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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。TF主くんがルチの長期不在中に大掃除をする話。

    ##TF主ルチ

    大掃除 お互いが入浴を済ませると、そこからは夜の時間だ。布団の中に潜り込むと、僕たちは肌に触れて体温を交わす。ルチアーノの身体は小さいから、僕が腕を伸ばすと簡単に包み込めてしまうのだ。背後から身体を抱えたまま、ゆっくりとお腹を撫でていく。
    「あのさ」
     しばらくそうしていると、不意にルチアーノが言葉を発した。様子を伺うような、躊躇うような響きをしている。お腹に指先を滑らせながら、僕は彼に言葉を返した。
    「どうしたの?」
    「…………明日から、任務に出かけるんだ」
     少しの間を開けてから、ルチアーノは小さな声でそう言った。彼にしては珍しい、消え入りそうな声色である。いつもはもっとはっきりと告げてくるから、なんだか新鮮だった。
    「そうなんだ。それで、いつ帰ってくるの?」
    「三日後だよ。しばらく僕がいなくなるから、君は寂しくなるだろうね」
     まだ小さな声を保ったまま、ルチアーノは言葉を続ける。声色だけを聞いていると、彼の方が寂しがっているみたいだ。とはいえ、彼の心は変わりやすいから、真実までは分からない。
    「そうだね。ルチアーノがいないと寂しいよ」
    「寂しいからって、浮気したりするなよ。せっかくの自由時間なんだから、有意義に過ごしな」
    「そうだね。そうするよ」
     会話が途切れると、彼はこちらを振り向いた。僕の身体にしがみつくと、服の下に腕を回してくる。その温もりに応えるように、僕は彼の肌に手を伸ばした。

     翌日は、昼過ぎまで眠ってしまった。差し込んだ日光に顔面を照されて、僕は渋々瞳を開く。枕元に置かれた目覚まし時計を見て、思わず目を見開いてしまった。デジタル時計に表示された数字が本当なら、僕は十時間も眠っていたことになるのだ。
     気を取り直して布団から這い出すと、顔を洗って食事の支度をする。ずっと眠っていたというのに、きちんとお腹は空いていた。眠るという単調な行為でも、エネルギーは消費されているのだろう。食パンで簡単に空腹を満たすと、僕はぼんやりと考える。
     今日という一日を、僕はどうやって過ごせばいいのだろう。ルチアーノが任務に向かってしまうと、僕は何をしていいか分からなくなるのだ。彼に出会ってからというものの、予定を合わせることが当たり前の生活を続けてきた。出かけるにはいい機会なのだろうが、一人での行き先など思い付かない。
     結局、一人きりで過ごす初日は、家でカードの整頓をすることにした。押し入れの扉を開くと、積み上げていたストレージボックスを引っ張り出す。適当に詰めていたカードを取り出すと、カテゴリーごとに仕分けてボックスに入れる。最後に箱を戻そうとしたところで、隅に埃が溜まっているのが見えた。
     そういえば、家の大掃除というものを、長いことしていなかった気がする。確か、最後に押し入れに掃除道具を持ち込んだのは、家族揃って暮らしていた頃だった。年末は大掃除の季節だというが、一人ではあまりやる気が起きなかったのである。
     せっかくだから、この時間は押し入れの掃除に当てることにする。ルチアーノが僕の元を訪れる時には、決して掃除などできないのだ。彼は勝手に僕の予定を決めてしまうし、家にいても退屈する事を嫌うのだ。彼に振り回されて慌てているうちに、僕の時間は消費されてしまう。
     別の部屋の押し入れを開けると、僕は掃除道具を取り出した。押し入れに入っていた家具を取り出すと、簡単に中を履いていく。スペースそのものが綺麗になると、今度は家具に積もった埃を拭き取った。棚の中にも埃が溜まっていたから、ものを取り出しながら中身を掃除していく。引っ越して以来まともに開けていないような押し入れだから、記憶に無いアイテムもたくさん出てくる。中には、今の僕にとってはガラクタとしか思えないものも含まれていた。
