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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。ルチは緑色の瞳をしてるから焼き餅焼きなのかもしれないという話。

    ##TF主ルチ

    グリーンアイドモンスター お風呂から上がって自室に戻ると、ルチアーノがベッドに転がっていた。うつ伏せの状態で身を横たえたまま、携帯型のゲーム機を操作している。僕がお風呂に入ってる間、彼はそうして時間を潰すのだ。決して約束したわけではないのだが、いつの間にかそれが習慣になっていた。
     そんなルチアーノの邪魔をしないように、僕は静かに室内に入る。僕の足音に気がついたのか、ルチアーノがちらりと視線を上げた。すぐに目を逸らすと、手元のゲーム機のボタンを操作する。僕が彼の隣まで辿り着いた頃に、彼はようやく視線を上げた。
    「やっと上がったのか。ずいぶん遅かったな」
     ゲーム機の電源を落としながら、彼は退屈そうな声で言う。すぐにやめてしまうということは、ただの退屈しのぎなのだろう。彼はゲームが得意だから、この家のほとんどのソフトを攻略しているらしい。新しいものを買ってあげたいとも思うが、なかなかそこまではしてあげられなかった。
    「ちょっと、長風呂してたんだ。冬は冷えるから」
     咎めるような物言いを宥めながら、僕は彼の隣に腰かける。首から上だけを起こしたルチアーノの顔が、真っ直ぐに僕の方へと向けられた。顔の半分は仮面に覆われているから、瞳は片方しか見えていない。電灯の影で光を失って見えるのが、妙に不穏に感じた。
    「そんなこと言って、誰かとこっそりやり取りをしてたんじゃないのか? 君が端末を風呂まで持ち込んでいたことくらい、僕だって気づいてるんだぜ」
     訝しむように目を細めると、彼はそんなことを語る。問い詰めるような物言いに、疚しいこともないのにぎくりとしてしまった。僕が端末を持ち歩いてたのは、かかってきた電話を取るためである。気づかれたら面倒なことになると分かっていたから、彼の見ていない隙に持ち出したつもりだったのに。
    「そんなことないよ。端末を持ってったのは、連絡が来るかもしれないと思ったからなんだ。この前申し込みをした大会に、確認の電話をかけるって書いてあったでしょ」
     鼓動を鳴らす心臓を押さえつけながら、僕はなんとか言葉を紡ぐ。しかし、疑り深いルチアーノは、そんなことで納得してくれなかった。緑の瞳を細めると、トゲの籠った声色で言う。
    「本当かよ。かかってくるのが大会の電話だったら、わざわざ持ち出したりしないだろ。僕に見えないように隠してたことも、全部お見通しなんだからな」
     またもや追及が迫ってきて、僕は再び言葉に詰まる。ルチアーノに応答させるのが不安だなんて、口が裂けても言えなかった。彼は常日頃から電話対応をしているらしいが、それは企業の重役という立場でのものなのだ。一般市民としての応対を任せるには、やっぱり心配が勝ってしまう。
    「やっぱり、疚しいことがあるんだな。僕に隠れて浮気をするなんて、君もなかなかの命知らずだ」
     僕の動揺を察知すると、ルチアーノはにやりと口元を歪める。不実を確信したような表情に、背筋が冷えていくのを感じた。一度僕の浮気を疑ったら、彼は何をしでかすか分からないのだ。早めに誤解を解いておかないと、後で怖い目にあってしまう。
    「違うよ。本当に何もないんだって……! そんなに疑うなら、僕の端末を見せようか?」
     結局、僕にできたのは、証拠を差し出すことくらいだった。寝間着のポケットから端末を取り出すと、目の前で寝転がっているルチアーノに差し出す。乱暴な仕草で受け取ると、彼はすぐに操作を始めた。ロックナンバーなど教えていないはずなのに、迷うことなく解除している。
