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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    流菜🍇🐥

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    主ゆや。学祭で女装させられてる姿を見られたくないゆーやくんと女装姿を見たいTF主くんの話です。

    ##アクファ夢小説

    主ゆやSS メイドカフェ「今度の学祭には、来なくていいから」
     ある日の夜、二人で夕食を食べていると、不意に遊矢がこう言った。彼は気まずそうに下を向いていて、声色にも緊張が籠っている。何かあったのかと訝しみながらも、平静を装って言葉を返した。
    「どうして? 一緒に回るの、楽しみにしてたんだけど」
     彼の学校の学祭は、生徒の関係者のみが参加できる。入校には生徒に配られる入場券が必要になるから、塾長に余りのものを分けて貰ったのだ。遊矢と一緒に学内を回りたいと言うと、塾長は快く券を分けてくれたし、遊矢も満更でもなさそうな顔をしていた。
     それが、急にこのセリフである。どう考えても、何かがあったとしか思えない。不安を押し殺して返事を待っていると、彼は不自然な明るさで答えた。
    「実は、クラスの実行委員を頼まれちゃったんだよ。残念だけど、一緒に回れそうにないから、当日は家で待っててくれないか?」
    「それなら、一人で遊びに行くよ。教室に行けば、遊矢にだって会えるでしょ」
    「それが、居ないかもしれないんだ。わざわざ来てもらうのも悪いから、家で待っててよ」
     いくら言葉をかけても、遊矢は曖昧な言葉でかわしてしまう。自分では隠し通しているつもりなのだろうが、周りから見たらバレバレだ。彼は、自分で思っているよりも、本心を隠すことが下手なのだ。
    「そっか。じゃあ、家で待ってるよ。帰ったら、お土産話をたくさん聞かせてね」
     そう答えながらも、僕に大人しく従うつもりなどなかった。遊矢から聞き出せないなら、別の相手から聞き出せばいい。夕食を口に運びながら、尋ねられそうな友人を思い浮かべた。

     翌日、遊勝塾に向かった僕は、素良の隣を陣取った。デュエルの隙を窺いながら、質問を投げるタイミングを見計る。遊矢と柚子がデュエル場に向かったのを見ると、僕は小さな声で話しかけた。
    「あのさ、聞きたいことがあるんだけど」
     彼は僕の方を見ると、僅かに眉を寄せた。手に持ったキャンディをペロリと舐めると、飄々とした態度で言う。
    「どうしたの? そんな怖い顔して。何かあったの?」
     僕はびっくりしてしまった。まじまじと素良の顔を見つめながら、自分の頬に手を当てる。自分がそんな顔をしていたなんて、全然気がつかなかった。
    「僕、そんな怖い顔してた?」
    「気づいてなかったの? 塾に来たときから、仲間をカードにされたみたいな顔してたよ」
     冗談めかした声で言われるが、全然冗談には聞こえなかった。次元戦争の時のことは、あまり思い出したくなかったのだ。
    「実は、素良に聞きたいことがあって……」
     そう前置きすると、僕はこの前のことを話した。遊矢から聞いた学祭の話である。一通り話終えると、僕は真正面から尋ねた。
    「素良なら、何か知ってるんじゃない? 遊矢が、僕が学祭に行くことを拒む理由を」
     そう言うと、彼はにやにやと笑った。おかしそうに僕を見ると、からかうような声音で言う。
    「そっか。遊矢は、君に来ないでって言ったんだね。まあ、誰だってあれは嫌だよね」
     ひとりごとのように呟くと、くすくすと楽しそうに笑う。完全に、この話題で楽しんでいるようだった。
    「知ってるなら、意地悪しないで教えてよ。遊矢は、どうして僕が学祭に行くのを嫌がるの?」
