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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチがひまわり畑にピクニックに行く話です。ひまわりとルチの光景を夢に見たので書きました。

    ##TF主ルチ
    ##季節もの

    ひまわり 夏は、暑い。家の外は灼熱世界で、一歩踏み出すだけでも汗がだらだらと垂れてくる。皮膚は紫外線に焦がされ、日焼け止めを塗らないと肌がボロボロになってしまうほどだ。こんな暑い時期に昼間からデュエルするなんて、命がいくつあっても足りない。僕たちは昼間を家で過ごし、夕方になってから外に出ていた。
     クーラーの効いた部屋で涼みながら、つけっぱなしのテレビ画面を眺める。午前のバラエティ番組は、夏休みのお出かけスポットを特集していた。この前のプールもそうだけど、この時期は子供向けの特集が多いのだ。
     テレビの中では、リポーターの女性が施設の紹介をしている。博物館のイベントやプールなど、内容は定番のものばっかりだ。バーベキュー施設の紹介が終わると、今度は別の景色が映った。
     鮮やかな黄色が画面を埋め尽くす。今までとは雰囲気の違う景色に、僕の視線は釘付けになった。カメラは横にずれたり、近づいたり離れたりしているが、映るのは黄色ばかりだった。一面の黄色の中に、緑や黒の差し色が見えている。
     それは、ひまわりの花畑だった。どこまでも続くような長い花畑を、たくさんのひまわりが埋め尽くしている。中央には通路が作られていて、散歩コースになっている。ひまわり畑を越えると、季節の花が並ぶ花畑が待っている。途中には休憩スペースまで用意されていて、ピクニックが楽しめるようになっていた。
     画面の中ではひまわり畑が斜め上空から映し出されていた。ひまわりの間に作られた細い小道を、子供たちが楽しそうに走り回っている。その後ろを、日焼け対策を入念に済ませた母親たちが付いていった。カメラが近づき、子供の一人がアップで映し出される。白いワンピースを着た女の子がくるりとこちらを振り向いた。
     僕は、思わず息を飲んだ。画面内の光景が、あまりにも美しかったのだ。自分と同じくらいの背丈の植物に囲まれ、こちらを振り返る子供の姿は、絵本の中から出てきたように非現実だった。
     ルチアーノがこの景色に入り込んだら、どれほど美しいのだろう。人間離れした美しさを持つルチアーノのことだ。きっと、この世のものとは思えないほどに美しいのだろう。そう考えたら、いてもたってもいられなくなった。
    「ねぇ、ルチアーノ。今度、ここに行ってみない?」
     僕が言うと、ルチアーノはくるりとこちらを振り返った。ぽかんとした丸い瞳で、真っ直ぐにテレビの映像を見つめると、呆れたように言った。
    「君、こんなところに興味があるのかよ。暑いのは嫌いなんじゃなかったのか」
    「それとこれとは別だよ。少しは妥協しないと、夏を楽しめないからね」
     僕が言うと、ルチアーノは分からないといった顔をした。再びテレビに視線を向けると、気のない返事を返す。
    「好きにすればいいじゃないか。どうせ、無理を言ってでも連れていくつもりだろ。だったら、僕は何も言わないよ」
     妙に諦めのいい態度だった。あまり、ルチアーノらしくない。少しの違和感を感じながらも、僕は外出の予定を立てた。

     ルチアーノの態度の理由は、すぐに分かった。お弁当の準備をするためにスーパーに向かったときに、彼は自分の希望を上げてきたのだ。突きつけられる無理難題に、僕は頭を悩ませることになった。
    「弁当は寿司にしろよ。ネタはマグロとサーモンな」
    「無理だよ。こんなに暑かったら、お刺身が痛んじゃう」
    「なら、たこ焼きでもいいぜ。それなら、刺身ほどすぐに腐らないだろ」
    「そうだけど、向こうにはレンジがないから、冷たいたこ焼きになるよ。それでもいいの?」
     僕が言い返すと、ルチアーノは言葉に詰まったみたいだった。悔しそうに唇を噛むと、噛みつくように言い返す。
