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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。ごっずキャラで某チェックのパロが書きたかったけど内容を考えるのが大変だったからTF主くんとルチで間接的に書きました。ルチは全問正解しそう。

    ##TF主ルチ
    ##季節もの

    審美眼 お正月のテレビは、特番ばかりやっている。チャンネルをいくら変えても、そこに映るのは知らない番組の特別編ばっかりだ。中には定番の番組もあるけど、それも次々と入れ替わってしまう。何度かザッピングして、結局テレビを消す。そんなことを繰り返していた。
     それでも、朝起きてリビングに向かうと、僕はテレビをつけてしまう。過去に面白い番組を見た思い出が、どうしても忘れられなかったのだ。ホットミルクをかき混ぜながら、テレビのリモコンを手に取った。電源を入れると、当てもなくチャンネルをザッピングする。
     映し出された番組の中に、珍しく見覚えのあるものを見つけた。テレビで有名なタレントや有名なデュエリストたちが、目隠しをされながらワインを飲まされているのである。ワインは高いものとそうではないものの二種類があり、どちらが正解かを当てる企画になっているらしい。過去にもこんな番組をやっていた気がするから、これはお正月の定番なのだろう。
     テレビの中のタレントたちは、次々と札を上げていく。正解と間違いは半々くらいで、既に部屋にいるタレントたちも、心配で仕方ないみたいだった。並べられた椅子に腰をかけながら、不安な様子でモニターを見ている。
     次にワインを飲んだのは、シティ出身のデュエリストだった。不安そうに頭をひねりながら、二択の札を上げている。間違っているとも知らず根拠を語る姿を見て、スタジオのタレントたちがツッコミを入れた。とは言え、間違っても仕方ないのだ。不正解のワインだって、数万円はする高級ワインなのだから。
     全員のテストが終わったら、いよいよ正解発表だ。司会役の芸能人が、正解の扉を開けて部屋に入っていく。正解した人は一流としてもてなされ、外した人はランクが下がるらしい。シンプルで分かりやすい番組だった。
    「朝っぱらから画面を睨み付けて、何の番組を見てるんだよ」
     不意に、後ろから声が聞こえた。振り返ると、ルチアーノが呆れたように僕を見つめている。いつの間に戻ってきたのだろう。全く気がつかなかった。
    「面白い番組を見つけたんだよ。超高級ワインと高級ワインを飲み比べて、どっちが高いかを当てるゲームなんだって」
    「ああ、あの番組か。正月はいつもやってるよな。君は、ああいうのが好きなのかよ」
     僕の説明を聞くと、彼は何事も無さそうに言った。既に知っている様子なのを見ると、この番組は定番なのかもしれない。
    「好きっていうより、面白いなって思っただけだよ。高級ワインの見極めなら、知識のある人なら分かりそうだしね」
     実際に、知識のありそうな出演者は、迷うことなく正解していた。僕にはよく分からないが、明確な違いがあるのだろう。
    「まあ、ワインの味は品種によって違うからな。君は未成年だから、飲んだこと無いんだっけ?」
    「無いに決まってるでしょ」
     そんなことを言っているうちに、審査は次のお題へと変わっていた。画面に示されたのは、オーケストラの演奏だ。片方は何億円もする楽器で、もう片方は数百万円の練習用楽器らしい。練習用もなかなかにお金がかかっていると思うのは、僕が庶民だからだろうか。そんなことを考えながら画面を見ていると、ルチアーノが僕の袖を引いた。
    「なあ、せっかくだから、君も挑戦してみようぜ」
    「えっ?」
    「テレビ越しでも、演奏の音は分かるだろ。どっちが正解の音色なのか答えてみろよ」
     僕は、再び画面に視線を向けた。テレビの中では、選ばれた挑戦者たちがスタジオの中を移動している。楽器に背を向けるように椅子が並べられているのは、外見で分かってしまうからなのだろうか。
    「いいけど、間違っても笑わないでよ」
     答えてから、僕はテレビの前に近寄った。画面の中から、ひとつめの楽器の演奏が聞こえてくる。しばらくすると、今度はもうひとつの演奏が流れてきた。耳を済ませて聞いてみても、どちらが正解かは分からなかった。