    「面白そうだから教えてあげるよ。……遊矢のクラスは、出し物でメイドカフェをやるんだ。可愛いと評判の生徒にメイド服を着せて、ジュースとお菓子を出すんだってさ。まあ、それなりに盛り上がってるみたいだよ」
     素良の話を、僕は興味深い気持ちで聞いていた。僕の通っていた学校は生徒が少なかったから、そこまで大規模な出し物はしていなかったのだ。子供たちの行動力に、素直に感心していた。
    「ふーん。それで、どうして遊矢は嫌がってるの?」
    「まだ分からないの? そこでメイド服を着る生徒の中には、遊矢の名前も上がってるんだよ。仮にもプロデュエリストとして活動してるくらいだからね。熱心なファンも多いんだ」
    「ふーん」
     軽く聞き流してから、僕は話を脳内で反芻した。今、彼は何と言っていただろうか。なかなかに衝撃的な話だった気がするが。
    「ええ!?」
     僕は大声を上げてしまう。遊矢が、メイド服を着るなんて。確かに彼は可愛いが、メイドのイメージなんて無かった。
    「うるさいよ。びっくりするでしょ」
     僕の反応を見て、素良は顔をしかめる。でも、僕はそれどころではなかったのだ。遊矢が、メイド服を着るなんて、僕にとっては大事件だ。
    「だって、遊矢がメイド服を着るんだよ。びっくりするに決まってるよ」
     僕たちが話していると、フトシがこっちに近づいてきた。僕たちの間に入り込むと、興奮した様子で言う。
    「二人とも、何話してるんだよ。今、すごくいいとこなんだよ。見ないと損だぜ」
     彼に手を引かれて、僕は観戦スペースへと向かう。その後を追いながら、素良が小さな声で言った。
    「僕が教えたことは、遊矢には内緒だからね。当日こっそり忍び込んで、びっくりさせてやろうよ」
     振り向くと、彼の楽しそうな表情が見えた。これまでと全く変わらない、人を手玉に取るような笑顔だ。少しだけ変わったところを上げるとすれば、その笑顔が本物になったことだろうか。
     それにしても、びっくりした。遊矢が、メイド服を着ることになっているなんて。学祭とは恐ろしいものだ。
     観戦スペースから遊矢の姿を眺めながら、僕は考える。彼がメイドの姿をするのが本当なら、絶対に見に行きたい。でも、彼は僕に女装を見られるのを嫌がっているのだ。彼の気持ちを尊重するなら、行くべきではないだろう。
     そんなことを考えてしまったら、デュエルなんて集中できない。上の空のまま、僕は二人の戦いを眺めていた。

     当日は、すぐにやってきてしまった。前日の晩まで悩んだ末、僕は学祭に行くことにした。せっかくもらったチケットなのだ。使わないともったいないだろう。それに、遊矢のメイド姿が、気になって仕方なかったのだ。
     塾長と一緒に、僕は遊矢の通う学校へと向かった。いつもは越えることのない門を超えて、校舎の中へと入る。素良の話によると、今の時間は遊矢が教室にいて、柚子は学内を回っているらしい。柚子を探しに行く塾長と別れて、僕は一人で教室を目指した。
     校内は、たくさんの人で溢れていた。生徒一人に対して二枚の券が配られるから、訪れる人も二倍なのだ。人が多いに決まっている。新鮮な気持ちになりながらも、僕は遊矢の教室を目指した。知らない学校の中を、看板を見ながら歩いていく。
     二年生の教室は、校舎の三階に並んでいた。遊矢たちのクラスの壁には、画用紙を何枚も使ったポスターで、『メイドカフェ』の文字が並んでいる。ここで間違いなかった。
     僕は、教室の扉をくぐった。メイド服を着た二人の女の子が、僕の前に現れる。楽しそうに僕を囲むと、楽しそうな声で言った。
    「お帰りなさいませ、ご主人様」
     僕は顔を上げた。視線を巡らして、教室内の生徒の姿を観察する。メイドの仮装をしている子は五人で、ほとんどが女の子だ。唯一、遊矢だけが、男の子でメイド服を着ていた。
    「お好きな席にお座りください」
