Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

    文章や絵を投げます

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💕 🍇 🐥 🍣
    POIPOI 667

    流菜🍇🐥

    ☆quiet follow

    TF主ルチ。TF主くんを狙う組織の敵を警戒していたルチが物理で倒す話。

    ##TF主ルチ

    油断 商店街の路地裏に足を踏み入れる時、ルチアーノは決まって周囲を警戒する。僕よりも一歩前に出ると、素早く左右を見渡すのだ。そうして周囲の安全を確認すると、再び僕の後ろに戻ってくるのである。
     そんなルチアーノの姿を見ていると、僕は疑問に思うことがある。彼は常日頃から、僕の身の安全について気にしすぎているのではないだろうか。いくらイリアステルの宿敵だと言っても、路上で一般人を狙うような真似はしないだろう。僕はそう伝えるのだが、彼は簡単には納得しなかった。
    「分かってないな。僕たちを狙ってくるやようなつらは、まともな思考回路なんて持ってないんだよ。人生のどん底まで落とされて、僕たちを始末すれば全てが好転すると思ってるやつらばかりなんだ。君だって丸腰で歩いてたら、後ろから刺されて死ぬかもしれないぜ」
     真っ直ぐに僕を見上げると、ルチアーノは強い口調で僕を脅す。そこまではっきりと言い切られてしまったら、僕に言い返すことはできなかった。まあ、彼と行動を共にしているのだから、危険であることには変わりないだろう。仮にも命を守られる立場だから、余計な口出しなどできるはずがない。
     そんなこんなで、僕は常にルチアーノに守られることになった。人気の少ない場所や暗い通りに入る時は、必ずと言っていいほど周囲を警戒する。目に見えて警戒しているように見えなくても、常日頃から周りに気を配っているようだった。心配になる気持ちも分かるが、いくらなんでも警戒しすぎている気がする。
    「ねえ、ルチアーノ。いくらなんでも、さすがに警戒しすぎなんじゃない? いくら追い詰められてるからって、白昼堂々狙ったりはしないでしょ」
     周囲を見渡しているルチアーノの姿を眺めながら、僕は呆れ気味に言葉を吐く。僕が言い終わるか終わらないかのタイミングで、彼はこちらに視線を向けた。機嫌を損ねているのか、その瞳は鋭く光っている。
    「君は、やつらの恐ろしさを知らないようだな。何も知らない一般人なんて、この世で一番襲いやすいものじゃないか」
     やはり、どれだけ言葉を重ねても、彼は納得してくれないようである。口で言っても伝わらないから、これ以上は何も言わないことにした。次にルチアーノが前に出ようとしたら、強引にでも止めてしまえばいいのだろう。脳内で計画を立てながら、僕はショップへと続く階段を上る。
     店内に足を踏み入れると、僕はショーケースの前へと向かった。手早く店内を一周すると、探していたカードを探し出す。残念ながら、この穴場のような店舗には、僕の探しているカードはなかったようだ。ここは他の店舗よりも価格が安いから、あれば買っておきたかったのだ。
    「ここにも無いみたいだね。最後に、もう一軒だけ見てもいい?」
     ショーケースの前から離れると、僕は隣を歩くルチアーノに声をかける。ショップに目的があるわけではない彼は、静かに僕の隣についてきていた。既に飽き始めているのか、その顔は不満そうに歪められている。僕の言葉を聞くと、彼は突き放すようにこう言った。
    「嫌だって言っても、どうせ説得するつもりだろ。だったら、勝手に行けばいいじゃないか。君は、僕が何を言っても聞かない頑固者なんだから」
     拗ねたような声色で語ると、彼は僕に続いて店舗から出る。その辛辣な言葉選びに、思わず苦笑いを浮かべてしまった。彼はこんなことを言っているが、真の頑固者はルチアーノの方なのである。彼だって、一度言い出したら絶対に意見を曲げないのだから。とはいえ、僕にも彼を振り回している自覚はあるから、お互い様と言えばお互い様だ。
    「じゃあ、次は大通りの店舗に行こうかな。あそこは大きいから、探してるカードもあると思うし」
     言葉を並べながら、僕は路地裏を歩いていく。この道を真っ直ぐ進んだ先に、小さな交差点があるのだ。そこの信号を渡った先に、目的のカードショップは建っている。信号が青色になっているのが見えて、僕の足取りは早くなった。
    「あっ」
     もうすぐで路地から出るといったところで、僕は思わず声を上げる。横断歩道の青色信号が、ついに点滅を始めたのだ。こうなったら急いで渡らないと、しばらくの間赤信号を待つことになる。人通りが少ないこともあってか、ここの信号機は変わるまでが長いのだ。