    「ふーん。君は、こういうやつらと付き合いがあるのか……。げっ。シグナーともやり取りしてるのかよ」
     メッセージ画面をスクロールすると、彼は不満そうに声を上げる。彼が言うシグナーというのは、遊星やアキのことだろう。最近はあまり顔を合わせていないが、有事の際には連絡を取り合っているのだ。ルチアーノにとっては敵に当たるけれど、僕にとっては親しい友達の一人だった。
    「ね。何も疚しいことなんてないでしょ。だから、ルチアーノも安心してよ」
     端末を操作する彼を眺めながら、僕は横から声をかける。ここまでしたのだから、疑いは晴れてくれたことだろう。そんな淡い期待を抱いていたのだが、彼は機嫌を直してはくれなかった。
    「安心できるかよ。君は女とは関わってないみたいだけど、シグナーと密接な繋がりがあるじゃないか。そんな裏切り者、許しておけるわけがないだろ」
     乱暴に端末を放り出すと、ルチアーノは鋭い瞳で僕を睨む。浮気の疑いは晴れたものの、今度は裏切り者の疑いをかけられたらしい。次から次へと忙しい子だった。
    「裏切ってないよ。僕が遊星たちとやり取りをしてるのは、前から友達だったからなんだから。友達と連絡を取り合うのは、何もおかしくはないでしょう」
    「おかしいだろ。あいつらは君の友達である以前に、僕たちの敵なんだ。僕のタッグパートナーになったなら、そんなやつらとは縁を切るべきだろ」
    「そんな…………」
     彼からの猛攻を受けて、僕は言葉に詰まってしまう。すぐに反論ができなかったのは、彼の言うことも一理あるような気がしたからだ。ルチアーノとタッグパートナーになるということは、彼らと遊星たちの戦いに首を突っ込むということである。どっち付かずのまま双方と交流を続けるのは、やはり間違っている気がした。
    「とにかく、これ以上奴らと関わるなよ。分かったな」
     答えられない僕を良いことに、ルチアーノは一方的に会話を終える。見せつけるように鼻を鳴らすと、再びゲーム機を手に取った。まるで喧嘩でも売るような態度なのだが、彼を咎めることなどできない。僕の方にも、負い目を感じるだけの動揺があるからだ。
     それから、何も言葉を発せないまま、僕たちは黙って時間を潰した。ルチアーノをベッドの上に残したまま、僕は静かに腰を上げる。勉強机の椅子を引くと、引き出しに手を伸ばしながら腰を下ろした。中から取り出したのは、片付けを後回しにしていたデュエルモンスターズのカードである。
     雑多に束ねられたカードの数々を、机を覆うように広げていく。ケースから中身を取り出すと、種類ごとに分けて並べていった。パックの中身を雑に纏めているから、同じカードが何枚も重なっていく。デッキに入れられない分は、後日ショップに持ち込んで処分しなければならない。
     一時間ほど作業を続けると、ようやく全てが仕分け終わった。三枚以上あるカードをまとめると、売却用のデッキケースに押し込む。残りのカードたちは、全てストレージボックスの中に押し込んだ。今はまだ出番が来ないが、そのうち何かに使えるかもしれない。
     押し入れの中にストレージボックスを仕舞うと、僕はようやくベッドに戻った。ルチアーノもゲームに飽きてしまったのか、布団に潜り込んで雑誌を読んでいる。黙って布団に近づくと、そっと彼の隣に潜り込む。目を合わせたら刺激してしまうかもしれないから、わざと部屋の中に視線を向けた。
     僕が隣に寝転がると、ルチアーノがもぞもぞと動き始める。微かに衣擦れの音を立てると、僕の隣に寄り添ってきた。しばらくの間を開けてから、背中に何かが触れる気配がする。どうやら、ルチアーノがおでこをくっつけているらしかった。
    「なあ」