     女の子の一人に言われて、僕は教室内に入っていく。素良が言っていた通りに、女の子たちはみんな可愛らしい顔をしている。窓際の席に腰をかけると、近くで男の子と話していた遊矢に声をかけた。
    「遊矢」
     彼は、ゆっくりとこっちを振り向いた。何気ない仕草で僕を見て、唐突に動きを止める。僕を凝視すると、顔を真っ赤にして言った。
    「○○○!?」
     大きな声で言うと、慌てた様子でスカートの裾を押さえる。彼らが着ているのはディスカウントストアで売られているようなチープものだから、ものすごく丈が短いのだ。裾から見えてる下履きが、妙にセクシーだった。
    「なんでいるんだよ。来なくていいって言っただろ!」
     恥ずかしそうに身動ぎをしながら、遊矢が僕に詰め寄る。真っ赤に染まった顔も、照れているような、怒っているような表情も、かわいくて仕方なかった。
    「どうしたの? 知り合い?」
     遊矢の反応を見て、話し相手の男の子が僕の方に視線を向けた。席を立って彼と視線を合わせると、小さく頭を下げる。
    「初めまして。僕は、遊矢の塾の仲間なんです」
     恋人、とは、さすがに言えなかった。この事を知っているのは、一分の友人とランサーズの仲間たちだけなのだ。遊矢が中学生の間は、公にしない取り決めだった。
    「ふーん。じゃあ、配膳は遊矢にやってもらった方がいいか。飲み物は何にする? ここにメニューがあるけど」
    「サイダーがいいな」
     注文を聞くと、男の子は教室の後ろに歩いていく。そこでは、制服姿の生徒たちがお菓子の準備をしていた。男の子の後を追いながら、遊矢が慌てたように言う。
    「待てよ! まだ、何も言ってないって」
     遊矢の履いているスカートが揺れて、下履きがチラチラと姿を覗かせる。男の子はスカートを履くことがないから、こういうときに無防備なのだ。危なっかしい姿を見ながら、僕は心臓を高鳴らせた。
     後ろの机から、子供たちの賑やかな声が聞こえてくる。遊矢とクラスの女の子たちが、何かを言い合っているようだ。しばらくすると、顔を真っ赤に染めた遊矢が、コップとお菓子の乗った紙皿を持ってこっちに歩いてきた。
    「……お待たせいたしました」
     小さな声で言って、彼は机の上にお皿を乗せる。紙コップに入ったサイダーが、振動で表面を揺らした。お皿の上乗っているのは、個包装のクッキーだった。
    「じゃあ、今から、食べ物がおいしくなる魔法をかけます」
     そう言うと、遊矢はぴたりと動きを止める。潤んだ瞳で僕を見ると、確認するように言った。
    「笑うなよ」
    「笑わないよ」
     答えると、渋々といった様子で手を動かす。胸の前でハートを作ると、照れが滲んだ声で言う。
    「おいしくなーれ」
     僕は、にやけそうになる顔を抑えるので必死だった。恋人が恥ずかしながらメイドさんをする姿は、言葉にできないくらいかわいかったのだ。耳まで真っ赤に染めて、恥ずかしそうに俯く遊矢の姿を、僕は網膜に焼き付けた。
     パフォーマンスを済ませると、彼は待機所へと戻ろうとする。せっかくの、メイド姿の恋人を拝める機会なのだ。逃すわけにはいかなかった。
    「ねぇ、せっかくだから、少し話していこうよ」
     慌てて声をかけると、彼は恥ずかしそうに足を止めた。こちらの様子を伺っている彼に、僕は優しく声をかける。
    「よかったら、向こうに座って」
     逃げ場を失い、彼はためらいながらも向かい側に座った。深く腰をかけると、両手でスカートを伸ばす。
    「来ないでって言ってたのは、これが理由だったんだね。すごく、似合ってると思うけど」
     言葉を選びながら声をかけると、彼はじっとりとした瞳で僕を見た。不満そうに唇を突き出すと、抵抗するような声で言う。
    「そんなの、褒め言葉にならないよ。こんなの、女子が着るような衣装だろ」
    「僕はいいと思うな。かわいい衣装が似合うことに、性別なんて関係ないから」