     しっかりと両手を握ると、僕は横断歩道を目指して走り始める。僕の脚力で間に合うのなら、青信号のうちに渡りたかったのだ。別に車が通っているわけでもないのだが、信号を無視するのは少し気が引ける。善良な一般市民としての感性が、僕にルール違反を躊躇わせていた。
     一気にルチアーノを引き離すと、僕は整備された歩道へと乗り上げる。ここまで来たのなら、後は信号を渡るだけだ。背後からルチアーノの声が聞こえてくるが、気にかけている余裕はない。早く信号の向こう側へと渡らないと、僕の努力が台無しになってしまうのだ。
     しかし、そんな僕の目論みは、思った通りには進まなかった。全速力で歩道を駆けていた僕の前に、思わぬ邪魔が入ったのである。そいつらは建物の影から現れると、僕の周りを取り囲んできた。中の一人が前に出ると、僕の首を絞めるように腕を回す。
    「っ…………!?」
     何が起きたのか分からなくて、僕は目を白黒させた。一瞬の間を開けた後に、僕の胸元に光るものが近づいてくる。それが刃物だと気がついた時には、喉から悲鳴が込み上げてくるのを感じた。しかし、声に出そうとしても、それは言葉になってはくれない。呆然としている僕の前で、男たちはルチアーノに宣言する。
    「お前が、イリアステルの幹部だな。こいつの命が惜しければ、俺たちの言うことを聞け」
     凄みを効かせる男たちの前で、ルチアーノは面倒臭そうにため息をつく。僕が人質に取られたことさえも、全く意に介していないようだった。ちらりと僕に視線を向けると、周囲で身構えている男たちに視線を戻す。
    「やっぱりか。そうなるだろうと思ってたよ」
     小さな声で呟くと、彼は大きく跳躍した。男たちの真ん中に着地すると、目の前に立っていた男を蹴りつける。目にも止まらぬ素早い動きに、周囲の男はついていけてないようだった。呆然としている男たちの前で、さらにもう一人の男を殴り飛ばす。
     二人目が倒れる姿を見て、ようやく彼らも状況を理解したらしい。唯一残された大柄な男が、ルチアーノに向かって拳を振り上げた。しかし、人間の反応速度では、ルチアーノを出し抜くことなどできない。男が攻撃を繰り出すよりも先に、ルチアーノの一撃が男を倒した。
    「これだけか?」
     僕の方へと視線を向けると、ルチアーノは淡々とした声で言う。いや、彼が視界に捉えているのは、僕の背後にいる男の方だろう。彼の鋭い瞳に睨まれて、男が微かに怯んだ様子を見せる。すぐに気を取り直すと、少し震えた声で叫んだ。
    「動くな! こいつがどうなってもいいのか!?」
    「いいよ。別に、そいつの変わりなんていくらでもいるんだから」
     男の脅しに動揺することもなく、ルチアーノは淡々と言葉を吐く。その冷徹で無慈悲な言葉を聞いて、男は人質を取ることを諦めたようだった。僕の身体から手を離すと、刃物を片手にルチアーノへと突進する。男が腕を振り上げると、ルチアーノは簡単に刃物を叩き落とした。
    「これで終わりだな」
     冷たい声で言い放つと、彼は男の首筋を叩く。どういう理屈でそうなっているのか、男はその場に崩れ落ちた。最後にその身体を蹴りつけると、ルチアーノは僕の元に歩いてくる。
    「ほら、だから言っただろ。やつらは形振り構わないんだって」
     呆然としている僕を見上げると、ルチアーノは淡々とした声で言う。彼の声を聞いたことで、ようやく僕も冷静さを取り戻してきた。倒れた男を踏まないように前に出ると、信号の前で足を止める。表示は赤色に変わっていたが、今はそんなことを気にしている場合ではなかった。
    「そうだね。まさか、こんなところで襲われるとは思わなかったよ」
     音を立てる心臓を押さえながら、僕は小さな声で呟く。全てが一瞬の出来事だったから、何が起きたのかすら分からなかったのだ。きっと、ルチアーノは、どこかでこの情報を知っていたのだろう。相変わらず恐ろしい男の子だと思った。
    「分かったか。奴らは、どこで襲ってくるか分からないんだ。いつ襲われても対応できるように、できるだけ僕の側にいろよ」
     僕の横顔を眺めながら、ルチアーノはそんなことを語る。言葉だけなら愛の告白のようだったが、生憎甘い気持ちにはなれなかった。彼が近くにいてくれなかったら、僕は今頃どうなっていたか分からない。改めて自分の置かれた立場を突きつけられて、背筋が冷える思いがした。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💘💘💘💘🙏🙏🙏😍
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works