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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。ルチ視点。ルチがTF主くんに引っかけクイズを出す話。

    ##TF主ルチ

    引っかけクイズ リビングのソファに腰を下ろすと、僕はテレビのリモコンに手を伸ばした。赤外線送信部をテレビに向けると、目的も無くチャンネル選択のボタンを押す。画面が黒く染まったかと思うと、少し遅れて映像と音声が映し出された。テロップやナレーションで内容を判断すると、再び選択ボタンを押す。
     何度チャンネルを切り替えても、そこに興味深い情報は無かった。ゴールデンタイムと呼ばれるこの時間帯に流されるのは、ほとんどが内容の無い番組ばかりなのだ。芸能人が有名店のメニューを食べているだけの番組や、インターネットに上げられた動物動画を紹介する番組ばっかりだ。中にはクイズ番組も混ざっているが、大抵はどこかで聞いた話ばっかりだった。
     適当にチャンネルを変え続けて、僕は一度手を止める。そのテレビ局が放送していたのは、くだらないクイズ番組だったのだ。いや、内容を見た限りでは、クイズ番組とすら言えないかもしれない。引っかけクイズを出して珍回答を誘発する番組なんて、ただの前時代的なバラエティにしかならないだろう。
     それでも僕が手を止めてしまったのは、その番組に興味深さを感じたからだ。というのも、その子供の遊びのような引っかけクイズは、多くの出演者を騙していたのだ。冷静に考えれば分かるような言い回しなのに、解答者たちにはほとんど見えていないようだった。一番に答えないといけないという焦燥感によって、頭を回転させる余裕がなくなっているのだろう。次々と解答者を罠に仕掛けていく様子は、見ていて清々しいものだった。
     芸能人たちの珍回答を眺めていると、キッチンから足音が近づいてきた。夕食の洗い物を片付けた青年が、リビングへと戻ってきたのだ。流れるように僕の隣に歩み寄ると、隣の席に腰を下ろす。流れていたテレビに視線を向けると、彼は奇妙なものでも見たかのように呟いた。
    「珍しいね。ルチアーノが、こういう番組を見てるなんて」
    「僕だって、クイズ番組くらい見るさ。こんな子供じみた引っかけに騙される人間の姿なんて、普段なら滅多に見られないだろ」
     口角を上げながら答えると、彼は納得したように息を吐いた。しばらくテレビに視線を向けると、苦笑いの混ざった声色で言う。
    「ルチアーノらしい理由だなぁ。確かに、大人が下らないことをしてる姿って、普段はあんまり見ないかもしれないけど……」
    「日頃どんなに取り繕ってても、人間は間抜けだってことだろうな。まあ、テレビ番組の演出だから、少しはやらせもあるんじゃないか」
     青年の姿を横目で眺めると、僕は再びテレビに視線を向ける。画面の中のスタジオでは、解答者となる芸能人が入れ替わっていた。司会者に話を振られた人間たちが、次々に意気込みを語っていく。しかし、その気合いも最初のうちだけで、すぐにスタジオは爆笑に包まれた。
     人間たちの頓痴気な解答を眺めながら、僕は思考システムの隅で考える。隣に座っている青年は、この手のクイズに解答できるのだろうか。常日頃から間抜けなことばかり言っている彼に、まともな解答ができるとは思えない。もしかしたら、テレビに映っている芸能人以上に、頓痴気な解答をするのではないだろうか。
    「君って、この手のクイズに引っかかりそうだよな。君が解答席に座ったら、もっと面白いものが見られそうだぜ」
     同じようにテレビを見ている青年に視線を向けると、僕は口角を上げながら呟いた。さすがに心外だと思ったのか、彼は微かに表情を歪める。ちらりと僕の方に視線を向けると、苦々しい声色で言った。
    「そんなことないよ。デュエリストを目指してるなら、冷静さを保てなきゃだめなんだから」
    「じゃあ、テレビの問題に答えてみろよ。一問でも間違えたら、君が引っかかりやすいってことになるだろ」
    「いいよ。なら、答えてあげる」
     売り言葉に買い言葉の要領で、彼は肯定の言葉を語る。予想以上に簡単に乗ってきたことが嬉しくて、僕は思わず口角を上げた。テレビの画面に視線を戻すと、期待を込めて次の問題を待ち構える。ひとつ前のチームはすぐに決着がついたから、新しいチームを待たなければならなかった。
     司会者のトークが一段落すると、スタジオは一気に静かになる。よくある効果音が流れたかと思うと、新しいクイズが出題された。テレビ画面の下半分を埋めるように、テロップの枠が映し出される。それから何秒か経った頃に、テレビの中の解答者がボタンを押した。彼らが解答するのに合わせて、隣に座っていた青年も解答を告げる。
     正解か不正解かを示す効果音が鳴ると、今度は新しい問題が出題される。このクイズの解答権は一度しかないから、間違えたら問題が流れてしまうのだ。なんとか点数を稼ごうとして、テレビの中の解答者はボタンを連打する。その姿を追いかけるかのように、青年は答えを重ねていった。
