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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。TF主くんがルチに連れられてカップル向けカフェに行く話。無駄に長いですがイチャついてるだけです。

    ##TF主ルチ

    カップルカフェ「明日は、君にお願いを聞いてもらおうかな」
     僕がベッドの隅に腰を下ろすと、ルチアーノは楽しそうにそう言った。時刻は夜の九時を過ぎていて、ちょうど入浴を済ませたばかりである。突然の言葉に、僕は状況が理解できなかった。疑問符をいくつも浮かべながら、窺うような視線で彼を見る。
    「え?」
    「お願いだよ。この前約束してただろ。僕が君のお願いを聞く代わりに、君が僕のお願いを聞くって」
    「…………ああ、そういえば、そうだったね」
     彼に諭されて、僕はようやく思い出した。少し前に、僕たちはそんな約束をしていたのだ。子供を対象にしたカード配布イベントの特典をもらうために、僕はルチアーノに合言葉を言うように頼んだ。渋る彼を説得するために、自分もお願いを聞くことを提案したのだ。
    「忘れたとは言わせねーぞ。お前のせいで、僕は恥ずかしい思いをしたんだ。君にも恥ずかしい思いをしてもらわないと、僕の気がすまないだろ」
     恥ずかしそうに頬を膨らませながら、ルチアーノは僕を睨み付ける。彼には申し訳ないが、そんなことはすっかり忘れていた。僕にとってあの約束は、カードをもらってきてもらうための口から出任せだったのだ。彼が何も言ってこなかった時点で、この話は流れたと思っていた。
    「恥ずかしい思いって、いったい何を考えてるの? 危ないことや良識に反することだったら、僕は絶対に聞かないからね」
     含みのあるルチアーノの言葉を受けて、僕は事前に予防線を張っておく。彼には少し悪いところがあるから、放っておくと犯罪に触れるようなことを言い出すのだ。僕は真っ当なお願いをしているのだから、犯罪に協力する必要はどこにもない。
    「安心しなよ。今度のお願いは、法に触れるようなことではないからさ。まあ、君にとっては嫌なことだと思うけどな」
     にやにやと笑みを浮かべながら、ルチアーノは挑発的な言葉を吐く。『今度の』という言い回しをしているところに、含みがあるような気がした。場合によっては、法に触れるようなこともお願いするつもりなのだろう。肯定する気にはなれなくて、そこには触れないように話を進める。
    「いったい、何をさせるつもりなの? そんなこと言って、本当は悪いことをさせるつもりだったりしない?」
     疑いの視線を向けると、彼は不満そうに唇を尖らせた。小さく鼻を鳴らすと、わざとらしい態度で拗ねて見せる。
    「その顔、僕を信用してないな。恋人を疑うなんて、人としてどうかしてるぜ」
     そうは言われても、そう簡単に信用することはできない。彼が僕のことを騙すのは、僕らにとって日常茶飯事だったのだ。それに、人としてなんて言い回しをしているけど、彼は人ではないのだ。いつもの軽口だとしか思えない。
     僕が黙っていると、彼も表情を崩した。じっとりとした目で僕を見上げると、退屈そうに息を吐く。
    「なんだよ。文句でもあるのか?」
    「いや、疑わしいなって思って」
     素直に告げると、彼は諦めたようだった。再びため息を付くと、拗ねた声のまま言葉を続ける。
    「明日のお願いは、法に触れるようなことじゃないよ。そんなことを頼んでも、君は聞いてくれないだろ」
     意外な言葉が飛び出して、僕はびっくりしてしまった。彼は、思ったよりも僕のことを考えてくれているのだ。任務が絡むとそうはいかないようだが、ただの口約束の時には、僕の嫌がるようなことはしない。少なくとも、そのあたりには彼なりのルールがあるらしい。