     こうなったら、徹底的に家を片付けてしまおう。ガラクタの山をひっくり返しながら、僕はそんなことを考える。家の中がピカピカになっていたら、ルチアーノだってびっくりするだろう。もしかしたら、僕のことを見直してくれるかもしれない。
     雑巾を置いて部屋から出ると、僕はリビングの片隅に向かった。ゴミ箱の近くの引き出しを開けると、市の指定のごみ袋を引っ張り出す。口を開きながら自分の部屋へと戻ると、押し入れのガラクタを放り込んでいく。少しだけ触れた趣味の道具や、ガチャガチャで集めたアニメのストラップなど、今は興味の無くなったものともお別れした。
     押し入れの半分が片付いた頃には、すっかり夕方になっていた。不要品を入れたごみ袋は、今日一日で二袋も積み上がっている。しっかりと袋の口を縛ると、物置きになっている空き部屋へと運び込んだ。
     翌日の午後も、同じように作業に取りかかった。午前から始めなかったのは、朝が起きられなかったからである。ベッドに寝転がりながら堕落を貪っていたら、すっかり夜が更けてていたのだ。電気を消して眠りについたものの、起きたのは昼に近い時間帯だった。
     押し入れの奥と向かい合うと、要らないものを捨てていく。容赦なく過去の遺物を放り出したら、棚の上はずいぶんすっきりした。押し入れから溢れていた雑多なアイテムも、扉の中へと収まってくれる。綺麗になっていく押し入れを見ていたら、片付けが楽しくなってしまった。
     新しいごみ袋を取り出すと、僕はクローゼットの引き出しを開ける。この中に入っている服も、長い間整頓などしていなかった。ボロボロになっているものもあれば、サイズが合わなくなっているものもあるだろう。ルチアーノは身嗜みにも厳しいから、そのようなものを着ていたら怒られてしまう。
     奥に仕舞い込んだ服を引っ張り出すと、一枚ずつ仕分けていく。着れそうなものは綺麗に畳み直して、ほつれたものはゴミ袋に放り込んだ。あっという間に、タンスの中の服も数を減らしていく。
     結局、僕が普段から着ている衣類は、全体の半分くらいしかなかった。他のものは子供っぽすぎるか、フォーマルすぎて着られなかったのだ。任務のためにと用意されたスーツなどは、部屋の片隅で吊り下げられている。少し勿体ない気もするが、目的もなく着ることもできなかった。
     そうこうしているうちに、あっという間に三日の時が過ぎた。いよいよ今夜が、ルチアーノの帰ってくる日である。僕が部屋を掃除したと知ったら、彼はどのような表情を見せるのだろうか。期待と不安が混ざりあって、僕の心はそわそわと揺れた。
     ルチアーノが帰ってきたのは、僕が夕食を取っている頃だった。胸を覆う期待をひた隠しにしながら、僕は彼を迎え入れる。今回は三日と短かったからか、彼はそこまで寂しがっていないようだった。順番に入浴を済ませると、僕の部屋のベッドに腰を下ろす。
     さりげなく隣に腰を下ろすと、彼は僕を見上げてきた。緑の瞳で僕を射抜くと、何かを探るように目玉を動かす。思わず視線を逸らすと、彼は鋭い声で言った。
    「なんだよ。言いたいことがあるなら、とっとと言いな」
     その威圧的な声色を聞いて、僕は思わず息を飲んだ。ルチアーノの発した言葉の響きは、半ば脅しているようなものだったのである。僕が挙動不審になっているから、何か裏があると思っているのだろうか。不本意な想像に晒されて、僕は慌てて反論する。
    「違うよ。別に、言いたいことがあるとかじゃないんだ。ただ、ちょっと気になることがあって……」
     口から零れ落ちる言葉は、上手く繋がってくれなかった。あまりにも挙動不審だから、自分でも怪しいと思ってしまうくらいだ。案の定、僕の隣に張り付いたルチアーノは、余計に眉を潜めることとなった。
    「だったらなんだよ。何か疚しいことでもあるって言うのか? お仕置きをされたくないなら、とっとと白状しな」
     完全に勘違いをされていた。このまま浮気をしていたと判断されたら、痛い目に遭わされかねない。頭をフル回転させると、必死の思いで言葉を返す。
    「だから、違うんだって。久しぶりに部屋を掃除したから、ルチアーノに気付いてもらいたくて……」
     小さな声で答えると、彼はぽかんと口を開けた。眉をだらりと下げると、呆れたように言葉を吐く。
