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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。私の書くTF主ルチが常に手を繋いでいる理由ときっかけの話です。

    ##TF主ルチ

    はぐれる シティ中央の繁華街は、今日もたくさんの人で賑わっていた。歩道は行き交う人々で埋め尽くされ、カラフルな頭が揺らいでいる。それもそのはず、今日は、よく晴れた日曜日の午後なのだ。常に人が溢れる町中でも、もっとも混み合う時間帯である。
     そんな人混みを掻き分けながら、僕たちは繁華街の奥地へと向かっていた。ショッピング施設の上階にあるデュエルコートで、小規模なデュエル大会が開催されるのである。以前からデュエルを重ねてきたと言っても、僕とルチアーノは正式なパートナーになってから日が浅い。公式大会に出る前に、何度か練習をしようと思ったのだ。
     溢れ返る人をものともせずに、ルチアーノは前へ前へと歩いていく。ゆらゆらと揺れる赤毛の後ろ姿を、僕は必死の思いで追いかけた。通行人は不規則に歩道を横切り、何度も僕の足を止めてくる。ぶつからないようにかわしているうちに、ルチアーノの姿は見えなくなってしまった。
    「ルチアーノ?」
     周囲に聞こえるほどの声で名前を呼びながら、僕は人混みを掻き分ける。周囲をキョロキョロ見渡して見るが、それらしき姿は見えなかった。なんとか信号のある交差点に出ると、今度は左右を確認する。僕たちの目的地に当たるショッピング施設は、確か右の通りにあるはずだった。
     背伸びして遠くを眺めようとするが、視界に赤い頭部は見えない。それっぽい色を見かけたと思っても、全て見知らぬ他人だった。はぐれてしまったことを自覚して、背中から冷や汗が流れ始める。大通りではぐれてしまうなんて、ルチアーノの最も嫌なことだろう。
    「ルチアーノ!」
     周囲の人目も気にせずに、僕は大きな声で名前を呼ぶ。周囲の人々に頭を下げながら、人混みを掻き分けて先へと進んだ。前後左右を見渡してみても、彼の姿はどこにも見えない。消えてしまったんじゃないかと思って、心臓がドクドクと音を立てた。
     焦りに身を任せたまま、僕はぐるぐると首を動かす。心配で心配で、心臓が落ち着かなかった。とはいっても、その身の無事を危惧しているわけでも、再会できないと思っているわけでもない。ただ、僕からルチアーノへは、一切の連絡手段がないのである。
     しばらく周辺を彷徨った後に、僕はひとつの案を思い付いた。ルチアーノに僕を探す能力があるのなら、向こうから探してもらえばいいのである。目的のショッピング施設へと歩を進めると入り口の前に佇んで周囲を眺める。目論み通り、少しの間を置いてから、ルチアーノがこちらへと走ってきた。
    「○○○!」
     大きな声で呼び掛けると、僕の前で足を止める。真っ直ぐにこちらを見つめる瞳は、怒りで吊り上がっていた。僕に顔を近づけると、恐ろしい形相で睨み付ける。
    「いったいどこに行ってたんだよ!」
     地面を震わせるかのような、力強い声だった。彼が本気で怒っていることが、痛いくらいに伝わってくる。きっと、彼のことだから、本気で心配していたのだろう。人間という存在の脆さは、その身に刻み込まれているはずだ。
    「ごめんね。上手く人混みをかわせなくて、気づいたら一人になっちゃってたんだ。今日は、人が多いから」
     言い訳のようになりながら説明すると、ルチアーノは唇を尖らせる。冷たい怒りに燃えた瞳に、背筋がゾクリとした。
    「なんだよ。僕のせいだって言うのか? 君が勝手にいなくなったのに?」
    「違うよ。違うんだけど、ルチアーノについていけなかったんだ。僕は、そんなに器用じゃないから……」
    「やっぱり僕のせいにしてるじゃないか。こんなに心配をかけたのに、全く反省してないんだな」
     慌てて言葉を重ねると、彼はさらに目を吊り上げる。相当怒っているのか、頬が真っ赤に染まっていた。どうやら、余計に地雷を踏んでしまったらしい。慌てて取り繕うと、必死の思いで言葉を探した。
