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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。人間からの好感度が見えるように成ったルチの話。一応タグのネタです。

    ##TF主ルチ

    好感度 玉座の間を出て町に降り立った時、視界に違和感を感じた。目に映るあらゆる人々に、普段とは違う何かが起きているのだ。視覚システムに入り込む情報量が、いつもよりも少し多いようである。しばらく目を凝らした後に、ようやく違和感の正体に気がついた。
     町を行く人々の頭の上に、謎の表示が出ているのである。人間の頭髪から数センチの辺りに、半透明の文字が浮かび上がっているのだ。それは横棒のような記号だったり、文字化けして形になっていないものだったりする。しばらく凝視してみたが、その意図は分からなかった。
     いったい、これは何なのだろうか。僕の知らない間に、神から新しい機能が授けられたのかもしれない。見たところ有用性のある機能とは思えないが、何か別の利用法があるのだろう。思考を保留にすると、僕は治安維持局の建物へと向かっていった。
     今日の任務は、取引相手となる政治家との会合だった。これからの方針について、各組織の重役だけで話し合うのだ。相手は警戒心の強い人間だから、直接顔を合わせる必要があるらしい。立場的にもかなりの重役であるようで、拒絶することができなかったのだ。
     建物へと足を踏み入れた時、違和感は新たな方向へと変化した。人間の上に浮かび上がる記号が、明確な数字へと変化したのである。それは『20』であったり、『56』であったり、『98』であったりした。そして、数字が浮かび上がっているのは、全て僕と顔見知りの人間だったのだ。
     思考スペックに入り込むノイズを感じながら、僕は人気のない廊下を歩いていく。治安維持局の奥深くには、重要人物専用の会議室があるのだ。機密情報を外部に公開しないために、人間の隔離は便利な手段なのだ。それに、目撃者が少なければ、異端分子の処分も手短に済ませることができる。
     頑丈な扉を開けると、僕は部屋の中へと足を踏み入れた。普段は薄暗い会議室は、電灯によって煌々と照らされていた。眩いほどの人工の灯りが、鋭く僕の全身を貫く。しかし、それよりも鋭いのは、僕に向けられる視線だった。
     椅子に腰を下ろした四人の男が、真っ直ぐにこちらを見つめているのだ。僕に嫌疑の情を向けているらしく、その瞳は鋭く吊り上がっている。そんな男たちの上にも、謎の数字は浮かび上がっていた。ゼロやマイナスを刻む様子を見て、ようやくその意味を理解する。
     この数字は、男たちから僕への感情を示しているのだ。男が僕を信頼していれば、浮かび上がる数字は大きくなる。反対に、彼らが僕を疑っていれば、その数字は小さくなるのだ。その仕組みが分かっていれば、交渉にも大きく役立つだろう。
    「本日は、ご足労いただきありがとうございます」
     男たちに正面から向き直ると、僕は静かに言葉を発した。僕を睨み付ける八つの瞳が、少し緩んだ気配を感じる。しかし、頭上に浮かぶ数字に、大きな変化は見られなかった。次の言葉を考えながら、僕は静かに言葉を続ける。
     結局、重役との取引を行う上で、数字の効果は分からなかった。僕がどのような言葉を吐いても、男たちの数字は変わらないのである。彼らが僕を疑っている以上、信頼関係など築かれるわけがないのだ。僕にできることと言ったら、相手を監視し牽制することだけである。
     膠着状態のまま取引を終えると、僕は建物の外へと向かう。何時間も経過していたようで、外はすっかり真っ暗だった。街灯に照らされる町へと足を踏み出すと、迷わずに建物の裏へと向かう。ワープ機能を展開すると、目的地の座標を設定した。
     僕が向かおうとしている先は、タッグパートナーの青年の家だった。今の僕の視覚機能は、相手の感情を数値化できるのである。こんなに面白い機能を手にいれたのだから、例の青年をからかわなければ勿体無い。僕に大きな愛情を抱える彼なら、面白い数字が見られるだろう。
