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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。ルチはアンドロイドだからエネルギー補給中は死んだように寝るかもしれないという話です

    ##TF主ルチ

    眠る 自分の家にたどり着くと、僕は真っ先にリビングの窓を確認する。ルチアーノが帰っている時には、ここから明かりが漏れているのだ。防犯意識が人間よりも薄い彼は、いつもカーテンを開けっぱなしにする。日暮れの遅い季節であっても、外から光源が見えてしまっていた。
     室内の様子を覗き込むと、僕は中の様子を確かめる。カーテンは全開に開いているが、中に人のいる気配はなかった。今日はまだ、ルチアーノは帰ってきていないらしい。玄関から室内に上がり込むと、リビングの電気をつけてカーテンを閉める。
     買い物の片付けを済ませても、彼は帰ってこなかった。六時をとうに過ぎているから、いつもなら帰っていい頃合いである。暗闇の世界が苦手な彼は、日が暮れると僕の家へと足を運ぶのだ。とはいえ、彼にも用事があるから、遅くなる日も珍しくはなかった。
     ソファに腰を下ろすと、僕はテレビのリモコンを手に取った。ルチアーノが帰ってくるまで、もう少し待ってみることにしたのだ。というのも、スーパーで半額のお刺身を見つけたから、ついつい買ってきてしまったのである。せっかくだから、ルチアーノと二人で食べたかった。
     夕方のニュースを眺めながら、僕はぼんやりと時が過ぎるのを待つ。時計の針が七時を過ぎても、ルチアーノが帰ってくる気配はなかった。彼の帰りが遅くなる時は、大抵が重大な任務に当たっているのである。ぼんやり待っていても仕方がないから、先にご飯を食べることにした。
     どんぶりにお米を盛り付けると、冷蔵庫から取り出したお刺身を盛り付ける。上から醤油を垂らすだけで、それは即席の海鮮丼になった。同じく冷蔵庫から取り出したサラダを並べると、それなりに夕食らしくなった。食前の挨拶を済ませると、お米とお刺身を口に押し込む。
     ルチアーノが帰ってきたのは、八割ほど中身を食べ終えた頃だった。淡い光を伴いながら、彼は僕の前へと姿を現す。着地と共に白い布地を消し去ると、彼はちらりとこちらに視線を向けた。
    「ただいま。帰ったぞ」
    「おかえり。お刺身を買っておいたから、一緒に食べよう」
     僕が言葉を返すと、ルチアーノは疲れた様子でため息をついた。重そうに身体を動かすと、ゆっくりとした足取りで背を向ける。
    「生憎だけど、僕はエネルギーを消耗してるんだ。ちょっと充電させてもらうよ」
     そう言い残すと、廊下の方へと歩いていった。その先にあるのは、ベッドが設置された僕の自室である。彼の言う充電というのは、文字通りエネルギーの補給なのだ。未来の技術で作られた彼の身体は、スリープモードに入ることで、モーメントから動力を補充するらしい。
     リビングの中で一人になると、僕は再びどんぶりの中身を口に運んだ。こうなったら、ルチアーノはしばらく起きてこないのだ。先に食事を済ませて、お風呂に入っておいた方がいい。
     食べ終わった食器を片付けると、入浴の準備に取りかかった。音を立てないように自室に入ると、そっとタンスの引き出しを開ける。下着と寝間着を取り出すと、静かに部屋の外へと出た。服を脱いで浴室に入ると、手早く身体を洗って湯船に浸かる。
     身体の芯まで温まると、僕はゆっくりお風呂から出た。身体を拭いて寝間着を纏うと、一度リビングに寄って水分補給をする。喉を潤わせると、今度は自分の部屋へと向かった。
     これだけ時間が経ったのだから、さすがのルチアーノも起きているだろう。彼は優秀なアンドロイドだというから、人間のような長い眠りは要らないはずだ。例え起きていなくても、僕が呼んだら夕食くらいは取ってくれるだろう。せっかくのお刺身なのだから、新鮮なうちに食べてもらいたい。
