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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。夜中に目が覚めたルチがTF主くんの寝顔を見たり夜景を見たりする話。

    ##TF主ルチ

    眠れない夜 目が覚めた時、自分がどこにいるのか分からなかった。ぐるりと周囲を見渡して、そこがどこかを思い出す。デュエルの大会に出るために、青年と二人でビジネスホテルに泊まっていたのだ。大きな窓とカーテンの隙間から、見知らぬ街の灯りが漏れ出している。
     隣に眠る青年を起こさないように、僕はゆっくりとした動きで寝返りを打った。暗闇の中で時計を確認すると、時刻は二時を過ぎたところだ。僕たちが眠りについてから、まだ二時間も経っていないらしい。他の宿泊客も寝入っているようで、声は聞こえてこなかった。
     大きく息をつくと、僕は再び目を閉じる。明日は大会の本番だから、ここは眠っておきたかったのだ。人間は睡眠が必要不可欠だから、彼を起こすことはしたくない。彼は目覚めが悪いから、朝に起こすのが大変になるのだ。
     それなのに、僕の身体は、少しも眠くなってくれなかった。暗闇に身体を横たえたまま、僕は何度か身じろぎをする。エネルギーは足りていないはずなのに、身体がスリープモードに移行しないのだ。下手にスキンシップを取ってしまったせいで、機能に影響が出ているのかもしれない。
     しばらく横になった後に、僕は布団から這い出した。このまま横になっていても、眠れないものは眠れないのだ。意味もなく横になっているよりも、動いて時間を潰した方がいい。音を立てないようにその場に起き上がると、青年の顔に視線を向けた。
     隣に眠っている青年は、少しも身動きを取らなかった。布団の中に顔半分を埋めて、すやすやと寝息を立てている。見知らぬ土地に来ているというのに、相変わらずの寝坊助である。呆れると同時に、少しだけ羨ましさを感じた。
     青年の身体にかけられた布団が、呼吸に合わせて僅かに上下する。こうして寝息を立てていると、その姿は幼い子供のようだ。思わず手を伸ばしそうになって、直前で慌てて引っ込める。いくら寝付きのいい人間だと言っても、油断していたら目を覚ますかもしれない。僕が寝付けずにいることを知ったら、彼は心配するだろう。
     床に足をつけると、音を立てないように反対側に向かう。身体を屈めると、青年の顔を覗き込んだ。暗がりの中に映し出される寝顔は、やはり子供のように穏やかである。こうして寝顔を見ていると、どちらが年上か判らないくらいだ。
     この男が、さっきまで僕の身体に触れていたのだ。執拗に僕の身体を撫で回し、何度も柔らかいところを貫いた。体内を巡っていた甘い痺れも、まだ微かに残っている。今は子供のように眠っている彼も、つい数時間前は男の顔をしていたわけだ。ふとそんなことを考えて、僕は奇妙な感覚に襲われる。
     変な意識をしてしまうと、顔を合わせることが恥ずかしくなった。彼の前から離れると、足音を立てないように室内を歩く。下手に動き回ったことで、余計に目が覚めてしまったようだ。当てもなく室内を横切りながら、灯りの漏れるカーテンに視線を向ける。
     窓の前へ歩み寄ると、僕はカーテンに手をかけた。軽く持ち上げてみると、眩しい光が差し込んでくる。繁華街の真ん中に建っているから、窓の外は光で溢れているらしい。思いきってカーテンを開けると、眩い光が飛び込んできた。
     高層階から見下ろす夜の街は、僕にとっては見慣れた光景だった。人々を操る任務の合間に、僕は何度も屋上へと上がった。上空から人々の営みを眺めることは、神の代行者に刻まれた本能である。上から見下ろす地上は賑やかで、人の光に溢れていて、少し滅びの気配がするのだ。その儚い光景を見ていると、僕は得体の知れない恐怖に襲われる。
     僕の目の前に広がる光景は、ネオドミノシティとほとんど変わらなかった。ビルに取り付けられたネオン看板と、人のいる室内の灯りが、窓ガラスに反射して煌めいている。建物の屋上には店舗名を象った看板が輝き、遥か先まで周囲を照らしていた。僕たちのいる一室は電光の一部となり、背景の中に埋もれていく。まるで、光の海の中に沈んでいるかのようだった。
    「ルチアーノ」
