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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    TF主ルチ。ルチが眠っているTF主くんにいたずらをする話。

    ##TF主ルチ

     寝間着の紐を結び直すと、僕は布団の中に潜り込んだ。ビジネスホテルの少し硬い布団が、ぎこちなく身体を包み込む。布団を持ち上げてスペースを作っていると、少し遅れて青年が入り込んできた。彼の家よりも少し広いベッドの上で、僕たちはぴったりと密着する。
    「じゃあ、そろそろ寝ようか」
     布団の中でうつ伏せになると、彼は枕元に手を伸ばした。彼の眠る右側の壁際には、室内のスイッチが集結している。指先でボタンを押し込むと、室内は一気に真っ暗になった。窓から入り込む看板の灯りが、微かに部屋の中を照らしている。
     静寂に満たされた室内で、僕は黙って背中を向けた。今、この部屋の中に聞こえているのは、鈍く響く空調の音だけだ。いつの間にか、こうしてホテルで眠ることも、僕たちの間では日常茶飯事になってしまった。大会への参加を口実にした時しか、僕たちは外泊などできないのだ。
     しばらくすると、隣から寝息が聞こえてきた。隣に横たわっている青年が、早くも眠りの世界に落ちたのだ。並外れて眠りの深いこの男は、環境が変わっても不眠になることがない。就寝の挨拶から五分も経つ頃には、夢の中に入り込んでいるのだ。
     寝息が一定の間隔になると、僕はそっと身体を起こす。布団の中から上半身を出すと、青年の顔を覗き込んだ。すっかり夢の中に落ちているのか、そこには穏やかな表情が浮かんでいる。こうして眠っている顔を見ていると、幼い子供のようにも見えた。
     小さく息を吸い込むと、僕は青年の顔に手を伸ばす。人差し指の先を突き出すと、力を込めずに額に触れた。十分に眠っているようで、彼が動く気配はない。止めていた息を吐き出すと、今度は頬に指先を当てた。
     左右の頬をつついても、彼が目を覚ます気配はなかった。眠りが深いのをいいことに、僕は好き勝手に指先を伸ばす。僕から彼に触れる機会など、このような時しかなかったのだ。普段であれば、布団の中に横になっている僕を、彼が勝手に触っているだけなのだから。
     ぐっすりと眠っている横顔を眺めて、僕はふと考える。これだけ深い眠りについているなら、多少のことでは起きないだろう。少し際どいことをしたとしても、今なら勘づかれることはない。一度思い付いてしまったら、その思考は頭から離れなくなった。
     大きく息を吸い込むと、僕は彼の唇に視線を向ける。薄く色づいた唇は、規則的に呼吸を繰り返していた。薄く開いた唇の端からは、微かに唾液が零れ落ちている。ネオンの光に照らされたその雫は、不思議と嫌悪感を感じなかった。
     覚悟を決めると、僕はそっと顔を近づける。肌と肌が近づくに連れて、人肌の温もりが伝わってきた。鼻から漏れる微かな吐息が、規則的に僕の鼻先をくすぐる。妙な緊張感を覚えて、心臓がドクドクと音を立てた。
     その時だった。
     ついさっきまで寝息を立てていた青年が、急に小さく身じろぎをしたのだ。嫌な予感を感じて、僕は慌てて唇を離す。身体を動かしてはいるものの、目を覚ました気配はない。恐る恐る顔を覗き込むと、不意に彼が瞳を開いた。
    「っ…………!」
     一瞬の間を空けた後に、僕は慌てて身体を起こす。正面から視線が絡み合って、すぐには身動きが取れなかった。気付かれたかもしれないという緊張感に、心臓の鼓動が早くなる。ぼんやりと瞳を開けると、彼は寝惚けた声で言った。
    「ルチアーノ…………?」
    「どうしたんだよ。君が目覚めるなんて珍しいな」
     青年の顔を眺めながら、僕は小さな声で呟く。必死に平静を装っているが、心臓はドクドクと音を立てていた。もしかしたら、僕が顔を近づけていた間も、彼は意識を保っていたのかもしれない。見られていない確証を持てるまでは、安心することができなかった。
    「なんか、人の気配を感じたんだ。ルチアーノ、何かしてた?」
     しかし、そんな僕の心配をよそに、彼は能天気な声で言葉を発する。僕が顔を近づけるまで、目を覚ましていたわけではなかったようだ。ひとまず気付かれていないことが分かって、そっと安堵の息を漏らす。
    「何もしてないよ。君は寝坊助だから、寝惚けて幻覚でも見たんだろ」
    「そうかなぁ……」
     誤魔化すように言葉を並べると、彼は寝惚けた様子で呟く。眠気には勝てなかったのか、それ以上は追及してこなかった。ゆっくりと瞳を閉じると、再び寝息を立て始める。呼吸が一定のリズムに定まるまで、僕の胸の鼓動は止まらなかった。
     しばらく息を潜めていると、微かな寝息が聞こえてきた。お腹の上に乗せられた布団が、ゆっくりと上下に揺れている。彼の方へと視線を向けると、恐る恐る顔を近づけてみる。今度こそ本当に眠っているのか、目を開く様子はなかった。
     大きく深呼吸をすると、その場で息を止める。肌に触れないように気を配りながら、ゆっくりと顔を近づけた。瞳が閉じていることを確かめてから、唇に唇を重ねてみる。柔らかい感触が伝わると、すぐに顔を離した。
     何事もなかったように座り直すと、横目で青年の様子を眺める。すっかり夢の中に入り込んでいるのか、彼が目を覚ます様子はなかった。安堵の息をつくと、僕は布団の中に潜り込む。
     彼に背を向けるように寝転がると、僕もゆっくり瞳を閉じた。窓の外から入り込む光が、ほんのりと僕の顔を照らしている。僕たちが眠りについた後でも、建物の外は光を放っているのだろう。大きな駅を取り囲む繁華街は、眠るということを知らないのだ。
     淡い光に照らされたまま、僕は意識をスリープモードに移行する。明日は大会の当日だから、エネルギーを補充しておかなくてはならないのだ。薄れていく意識の中で、僕は直前の記憶を反芻する。温かい肌に触れた唇には、まだ青年の唇の感触が残っていた。
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