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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    TF主ルチ。TF主くんとルチが狭いところに隠れるシチュが見たかっただけのテキストです。

    ##TF主ルチ

    隠れる「今から、任務に出るぞ」
     ある日の夜、食事の片付けを終えると、ルチアーノは唐突にそう言った。
    「えっ?」
     突拍子のない発言に、僕は間抜けな声を上げてしまう。思わず窓の外に視線を向けるが、カーテンから覗く景色は真っ暗で、眩い街灯が輝いている。デュエルや工作をするような時間には思えなかった。
    「こんな時間に、どこに行くの? もう真っ暗なのに?」
     問いかけると、彼は呆れたように息をつく。チラリと僕に視線を向けると、気の抜けた声で答えた。
    「真っ暗だからだろ。一目を避けて行動するのなら、人が少ない時刻が一番だ」
    「そっか」
     そう言われたら、納得するしかなかった。いくらイリアステルが万能の力を持っていると言っても、目立つ行動は避けたいのだろう。WRGPも近いから、町には暗示の効かない相手も訪れている。うっかり鉢合わせたりしたら、計画そのものが台無しになってしまうかもしれない。
    「ほら、呑気にしてないで、とっとと支度しろよ。早く済ませないと、君の好きなことができなくなるぞ」
     からかうような声色で、ルチアーノは僕を急かす。その言葉に、僕は頬を染めてしまった。彼が言う『僕の好きなこと』というのは、眠る前のスキンシップのことだろう。期待を見透かされていることが、恥ずかしくて仕方なかった。
    「変なこと言わないでよ。びっくりするでしょ」
    「何を照れてるんだよ。本当のことだろ」
     言い返すと、ルチアーノはきひひと笑い声を上げる。この態度だということは、今日の任務はそこまで重い内容ではなのだろう。密かに胸を撫で下ろすと、僕は洗面所に向かった。