    「ほら、一度も間違えなかったよ」
     クイズの出題が一段落すると、彼は勝ち誇った顔で口を開く。そんな自信満々の横顔を、僕は呆れながら眺めていた。僕が見た限りこの男は、自分の分かる問題だけを答えているのである。一目では分からない問題が出題された時には、明らかに様子を見てから答えていたのだ。
    「そんなの、ずるしてるんだから当たり前だろ。答えが分かってから解答してるんだから、全問正解にもなるだろ」
     僕が横から口を挟むと、彼は悔しそうに顔を歪める。表情を変えているということは、ある程度は自覚があるのかもしれない。険しい表情のままこちらに視線を向けると、彼は慌てたように言葉を重ねた。
    「そんなことしてないよ。ちゃんと、自分で考えて答えてるって」
    「本当かよ。怪しいな」
     眉を歪めながら問い詰めると、彼は大人しく引き下がった。僕の前から身体を離すと、不満そうな声色で言い返す。
    「なら、ルチアーノが問題を出してよ。自分で選んだ問題なら、すぐには答えが出てこないでしょ」
    「いいぜ。引っかけクイズだったら、どんな問題でもいいんだよな。絶対に、君が引っかかるクイズを探してやる」
     突きつけるように宣言すると、僕は思考システムをインターネットに接続する。情報の海の中を掻き分けると、目的の情報がないかを探していった。サイト上に溢れる膨大な情報の中から、彼が引っかかりそうなクイズを引っ張り出す。十個ほど問題を見繕うと、僕は意識をオンラインから切り離した。
    「じゃあ、出題するぜ。『三つの花束と二つの花束があります。合わせたら何束になるでしょう?』」
    「えっ? えっと…………ちょっと待って…………」
     僕の出題した問題を聞くと、彼は考え込むように首を捻った。なんとか答えを絞り出そうと、口の中でぶつぶつと何かを呟いている。
    「ほら、とっとと答えろよ」
    「待って……。普通に足したら五束だけど、これは引っかけクイズなんでしょ。何かトリックがあるはずで……」
    「残念。時間切れだ」
     いつまでも考え込んでいる彼を見て、僕は強引に話を切り上げる。制限時間を設けておかないと、いつまで経っても答えが出ないと思ったのだ。スピードを求めるクイズではないとはいえ、いつまでも待ってはいられない。彼の言葉を遮ると、用意していた答えを口にした。
    「答えは一束だ。花束がいくつあっても、合わせたら一つの大きな花束になるからな」
    「ああっ……! 確かに……!」
     僕の言葉を聞くと同時に、青年は悔しそうに声を上げる。それなりに悪意のある引っかけだったが、彼は不満には思わなかったようだ。というもの、僕が出題のために選んできた問題は、最低限の理屈が通っているものばかりなのだ。よほど意地悪な出題をしない限りは、文句を言われることはないだろう。
    「次の問題だぜ。かくれんぼをしている子供が六人います。三人が見つかったら、残りは何人?」
    「えっと、かくれんぼだから…………二人…………?」
    「ちっ。こいつは引っかからなかったか。次の問題だ」
     同じようなやり取りを繰り返しながら、僕は出題を重ねていく。出題された問題を噛み締めるように、青年は何度も首を傾げていた。中には時間内に解答できるものもあったが、大半は時間切れまで考え込んでいる。結局、彼がすぐに答えられたのは、十問中三問だけだった。
    「ほら、やっぱり答えられてないじゃないか。テレビを見てる時だって、正解が出てから答えてたんだろ」
    「そんなことないよ。テレビの問題は、ちゃんと答えが分かってたんだから。ルチアーノの出す問題が難しいだけだって」
     負けを認めさせようと言葉を重ねるが、彼は必死に抵抗する。この期に及んでまで反論を続けるなんて、諦めの悪いやつだった。ちっとも答えられていなかったことくらい、端から見たら明らかだというのに。まあ、そんな諦めの悪い性格も、プロデュエリストを目指す者としては正しいのだろう。
    「諦めの悪いやつだな。だったら、もっと問題を出してやろうか? 時間内に答えられたら、今度こそ認めてやってもいいぜ」
    「それは…………もう、いいかな……」
     畳み掛けるように言葉を重ねると、彼は観念したように呟く。なんだかんだ言ってはいるものの、クイズを出されることには懲りたようだった。そんな彼の姿が滑稽で、僕は思わず笑い声を上げてしまう。ひとしきり笑い飛ばすと、僕は勝ち誇った声で言った。
    「ほら、やっぱり分からないんじゃないか。変に格好つけたりしないで、とっとと分からないって認めな」
    「うぅ…………」
     強引に話を終わらせると、青年は悔しそうに呻き声を上げる。彼を言いくるめたことが嬉しくて、僕は再び笑い声を上げた。
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