    「そこまで言うなら、信じるよ。ルチアーノは、意外と真面目だからね」
    「意外とってなんだよ。意外とって。上から目線で腹立つなぁ」
     率直な言葉を告げると、彼も率直な言葉を返してくる。演技がかった口調に思わず吹き出してしまうと、彼も小さく笑い声を上げた。

     翌日、僕たちはシティ繁華街を歩いていた。繁華街と言っても、いつもの大通りではなく、少し路地を曲がった裏通りだ。デパートやショッピングビルから離れたこの辺りには、小さなテナントビルが数多く並んでいる。中には一風変わったコンセプトの建物もあるから、所謂サブカルメインの通りなのだろう。
     どんどん狭くなっていく通りを抜けると、ルチアーノは不意に足を止めた。目の前には、年季の入った商業ビルが建ち並んでいる。そのうちのひとつに視線を向けると、彼は僕の方を振り返った。
    「ここだよ」
     僕の手を引っ張ると、野晒しになっている階段を登る。二階に繋がる扉は、思ったよりも新しかった。このお店が商売を始める前に、内装だけリフォームしたのだろう。扉を開くと、中からは賑やかな音楽が聞こえてきた。
     室内に視線を向けて、僕は思わず動きを止めてしまう。そこに広がっている世界は、外観からは全く想像できないものだったのだ。ピンクと赤に彩られた内装の中に、これまたピンクと赤の机やソファが並べられている。室内を覆う壁紙は、ハートやキューピッドを象った柄で埋まっていた。
    「恋人たちの夢の国、カップルカフェへようこそ!」
     僕たちの前に現れた店員さんが、可憐な声で歓迎の言葉を告げる。マニュアルで決まっているであろうその言葉も、僕には理解ができなかった。いったい、ここは何のお店なのだろう。カップルカフェという言葉だけじゃ、何一つ把握できなかった。
     ルチアーノに手を引かれて、僕たちは案内された席へと向かう。無理矢理連れ込まれる僕を見て、店員さんが微笑ましげに笑いかけた。ボリュームのあるスカートの裾を揺らして、僕たちに向かって一礼をする。またもや作り物めいた声を発すると、僕たちの前から去って行った。
    「それでは、楽しい時間をお過ごしください」
     店員さんの姿が見えなくなると、僕はルチアーノに視線を向けた。服の裾を引っ張ると、振り向いた彼に疑問を投げかける。
    「ねえ、ここは何のお店なの?」
     何が面白いのか、ルチアーノはにやにやと笑みを浮かべている。困惑する僕の姿を見て、ついには甲高い笑い声を浮かべた。
    「ここは、カップルカフェとか言うコンセプトカフェだよ。雑誌の情報によると、恋のキューピッドが集う空間をテーマにしてるらしいな。恋人や恋人一歩手前の男女がターゲットらしいぜ」
     一息に説明すると、ルチアーノは再びくすくすと笑う。楽しそうな彼とは裏腹に、僕は頭が痛くなっていた。いったい、彼は何を目的に、こんな恥ずかしい場所に連れ込んだのだろうか。そもそも、どういう経緯でこんな場所を知ったのだろう。
    「こんなとこ、どこで知ったの?」
     なんとか質問を投げると、彼は意地悪そうに眉毛を動かした。机の下で足を組むと、少し誇らしげな様子で言う。
    「君の買ってきた雑誌だよ。シティの近況紹介のコーナーに、小さく記事が載ってたんだ。なかなかに面白い場所だと思わないか?」
    「面白くないよ! こういうところは、男女のカップルが来るものなんだから! 男二人で来てたら、場違いすぎて浮いちゃうよ!」
     畳み掛けるようにからかいの言葉を投げられ、僕は一生懸命に反論する。雑誌にこんな場所が載っていたなんて、全然気がついていなかった。僕はデュエルに関する記事が目的なのであって、シティのニュースはあまり見ていないのだ。暇潰しをしているルチアーノとは、そもそもの目的が違うのだろう。
    「一緒にここに来ることが、ルチアーノのお願いだったの? 確かに、何も教えずに来た方が、僕はびっくりするもんね」