    「だったら、何が持っていけるんだよ! あれもこれもダメじゃないか」
     そうは言われても、無理なものは無理なのだ。夏場のお弁当は、食中毒の危険性がある。生物は持って行けない。
    「何って、普通のお弁当だよ。から揚げとか卵焼きとか、サンドイッチとか」
    「なんだよ。つまんねーの」
     食材を選ぶ僕を、ルチアーノは冷めた瞳で見つめた。お弁当と言っても、僕にちゃんとした料理はできないから、サンドイッチと卵焼き以外は冷凍食品だ。スーパーを回っていると、不意にルチアーノが尋ねた。
    「なあ、生物はダメでも、常温で売られてるフルーツならいいんじゃないか? すぐには腐ったりしないだろ?」
     彼は、まだ諦めていなかったらしい。圧をかけるような態度で、僕に交渉を切り出した。確かに、フルーツならお刺身ほどの危険はないだろう。
    「フルーツならいいよ。食べたいものがあったら持ってきて」
     こんなに期待させておいて、好きなものを食べさせてあげられないのはかわいそうだ。僕は、ルチアーノの交渉を受けることにした。
     彼は、駆け足で果物コーナーへと向かっていった。しばらくすると、パックに入った緑色の食べ物を持って歩いてくる。カゴに入れられたのは、シャインマスカットのパックだった。
    「シャインマスカット!?」
     予想外の選択に、僕は驚きの声を上げてしまう。こんな高級品は、普段なら滅多に食べられない。そもそも、いくらするかさえ分からないのだ。
     僕の反応を見て、ルチアーノは不満そうに顔をしかめる。頬を膨らませると、拗ねた声色で言った。
    「なんだよ。これもダメだって言うのか?」
     今にも外出をやめると言い出しそうな態度だった。ここで意見を覆されたら、せっかくの準備が水の泡だ。お財布が心配だったが、突き放すことはできなかった。
    「そんなことないよ。果物なら大丈夫だと思うし、一緒に買おうか」
     結局、一番高い買い物はシャインマスカットになってしまった。レジを通されていく食材を見ながら、ルチアーノはにやにやと笑っている。すっかり罠に嵌められてしまったが、今さら引くことはできなかった。

     ピクニック当日は、雲ひとつない晴天だった。紫外線で肌が傷つかないように、念入りに日焼け対策をして、ひまわり畑のある公園へと向かう。目的地までは、Dホイールで三十分ほどかかった。
     Dホイールから降りると、ルチアーノの頭に麦わら帽子を被せる。ルチアーノは暑さを感じないけど、僕だけが帽子を被っているのは申し訳ないから、ついつい買ってしまったのだ。セーラー服風の衣装に身を包んだルチアーノに、麦わら帽子はよく似合う。少女のように可憐なルチアーノを引き連れて、僕は公園の入り口へと向かった。
     公園は、ピクニックに訪れた人々で溢れ帰っていた。テレビを見たり、インターネットのクチコミを見たであろう人々で、入り口の門は混み合っている。敷地内へ入ると、彼らは思い思いの方向に流れて行った。
     敷地に入ると、僕は花畑の散歩道へと向かった。エリアが近づくほどに、視界に映る黄色の面積が大きくなってくる。間近で見るひまわりの花は、思っていた以上に大きかった。
    「これがひまわりか。本物は、こんなに背が高いんだな」
     一面に広がる黄色を眺めながら、ルチアーノが感心したように言う。僕の手を振りほどくと、花の前へと歩み寄った。
     ここに植えられているひまわりは、背の高い品種らしかった。小さいものでもルチアーノの背丈くらいはあるし、大きなものは僕の背丈を越えるほどの大きさだった。大きな花に囲まれた小道は、まるで迷路のようだ。
     ルチアーノがひまわりの間を歩き始める。大きな花に囲まれた彼の姿は、ミニチュアの世界の人形みたいで綺麗だった。写真に収めようと、端末を取り出してカメラを起動する。
     不意に、彼がこちらを振り返った。ひまわり畑の中で、麦わら帽子を被った少年が、髪を靡かせながらこちらを向いている。妖精のように美しくて、反射的にシャッターを切っていた。
