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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。制服ルチは眼鏡が似合うだろうなってずっと思ってます。

    ##TF主ルチ

    眼鏡「やあ、○○○。こんなところで合うなんて奇遇だね」
     繁華街を歩いていたら、不意に後ろから声がした。ゆったりして落ち着いた雰囲気の、変声期前の男の子の声だ。聞き慣れない声なのに、どこかで聞いたことがあるような気がする。恐る恐る後ろを振り向くと、そこにはアカデミアの制服に身を包んだ男の子が立っていた。
     すぐには誰か分からなくて、僕は大きく瞬きをする。視線を少し上に向けて、ようやく正体に気がついた。三つ編みにまとめたブラウンレッドの長い髪に、真っ直ぐに僕を見つめる緑の瞳。その姿は、紛れもないルチアーノのものだった。
    「まさか、僕を忘れたなんて言わないよね。君の一番のパートナーなんだから」
     にやにやと笑いながら、彼はからかうような笑みを浮かべる。いつもの甲高い笑い声ではなく、落ち着いた含み笑いだった。聞き慣れない声色に、少し不思議な気分になる。アカデミアに潜入している時の彼は、いつもこんな感じなのだ。
    「忘れてないよ。ちょっと、すぐには分からなかっただけで。その姿の時は、いつもと雰囲気が違うから」
     僕が言うと、彼は不満そうに鼻を鳴らした。いつものように眉を寄せると、苦々しい顔で僕を睨む。その姿でいつもと変わらない表情をされるのは、物凄く奇妙な気分だった。
    「なんだよ。僕のことが好きなら、一目でそうだって分かるだろ。本当は、嘘を吐いてるんじゃないだろうな」
    「そんなことないよ。僕は、ルチアーノのことが何よりも好きなんだから」
     真っ直ぐに言うと、彼は少し恥ずかしそうに顔を伏せた。僕の脇腹をつつきながら、右隣に寄り添う。
    「声が大きいよ。馬鹿」
     文句は言っているが、一緒に帰るつもりみたいだ。僕が先へと歩き出すと、黙ったまま隣をついてくる。アカデミアの優等生を演じているからか、歩き方もいつもと違う気がした。
     僕がすぐにルチアーノだと気づけなかったのは、彼がアカデミアの制服を着ていたからだけだはなかった。今日のルチアーノは、黒縁の眼鏡をかけていたのだ。太くてがっしりとしたプラスチックのフレームは、彼の緑の瞳を小さく見せている。視界に映る印象の違いに、すぐにはそうだと確信できなかったのだ。
    「それにしても、ルチアーノが眼鏡をかけてるなんて珍しいね。いつもだったら、そのままの姿をしてるでしょう?」
     僕が尋ねると、ルチアーノはこちらに視線を向けた。黒い線に囲まれた瞳が、真っ直ぐ僕に向けられる。レンズに度が入っているのか、彼の瞳はかなり小さく見えた。
    「これかい? これは、潜入のための小道具だよ。眼鏡をかけていると、人間には優等生に見えるんだろう?」
     楽しそうに笑いながら、ルチアーノは僕に言葉を告げる。演技じみた物言いはいつもより大人びていて、心臓がドキドキと鳴った。なんとか平静を装うと、内心を悟られないように返事をする。
    「そうだね。賢そうに見えるよ」
     僕の言葉を聞くと、彼はくすくすと笑った。こうして大人しく振る舞っていると、その姿は綺麗な学生の男の子にしか見えない。思わず見蕩れていると、彼は目敏く言葉をかけてきた。
    「そんなに見つめてどうしたの。もしかして見蕩れてるのかい?」
     図星をつくような質問を投げられ、僕は反論ができなかった。元々する気もなかったから、素直な感想を語る。
    「そうだよ。すごく、綺麗だなって思ったから」
    「君は、堂々と恥ずかしいことを言うね。羞恥心はないのかい?」
     畳み掛けるように言われて、少し恥ずかしくなってしまう。今の彼に言われると、それが正しい意見のように感じてしまうのだ。ルチアーノの余裕綽々な態度が余計に恥ずかしくて、今度は僕が頬を染める。
    「いいでしょ。本当のことなんだから」
     僕の態度が面白かったようで、ルチアーノはおもむろに距離を詰めた。顔と顔が近づきそうなほどに近づくと、嬉しそうに声を潜める。
    「それにしても、君がこういう趣味だったなんてな。気に入ったなら、明日からも眼鏡をかけて来てやろうか」
     いつも通りの声だった。容姿に不釣り合いな甲高い声が、僕の耳に突き刺さる。からかわれているような語調に、返事をする声が慌ててしまった。
    「違うよ。慣れない姿だから見蕩れてただけで、眼鏡がいいとかじゃないんだ。それに、いつもの方があどけなくてかわいいし……」
     口に出してから、しまった、と思った。勢いに乗って、彼の嫌がることを口走ってしまった気がするのだ。案の定、ルチアーノは不満そうに言葉を吐く。
    「なんだよ。普段の僕が子供っぽいって言うのか?」
    「そういう意味じゃなくて……」
     必死に弁解しようとするが、説得力はどこにもない。不満を露にするルチアーノは、弁解のしようがないほどに子供っぽかったのだ。僕が口ごもっていると、彼は畳み掛けるように言葉を続ける。
    「なんだよ。そう思ってるんだろ。全く、失礼なやつだな」
     そこまで言われてしまうと、これ以上の弁解はできない。どうせ図星なのだからと、大人しく認めることにした。覚悟を決めると、思いきって素直な言葉を吐く。
    「確かに、子供っぽいとは思ってるよ。子供っぽいのに大人なところがあるから、ルチアーノは魅力的なんだ」
    「誉めてるのか貶してるのか分からないな。罰として、しばらくはこの格好で君の家に行ってやる」
     露骨に眉を寄せながら、ルチアーノはそんなことを言う。どんなルチアーノも愛おしいから、姿が変わったくらいではデメリットにはならないのだけど、それは言わないでおくことにする。僕がこの姿のルチアーノに下心を向けていると知られたら、何を言われるか分からないのだ。
    「ごめんって。ルチアーノのことを子供だと思ってるわけじゃないんだよ。信じて」
     必死に言葉を重ねるが、彼はそっぽを向いてしまう。あからさまな態度ではあるが、この程度ならすぐに機嫌を直すだろう。つんと済ました横顔を眺めながら、僕は苦笑いを浮かべた。
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