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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。罰ゲームありのUNOで本気を出すTF主くんの話。アイデアをお借りして書いています。詳しいことはくるっぷに。

    ##TF主ルチ

    罰ゲーム 夕食の食器を片付けると、机の隅に置かれていた紙箱を引き寄せた。手のひらに乗るくらいの大きさのシンプルな箱で、パッケージには『UNO』と描かれている。皺が寄り、一部の塗装が剥げた蓋を開けると、中に入っていたカードを取り出した。
    「またそれかよ。よく飽きないな」
     隣から、呆れたような声が聞こえてくる。向かい側の席に座っているルチアーノが、胡座をかきながら僕を見ていた。椅子の上で胡座をかくなんて、器用で変な座り方だ。少し呆れを感じながら、目の前の少年に言葉を返した。
    「またって、この前始めたばかりでしょ。もう飽きたの?」
    「飽きるに決まってるだろ。色か数字が同じカードを出していくだけの、単純なゲームなんだから。バラエティカードもあるっちゃあるけど、二人だと意味が無いからな」
     背凭れに身体を預けながら、ルチアーノは退屈そうに言う。悔しいけれど、彼の指摘はもっともだった。このゲームは、二人遊びには向いていない。ルール通りの遊び方では、すぐに飽きてしまうだろう。
     でも、僕には秘策があったのだ。彼の興味を引くような、少し攻めたローカルルールを、僕は知っているのである。この秘策を使えば、彼は絶対に遊びに応じると思った。
    「じゃあ、こういう風にしない? 負けた方が、罰ゲームをするんだ。それなら、勝ち負けに緊迫感が生まれるでしょ」
     僕が言うと、彼は興味を持ったようだった。背凭れから身体を離すと、僕の方に身を乗り出す。口元を僅かに歪めると、楽しそうに笑いながら言った。
    「それって、デュエルモンスターズのアンティルールみたいなものかい? 君もそういうことを考えるんだな」
    「そこまで大袈裟なものじゃないよ。負けた方が、ちょっとだけペナルティを負うんだ。恥ずかしいことをする、とかね」
     僕が言うと、彼はキラリと目を輝かせた。どうやら、完全に彼の心を掴んだらしい。乗ってきてくれるみたいだった。
    「いいぜ。あとになって後悔しても知らないからな」
     にやりと笑うと、さっきまでの態度が嘘のように、率先してゲームの準備を始める。手札を配ると、山札を机の中央に置いた。
    「で、罰ゲームはどうするんだ? これはどっちが負けてもおかしくないゲームだから、恥さらしになるようなことはできないよな」
     彼は、しれっととんでもないことを言う。聞き捨てならない内容に、思わず反論してしまった。
    「待ってよ。いつもの罰ゲームは、僕が受ける前提で決めてたの?」
     尋ねると、彼はきょとんとした顔をした。すぐに笑みを浮かべると、甲高い笑い声を上げる。
    「今さら気づいたのか? 君は勘が悪いやつだな」
     これには、僕にも思うことがあった。このままやられっぱなしでは、負けたみたいで悔しい。なんとかして、ルチアーノを見返したかった。
    「じゃあ、今日の罰ゲームは僕が決めるね。絶対、ルチアーノに恥ずかしい思いをさせてあげるから、覚悟して」
     僕の言葉に、ルチアーノはにやりと笑った。僕を煽るような、意地悪な笑みである。崩してしまいたい笑顔だった。
    「いいぜ。後になって後悔するなよ」
    「罰ゲームだけど、こういうのはどう。負けた方が、えっちの時にされると嬉しいことを言う。これなら、どっちかが不公平ってことにはならないでしょ」
     そう言うと、彼は一瞬だけ表情を変えた。すぐにいつもの笑みに戻って、余裕綽々に足を組み直した。
    「分かったよ、聞き入れてやる。……絶対に後悔させてやるからな」
    「そのセリフ、そっくりそのまま返すよ」
     お互いに言葉を吐くと、しばらくの間睨みあった。真っ直ぐに視線をぶつけると、配られた手札を掴み取る。
    「「デュエル!」」
     僕とルチアーノの声が、リビングの中に響き渡る。負けられない勝負が、静かに幕を開けた。