     呼吸を整えると、僕は小さな声で言った。拗ねたような言葉になってしまったのは、事前に教えてもらえなかったことを恨んでいるからだ。店内は男女ペアか女友達ばかりで、男二人の客は僕たちしかいない。その上、僕はデュエル用の普段着を着ているのだ。かわいいに埋め尽くされた空間の中では、恐ろしいほどに浮いていた。
    「何を言ってるんだよ。僕のお願いが、こんなことで済むと思ってるのか? 君には、もっと辱しめを受けてもらわないとな」
     声色に笑みを含みながら、ルチアーノはそんなことを言う。不穏な響きを感じて、思わず視線を向けてしまった。案の定、僕の瞳に映った彼の顔は、意地悪な笑みを浮かべている。正面に置かれたメニューに手を伸ばすと、そこにかかれていた写真を指差した。
    「君には、これを頼んでもらうんだよ。指を差すだけじゃなくて、ちゃんと声に出して読み上げるんだ。それが、僕からのお願いだよ」
     ルチアーノの指差した先を見て、僕は再び言葉を失う。そこにかかれていたメニューは、いかにもなカップル向けだったのだ。メインディッシュのオムライスは二人分を大皿に盛られていて、玉子には相合傘が書かれている。デザートのパフェはイチゴベースのピンク色で、装飾はハートのカラースプレーやチョコレートだ。ピンク色のグラスに注がれたジュースには、フィクションでしか見たことのないようなハートのストローが差し込まれている。極めつけに、そのメニューの名前は『ラブラブカップルセット』だったのだ。
    「これを頼むの? 僕が?」
     思わず大声を上げる僕を見て、ルチアーノは楽しそうに笑った。甲高い声で空気を揺らしながら、僕にメニューを押し付ける。
    「そうだよ。君は、僕に恥ずかしいことを言わせたんだ。君にも恥ずかしいことを言ってもらわないとな」
     からかうような声を上げているが、ルチアーノの瞳は本気だった。彼は、本気で僕に辱しめを受けさせるつもりらしい。彼に恥ずかしい思いをさせた手前、嫌だと断ることはできない。仕方なく、僕は呼び出しボタンを押した。
    「ご注文はお決まりですか?」
     すぐに駆けつけた店員さんが、僕たちに視線を向ける。覚悟を決めると、僕はメニューに視線を下ろした。
    「この…………ラブラブカップルセットをお願いします」
     単語ひとつひとつの持つ恥ずかしさに、発する声は小さくなってしまう。店員さんは慣れているのか、恥ずかしげもなく復唱した。
    「ラブラブカップルセットをおひとつですね。他にご注文はお決まりですか?」
    「以上で、大丈夫です」
     メニューを閉じると、店員さんは手元の端末に視線を向ける。再び僕たちの方を向くと、周囲に通る声を発した。
    「では、ご注文を復唱します。ラブラブカップルセットをおひとつでお間違えありませんか?」
    「はい……」
     大きな声で復唱され、僕は顔が真っ赤になってしまう。隣に座るルチアーノは、にやにやと笑いながら僕を見ていた。恥ずかしくて仕方ないが、これも仕方ない。元はと言えば、僕が言い出したお願いのせいなのだから。
    「うう……。恥ずかしかった」
    「これで、君にも分かっただろ。恥ずかしいことを言わされる苦痛がさ」
     にやにやと笑いながら、ルチアーノは僕を見上げる。表情は笑っているが、瞳は暗く輝いていた。もしかしたら、この前のお願いが相当嫌だったのかもしれない。今さらながら、自分の要求に対して反省した。
    「…………ごめん。反省してる」
    「分かればいいんだよ。分かれば」
     そんな会話を繰り広げていると、店員さんが近づいてきた。赤いハートを象ったお盆の上に、例のジュースを乗せている。僕たちの前へと歩み寄ると、机の上にジュースを置いた。
    「お待たせいたしました。ラブラブカップルドリンクです」