     目の前の光を眺めていると、背後から声が聞こえてきた。予想外の事態に驚いて、肩が小さく震えてしまう。動揺を気づかれないように振り向くと、青年がベッドの上で身体を起こしていた。どうやら、僕の立てる物音で目が覚めたらしい。
    「眠れないの?」
     真っ直ぐに視線を向けると、彼は控えめな声でそう尋ねた。答えるのは恥ずかしかったから、僕は黙ったまま彼を見つめる。付き合いの長い彼には、それで僕の真意が伝わったみたいだ。暗がりの中で笑みを浮かべると、優しい声で言葉を発する。
    「おいで」
    「…………子供扱いするなよ」
     小さな声で答えてから、僕はベッドの方へと歩いていく。窓から差し込む街の灯りが、僕の背中を煌々と照らしていた。これだけの光源があれば、人間の彼にも僕の表情が認識できるだろう。見られるのは少し恥ずかしいが、仕方ないこととして受け入れることにする。
     布団の中に足を入れると、彼は黙ったまま手を伸ばしてきた。大人の大きい手のひらが、僕の頭の上に添えられる。髪を乱すように指先を這わせると、豪快に上下に動かしてくる。大人が子供を扱うような、見事なまでの子供扱いだった。
     手を伸ばして青年の手首を掴むと、強引に頭から引き離す。共に寝ることは許しているものの、ここまでの子供扱いは許せなかった。僕は彼のタッグパートナーで、ある意味では上司にも当たるのだ。夜中に目を覚ましただけで子供扱いするなんて、身のほど知らずにも程がある。
     抵抗の意思を受け取ると、彼はそれ以上触れてこなかった。下半身を布団の中に包まれた状態のまま、僕たちはしばらく黙り込む。沈黙が重苦しくなってきた頃に、今度は僕の方から質問を投げ掛けた。
    「君も、夜中に目が覚めたりするのか?」
     視線を向けると、彼は少し考え込む仕草をした。何かを閃いたようにこちらを見ると、表情の読めない顔で答える。
    「するよ。ルチアーノが泣いてる時とかに」
     またしても、僕を子供扱いするような言葉だった。羞恥心が胸を満たして、自分の質問を後悔する。この男は、隙あらば僕を子供扱いしようとするのだ。不満を突きつけるように、答える声がトゲを帯びてしまう。
    「今日は、泣いてないだろ」
     そんな僕を子供っぽいと思ったのか、微かに笑みを浮かべる。再び僕の頭に手を乗せると、髪を撫でるように後ろに滑らせる。
    「泣いてなくても、心は泣いてたでしょ。言葉にしなくても、ちゃんと分かるんだよ」
     よく分からないことをいいながら、彼は何度も僕の頭を撫でる。優しい態度で触れられていることが、余計に気味の悪さを感じさせた。さっきと同じように手を引き剥がすと、尖った声で言葉を投げる。
    「気持ち悪いこと言うなよ」
     完膚なきまでに拒絶されて、彼は渋々手を離した。再び訪れた沈黙が、僕たちの間を包んでいく。いつの間にか、時刻は夜中の三時を回っていたらしい。そろそろ眠りにつかないと、明日の大会に影響が出てしまう。
    「そろそろ、寝ようか」
     僕の気持ちを察したかのように、彼が優しい声で囁く。大きくあくびをすると、布団の中に潜り込んでいった。街の灯りが眩しいのか、深くまで布団を被っている。
     そんな彼が気になって、僕は布団から這い出した。開いたカーテンに手をかけると、一気に窓を覆い隠す。分厚い布地に遮られて、街頭の煌めきは微かな光へと変化した。暗くなった室内に対応するために、僕は暗視モードを起動させる。
     布団の中に潜り込むと、青年がこちらへと近づいてきた。両手を真っ直ぐに前へ伸ばして、僕の身体を包み込む。生きている人間が発する独特な香りが、一気に鼻の中へと入り込んできた。普段と全く変わらない行動に、彼の家にいるような錯覚を起こしてしまう。
     彼の腕の中に抱かれていたら、身体が暖かくなってきた。暗闇の世界から目を逸らすように、僕はゆっくりと目を閉じる。あまり認めたくはないが、この身体は彼に抱き締められることを好んでいるらしい。今、僕の身体に伝わってくるのは、生きている人間の温もりだけだ。心を覆っていた黒い靄も、いつの間にかどこかへと消えていた。
     スリープモードへの移行を試みると、意識は微睡みの中へと溶け始める。さっきまでの覚醒が嘘のような、自然な眠りの訪れだった。温かな熱を放つ手のひらが、僕の頭を撫でてくれる。彼の存在を噛み締めながら、僕は眠りの世界へと落ちていった。
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