     住宅街の片隅へと降り立つと、僕は逸る足取りで角を曲がった。この道をしばらく直進したところに、彼の家は建っているのだ。案の定、彼の方が早く帰っているのか、リビングにはカーテンがかけられている。門前の階段をかけ上がると、玄関から室内に上がり込む。
     わざと足音を立てながら廊下を進むと、リビングの中を覗き込む。ソファに座っていた青年が、くるりとこちらを振り返った。僕の姿を視界に収めると、嬉しそうに表情を緩める。
    「おかえり。珍しいね。ルチアーノが玄関から入ってくるなんて」
    「僕だって、たまにはこっちから入ってくるさ。窓から押し入るような無法者じゃないんだから」
     軽い調子で言葉を返しながら、僕は彼の隣へと歩み寄る。特にやることもなかったようで、彼はぼんやりとテレビ画面を眺めていた。真っ先に視線を向けるのは、やはり頭の上の数字である。僕に大きな感情を持つ彼のことだから、感情も呆れるほどに大きいと思ったのだ。
     しかし、そこに浮かび上がっていた数字は、僕の思うようなものではなかった。確かに、大きな数字ではあるのだが、両端が切れてしまっているのである。おかげで、桁の一番始めの数値が8であることしか分からない。期待していたこともあって、なんだか拍子抜けした気分だった。
    「ルチアーノ? どうしたの?」
     視線を向けたまま黙り込む僕を見て、彼が戸惑ったように声を上げる。顔を見たまま黙り込むなんて、確かにおかしな挙動だろう。彼が怪しむのも無理はなかった。
    「何でもないよ。ただ、少し気になることがあっただけさ」
     怪しまれないように視線を逸らすと、僕もテレビ画面へと視線を向ける。能天気な夕方の情報番組を眺めながらも、頭の中では別のことを考えていた。彼の頭上に浮かび上がる謎の数字を、正確な表示で把握する方法である。僕の新たな機能として反映されたのなら、どこかに手段があると思った。
     思考システムをデータベースに接続すると、機体のマニュアルを引っ張り出す。一通り追加システムの説明書きを確かめたが、該当するシステムの情報は見当たらなかった。作られたばかりの装備だから、マニュアル作成が追い付いていないのだろうか。少し不本意ではあるが、大人しく引き下がることにする。
     そうこうしているうちに、青年がソファから立ち上がった。キッチンへと足を運ぶと、レジ袋の中身をレンジに押し込む。どうやら、またしても彼の夕食は、弁当屋で買ってきた市販品らしい。何度自炊をするように言い含めても、彼は聞き入れてくれないのだ。
     暖まった弁当を机に運ぶと、青年は夕食を取り始める。振り返って頭上の数字を見たが、何も変化は見られなかった。すぐにテレビに視線を戻すと、何事もなかったように食事が終わるのを待つ。やはり、僕の感情数値化システムは、大きすぎる桁を表示できないようだ。せっかくからかってやろうと思ったのに、心底詰まらないオチがついてしまった。
     胸に落胆の情を抱えたまま、僕はその日の日課を済ませていく。風呂場で身体を清めると、寝間着に身を包んで髪を乾かした。リビングまで青年を呼びに行くと、今度は彼の部屋のベッドに身を横たえる。
     異変が起きたのは、彼が風呂から上がった後だった。僕の隣に腰を下ろす彼の仕草に、微かな違和感を感じたのだ。疑問に思って顔を上げると、正面から目と目が合う。少しだけ間を開けた後に、思いきったように言葉を発した。
    「ねえ、ルチアーノ」
     その声に迷うような響きを感じて、僕は動きを止めてしまう。正面から彼を見つめ返すと、緊張を隠しながら答えた。
    「なんだよ」
    「頭の上に変なものが見えるのは、ルチアーノのせいなの?」
    「は?」
     彼の言葉の意味が分からなくて、僕は間抜けな声を上げてしまった。彼の口にした内容は、僕には一ミリたりとも理解できなかったのだ。頭の上に変なものが見えるというのは、いったいどのようなことなのだろう。僕が眉を寄せていると、彼は戸惑いながらも言葉を続けた。