     ホールに響き渡るような声で、女性は商品名を告げる。口にするのも恥ずかしい単語の羅列だが、彼女は少しも照れていなかった。毎日のように口にしているのだから、耐性も付くのだろう。対して、僕は頬が熱くなってしまった。
    「ほら、ジュースが届いたぜ。氷が溶ける前に飲みなよ」
     女性がキッチンに消えるのを見送ってから、ルチアーノは僕にジュースを近づけた。口元がにやにやと笑っているのは、僕をからかっているからだろう。余裕綽々な表情に腹が立って、こっちからもからかってみたくなった。
    「ねえ、これは、ルチアーノも飲むんだよね?」
     僕の言葉を聞いて、ルチアーノは大きく目を見開く。ぽかんと口を開けると、すぐに強気な表情を繕った。
    「なんでだよ。君は甘いものが好きなんだから、君一人で食べたらいいじゃないか」
     逃げるつもりらしいが、僕に聞き入れるつもりなどなかった。ストローの半分を差し出すと、ルチアーノの手首を掴む。
    「どうして? これは、二人で食べるメニューなんでしょう? 一緒に飲みたくて連れてきたんじゃないの?」
     畳み掛けるように反撃の言葉を口にすると、ルチアーノは不満そうに口を尖らせた。ほんのりと頬を赤く染めると、わざとらしく視線を逸らす。
    「嫌だよ。男同士でこんなものを飲むなんて、店内の笑い者だ」
     予想通りの言葉だった。こんなことを言われたら、もっとからかってやりたくなる。わざとらしく視線を伏せると、悲しげに聞こえるように声を上げた。
    「そっか、ルチアーノは、僕とジュースを飲みたくないんだね。カップルだと思ってたのは、僕だけだったんだ」
     小さな声で言うと、さりげなくルチアーノに視線を向ける。彼にも僕の企みは分かっているのか、むすっとした顔のままだった。ちらりと僕に視線を向けると、小さな声で反論する。
    「そんなこと言っても、僕は飲まないぞ」
     それでも動かない僕を見て、彼は少し不安に思ったようだった。ちらりとこちらに視線を向けると、しぶしぶと言った態度で了承する。
    「分かったよ。少しだけだからな」
     その言葉を、僕は聞き逃さなかった。伏せていた顔を上げると、ストローの先を彼に差し出す。
    「いいんだね。じゃあ、一緒に飲もうか」
    「うう……。これは君の辱しめなのに、どうして僕が……」
     不満そうに呟きながらも、ルチアーノはストローの先端を咥える。彼に応じるように、僕も反対側のストローを咥えた。
     先端を吸い上げると、甘い液体が口の中に流れてくる。中に入っているのは、普通のサイダーみたいだった。一口分くらいを口に含むと、ルチアーノはすぐに身体を離す。何かと思っていると、向こうから店員さんが近づいていた。
    「お待たせいたしました。相合傘オムライスでございます。ケチャップで名前を書いてからお召し上がりください」
     机の大半を覆い尽くすように、大皿のオムライスが差し出される。写真通り、玉子には相合傘が書かれていて、お皿の端にはパウチのケチャップが置かれている。ちらりとオムライスに視線を向けると、僕たちは目を合わせた
    「名前、書く?」
     問いかけると、彼は恥ずかしそうに視線を伏せた。少し前までの覇気が嘘のように、小さな声で答えてきた。
    「別に、これはいいだろ」
     少し意地悪な気持ちになって、僕は付属のケチャップを手に取る。小さく口を開けると、相合傘に名前を書き始めた。
    「おい、なに書いてんだよ!」
     慌てた様子のルチアーノが、僕の手からケチャップを奪い取る。口を大きく開くと、相合傘を潰すように捻り出した。
    「ああっ! せっかく書いたのに!」
     声を上げて止めようとしても、ルチアーノは一切聞き入れない。スプーンを手に取ると、ぐちゃぐちゃとケチャップを掻き回した。オムライスの上の相合傘は、均されてただのケチャップになってしまう。僕が口を尖らせていると、ルチアーノは取り皿を差し出した。
