Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

    文章や絵を投げます

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💕 🍇 🐥 🍣
    POIPOI 437

    流菜🍇🐥

    ☆quiet follow

    TF主ルチ(ルチ視点)。クリスマスの夜であることを意識してしまうルチとそこまでは考えてないTF主くんの話。微センシティブです。

    ##TF主ルチ
    ##季節もの

    クリスマスの夜 風呂から上がると、積み上げられた着替えに手を伸ばした。一度白い布地を持ち上げ、少し悩んでから黒のレースに持ち変える。両手で広げると、面積の小さい布切れが視界に飛び込んできた。
     こんなものを身につけるなんて、正気の沙汰とは思えない。男を喜ばせるために恥を晒すなんて、人間の中でも一部の阿呆しかしていないだろう。神の代行者どころか、真っ当な思考を持つ人間にとっても、あり得ない行為だと思われた。
     黒のレースから手を離し、いつもの下着に手を伸ばす。柔らかい素材で作られた、子供じみたデザインの下着は、神が僕に与えた衣服のひとつだった。真っ白なのは、ズボンから透けて見えることが無いようにという配慮なのだろう。
     しばらく下着とにらめっこして、僕は大きくため息をついた。こんな下らないことで頭を悩ませているなんて、神の代行者のやることではない。俗世の慣習なんか放っておいて、いつも通りに過ごせばいいだけなのに。僕は何を考えているのだろう。
     下着に足を通して、やはり手が止まってしまった。脳裏に浮かぶのは、青年のだらしない笑顔である。愛情と下心の混ざったその表情は、少し間抜けで、でも、決して不快では無いものだった。優しく頭を撫でる手のひらも、激しく肌を愛撫する指先も、全てが彼の想いを示している。彼に触れられてしまうと、僕は抵抗ができなくなってしまうのだ。
     クリスマスの夜という言葉が、恋人たちにとって何を示すのかを、分からないような僕ではない。彼と過ごした一年の間に、僕は俗世の文化を学習したのだ。今頃、世間の恋人たちは寄り添いながら愛を交わしていることだろう。繁華街の路地裏にひしめくビルたちは、いつも以上に眩く煌めいているはずだ。
     彼は、期待しているのだろうか。僕に愛を与え、相応の対価を得られると考えて、クリスマスの夜を迎えているのだろうか。僕が俗世の文化を理解していることは、彼も承知の上だろう。あれだけ手を尽くしたおもてなしをしてくれたのは、対価を求めているからかもしれない。
     だとしたら、僕も応じなくてはならない。俗世の文化に対して無知だと思われるのは、馬鹿にされているようで嫌だった。僕の知識は、日々更新されるデータベースと連動している。彼が知っていて僕が知らないことなんて、この世には無いはずなのだ。
     僕は、白い布地を放り出した。黒のレースを手に取ると、思いきって足を通す。女用の小さな布地でも、僕の未成熟な身体はすっぽりと収まった。僅かに感じる窮屈を抑え込みながら、普段と変わらない寝間着でそれを隠す。
     冬の寝間着を纏ってしまえば、僕の姿はいつもと何一つ変わらなかった。もこもこした生地でできたズボンは、シルエットを隠してしまうのだ。鏡に映る自分の姿を確認してから、僕はゆっくりと部屋を出る。あまり激しい動きをすると、下着のゴムが肌に食い込んでしまうのだ。
    「上がったよ」
     声をかけると、青年は僕に視線を向けた。変化に気付かれないように、平静を装ってベッドに腰をかける。マットレスが沈んで、下半身が締め付けられた。
    「じゃあ、行ってくるね」
     声をかけてから、青年は風呂場へと向かっていく。なんとか、気づかれずにやり過ごせたようだ。安心して、体内から空気が溢れる。ベッドから立ち上がると、下着の位置を整えてから、布団の中に潜り込んだ。
     横になると、下着の違和感はさらに弱くなった。枕元にあったデュエル雑誌を手に取ると、見るともなしにページを捲る。開いたページにプラシドの写真が載せられていて、声を上げそうになってしまった。慌てて目次を見ると、『チームニューワールド特集』の文字が太字で書かれている。
    「いつの間にこんなの買ったんだよ」
     呟いてから、僕は雑誌を閉じた。自分のインタビュー記事を見たところで、面白くもなんともない。
     別の雑誌を手に取ると、そこにもチームニューワールドの記事が載っていた。こんなものを集めているなんて、彼は何を考えているのだろう。枕元に置いているくらいだから、気持ち悪いことでも考えているのだろうか。
     そうこうしているうちに、遠くから足音が聞こえてきた。青年が風呂から戻ってきたのだ。
    「お待たせ。何してたの?」
     ベッドまで歩み寄った彼が、僕の手元を覗き込む。雑誌を見ていることに気がつくと、少し恥ずかしそうに笑った。
    「それ、買っちゃったんだ。ルチアーノのインタビューが読みたかったから」
    「確かに、これなら僕の写真も載ってるよな。もしかして、いかがわしいとこに使ってたのか?」