    「何撮ってるんだよ」
     ルチアーノが不満そうな声を漏らす。不機嫌を露にした横顔を、さらにカメラで連写した。ルチアーノが歩み寄り、カメラのレンズを手で覆い隠す。僕の手から端末を奪い取ると、撮った写真を検閲した。
    「こんなもの撮ってどうするつもりだよ。人に見せるためだったら、今すぐ消すからな」
     ボタンを操作して、写真を消そうとする。僕は、慌てて彼の手から端末を取り返した。
    「やめてよ、せっかく撮ったんだから!」
     端末を操作して、画像が消えていないかを確認する。なんとか間に合ったようだ。急いで隠しフォルダへと移動しながら、ルチアーノに声をかける。
    「大丈夫だよ。これは誰にも見せないから。僕だけの思い出にしたいんだ」
    「本当かよ。怪しいなぁ」
     訝しむような声を上げながらも、それ以上は追求してこなかった。本当は満更でもないのかもしれない。小道へと向かっていくルチアーノの後ろ姿を、端末を向けて撮影する。
     ひまわり畑とルチアーノは、とても良く似合っていた。燃えるような赤い髪も、それを覆い隠す麦わら帽子も、身を包むセーラーモチーフの洋服も、ひまわり畑と青空という夏の光景に調和している。まるで、絵本の中の光景のようだと、心の隅で思った。
     ルチアーノは、涼しげな顔で小道を歩いている。ひまわりの間を通り抜けて、季節の花が咲くエリアへと入っていった。時折風が吹いて、彼の被っいる麦わら帽子を舞い上がらせる。片手で押えながら、淡々と前へ向かった。
     そんな彼を、僕は汗びっしょりになりながら追いかけた。時折立ち止まっては、ペットボトルの飲み物を喉に流し込む。半分だけ凍らせたスポーツドリンクは、溶け方に偏りがあって奇妙な味がする。夏の醍醐味を感じながら、僕はルチアーノの後に続いた。
     その間にも、僕は何度も写真を撮った。背丈の変わらないひまわりと並ぶルチアーノに、小道で迷子になるルチアーノ。小さな子供に声をかけられ、一緒に歩くルチアーノと、飛び回る蜂を見て、ケラケラと笑うルチアーノ。どのルチアーノも姿も、大切な僕の思い出だった。
     一時間くらい歩くと、ようやく休憩スポットが見えてきた。一面に広がる芝生には、テーブルとベンチのセットや、日陰になりそうな大木がある。少し離れたところには、小さなガゼポが設置されている。
     僕たちは、木陰のテーブルに席を取った。持ってきた保冷バッグを開けて、中のお弁当を取り出す。メニューは冷凍食品のおかずとサンドイッチだ。プラスチックのケースに入れ、保冷剤に包んだシャインマスカットは、まだほんのりと冷えていた。
    「さあ、食べよう」
     僕は、ルチアーノにサンドイッチを差し出した。こっちも、まだほんのりと冷えている。レタスとハムのサンドイッチを咀嚼しながら、彼は不満そうな声を出す。
    「なんだよ。これも生物じゃないか。なんで刺身はダメなんだよ」
    「お刺身は、レタスよりも傷みやすいんだよ。悪くなったものを食べて、お腹を壊したら大変でしょ」
    「僕は、腹なんか壊さないぜ。僕の分だけ用意してくれてもよかったじゃないか」
    「ダメだよ。ここは人間の世界なんだから、人間のルールに従ってよ」
    「なんだよ。つまんねー奴だな」
     ルチアーノは退屈そうにお弁当をつついている。冷凍食品を口に含み、もしゃもしゃと咀嚼する。ごくんと飲み込むと、今度は次のおかずに手を伸ばした。
     近年の冷凍食品は進化していて、どれもおいしかった。唐揚げを食べ、スパゲッティを食べ、ハンバーグを口に入れる。卵焼きだけは、僕の作ったものと冷凍のオムレツの二種類だった。
     料理を食べ終わると、今度はデザートだ。わくわくした様子でケースを開けると、薄緑の粒をつまみ上げた。
    「やっぱり、ぶどうと言ったらシャインマスカットだよな」
     嬉しそうに笑みを浮かべると、豪快に一口で飲み込んだ。もぐもぐと咀嚼すると、幸せそうな笑みを浮かべる。
     ルチアーノは、ケースを自分の前に引き寄せた。一粒一粒を大切そうにつまみ上げると、美味しそうに平らげていく。あっという間に、ケースの中身は半分以下になってしまった。
