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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。TF主くんがルチにアドベントカレンダーを渡す話です。

    ##TF主ルチ
    ##季節もの

    アドベントカレンダー その日が近づくと、町はクリスマス一色に染まる。街路樹はイルミネーションで彩られ、店先には赤と緑の貼り紙が貼られていた。ショーウィンドーのある店には、レースや小さなクリスマスツリーまで飾られている。
     大通りを歩きながら、僕は店先の様子を眺めていた。クリスマスまで二週間を切り、ルチアーノにプレゼントを用意しなければいけない時期が近づいていたのだ。彼はあまり乗り気ではないけれど、プレゼントを期待していないわけではない。誠意を込めた贈り物をしなくては、拗ねてしまうような男の子なのだ。
     とは言っても、クリスマスらしい贈り物というのは難しい。ルチアーノは好みがはっきりしているし、好物は既に贈っているのだ。僕にとっては、ネタ切れの状態が続いていた。
     そんなことを考えながら歩いていると、カラフルなショーウィンドーが視界に入ってきた。大通りに面した雑貨屋が、クリスマスセールを開催しているらしい。立地の抜群にいいショーウィンドーには、ここぞとばかりにクリスマスグッズが並べられていた。小型のツリーにカラフルなレース、プレゼントを想定した防寒具やお菓子まで、品物は多種多様だ。その中で、一際僕の目を引くアイテムがあった。
     それは、アドベントカレンダーだった。クリスマス当日までの数字を書いた箱の中に、小さなお菓子が入っているおもちゃである。一週間タイプの小さなものから、一ヶ月タイプの大きなものまで、何種類か並んでいる。アドベントカレンダーと言ったらお菓子の詰め合わせのイメージがあったが、中には紅茶やコーヒーの詰め合わせもあった。
     僕は、目の前のカレンダーを見つめた。子供の頃は、雑貨屋の片隅で見るこのカレンダーに憧れたものだった。何度か親にねだってみたけど、買ってもらえた記憶はあまりない。今なら、こういうおもちゃも自由に買えるのだ。
     今年のクリスマスは、アドベントカレンダーを買ってみよう。僕ですら経験したことのない文化だから、ルチアーノもきっとないだろう。初めての経験を、二人で分かち合いたかった。
     僕は、店の中へと足を踏み入れた。アドベントカレンダーを渡したら、ルチアーノはどのような反応をするのだろう。楽しみな気持ちで、心臓がドクドクと高鳴った。

    「ルチアーノに、渡したいものがあるんだ」
     そう言うと、彼は呆れた様子で顔を上げた。緑の瞳を冷たく輝かせながら、感情を隠さずに言葉を返す。
    「またかよ。君は本当に貢ぎ物が好きなんだな」
     彼が呆れるのも無理はない。僕は、毎週のようにルチアーノにプレゼントを渡しているのだ。お菓子や紅茶のような小さなものが多かったが、時にはもっと大きなものを渡すこともある。権力者として取引を繰り返す彼にとっては、それが貢ぎ物に見えるらしいのだ。
    「今日は、ただのプレゼントじゃないんだよ。いつもよりも特別なプレゼントなんだ」
     そう言いながら、僕は紙袋から不織布の袋を取り出した。絞られた口にはリボンが飾られ、メリークリスマスのメッセージカードが通されていた。
    「特別なプレゼント? なんだよ、それ」
     眉を寄せながらも、彼はおとなしく袋を受け取った。リボンをほどくと、中に入っていた箱を取り出す。そこに書かれた数字を見ると、納得したように呟いた。
    「ああ、アドベントカレンダーってやつか」
    「知ってるの?」
     予想外の反応に、僕は質問を返してしまった。ルチアーノのことだから、知らないものだと思っていたのだ。彼はにやりと笑うと、からかうような声色で言った。
    「知識としては知ってるよ。クリスマスまでの期間をカウントダウンする、子供向けのカレンダーだろ? こんなものを渡して、僕を子供扱いするつもりかい?」
     その言葉を聞いて、今度は僕が笑みを浮かべる。彼も、子供向けのアドベントカレンダーしか知らなかったのだ。口元に笑みを浮かべたまま、僕は予定していた言葉を告げた。
    「子供扱いなんてしてないよ。箱を見てごらん。これは、大人向けのアドベントカレンダーなんだ」
     彼は、乱雑に箱を持ち上げた。くるりと裏返すと、そこに貼られているシールを見た。
    「なになに? 紅茶のアドベントカレンダー?」
     訝しむような声色で、ラベルの文字を読み上げる。商品内容に目を通すと、じっとりとした視線を向けてきた。
    「なんだよ。わざわざ僕に紅茶を渡してきたのか?」
    「そうだよ。紅茶だけじゃなくて、お菓子も入ってるんだ。一緒にティータイムをすごせたらなって思って」
    「ふーん。わざわざ紅茶を選んだのか。君のことだから、僕が紅茶を好まないことくらい知ってると思ったけどな」
     拗ねたような声色で、ルチアーノは言葉を続ける。ふて腐れたような態度がかわいかった。
    「そのままじゃ飲めないと思って、ガムシロップや砂糖も買ってきたんだ。これなら、少しは飲みやすくなるでしょ」
    「甘くすればいいってもんじゃないだろ。全く、何を考えてるんだか」
     気のない返事をしながら、彼はカレンダーを机の上に放り出す。その隣に、僕はもうひとつの袋を置いた。
    「それだけじゃないんだよ。実は、僕の分のアドベントカレンダーも買ってあるんだ。同じものを買ったから、同じ紅茶とお菓子が楽しめるんだよ」
     ルチアーノの視線が、二つのアドベントカレンダーに向かう。心が揺らいでいるのが、僕にもはっきりと伝わってきた。少しだけ黙った後に、小さな声でこう返す。
    「まあ、どうしてもって言うなら、付き合ってやらなくもないよ」
     どうやら、彼は一緒に紅茶を飲んでくれるらしい。無理矢理付き合わせる形になってしまったけど、経験は経験だ。ありがたく乗ってもらうことにする。
    「じゃあ、明日から始めようか。時間は夕食の後でいいよね」
     僕は言う。今年のクリスマスは、楽しい思い出が作れそうだ。
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