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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。発信器を付けられたTF主くんと、旧サテライトエリアの情報屋を疑うルチの話です。

    ##TF主ルチ

    発信器 旧サテライトエリアには、凄腕の情報屋がいる。雑賀さんという、かつての遊星の協力者だ。普段はマーサハウスでお手伝いをしている彼だが、頼みさえあればいくらでも情報を集めてきてくれる。旧サテライトエリアの住人にとっては、知る人ぞ知る裏家業の持ち主なのだ。
     かく言う僕も、彼の情報を買っている客のひとりだった。僕は裏家業の人間ではないから、教えてもらうのは住人の些細な秘密だけである。誰が何時にどこに出没するとか、何を好んでいるとか、誰と仲がいいかとか、そういう些細なことばかりだ。シティのデュエリストと繋がりの浅い僕にとって、彼らの情報は貴重だった。
     報酬のDPを送ると、彼は手元の端末を確認する。表示された文字に視線を向けると、少し呆れの混じった声で言った。
    「相変わらず、大盤振る舞いだな」
    「秘密を教えてもらうんだから、それくらいは渡さないと」
     声を潜めながら、僕は彼に耳を近づける。大袈裟に隠し事をする必要はないのだが、いつの間にかこうするのがお約束になってしまった。雑賀さんも疑問に思ってはいないようで、こそこそと仕入れた情報を話してくれる。頭の中に叩き込むと、顔を離してお礼を言った。
    「それにしても、わざわざ情報を買う必要はないんじゃないか。お前ぐらいのデュエリストなら、本人に直接聞けるだろう」
     そそくさと情報をメモする僕を見て、雑賀さんは呆れたように言う。確かに、彼の言うことは一理あった。シティに引っ越してきてすぐならまだしも、今の僕は、大会常連の駆け出しアマチュアデュエリストなのである。遊星やルチアーノの人脈を介して、同業者ともある程度の交流は得ていた。
     でも、僕は情報を買うことをやめなかった。雑賀さんやマーサハウスの子供と遊ぶことも、僕にとっては大事な繋がりのひとつだったのだ。それに、雑賀さんの仕事の報酬は、子供たちの生活のために使われているようなのである。そんな話を聞いたら、僕だって協力したくなる。
    「僕がこうしたいんだよ。秘密の情報を買うって、なんかわくわくするでしょ」
     笑みを浮かべながら言うと、雑賀さんも同じように笑みを浮かべた。僕の子供じみた発想くらい、大人の彼にはお見通しなのだろう。隠すようなことではないから、僕も恥ずかしいとは思わない。
    「もっと秘密が知りたいなら、発信器をつけることもできるぞ。気になる相手がいたら教えてくれ」
     僕の方に顔を近づけると、雑賀さんは内緒話をするように囁いた。悪魔の誘いのような言葉に、一瞬だけ動揺してしまう。彼のその提案を、僕は意図的に避けていたのだ。
    「発信器は遠慮しておくよ。他人の居場所を盗み見するなんて、あんまりいい気がしないから」
     慌てて答えると、雑賀さんはにやりと口元を歪めた。僕のチョーカーに視線を向けると、冗談のような軽さで言う。
    「そうか。まあ、お前はつけられる側らしいからな」
     彼が言っているのは、ルチアーノからもらったチョーカーのことだ。僕のためにと用意されたこのチョーカーには、イリアステル製の高性能発信器が仕込まれている。僕がどこで何をしているかは、この機械を通してルチアーノに筒抜けなのである。
    「つけられる側ってわけでもないよ。僕だって、ルチアーノにGPSをプレゼントしてるから。あんまり、持ち歩いてないみたいだけど」
     僕が言うと、雑賀さんは困ったような表情を見せた。僕の話の内容が、彼には反応に困るものだったのだろう。僕にはあまり自覚がないから、よくこういう空気になってしまう。
    「ごめん。こんな話されても、困るだけだよね」
     慌てて言葉を足すと、雑賀さんもすぐに表情を戻した。いつものクールな顔を見せると、いつもと同じ声色で答える。
    「まあ、お前たちがいいならいいんじゃないか」
     目的を終えると、僕はそそくさと家へ向かった。Dホイールを走らせて、ダイダロス・ブリッジを駆け抜ける。爽やかな初夏の風が、僕の身体を流れていった。まだ外は明るいけれど、時刻は夕方の六時を過ぎている。そろそろ、ルチアーノが家に来ている頃だろう。
     全速力でハイウェイを駆け抜けると、すぐに家へと辿り着いた。駐輪場にDホイールを止めると、鍵をあけて室内に入る。案の定、ルチアーノは家に帰っているようだった。誰もいないはずのリビングから、賑やかなテレビの音が聞こえてくる。