    「ルチアーノ」
     僕が声をかけると、彼は不思議そうな顔でこっちを見た。無意識なのか、子供のような純粋な表情で首を傾げる。
    「なんだよ」
    「僕にもちょうだい」
     そう言うと、彼はあからさまに嫌そうな顔をした。ケースを両手で包み込むと、拗ねたような声で返す。
    「えー。これは僕のなんだけどな」
    「僕も食べたいよ。シャインマスカットなんて、滅多に食べられないんだもん」
    「…………分かったよ」
     説得すると、渋々ながらケースの中身を差し出してくれた。残り少なくなった薄緑の粒を、手のひらの上に乗せる。このままだと全部食べられてしまうから、三粒を一気に取り出した。
    「あーっ。こいつ、三つも取りやがって……!」
    「ルチアーノはたくさん食べてるんだから、これくらいいいでしょ」
     シャインマスカットの粒は、まるで宝石のように輝いていた。一粒一粒を、大切に口の中に入れる。粒の甘味を堪能しながら、ゆっくりと咀嚼した。
     ルチアーノは、まだ残りの粒を食べている。ふと思い付いて、その横顔を写真に収めてみた。
    「何撮ってるんだよ!」
     ルチアーノが不満そうに僕を見る。シャッターを切ると、その顔も写真の中に収まった。データを隠しフォルダに移すと、にこりと笑って答える。
    「かわいかったから、つい」
    「誰がかわいいんだよ。その写真、誰かに見せたらただじゃおかないからな」
     頬を膨らませるルチアーノを見ながら、僕はお弁当箱を片付けた。サンドイッチの入っていたケースを畳むと、お弁当箱の中に入れる。ルチアーノからシャインマスカットの容器を受けとると、潰して箱の中に入れる。帰りの荷物は、持ってきた時の半分になった。
    「じゃあ、そろそろ帰ろうか」
     僕が席を立つと、ルチアーノも黙って後に続いた。ピクニックエリアの奥には、散歩コースの道が続いている。ここを真っ直ぐ進むと、森を抜けて公園の入り口へと戻ってくるのだ。森と言っても、起伏はあまりなく、腹ごなしの運動にはちょうどいい感じだ。
     僕たちは、森の小道を進んでいった。ここまで歩く人はそんなにいないのか、こっちは随分静かだった。木陰になったことで、少しだけ涼しい散歩道を、ルチアーノと一緒に歩いていく。
    「なあ」
     しばらく進むと、ルチアーノが声をかけてきた。少し俯いていて、何となく変な感じだ。違和感を感じながらも、僕は聞き返した。
    「どうしたの?」
    「写真は、撮らないのかよ」
     僕はびっくりしてしまった。ルチアーノから写真について触れられるなんて、予想もしていなかったのだ。てっきり、彼は写真なんて嫌いだと思っていたのだから。
    「撮っていいの? 嫌そうにしてたから、あんまり好きじゃないのかと思ってたけど……」
     僕が言うと、彼は恥ずかしそうに顔を逸らした。少し尖った声色で、突き放すように言う。
    「散々写真を撮ったんだから、今さらそんなこと言っても同じだろ。それに、君は僕を裏切るような奴じゃないしな」
     その言葉に、僕は表情が緩んでしまった。彼の言葉は、今までからは想像もできないものだったのだ。一般人に知られることを何よりも厭うルチアーノにとって、写真はリスクの塊である。僕を信頼してくれているからこそ、写真を許してくれたのだ。
    「誰にも見せないよ。約束する」
     答えると、僕は端末を取り出した。カメラを起動して、レンズをルチアーノに向ける。ルチアーノは、恥ずかしそうな様子で僕の仕草を見ていた。
     僕はシャッターを押した。画面の中のルチアーノが、ぴたりと動きを止める。彼の姿は、永遠の記録となって僕の端末に収まったのだ。いくら時が過ぎても、例え離れ離れになったとしても消えることのない、永遠の幸せの象徴に。今、この瞬間を閉じ込めるかのように、僕は何度もシャッターを押した。
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