     それから数分後、僕は追い詰められていた。僕の手には、三枚の手札が握られている。赤色が二枚と、緑色が一枚だ。場に出ているのは青の六で、僕がなんとか引いたものだ。対するルチアーノの手には、二枚の手札が握られていた。
    「なんだよ。大口を叩いてたわりには、負けそうになってるじゃないか。これなら、今回の勝ちも僕のものだろうな」
     にやにやと笑いながら、ルチアーノが楽しそうに僕を煽る。余裕綽々な笑顔を見上げながら、僕は唇を噛んだ。
    「…………ターンエンド」
    「僕のターンだな」
     楽しそうに宣言すると、彼は手札の一枚に手をかけた。くすくすと吐息を漏らしながら、青色の上に重ねる。
    「僕は、青の三を場に出すぜ。UNOだ」
     にやりと口元を歪めながら、彼は勝利を確信したように告げる。もう、手の打ちようがなかった。
    「僕の、ターン」
     それでも、僕は諦めていなかった。どんな状況でも、逆転のチャンスがあるのがカードゲームというものだ。信じていれば、絶対に勝てると思った。
     僕の手札は、赤の四と九、緑の四の三枚だ。同じ数字はまとめて出すことができるから、色を赤に変えてしまえば、僕は勝つことができる。このドローにかけるしかなかった。
    「出せるカードが無いから、一枚引くね」
     そう言うと、僕は大きく深呼吸をした。山札の上に手を乗せると、目を閉じて意識を集中させる。息を吸い込むと、呪文を唱えながらカードを捲った。
    「ディスティニードロー!」
     僕の頭の中で、光のエフェクトが宙を駆け抜ける。目を開けてカードを見ると、そこには期待以上のカードが握られていた。
    「来たっ……!」
     呟いてから、僕はカードを場に出した。それは、ドローフォーのワイルドカードだ。相手に四枚引かせた上に、色まで変えられる無敵のカードである。それを見ると、ルチアーノは悔しそうに顔を歪めた。
    「僕は、ドローフォーを場に出すよ。色は、赤を宣言する」
    「なんでそんなに引きがいいんだよ……!」
     唇を噛みながら、ルチアーノはカードを四枚引いた。勝利目前まで持ち込んだ手札が、一気に振り出しに戻っていく。こういう形勢逆転があるのが、カードゲームというものなのだ。
    「これで、僕はエンドだよ。ルチアーノのターンだ」
    「僕のっ! ターンっ!」
     絞り出すような声で宣言すると、彼は手札を睨み付けた。どうにかして、状況を打破できないか考えているのだろう。ここで色を変えられたら、勝負の行方は分からなくなる。固唾を飲んで彼の反応を窺った。
    「赤の五を出して、ターンエンドだ……」
     カードを置くと、ルチアーノは悔しそうに宣言した。もう、僕の勝ちはすぐそこまで来ている。心臓を高鳴らせながらも、冷静さを保とうと意識した。
     次のターンも、ルチアーノは色を変えられなかった。僕の手札は二枚。赤と緑の四だ。ルチアーノは僕が二枚で上がるなんて考えていないだろうから、確実に上がることができる。彼の悔しがる顔が楽しみだった。
    「僕のターンだね」
     そう言うと、僕は二枚の手札を手に取った。数字が見えるように重ねると、場に出ているカードの上に乗せる。ルチアーノの表情ががらりと変わった。
    「僕は、赤と緑の四を出すよ。これで上がりだ」
    「はぁ~!」
     ルチアーノの甲高い声が、僕の両耳に突き刺さる。彼を出し抜いた高揚感で、背筋がゾクゾクと震えた。
    「なんだよ! それ!」
    「これが、ディスティニードローの力だよ。びっくりしたでしょ?」
    「ディスティニードローって、そんなのただの神頼みだろ! 偶然勝ったくらいで、嬉しそうな顔するなよ!」
     僕を睨み付けると、彼は手札を場に出ているカードの上に叩きつけた。ぐしゃぐしゃと混ぜ合わせ、山札と一緒に切り始める。
    「もう一回だ。次は、僕が勝ってやるからな!」
     唾が飛びそうな勢いで言うと、次の手札を配り始めた。
    「ねぇ、罰ゲームの約束、忘れてないよね」
     僕が諭すと、唇を噛んだまま動きを止める。捻り出すような声で言葉を返した。
    「そんな恥ずかしいこと、言うわけないだろ!」
    「ふーん。ルチアーノは僕との約束を破るんだね。イリアステルっていうのは、それくらいの軽さで約束をするんだね」
     自分で口にしながら、めちゃくちゃな理論だと思った。イリアステルという組織が横暴なのは、太古の昔から知られていることである。約束なんて簡単に破るし、不要になった人間は処刑するのだ。こんな脅しをかけたくらいじゃ、彼の意思は変わらないと思っていた。
     しかし、その予想は外れた。ルチアーノは悔しそうに下を向くと、苦々しげな声でこう呟いたのだ。
    「うぅ…………分かったよ」
     僕は、慌てて声を飲み込んだ。予想外の反応だったから、驚きの声を上げそうになったのだ。そんなことをしたら、彼の気は変わってしまうだろう。
    「一度しか言わないからな。よく聞いとけよ」
     そう言ってから、迷ったように口をモゴモゴと動かす。しばらく間を空けてから、覚悟を決めたように口を開いた。

    「頭を撫でてくれるところ……」

     僕は、黙って机に突っ伏した。こんなの、破壊力がありすぎる。冷静ではいられなかった。
    「何してるんだよ」
     正面から、ルチアーノの冷たい声が聞こえてきた。ゆっくり顔を上げると、真っ赤に染まった頬が視界に入る。恥ずかしがってはいるが、瞳はひやりとしていた。
    「あまりにもかわいかったから…………」
     素直に答えると、両目を吊り上げて僕を睨む。そんなところもかわいいと思うのだけど、口には出さないことにする。
    「馬鹿にしやがって……。次こそ、君に辱しめを受けてもらうからな」
     お腹の底から絞り出すような声で、彼は勝利への意気込みを口にする。それに応じるように、僕も次の手札に手を伸ばした。
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