    「はあ? そんなことか?」
    「そうだよ。ルチアーノが任務に行ってる間に、押し入れの大掃除をしたんだ。要らないものは全部捨てたから、だいぶ綺麗になってるはずだよ」
     そう言うと、僕はルチアーノの隣から立ち上がった。真っ直ぐに押し入れへと向かうと、閉じていた扉を左右に開く。一見するといつもと変わらない風景なのだが、棚の中身は明らかに減っていた。
    「ほら」
     自信満々に扉を開く僕を見て、ルチアーノは呆れたように息を吐く。すぐに視線を逸らすと、いかにもどうでもよさそうに呟いた。
    「そうだな。確かに、ものが減ってる気がするよ。この前は、床全体に溢れてたもんな」
    「そうでしょ。それだけじゃないんだよ」
     しかし、彼がどうでもよさそうな顔をしていても、僕にはそこまで気にならなかった。自分の残した成果を、彼に見てもらいたかったのである。丸三日もかけたのだから、誉めて貰わなければ気が済まなかった。
     ベッドの上から立ち上がると、僕はクローゼットへと向かった。引き出しを開けると、中から服を引っ張り出す。僕の勢いに押されたのか、ルチアーノも渋々後をついてきた。
    「見て、タンスの中も、だいぶ綺麗にしたんだよ。この辺りとか、古い服がなくなってるでしょ」
    「そうだな。君は、中学生が着るような服ばっかり持ってたもんな」
     冷めた瞳で僕を見ながら、ルチアーノは小さな声で呟く。その口調や言い回しから、一切の興味が無いことは明らかだった。なんだか、部屋の片付けを済ませた子供が、親に報告しているみたいで恥ずかしい。すぐにタンスを閉めると、僕はルチアーノに向かい合った。
    「僕からの報告はこれだけだよ」
     羞恥心が込み上げてきて、少し小さな声になってしまう。小さくため息をつくと、ルチアーノは呆れた様子で言った。
    「それだけのことで、あんなにそわそわしてたのかよ。本当に、君は子供みたいだな」
    「そりゃあ、報告くらいしたくなるよ。ルチアーノがいない間に、頑張って片付けたんだから」
     話を終えると、僕たちは布団の中に潜り込む。静かに身を横たえていると、ルチアーノの方から手を伸ばしてきた。僕たちにとっては珍しい、数日ぶりのスキンシップだ。ゆっくりとお互いの身体に触れると、燃えるような体温を交わし合う。
     気が済むまでお互いの熱に触れると、僕たちは再びその場に横たわった。体力を消費したのか、ルチアーノはうとうとと船を漕いでいる。対する僕の方は、あまり眠気を感じなかった。身体には心地よい疲労感があるものの、眠気はほとんど訪れない。
     何度も寝返りを打っていると、ルチアーノがこちらを振り返った。黙って寝間着の裾を引くと、小さな声で囁いてくる。
    「ごそごそ煩いよ。とっとと寝な」
    「それが、あんまり眠くならなくて……」
     横になったまま答えると、彼はわざとらしくため息をついた。
    「なんでだよ。いつもだったら、僕よりも先に寝てるだろ」
     鋭い言葉を投げ掛けられて、僕は言葉に詰まってしまう。確かにそうなのだが、今日はそうはいかなかったのだ。ルチアーノが任務に出てからというもの、僕は昼に起きて深夜に眠る生活を繰り返していた。三日のうちに、すっかり生活リズムが崩れていたのだ。
    「そうなんだけど、今日は昼まで寝てたから……」
     小さな声で答えると、ルチアーノは呆れたようにため息をつく。すぐに笑い声を上げると、からかうような声で言った。
    「全く、君は本当に子供みたいだな。昼夜逆転で眠れなくなるなんて、体調管理ができてないぜ」
    「仕方ないでしょう。起きる時間が遅くなったら、夜になっても眠くならないんだから」
    「そうならないように、きちんと起きるのが大人ってもんだろ。とにかく、君が何時に寝ようとも、明日は叩き起こすからな」
     簡潔に話を終わらせると、彼は再び寝返りを打つ。背中合わせになった状態のまま、静か寝息を立て始めた。耳を擽る吐息を感じながら、僕はゆっくりと寝返りを打つ。しばらくその場で転がっていたが、眠気は訪れてくれなかった。
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