     部屋に足を踏み入れると、僕は電灯のスイッチを押した。眩いくらいの蛍光灯の光が、ベッドの上を照らし出す。ルチアーノは布団の上に横たわって、きつく瞳を閉じていた。ベッドの隅に歩み寄ると、耳元に向かって声をかける。
    「ルチアーノ」
     しばらく返事を待ってみるが、彼は身動きを取らなかった。ベッドの上に横たわったまま、すうすうと寝息を立てている。囁き声には、スリープモードを解除するほどの力はなかったようだ。気を取り直して、もう少し大きな声で話しかける。
    「ルチアーノ。そろそろ起きてよ。お刺身があるんだよ」
     再び声をかけるが、ルチアーノはぴくりとも動かなかった。こうなってくると、さすがの僕も不安になる。仮にも、彼の身体はアンドロイドなのだ。呼びかけが聞こえないわけではないだろう。
    「ルチアーノ? どうしたの? 起きてよ」
     さっきよりも大きな声で言いながら、僕は彼の身体を揺らす。布団がごそごそと音を立てるが、ルチアーノは身動きを取らなかった。胸の中を、漠然とした不安が満たし始める。
    「ルチアーノ? ねえ、ルチアーノ!」
     耳元で叫びながら、僕は彼の身体を揺らした。布団が衣擦れの音を立て、少年の身体が左右に揺れる。そこまでしているというのに、彼は少しも動く気配がない。心配になって口元に手を近づけると、微かな風圧を感じた。
     呼吸が確認できたことで、僕の心は少しの落ち着きを取り戻す。しかし、その安心感は、すぐに別の不安に変わった。ルチアーノの身体は、人間とは違うシステムで動いているのだ。呼吸が確認できたからと言って、生きているとは限らないだろう。心臓が大きく音を立て、僕の身体を冷やしていく。
    「ルチアーノ、もしかして…………死んでるの?」
     青ざめながら言うと、目の前でごそごそと音が聞こえた。驚いて視線を向けると、大きく目を開いたルチアーノの顔が見える。彼はこちらを睨み付けると、鋭い声で叫んだ。
    「死んでねーよ! 勝手に殺すな!」
    「ルチアーノ! よかった……!」
     安心が胸の中を満たして、僕は大きく息をつく。あまりにも動きが無かったから、本当に死んじゃったんじゃないかと思ったのだ。鼻の頭が熱くなり、視界が僅かに滲み始める。泣いていることを悟られないように、僕はそっと顔を伏せた。
    「全く、煩いやつだな。エネルギー補給くらい、静かにさせてくれてもいいじゃないか」
     ぶつぶつと言葉を吐きながら、ルチアーノは再び瞳を閉じる。そんな彼の姿を眺めながら、僕は呼吸を整えていた。彼は寝たふりをしていただけらしいが、僕は本気で心配していたのである。本当に、心臓に悪い行動だった。
    「だって、本当に心配したんだよ。あんまりにも反応がないから、機能を停止しちゃったんじゃないかと思って……」
     震える声で返すと、彼はちらりとこちらに視線を向ける。呆れたように息をつくと、小さな声で言った。
    「言っておくけど、僕はそんなことで機能停止したりはしないよ。僕が動きを止めるのは、神の悲願が叶ったときだけだ」
     それっきり、ルチアーノは何も話さなかった。ただ静かに目を閉じて、小さな呼吸を繰り返している。僕も特に用事はなかったから、彼と一緒に眠ることにした。たまには、いつもより早く眠るのもいいだろう。心を乱したせいか、僕の身体は緩やかな眠気を感じていたのだ。
     布団の隅を持ち上げると、ルチアーノの隣に身体を横たえる。布団の中は、既に彼の体温で暖かくなっていた。背中に触れる温もりを感じながら、僕はそっと目を閉じた。
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