    「ほら、変なことしてないで、冷める前に食べるぞ」
     無理矢理スプーンを押し付けられて、僕もしぶしぶオムライスに手を伸ばす。半分で切り分けると、それぞれの取り皿に乗せていった。スプーンを前に伸ばすと、玉子を切り分けて口へと運ぶ。コンセプトカフェのオムライスは、可もなく不可もない味だった。
     少し気まずい空気のまま、僕たちは淡々とスプーンを動かす。食べ終わりそうな頃になると、再び店員さんが近づいてきた。お盆の上に乗っているのは、ピンク一色の豪華なパフェだ。机の上に置くと、彼女は淡々とした声で言った。
    「お待たせいたしました。ラブラブカップルパフェです」
     見るからに恥ずかしいパフェを出されても、僕はもう動揺しなかった。さっきまでのメニューを見せられたことで、僕にも耐性ができていたのだ。パフェの器を引き寄せると、一番上にあるチョコレートを指差す。
    「このチョコレート、僕がもらってもいい?」
    「好きにしな」
     了承をもらってから、僕は赤いハートに手を伸ばす。五百円玉くらいの大きさのチョコレートは、蕩けるように甘かった。周りに付いているクリームも、超が付くくらいの激甘だ。ルチアーノが食べたがらなかったから、半分以上を僕が食べることになった。
    「なんだよ。これは君の辱しめだったはずなのに、僕まで恥ずかしい思いをしてるじゃないか」
     パフェの容器が空になると、ルチアーノは小さな声で呟いた。不満そうに頬を染めながら、長いスプーンを容器に突き刺す。先端が底に当たって、カランと乾いた音が響いた。
    「カップルカフェだもん。当然、ルチアーノも食べることになるでしょう。分かってて来たんじゃなかったの?」
     僕が問いかけると、彼は怒ったように頬を膨らませる。
    「僕は、君にこのセットを頼ませるだけで良かったんだよ。カップルのふりをするつもりはなかったんだ」
    「カップルのふりじゃないでしょ。僕たちは、本当のカップルなんだから。イチャイチャしてても恥ずかしくないよ」
    「恥ずかしいだろ。人前でカップルストローを吸うなんて、馬鹿なカップルのやることだ!」
     頬を赤く染めたまま、ルチアーノは大きな声で吐き捨てる。周囲に声が響き渡って、他のカップルがおどろいたように視線を向けた。余計に恥ずかしくなったのか、ルチアーノは黙って視線を下げる。
    「とにかく、君が仕返しをしてくるなら、これはお願いとしてカウントしないからな。君には、もっと恥ずかしいことをしてもらうよ」
    「いいよ。それでルチアーノの気が済むなら、いくらでも聞いて上げる」
     ルチアーノの宣戦布告に、僕は余裕の笑みで返した。彼の要求が辱しめだけなら、僕はいくらでも受け入れられる。一緒に暮らしているのだから、恥ずかしいところを見られるのは日常茶飯事なのだ。
    「覚悟してろよ。後悔するほどに辱しめてやるからな」
     威嚇するように吐き捨てると、ルチアーノは勢い良く席を立つ。左手で伝票を掴み取ると、足音を立てながらレジへと向かった。レジへと伝票を手渡すと、僕に威圧するような視線を向ける。こういうお店での支払いは、全て僕の役目なのだ。子供の姿をしたルチアーノが会計をしていたら、周囲から白い目で見られてしまう。
     外に出ると、僕たちは元来た道を戻るように大通りへと向かう。不満げなルチアーノとは対照的に、僕の足取りは軽かった。曲がりなりにも人前でカップルらしいやり取りができたのだ。交際関係になってからずいぶん経つが、こんな体験ができるのは珍しい。
     今度は、どこに連れていってくれるのだろうか。辱しめを受けると分かっていても、少しわくわくしてしまった。
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