    「違うって……!」
     同じようなやり取りを繰り返した後に、なんとかルチアーノの機嫌を取り戻す。これから大会があるのだから、ここで仲間割れする訳にもいかないのだ。彼もそこだけは分かっているのか、おとなしく怒りを収めてくれた。
    「分かったよ。次からは気を付けな」
     ぶっきらぼうに言い放つと、ルチアーノはそっぽをむく。胸を撫で下ろしながら、僕たちは建物の上階へと向かった。エレベーターで一気に八階に上がると、目の前の受付でエントリーを済ませる。デッキの確認を済ませる頃には、ルチアーノの機嫌も治っていた。
     肝心の大会は、何も心配が要らなかった。僕たちは次々に相手を倒し、あっという間に優勝の舞台へと躍り出たのだ。仮にも秘密結社のメンバーだから、ルチアーノの腕前は超人並みである。僕もデュエルの腕には覚えがあるから、彼の戦術にもついていけるのだ。
    「まあ、こんなもんだな」
     表彰状を受け取ると、ルチアーノは誇らしげに胸を張る。自分の力を示せることが、嬉しくて仕方ないらしかった。彼にはいつも助けられているから、僕も正面からお礼を言う。
    「ありがとう。ルチアーノが一緒に来てくれて、心強かったよ」
    「そうだろう。もっと誉めてくれてもいいんだぜ」
     誇らしげに笑みを浮かべたまま、ルチアーノは僕に擦り寄る。一時はどうなるかと思ったが、無事に機嫌が治ったようだ。参加賞と賞状を手に、エレベーターを降りて外へと向かう。
     建物を出ると、不意にルチアーノに手を握られた。手首をがっしりと掴むと、僕を引っ張るように町の中を歩いていく。馬鹿力に引き摺られて、危うく体勢を崩しそうになった。なんとか持ち直すと、慌てて彼の後を追う。
    「どうしたの? 急に腕なんか掴んで」
     尋ねる声は、少し上ずってしまった。いつものルチアーノなら、こんなことは絶対にしないのだ。指先を触れることだって、恥ずかしいと避けてしまうだろう。今までの彼からしたら、天地がひっくり返りそうな行動だった。
    「君が迷子になるから、捕まえておくんだよ。こうすれば、勝手にいなくなったりできないだろ」
     真っ直ぐに前を見つめたまま、ルチアーノはぶっきらぼうに言う。頬が赤く染まっているのは、羞恥心を感じているからだろう。このような口実がなかったら、彼は絶対に手なんか繋いでくれない。今でさえ、手を繋いでいるというよりは、手首を捕まれているという感じなのだ。
    「そうだね。ありがとう」
     小さな声でお礼を言うと、僕は再び前へと視線を向ける。こうして手を繋いで歩いていると、まるでデートか何かのようだ。あまり実感は持てないけれど、僕たちは相思相愛の仲になったのである。少なくとも、人前で手首を掴んでもいいと思うほどには、僕に心を許してくれたのだ。
    「なんか、こうしてると恋人同士みたいだね。手を繋いで歩くの、ずっと前から夢だったんだ」
     雰囲気に流されて、僕はそんなことを呟いてしまう。斜め前を歩いているルチアーノが、冷たい瞳で僕を見てきた。
    「まさか、手を繋いで歩くために、わざと迷子になったとかじゃないよな?」
    「違うよ!」
     あらぬ疑いをかけられて、僕は慌てて返事をする。まさか、僕に限って、そんなことをするはずがないのだ。僕はルチアーノを愛しているし、彼の幸せを願っている。彼が嫌がるようなことは、絶対にするはずがないのだ。
    「本当か? 怪しいなぁ」
     ルチアーノの冷たい声を聞きながら、僕は内心でヒヤヒヤする。僕という人間は、そこまで信用がないのだろうか。確かに、最近は遠慮がなくなってきてるけど、それでも気は遣っているのだ。
    「本当だって。信じてよ」
     懇願するように言いながら、僕はルチアーノを追いかけるように歩を進める。やがては、僕たちはもっと距離を縮め、手を繋いで町中を歩くようになるのだが、それはもっと先の話だ。
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