    「さっきから、ルチアーノの頭の上に、記号みたいなものが見えてるんだ。他の人には見えなかったから、これもルチアーノが持ってるシステムなのかなって思って」
     しばらく言葉の意味を噛み砕いた後に、僕は大きく目を見開く。つまり、彼が見ている記号というのは、僕が見ている数字と同じようなものなのだ。さすがにただの人間ということもあって、見境なく感情を覗けるわけではないらしい。とはいえ、自分の感情の数値化が見られているのは、あまりいい気分ではなかった。
     というのも、あまり認めたくはないが、僕はこの男を信頼しているのだ。このシステムが映し出す数字は、対象の感情が大きければ大きいほど、数字が大きくなる効果があるらしい。つまり、彼の瞳に映っている僕の数値は、とんでもなく大きなものかもしれないのだ。
    「記号? それは、いったいどんなものなんだよ。詳しいことが分からないと、僕のシステムかどうかは分からないだろ」
     なんとか平静を取り戻すと、僕は青年に言葉を返した。自分の好感度の数値がどうなっているのか、気になって仕方なかったのである。彼の口から出る桁によっては、真実を誤魔化さなくてはならなくなる。好感度が飛び抜けて高いだなんて、彼には知られたくなかったのだ。
    「ルチアーノの頭の上に、無限マークが浮かんでるんだよ。仮面のマークと同じだから、何か関係あるのかなって思って」
     誤魔化すような問いにも関わらず、彼は素直に答えてくれた。見えている記号のおかげで、感情の大きさだとは気づかれていないようである。安堵の息をつくと共に、妙な落胆を感じた。
    「そうか。実はな、僕にも変な記号が見えてるんだ。夕方に君の頭を見てたのは、記号の意味を解読しようとしてたからさ」
    「そうなんだ。ルチアーノにも分からないんだね」
     不思議そうに首を傾げると、青年はそこで会話を終える。これ以上追及されたくはなかったから、僕も口を閉じることにした。しばらくすると、隣に座っていた青年が、おもむろにベッドから腰を上げる。僕の隣に身を横たえると、そのまま僕の手元を覗き込んだ。
     それからの夜は、いつもと同じように過ぎていった。僕たちは思い思いに時間を潰し、気が向いたタイミングで布団に入る。触れ合うだけのスキンシップを交わすと、彼はそのまま眠りの世界へと落ちていった。何気なく視線を向けると、穏やかで間抜けな寝顔の上に、端の切れた数字が並んでいるのが見えた。
     翌日、青年よりも早く目を覚ますと、僕は彼の頭に視線を向けた。頭上に浮かぶ謎の数字が、どうなっていたのか気になったのである。システムごと削除されているかもしれないし、改良されてアップデートされているかもしれない。もしかしたら、桁が判別できるようになっているかもしれないのだ。
     そんな僕の視界に映ったのは、期待を裏切るような光景だった。規則的に寝息を立てる青年だけが、布団から姿を見せていたのである。昨夜まで頭の上に浮かんでいた、人間の感情を示す謎の数字は、跡形も無くそこから消え去っていた。
     青年を起こさないように布団から這い出すと、身支度を整えてワープ機能を起動する。検証のために向かったのは、治安維持局の建物だった。一般企業であれば出社前に当たる時刻だが、ここに勤める人間は一部が建物に詰めているのだ。ホログラムの幻影を纏いながら廊下を進むと、人々は片っ端から僕に頭を下げた。
     目的地へと向かう振りをしながらも、僕は周囲の様子を窺う。通り過ぎていく人々の頭上を見上げるが、そこに数字は浮かんでいなかった。やはり、前日に見えていた謎の数字は、一時的に現れたものだったらしい。神の意思に反するものであるなら、予期しないエラーか何かなのだろう。
     簡単に検証を済ませると、僕は再び青年の家へとワープした。まだ、彼の反応を見るまでは、仮説の確定には至らないのである。あの男は目覚めが悪いから、起こすには相当の手間をかけなければならない。重い腰を上げると、僕は青年の寝室へと向かった。
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