    「そんなことないよ!」
     答える声は、どこか慌てていた。もしかしたら、本当に使っているのかもしれない。想像もしたくなかった。
     話が途切れると、彼は僕の隣に潜り込んできた。いよいよ、恋人たちの夜というものが始まるのだ。想定していたとしても、経験の無いことには緊張する。僅かに身体が強張るのを感じた。
     彼の手が、僕の方へと伸ばされた。しかし、その手のひらは僕の前を通過して、手元にあった雑誌に延びていく。雑誌のページを捲ると、彼は嬉しそうに語り始めた。
    「僕は、この特集が好きなんだ。ルチアーノの写真がしっかり載ってるでしょう? いつもは写真なんて撮らせてくれないから、大切にしてるんだ」
    「ふーん」
     気の無い返事をすると、今度は別の雑誌に手を伸ばした。ページを捲ると、僕のインタビュー記事を探し当てる。嬉しそうに笑みを浮かべながら、嬉々として言葉を続けた。
    「こっちは、インタビューが好きなんだよ。こんな真面目な受け答えなんて、僕の前ではしないでしょう? 本当のルチアーノを知ってるのは僕だけなんだって思うと、すごく嬉しいんだ」
     彼は、楽しそうに言葉を続けていく。ペラペラと話をするだけで、少しも触れてくる気配はなかった。
     もしかしたら、話の後に求めてくるのかもしれない。そう思ってしばらく待ってみたが、触れられる気配は少しもない。雑誌のページを捲りながら、喧しく喋るだけだ。いつもは嬉々として触れてくるのに、今日に限って反応がない。いつ触れられるのか分からない緊張感に、表面装甲は過敏になっていった。
     下半身を締め付ける下着が、少し窮屈に感じられる。気付かれないように指先で触れてみると、痺れるような感覚があった。このままでは、僕の身体がおかしくなってしまう。そう思って、迷いながらも彼に声をかけた。
    「おい」
     青年は、手元の雑誌から視線を上げた。ぱちくりと瞬きをすると、不思議そうな顔で僕を見る。
    「どうしたの?」
    「…………しないのかよ」
     思いきって尋ねると、ぽかんとした顔を浮かべた。すぐに意味に気がついたようで、微笑みを浮かべながらこう返す。
    「ルチアーノが乗り気じゃないなら、するつもりはないよ。別に、えっちだけが愛状表現になるわけじゃないからね」
     あっさりとした答えに、なんだか拍子抜けしてしまった。彼は、行為を求めているのではないのだろうか。一方的に奉仕をしておいて対価はいらないなんて、そんな都合のいいことを言う男とは思えなかった。
    「君は、スキンシップを求めてるんじゃないのかい? 行為という対価を得るために、僕に寿司やプレゼントを貢いだんだろ。今なら応じてやるから、気が変わらないうちに言えよ」
    「そんなつもりはないよ。お寿司を取ったりプレゼントをあげたのは、ルチアーノに喜んでほしかったからなんだ。君が喜んでくれたら、僕には十分な対価なんだよ」
     彼は言う。その物言いが嘘だとは思えなかったが、なんだか腑に落ちなかった。普段の彼なら、こういうときは嬉々として僕を求めてくるはずなのだ。こんなにもおとなしいと、少し気味が悪い。
     そうこうしている間に、下半身に熱が集まってきた。小さな下着の中に収まっているものが、解放されたくて蠢いている。もう、これ以上は待てなかった。
    「そんなことを言って、本当は期待してるんだろ? 素直になりなよ」
     平静を装って言うと、彼は意地悪そうに微笑んだ。僕の頭を撫でると、からかうような声色で言う。
    「期待してるのはルチアーノの方でしょう?」
     図星を突く発言に、身体が熱くなるのを感じた。首を真横に振ると、慌てて否定の言葉を口にする。
    「そんなわけないだろ! 僕が、期待なんか……」
    「隠さなくていいんだよ。ルチアーノがそわそわしてることくらい、お風呂を出たときから気づいてたんだから」
     彼の指先が、僕の寝間着に触れた。ズボンのウエストをなぞってから、ゆっくりと中に侵入してくる。指先は踊るように肌を撫でると、下着の上からそこにあるものをなぞった。刺激が走り、小さな声が漏れてしまう。
    「んっ…………」
     彼は怯むことなく手を動かす。僕の履いている下着を、指先だけで検分しているようだった。裾についたレースをなぞると、耳元に口を近づけて言う。
    「レースの下着を履いてるの? えっちだね」
    「それは、君が期待してると思って…………」
     答える声は、最後まで紡げなかった。彼の指先が、下着の中まで侵入してきたのだ。焦らされた身体は、過剰なまでに刺激に反応する。甘い悲鳴を漏らす僕を見て、彼は嬉しそうな声で言った。
    「今日は、たくさんしてあげるからね」
     いつの間にか、立場が逆転していた。こんなはずじゃなかったのに。そう思いながらも、僕は彼の指先に身を委ねた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💒💒💒🙏🙏💞
    Let's send reactions!
    Replies from the creator