     僕が何も言わないと悟ると、彼は小さな声で呟く。僕たちの喧嘩では珍しいことに、彼の方が折れたようだった。そこまでされたのなら、僕も返事をしないわけにはいかない。彼の声に耳を済ませると、できるだけ静かな声で答えた。
    「どうしたの?」
    「僕のこと、嫌いになったか?」
     彼の口から零れ落ちたのは、またしても予想外の言葉だった。常日頃からプライドの高い彼は、弱みを見せるようなことなどしないのである。たとえ喧嘩になったとしても、僕のせいだとでも言わんばかりに口を閉ざしている。愛情の確認をするなんて、相当不安を感じた時だけだった。
    「どうして?」
     僕が言葉を重ねると、彼は困ったように黙り込んだ。身じろぎをしながら間を開けると、思いきった様子で言葉を紡ぐ。
    「僕は、君のことを疑ったから」
     背後から零れる力無い声に、思わず振り返ってしまった。そのままの勢いで寝返りを打つと、すぐ目の前にルチアーノの顔が見える。僕を見つめる彼は、今にも泣き出しそうな表情をしていた。電灯に照らされた緑の瞳が、光を反射して煌めいている。普段は笑みに細められているその瞳も、今は大きく開かれていた。
    「そんなことで、ルチアーノを嫌いになんかならないよ」
     真っ直ぐに彼の瞳を見つめると、僕は静かに言葉を紡いだ。口に出すとチープにしか聞こえないが、これが嘘偽りのない本心である。僕はルチアーノのことを愛しているし、並大抵のことでは嫌いにはならない。むしろ、僕に対して本心を見せてくれることが、嬉しくて仕方なかったのだ。
    「そうかよ」
     僕の返事を聞くと、ルチアーノはすぐに視線を逸らした。ストレートな言葉が恥ずかしかったのか、頬を赤色に染めている。照れているということは、機嫌は直ったのだろう。彼と向き合った勢いで、その小さな身体を抱き締めた。
    「ルチアーノが焼きもちを焼くのは、瞳が緑色だからかもしれないね。よく言うでしょ。『嫉妬は緑の瞳をしてる』って」
     彼の身体を包み込んだまま、僕は小さな声で呟く。思い付くままに口にしたのは、どこかで聞きかじった知識だった。どういう理由かは知らないが、嫉妬は緑の瞳と関連付けられるのだという。焼き餅焼きなルチアーノにはぴったりな言葉だと思った。
    「正しくは、『緑色の目をした怪物』な。シェイクスピアのオセロだよ。……全く、どこでそんなことを聞いたんだか」
     僕の胸の中に顔を埋めたまま、ルチアーノは淡々と言葉を返した。他人に甘えてる最中とは思えない、理路整然とした言葉選びだった。とはいえ、彼が解説をしてくれたところで、僕には出典なんて分からない。シェイクスピアが何をした人なのかさえ、僕にはピンと来ないのだから。
    「そこはどこでもいいでしょう。……そういうことだから、あんまり気にしすぎないでよ。ルチアーノに焼きもちを焼かれるのも、僕は嬉しいから」
     誤魔化すように言葉を重ねると、ルチアーノは一瞬だけ黙り込む。それもほんの僅かな時間だけで、今度はすぐに返事をした。
    「そんなこと言ってると、いつか飲み込まれちまうかもしれないぞ。嫉妬という怪物は、人の心を食い物にするんだから」
     相変わらず、僕にはよく分からない言葉選びだ。しかし、そんな脅しをかけられたくらいでは、僕も怯まなくなっていた。彼の頭に手を添えると、髪を撫でながら言い聞かせる。
    「その時は、僕もおとなしく飲み込まれるよ。ルチアーノと一緒にいられるのなら、どんな形でも構わないから」
    「…………変なやつ」
     一言だけ呟くと、彼は黙って布団に顔を埋める。どれだけ待ってみても、それ以上の言葉は返って来なかった。僕も追及する気はなかったから、彼を抱き締めたまま目を閉じる。しばらくすると、意識は眠りの世界に落ちていった。
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