪を引いてしまうだろう。
     それに比べて、ルチアーノはかなりの薄着だった。もこもことした長袖のトレーナーに長ズボンを履いただけの姿で、上には何も羽織っていない。彼は機械だから気にしていないのだろうが、人間であればすぐにでも風邪を引いてしまいそうだ。
    「ねえ、ルチアーノも布団に入ろうよ」
     声をかけると、彼は怪訝そうに眉を寄せた。表情の理由を突きつけるように、尖った声が飛んでくる。
    「はあ? なんでだよ」
    「寒そうだから」
     簡潔に答えると、今度は大きく溜め息をついた。ベッドに肘を立て、手のひらの上に頬を乗せると、面倒臭そうに言う。
    「そんなこと、僕には関係ないよ」
     言い切ってから、彼は思い付いたように僕を見た。光を反射する緑の瞳が、真っ直ぐに僕へと向けられる。不思議に思って見つめ返すと、納得したような声でこう言った。
    「ああ、そういうことか」
     僕が首を傾げていると、おもむろに隣に入り込んでくる。二人分の温もりに満たされて、布団の中はさらに温かくなった。
     ルチアーノの温もりが、僕の方へと近づいてくる。彼の小さな頭が、僕の胸元に寄せられていた。布団の中に身を潜めながら、上目遣いで僕を見上げる。口元をニヤリと歪めると、からかうようにこう言った。
    「ほら、甘えていいんだぜ」
     その言葉に、ようやく彼の言動の真意を理解した。彼は、僕が彼に甘えるために、同衾を要求したと思ったのだ。あながち間違っているわけではないから、そのまま言葉に甘えることにした。
     ルチアーノの小さな身体に、ゆっくりと腕を回す。僕よりも頭ひとつ分は小さいから、引き寄せられた身体はすっぽりと僕の腕に収まった。身体から発する少し高めの体温が、服越しに僕の身体に伝わる。それは甘い熱となって、じわじわと僕の身体を温めた。
     いつもの癖で、僕はルチアーノの頭に手のひらを伸ばした。後ろへと伸びる赤い髪を、流れに沿うように撫で付ける。トリートメントをつけたばかりの髪の毛は、艶々していて柔らかかった。髪の間に指を突っ込むと、わしゃわしゃと音を立てて掻き分ける。
     ルチアーノの肌を撫でながら、僕は静かに目を閉じた。優しい温もりに包まれながら、うとうとと船を漕ぐ。こんなことを言うと怒られてしまうかもしれないけど、ルチアーノの小さな身体は、抱き枕にするのにちょうどいいのだ。身体の芯まで伝わる熱と、固いようで柔らかい生命の感覚は、僕の心を落ち着かせてくれる。
     そんな僕の気持ちが分かっているのか、ルチアーノは何も言わなかった。黙って身体を横たえたまま、僕のなすがままになっている。彼もやられっぱなしじゃないから、僕の寝顔を見たりしてるのかもしれないけど、そこまでは気にしない。寝顔を見られることが気にならなくなるほどに、僕は彼と親しくなったのだ。
     身体を支配する疲労感が、少しずつ薄れていくのを感じる。眠りと現実の境目がなくなって、自分がどこにいるのかも分からなくなった。そんな状況でも、お腹に伝わるルチアーノの温もりだけは、いつまでもはっきりと感じ取れる。その熱にすがり付くように、僕は意識を失った。

    「おい」
     どこからか、子供の声が聞こえてきた。不機嫌に尖った、幼い子供の声だ。甲高くて甘いのに、どこか低いようにも感じる、聞き慣れたルチアーノの声だった。
    「おい、起きろってば」
     今度は、もっとはっきりと聞こえてきた。耳に突き刺さる鋭い声に、僕はゆっくりと目を開ける。至近距離の顔面が視界に飛び込んできて、思わず声を上げてしまった。
    「わっ」
    「何が、『わっ』なんだよ。人のことを抱き枕にしてくれちゃってさ」
     そんな僕の様子を見て、ルチアーノは不機嫌そうに吐き捨てる。冷静になって周囲を見渡すと、ようやく状況が分かってきた。僕は、両腕でルチアーノの身体を抱き締めているのである。お腹とお腹がぴったりとくっついていて、痺れるような熱が伝わってきた。
     それだけじゃない。足と足はしっかりと絡まっていて、彼の足の付け根に僕の太股が押し付けられている。少し違和感を感じるのは、生理現象を起こしているからだろう。身体が強ばっていることから考えると、ずっとこの体勢で寝ていたのかもしれない。
    「おはよう、ルチアーノ」
     寝惚けた頭で呟くと、ルチアーノは不満そうな顔で僕を見上げた。身体と身体が密着しているから、無理矢理首を上げるような形になっている。ちょっと苦しそうな仕草だった。
    「いいから、とっとと離れろよ。いつまでこうしてるつもりだ?」
    「ごめん」
     尖った声で言われて、僕は慌てて腕を離す。腕を動かしたことで、ようやく自分の身体が痺れていることに気がついた。ずっと同じ体勢をしていたのだ。当然と言えば当然だろう。
     僕から解放されると、ルチアーノはベッドの上に座り込んだ。大きく伸びをすると、両腕を天へと突き上げて身体を伸ばす。妙に人間じみた仕草に、なんだか微笑ましくなってしまった。
    「それにしても、よく寝てたよな。身動きも取らずにぐっすりなんて、死んだのかと思ったぜ」
     そのままストレッチを続けながら、ルチアーノは淡々と不満を吐く。僕と暮らし始めたばかりの頃は、こんなに人間じみた感じではなかった気がする。変化というものはおもしろい。
    「嫌だったら、起こしてくれたら良かったのに」
     意地悪な返事を返すと、彼は黙り込んでしまった。文句を言ってはいるものの、拒絶するほど嫌なことではなかったのだろう。あんまり追求するのもかわいそうだから、この辺で許してあげることにする。
     ルチアーノの隣に座ると、僕も身体を伸ばしてみた。ずっと同じ体勢で眠っていたから、身体が強ばって仕方ないのだ。ラジオ体操のような動きで腕を伸ばして、血の動きを促してあげる。
     それにしても、今日はよく眠れた気がする。普段から睡眠時間の長い僕だけど、質そのものはそこまで良くないのだ。こんなにすっきり目が覚めることは珍しかった。
    「今夜も、ルチアーノに抱き枕になってもらおうかな。そうしたら、いつもよりよく眠れるかもしれないし」
     何気なく呟くと、彼は不満そうに視線を向けた。半分くらい閉じた瞳で、湿度の高い視線を向けてくる。
    「僕は嫌だからな。枕の代わりにするなら、君一人で寝ろよ」
     あっさり断られてしまった。一日だけなら許せても、毎日は嫌らしい。まあ、抱き締める僕も身体が強ばってしまうから、あまり繰り返さない方がいいのかもしれない。たまにだけできるからこそ、この経験は意味があるのだ。
     時計を見ると、まだ八時前だった。早起きしたから、いつもよりたくさん時間を使えるだろう。今日は何をしようかと考えながら、僕は洗面所へと向かったのだった。
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