     ルチアーノが向かった先は、小さなビルのフロアだった。月明かりだけが照らす薄暗い廊下を、ルチアーノに先導されて進む。暗闇に目が慣れ始めてはいるものの、視界に映る景色はぼんやりしている。小声で障害物を教えてもらって、なんとか目的の部屋へと向かった。
     その部屋は、頑丈に守られているようだった。入り口は重たい扉で封じられ、隣にはセキュリティ認証のシステムが取り付けられている。モニターの青白い光が、暗がりの中にぼんやりと浮かび上がっている。そんな物々しいシステムも、ルチアーノは片手を翳すだけでハッキングしてしまう。電子音が鳴り響いて、ガチャリと鍵が開く音がした。
    「行くぞ」
     僕の手を掴んだまま、ルチアーノが重い扉を開く。漫画やドラマなら軋んだ音が鳴りそうな雰囲気だが、目の前の扉は滑るように開いた。室内に足を踏み入れると、再び扉を閉じる。あまりはっきりとは見えないが、僕は中の様子を見渡した。
     小さな部屋の中に、大きなコンピューターが並べられている。壁一面を覆っているのは、出力用のモニターだ。反対側に並べられているのは、いかにも作業用といった雰囲気のデスクである。そのデスクの上にも、小型のディスプレイが置かれていた。
    「こっちだ」
     僕の手を引っ張ると、ルチアーノは机の上のモニターへと歩を進める。急に引っ張られるから、転ばないようについていくだけで精一杯だった。なんとか追い付く頃には、彼はコンピューターの電源を入れている。暗闇に浮かび上がったその光は、目が潰れそうなほどに眩しかった。
    「君は、監視が来ないか見張っててくれ」
     一言だけ告げると、ルチアーノはコンピューターを操作する。僕には、何が何だかさっぱり分からなかった。急に建物に連れ込まれたと思ったら、僕を置き去りにして機械の操作をしているのだ。説明してもらわなければ理解できない。
    「これは、どういう任務なの?」
     コンピューターに向かうルチアーノを見下ろしながら、僕は小さな声で尋ねる。真剣に画面を眺めたまま、彼も小さな声で答えた。
    「隠しデータを探してるんだ。外部からハッキングしようとしたけど、ロックがかかっていてね。組織と繋がりのある人間もいないから、こうしてわざわざ出向いたんだ」
     なんとなく、話の流れが見えてきた気がする。イリアステルの技術も、万能ではないということなのだろう。しかし、目的を聞いたからといって、僕を連れてきた理由は分からないままだった。
    「どうして、僕を連れてきたの? ハッキングだけなら、ルチアーノ一人で十分でしょ」
     続けて尋ねるが、返事は返ってこない。しばらく待ってから、再び小さな声で尋ねる。
    「ルチアーノ?」
    「ちゃんと見張ってろよ。監視されてるかもしれないんだぞ」
     次に返ってきたのは、鋭い声だった。これ以上の答えは望めないようだから、仕方なく入り口に視線を向ける。僕が見張ったところで、相手の動向なんて掴めない気もするが、ルチアーノがいいならいいのだろう。
     しばらくコンピューターと睨み合うと、ルチアーノは急に顔を上げた。黙って扉に視線を向けると、コンピューターの画面を落とす。僕の身体を引っ張ると、耳元で囁いた。
    「足音がする。誰か来るぞ」
     その言葉に、僕は混乱してしまった。どうにか隠れないとと考えて、ルチアーノを机の下に押し込める。そのまま、自分の身体を机の下に押し込んだ。
     狭い机の下で、僕とルチアーノの身体が密着する。ルチアーノの高い体温が、直に僕の身体に伝わってきた。隙間に手足を仕舞うように、しっかりと身体を絡ませる。僕の耳元から、ルチアーノの小さな声が聞こえてきた。
    「何するんだよ」
    「隠れなきゃと思って……」
     無理な体勢で身体を押し込んだまま、僕はなんとか返事をする。耳を済ませてみるが、人が部屋に入ってくる気配はない。息を潜めていると、尖った声が聞こえてきた。
    「こんなことしなくても、相手に暗示をかければいいだろ。目撃者の正体さえ分かれば、後は記憶を消すだけなんだから」
    「そうは言っても、神の加護を持ってたら、効果はないんでしょ」
    「一人二人が覚えてたくらいで、お偉いさんたちは信じないだろ。多数の記憶さえ消してやれば、後は揉み消すだけなんだ」
     言い争っている間に、相手は近づいてきたようだった。扉を開く力強い音が、コンピューターの並んだ室内に響き渡る。少し遅れて、威圧感を持った男の声が聞こえてきた。
    「誰かいるのか!?」
     机の下に身を隠したまま、僕たちは黙ってその声を聞いていた。身動きひとつ取らずに、机の下で息を潜める。空気に怪しさを感じたのか、男は室内へと踏み込んできた。こつこつと響く足音が、余計に緊張を加速させる。
     心臓をドクドクと鳴らしながら、僕は身体を小さく丸めた。ルチアーノと至近距離で密着していることも、今は気にしていられない。肌と肌をくっつけたまま、身体が動かないように意識する。
     足音は室内をぐるりと回って、僕たちの元に近づいてくる。足音が鳴り響く度に、僕は心臓が飛び出しそうになった。鼓動が相手に聞こえていないか心配で、ルチアーノに身体をくっつける。
     男の足音は、すぐ近くまで迫っている。僕たちの前で足を止めると、しばらくその場に留まった。変に物音を立ててしまいそうで、僕は息をすることすらできない。たった数秒の時間なのに、無限の時のように感じた。
    「誰もいないか」
     誰かに聞かせるように呟いてから、男は再び歩を進めた。反対側を通り過ぎて、部屋の外へと出ていったようだ。部屋を遮る重い扉が、バタンと大きな音を立てた。少し気が緩むが、まだ油断はできない。身体をぴったりとくっつけたまま、しばらくその場で動きを止める。黙って耳を澄ませてから、ルチアーノが小さな声で言った。
    「もう、いいぞ」
     許しをもらって、僕はようやく身体を動かした。緊張で身体が強ばってしまって、這い出すのに時間がかかってしまう。絡まった手足をほどくと、身体を伸ばしながら外へと移動した。僕の後に続いて、ルチアーノが姿を現す。
    「全く、君っていうやつは、とんでもないことをしでかすよな」
     小さな声で文句を言いながら、ルチアーノは再びコンピューターに向かった。眩いライトの光に照らされて、綺麗な横顔が映し出される。真剣に画面を見つめる姿を、僕はすぐ隣で眺めていた。
     入力装置から手を離すと、ルチアーノは左手を持ち上げた。コンピューターの真上に翳して、しばらく動きを止めている。再び手を下ろしたかと思うと、端末の電源を落としてこちらを振り向いた。
    「目的は果たしたよ。後は帰るだけだ」
     淡々と語ってから、僕の腕を掴んで歩を進める。半ば引きずられる形になりながら、僕は慌ててその後を追った。部屋の外に出ると、ルチアーノはワープ装置を起動する。眩い光に包まれて、僕たちは夜の闇から離れていった。

     次に目を開けた時、僕は明るい部屋の中にいた。暗闇に慣れた虹彩に、人工の眩い光が降り注いでくる。光に目が潰れそうで、反射的に両目を閉じる。この眩しさもルチアーノには関係ないようで、平然と行動を続けている。僕が動けるようになったときには、僕の部屋で入浴の準備をしていた。
    「ねえ、どうして、任務に僕を連れていったの?」
     ごそごそと物音を立てるルチアーノを見ながら、僕はそんなことを尋ねる。今日の彼の任務には、どう考えたって僕は必要なかったのだ。わざわざお荷物の僕を連れていって、危険に身を置いていたのだから。
     僕の問いを受けて、彼は静かにこちらを向いた。僕の顔を見上げると、口角を少しだけ持ち上げる。
    「確かに、今日の任務は僕一人でできることだったよ。それでも君を連れていったのは、君に経験値を積ませるためさ。神の代行者の仲間になるなら、臨機応変に対応する力が必要だからね」
     にやにやと口元を歪めながら、ルチアーノは楽しそうに語る。彼は楽しんでいるようだが、僕にはいい迷惑だった。夜のビルに連れ込まれた挙げ句、ビルの管理者に見つかりそうになったのだ。危うく、心臓が止まるかと思ったほどである。
    「今度は、任務の時は最初に内容を教えてね。ついていくか行かないかは、それから決めるから」
     僕が言うと、彼は黙って手を止める。不満そうに口を尖らせると、いかにも不満といった声色で答えた。
    「嫌だよ。そんなことをしたら、君は絶対についてこないだろ。それじゃあ、協力者になった意味がない」
     語るルチアーノを見ながら、僕は小さくため息をついた。やはり、僕に拒否権というものはないようだ。今後も彼に振り回されることを覚悟するしかなさそうだった。
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