    「これは、けっこう分かりやすいよな。どっちだと思った?」
     にやにやと笑いながら、ルチアーノは僕に視線を向ける。楽しそうに笑みをこぼしながら、選択を迫ってきた。
    「Aかな。なんか、音がはっきりしてた気がする」
    「ふーん。それで最終確定かい?」
     そう言われると、不安になるのが人間と言うものだ。ただでさえ何も分からなかったのだ。不安で仕方なかった。
    「えっ。……もう一度聞いていい?」
     耳を澄ませると、テレビから聞こえてくる音に意識を向ける。二回聞いても、何が正解かは分からなかった。
    「やっぱり、分からないよ。Aの方が聞きやすかったと思うだけで」
     僕が言うと、ルチアーノはにやりと笑った。意地悪な笑みを浮かべながら、からかうような声音で言う。
    「それが、君の感性なんだな。なるほど」
     しばらく画面を見ていると、正解が発表された。何億円もする高級楽器は、Bの演奏だったらしい。きひひと笑みを浮かべながら、ルチアーノは僕の服を引っ張った。
    「外れだな。やっぱり庶民は庶民だ」
    「仕方ないでしょう。演奏なんて滅多に聞かないんだから」
     次の審査は、食べ物だった。僕を試せないのが悔しいのか、ルチアーノは退屈そうにソファに座る。出演者の回答を散々に扱き下ろす彼を見て、僕はこっそりと胸を撫で下ろした。
     食べ物が終わると、今度は盆栽の審査になった。鑑賞系のお題に、ルチアーノが楽しそうに僕を見る。
    「これは食べ物じゃないから、君にも参加できるな」
     当たり前だが、僕は盆栽など見たことがない。画面を見つめたところで、何ひとつ違いが分からなかった。世間ではわびさびなどと言うが、知識のない人にはどれも同じに見えるのだ。
    「どっちだろう。Aの方が豪華だけど、盆栽はわびさびって言うし……。やっぱりBかな……?」
     ぶつぶつと言葉を漏らしながら、僕は画面を見つめる。どれだけ見つめても、違いなど分からないのだ。直感で選ぶことにする。
    「Bにするよ。間違ってても笑わないでね」
    「ふーん。そっちを選ぶのか」
     にやにやと笑いながら、ルチアーノは画面に視線を向ける。しばらくすると、正解が発表された。どうやら、プロが整えた盆栽はBの方らしい。当たりを引き当てられたことに、ホッと胸を撫で下ろす。
    「Bで合ってたんだ。良かった」
    「ちっ。外しやがって。つまんねーの」
     安心する僕とは裏腹に、ルチアーノはあからさまな悪態をついた。悔しいのは分かるが、あまり品の良くないたいどである。
     それからも、僕は審査に挑戦させられた。ダンスや生け花を見せられ、どちらがプロの技術なのかを当てさせられる。僕には何も分からないから、勘と感性で答えるしかなかった。
    「四問中二問か。まあ、庶民にしては良い方かな」
     少し口角を上げながら、ルチアーノは言葉を吐いた。少し笑い声が控えめなのは、思っていたよりも正答率が高かったからだろう。少し悔しい思いをしているのかもしれない。
     それよりも、僕には気になることがあった。僕が問題を答えた時の、彼の反応である。正解を選んだかそうでないかで、反応が違うような気がしたのだ。
    「もしかして、ルチアーノは全部分かってたの? どっちが正解で、どっちが間違いなのか」
    「当たり前だろ。僕は、治安維持局の長官だったんだぞ。こんな簡単なことが分からなくて勤まるかよ」
    「そっか……」
     やっぱり、分かっていたのだ。こんなことなら、もっと観察しておけばよかった。彼は怒るかもしれないが、馬鹿にされずに済んだだろう。
    「君を試すのは、けっこう面白かったよ。来年もやろうな」
     顔を歪める僕を横目で眺めながら、ルチアーノはにやにやと笑う。彼が楽しかったのなら、僕も本望だ。彼は、自分が楽しいと思うことしかしないのだから。
    「来年も、一緒にいようね」
     答えると、彼の手を握った。少し強張りはしたものの、その腕は素直に僕を受け入れてくれる。しっかりと手のひらを握りしめながら、僕は彼の方に身を寄せた。
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