    「ただいま。待った?」
     リビングに入ると同時に、僕はルチアーノに声をかけた。ソファに座っていたルチアーノが、ぐるりと首を回してこちらを見る。僕を視界に捉えると、彼はすぐに視線を逸らした。
    「別に、待ってないよ。退屈だからテレビを見てただけだ」
     そんなことを言っているが、本当は待っていたのだろう。彼が腰を下ろしているソファは、右半分が空いていた。鞄を部屋に置きに行くと、ついでに手洗いうがいを済ませてリビングへと戻る。ルチアーノの隣に腰を下ろすと、彼は黙って肩を寄せてきた。
     ルチアーノの小さな手が、僕の太腿に触れる。指先で何度か腿をなぞると、今度は手のひらが乗せられた。ズボンの表面をなぞるように、彼は手のひらを前後に動かす。彼のスキンシップに応えるように、僕もルチアーノの身体に手を伸ばした。
     僕の大きな手のひらは、ルチアーノの太腿を簡単に覆ってしまう。細い身体を慈しむように、優しくズボンの表面を撫でた。
     お互いの温もりを求めるように、僕たちは手のひらを滑らせる。ルチアーノの指先は、少しずつ上へと登ってきた。太腿の内側をなぞられた時には、もっと上まで触れられるんじゃないかとドキドキしてしまう。
     そんな僕の期待を裏切るように、彼の指先は上へ上へと登っていく。上半身に指先を伸ばすと、Tシャツの裾や上着に触れる。上着越しに腕をなぞられた時には、なんだかゾクゾクしてしまった。
     しばらく愛撫を交わしていると、不意にルチアーノが動きを止めた。何かに気がついたように、僕のポケットを探っている。一点に指を当てると、何かをつまみ上げた。
    「なんだ、これ?」
     ルチアーノの指の間に、小さな黒い物体がつままれている。それは豆粒くらいの大きさで、ピンで止められるようになっていた。当たり前だが、僕には心当たりなどない。
    「知らないよ? どこから出てきたの?」
     尋ねると、ルチアーノはそれを僕に差し出す。彼の身体から手を離すと、僕はそれを受け取った。手のひらに乗せてみると、それは本当に小さい。彼が差し出していることもあって、ルチアーノのものではないのだろう。
    「君の上着のポケットにつけられてたんだよ。形状からして、小型の発信器が何かだな」
    「発信器!?」
     ルチアーノの口から飛び出した言葉に、僕はびっくりしてしまった。その単語は、つい一時間前に聞いたばかりだったのだ。僕も何度かセールスされた、雑賀さんの商品のひとつである。もしかしたら、という考えは、一度浮かび上がったら消えてくれなかった。
    「なんだよ。心当たりがあるのか?」
     僕の反応を訝しんだのか、ルチアーノが顔を近づけてくる。ここまで詰め寄られたら、誤魔化すことなどできないだろう。確信は持てなかったが、とりあえず口に出してみる。
    「心当たりってわけじゃないけど、思い出したことがあって。…………さっき、雑賀さんに会ったんだ」
     おずおずと言葉を発すると、ルチアーノはあからさまに眉をしかめる。僕の方に身を乗り出すと、甲高い声で叫んだ。
    「あの情報屋か!」
     今にも飛び出して行きそうな彼を、僕は慌てて押さえつける。ソファの上に座らせると、言い聞かせるように言った。
    「待ってよ! まだ、そうだと決まったわけじゃないんだよ。さっき会ったってだけで、それで……」
    「確信犯だろ!全く、お人好しも大概にしな。君は、人を疑うってことを知らなすぎだ!」
     僕の必死の説得も、彼には伝わらなかったようだ。無理矢理ソファから立ち上がると、僕の手にあった発信器を奪い取る。
    「とりあえず、こいつは壊してやるからな!」
     細い指先でつまみ上げると、思いっきり押し潰した。ルチアーノの馬鹿力に襲われて、発信器は跡形もなく破壊される。ばらばらになった残骸が、ポロポロと地面に零れ落ちていく。その光景は、息がつまるほどに恐ろしかった。
    「全く、僕の所有物を監視しようなんて、怖いもの知らずもいるもんだな」
     大きく鼻を鳴らしてから、ルチアーノは低い声で吐き捨てる。彼が部屋を去っていくまで、僕はその場を動けなかった。僕にはあれが本当に発信器だったのかも分からなければ、持ち主が何者なのかも分からないのだ。勝手に壊したことを責められても、僕には謝ることしかできない。
     とりあえず、明日は雑賀さんに確認をしよう。そう思いながら、僕はソファの上から立ち上がった。
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