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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。二人がテレビを見ながら話をするだけのテキストです。焼きもちを焼いたり拗ねるルチがいます。

    ##TF主ルチ

    焼きもち 夕方のバラエティ番組は、今日も平和な映像を流していた。僕が平和な番組を選んでいるというのもあるのだけれど、この時間の番組は、必ずほのぼのとしたものが一つはあるのだ。夕食後のゆったりとした時間に、緊迫したニュースなんて見たくない。そう思う一般市民は、僕の他にもいるのだろう。
     今夜僕が見ていたのは、子供たちや動物のドキュメンタリー映像である。ショート映像をまとめたコーナーから始まり、世界各国の番組をまとめた総集編を放送していく。それも子供や動物ばかりで、思わず口角が上がるものばかりだった。
     最初に始まったのは、幼稚園のサプライズイベントを追ったドキュメンタリーだった。映画の販促イベントとして、主役のヒーローが幼稚園を訪問する企画が起こされたのだ。公募から訪問する園を選び、スタッフと教師で計画を進め、当日の準備を整える。いくつかのアクシデントを乗り越えながら、彼らは何とか当日を迎えた。
     何も知らない子供たちは、突然あらわれたヒーローに歓喜した。教師の制止を振り切ってスーツアクターに群がり、あっという間に取り囲んてしまう。スタッフも慣れているようで、にこやかな笑顔で子供たちを迎えている。園内は賑やかな歓声や悲鳴で溢れ、中には泣き出してしまう子や、校庭を駆け回っている子もいた。
    「やっぱり、子供はかわいいね」
     にこにこと笑みを浮かべながら、僕は何気なく言葉を口にした。子供たちの反応は、いつも素直で率直なのだ。嬉しいときは全力で喜ぶし、嫌な時は全力で嫌がる。そんな飾らない態度が、僕は好きだったのだ。
    「君は、こういうのが好きなんだな」
     隣で画面を眺めながら、ルチアーノは気の無い様子で言う。他者に興味を持たない彼は、子供を見てもかわいいとは思わないのだ。興味がない話を続けても仕方ないから、簡単に言葉を返して会話を終える。
    「そうだね。子供の世界は、いつも平和だから」
     次に流れたのは、動物のドキュメンタリー映像だ。ドキュメンタリーと言っても、自然界の厳しさを描いたシリアスなものなどではない。国中から同じ犬種の犬を飼う飼い主が集まった、犬種限定の交流会の様子を映したテレビ番組だった。今回の犬種はコーギーで、ふわふわの食パンのような生き物が群れをなしている。大半は真ん丸なお尻がふりふりしているが、中には尻尾の生えている子もいた。色もいろいろで、よく見る食パンのような色の子もいれば、黒かったり、黒地に茶色の模様が入っている子もいる。丸っこい身体や短い足も相まって、微笑ましい映像だった。
    「やっぱり、動物はかわいいね」
     テレビ画面を眺めながら、僕はまたしても口角を上げる。自分で飼ったことはないけれど、動物というのはかわいいものだ。ルチアーノはこれにも興味がないのか、退屈そうに画面を眺めていた。もふもふの毛玉を一瞥してから、どうでも良さそうな声色で言う。
    「君は、こういうのも好きなんだな」
    「好きだよ。子供と動物はかわいいからね」
     答えると、彼はじっとりとした視線で僕を見つめた。訝しげな雰囲気を纏った、粘つくような視線だった。こう見えても焼き餅焼きな男の子だから、機嫌を損ねてしまったのかもしれない。
    「もちろん、ルチアーノのこともかわいいと思ってるよ」
     慌てて言うと、彼は不満そうに頬を膨らました。冷たい瞳で僕を見上げると、冷めきった声を突きつける。
    「そういうのは求めてないよ」
     僕の返答は、どうやら間違いみたいだった。寂しさを感じていたとしても、繕うような言葉は要らなかったらしい。そのまま視線を前へと逸らすと、退屈そうにテレビを眺め始めた。仕方がないから、機嫌が治るまでは黙っておくことにする。
     次に流れたのは、日本の子供たちへのインタビューだった。今時の小学生の日常をリサーチするという名目で、町行く子供たちに声をかけている。とは言っても、声をかけられるのは高学年の女の子ばかりで、恋愛やおしゃれ事情の話が多かった。
     今時の女の子は、僕たちの世代よりもおしゃれらしい。大人顔負けのデザインで作られた洋服を着て、休みの日にはメイクをするらしい。早い子は既に彼氏がいて、休みの日にはデートをするのだそうだ。それでも、楽しそうに恋愛の話をする姿だけは、僕が子供の頃に見てきた女の子と変わらなかった。
    「今時の子供って、すごくませてるね。大人っぽいなぁ」
     画面を眺めながら呟くと、ルチアーノはじっとりとした視線を向けた。さっきよりも明白な、軽蔑の滲み出ている声だ。氷点下かと思うほどに冷めた視線を向けると、冷えきった声で呟く。
    「君は、そういう趣味なのか? 危ないやつだな」
     どうやら、彼は相当機嫌が悪いらしい。僕をこのような言動でからかうときは、大抵虫の居所が悪いのだ。それもすぐに答えないと、肯定の意味として受け取ってしまう。厄介な言葉だった。
    「違うよ。そうじゃないって……!」
     慌てて答えるが、彼は冷たい瞳のまま僕を見上げた。眉を大きく歪めると、さっきよりも冷たい声を返してくる。
    「本当か? そんなこと言って、本当は鼻の下を伸ばしてるんだろ?」
    「違うって。僕がかわいいと思ってるのも、一番に愛してるのも、ルチアーノだけなんだから」
     必死に答えると、彼は驚いたように頬を染めた。挙動不審な態度で視線を揺らすと、恥ずかしそうに下を向く。口から溢れたのは、さっきまでの覇気を少しも感じさせない声だった。
    「まあ、今日は勘弁してやるよ」
     どうやら、彼の追求は終わったらしい。僕が愛の言葉を告げたことが、彼にとっては予想外だったのだろう。そういえば、最近はあまり『愛してる』という言葉を使っていない気がする。どんなにストレートな愛の言葉だって、ちゃんと口にしないと伝わらないのだ。
    「ルチアーノ」
    「……なんだよ」
     声をかけると、彼は小さな声で返事をした。言葉は返してくれたものの、視線は真っ直ぐにテレビを見つめている。ほんのりと赤くなった横顔に、畳み掛けるように言葉を投げた。
    「愛してるよ」
    「そんな言葉は要らないよ」
     隣から返ってきたのは、やっぱり小さな声だった。スキンシップに慣れない彼には、ストレートな愛の言葉は恥ずかしいのだろう。少し挙動不審な横顔に、言葉にできない愛おしさを感じた。
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