     遊矢は複雑そうな顔をした。やっぱり男の子だから、かわいいと言われることには抵抗があるのだろう。普段は僕もあまり言わないのだけど、ついつい口にしてしまった。
    「クラスのやつらに押し付けられたんだよ。『メイドカフェはエンタメだから』とか言われて。アクションデュエルとメイドパフォーマンスは、全然違うのに」
     少し拗ねたような態度で、彼は言葉を吐く。いつもの癖で足を開きそうになって、慌てて閉じていた。
    「僕は、同じことだと思うよ。アクションデュエルもメイドカフェも、見る人を楽しませるっていう目的は同じだから」
    「そうかな……」
     話をしていると、さっきの男の子が歩いてきた。僕たちの姿を見ると、冷やかすような視線を向けてくる。その手にはカメラが抱えられていた。
    「お二人さん。よかったら、写真を撮ってかない? 印刷したら、遊矢に持たせるから」
    「お願いしてもいいかな?」
     勝手に話を進める僕たちを見て、遊矢は慌てたように席を立った。男の子の前に立つと、僕から引き離そうとする。
    「勝手に決めるなよ」
    「いいだろ、せっかくの学祭なんたから。ファンの要望に答えるのも、エンターテイナーの仕事だぜ」
     男の子が遊矢に言う。彼の隣に並ぶと、僕も両手を合わせて頼み込んだ。
    「遊矢、お願い。一枚だけでいいから」
    「……分かったよ」
     遊矢は渋々頷く。こんなに乗り気じゃない彼を見るのは初めてだ。いつもは、何をするにも楽しそうなのに。
     男の子が、僕たちの方へとカメラを向ける。僕がピースをすると、遊矢も恥ずかしがりながらそれに応じた。
    「ありがとう。いい思い出ができたよ」
    「印刷されても、誰にも見せるなよ。恥ずかしいから」
     僕に顔を寄せながら、遊矢は恥ずかしそうに言う。そんな姿も、かわいくて仕方なかった。
    「見せないよ。独り占めしておきたいから」
     答えると、僕は紙コップに手を伸ばした。クーラーボックスに入れてあったのか、サイダーはほんのりと冷えている。コップの縁に口をつけると、一気に中身を流し込んだ。
     教室の後ろから、遊矢たちを呼ぶ声が聞こえてくる。彼らに答えるように、遊矢と男の子が待機所へと走っていった。子供たちの様子を見るように、僕は教室内に視線を向ける。どうやら、新しく入ってきた学生らしき女の子が、遊矢を指名しているらしい。
     二人きりで過ごしていると忘れがちだが、遊矢はそれなりにモテるのだ。実際に、何度か告白を断ったという話も聞いているくらいだった。
     女の子は、頬を染めながら遊矢と話している。彼も向けられている好意が分かるみたいで、少し気まずそうにしていた。時折、チラチラとこっちを見ている。僕が微笑みを返すと、再び前を向いた。
     これが、学校での遊矢の姿なのだ。中学生プロデュエリストで、世界を滅ぼしかけた悪魔であり、世界を救った救世主の一人でもある少年は、こうして普通の日常生活を送っている。僕はランサーズとしての遊矢しか見たことがなかったから、なんだか新鮮だった。
     お皿の上を空にすると、僕は静かに席を立った。遊矢に軽く手を振ると、教室の中から出ていく。時計を見ると、まだまだ時間が残っていた。
     素良や柚子は、学校でどんなことをしているのだろう。教室での遊矢の姿を見ていたら、不意にそんなことが気になってしまった。いつも一緒にいるのに、彼らの学校での姿というものを、僕は見たことがなかったのだ。
     素良のクラスは、四階の一番端にあると聞いている。確か、クラスの出し物はお化け屋敷だ。彼がどんなことをしているのか、この目で見てみたいと思った。
     遊矢には申し訳ないけど、やっぱり、学祭に来てよかったと思った。僕の知らない仲間たちの姿を見られるのだ。こんな楽しいことはない。四階へと続く階段を、僕は駆け足で登っていった。
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