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    流菜🍇🐥

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    pkmnDLC。ハルオガ(主♂オガ)のような何かです。ぽにさまかわいいの勢いだけで書いたので願望しかありません。

    ##pkmn

    寂しがりに良い夢を 部屋の扉を閉じると、少年は大きく伸びをした。天井へ両手を突き出して、固まった身体をほぐしていく。全身の筋肉が強張っていて、へとへとに疲労していた。なんとか机の側まで歩み寄り、椅子に腰を下ろす。背負っていたリュックを下ろすと、少しだけ身体が軽くなった。
     下ろしたばかりのリュックから、淡い光が溢れ出す。それは宙で直線を描くと、ひとつの影を形作っていった。現れたのは、幼い子供のような背丈と、卵のように丸いシルエットを持つ、緑のポケモンの姿だった。
    「ぽに!」
     そのポケモンは、とことこと少年の前に歩み寄る。法被のようなものに包まれた手を伸ばすと、服の裾を引っ張った。少年はゆっくりと顔を上げると、その生き物に視線を向ける。
    「オーガポン、今日もありがとね」
     そろそろと手を伸ばし、オーガポンの頭に手を乗せる。何度か頭を撫でると、彼女は嬉しそうに身体を揺らした。
     オーガポンは、少年がキタカミの里で出会ったポケモンである。里では凶悪な鬼様として語られていたが、本来の姿は逸話とはかなり違っていた。実際の彼女は、大切な人と死に別れ、宝物を奪われた過去を持つ、寂しがりで無邪気な女の子だったのである。一緒に宝物を取り戻したしたことがきっかけで、彼女は少年の仲間になったのだ。
     少年はオーガポンを見つめる。勝手にボールから出てくるのは、彼女の癖のようなものだった。いつの間にか現れて、彼の隣に寄り添っているのだ。ミライドンもそうだが、彼の周りに集うポケモンたちは、自由にボールから出入りしている。彼にとっても、この生活は日常茶飯事になっていた。
     しばらく頭を撫でると、少年は椅子から立ち上がった。休もうにも、野外を走り回った身体は、土や泥で汚れてしまっている。洗い流さなければ布団を汚してしまうだろう。重い身体を引きずって引き出しへ向かうと、着替え一式をを取り出した。
    「お風呂に入ってくるから、オーガポンは待っててね」
     後ろを振り向くと、優しい声でオーガポンに告げる。しかし、彼女は立ち止まる様子がなかった。とことこと小さな足を動かすと、少年の後をついてくる。
    「ぽに!」
    「だめだよ。 ここで待ってて」
     再び後ろを振り返ると、彼は慌てた様子で言った。いくらポケモンだと言っても、オーガポンは女の子だ。風呂場に連れていくのは避けた方がいいだろう。
    「ぽにお…………」
     同行を断られ、彼女は悲しそうに下を向く。その頭を撫でると、少年は優しく笑いかけた。
    「すぐに戻ってくるから。待っててね」
    「……ぽに」
     あまり納得できていない様子で、オーガポンは言葉を返す。彼女の過去を考えると、それは仕方のないことだった。彼女の元のトレーナーは、彼女と離れた時に命を落としたのだから。
    「僕は大丈夫だから、心配しないで」
     顔を上げさせると、真っ直ぐに目を見ながら言う。再び頭を撫でてから、少年はオーガポンに背を向けた。

     布団の中に潜り込むと、少年はゆっくりと目を閉じた。毛布の柔らかい温もりが、優しく身体を包み込んでくれる。疲れた身体は、すぐにまどろみの中に落ちていく。
     学園での生活にも、ようやく慣れてきたところだった。遠い異国に存在するこの学園は、何もかもがパルデアと違っている。慣れないダブルバトルに、量が多くて栄養の偏った学食、ひたすらに強さのみを追求するリーグ部の存在。そして、友達になれたはずだった相手の豹変。流されるままにリーグ部に挑むこととなった少年は、テラリウムドームを駆け回っているのである。
     微睡みの中を彷徨っていると、遠くで何かが弾ける音がした。気になりはしたものの、眠気に負けてそのまま目を閉じる。ものが落ちたのなら翌日に直せばいいし、ポケモンが出てきたとしても、悪さはしないと思ったのだ。
     うとうとしながら寝返りを打つと、今度は何かが身体に触れた。右足の先に、柔らかくて温かいものが当たっている。部屋には何も置いていないし、ベッドの中には彼しかいないはずである。さすがに違和感を感じて、少年はゆっくりと目を開けた。
     目の前に広がる光景を見て、彼は両目を大きく見開いた。球体のような形をした緑の生き物が、目の前で丸まっていたのだ。そんな姿をした生き物など、ここにはオーガポンしかいなかった。
    「オーガポン!?」
     少年が声を上げると、彼女はそっと顔を上げた。くりくりと輝く両の瞳が、真っ直ぐに少年に向けられる。嬉しそうに口角を上げると、控えめな、それでいてはっきりした声で言った。
    「ぽに!」
     少年は僅かに狼狽する。いくらポケモンだと言っても、オーガポンは女の子なのだ。年頃の少年と眠るのは、多少なりとも問題がある気がした。それに、彼女は少年が巻き込まれたいざこざの渦中にいるのである。あまり距離を近づけすぎて、問題を大きくすることは避けたかった。
    「だめだよ。オーガポンはボールに戻らないと」
     声をかけると、彼女は悲しそうに俯いた。距離を詰めるようににじり寄ると、頭を少年のお腹に押し付ける。
    「ぽに…………がお…………」
     小さな声で呟いてから、つぶらな瞳で見つめてきた。少年の心が、罪悪感にぐらりと揺れる。過去を知ってしまった以上、邪険に扱うことには抵抗を感じる。胸の痛みを感じながらも、心を鬼にして言い聞かせた。
    「そんな顔をしてもだめだよ。ここは、僕のベッドなんだから」
    「ぽにお…………」
     オーガポンの瞳が、悲しげに下を向いた。喉から漏れる声は、泣きそうに震えている。よく見ると、微かに見える瞳は泣きそうに潤んでいた。
     少年の胸に、鋭い痛みが駆け抜ける。里に伝わる伝承が本物なら、彼女は長い時を一人で過ごしていたことになる。その孤独は、身を削るほどの寂しさを与えたのだろう。彼女が後をついてくる理由が分からないほど、少年も子供ではなかった。
    「…………分かったよ。一緒に寝よう」
     少しの間を置いてから、彼は小さな声で告げた。俯いていたオーガポンが、ゆっくりと顔を上げる。一瞬だけ少年の顔を見ると、弾丸のように胸に飛び込んできた。
    「ぽに……!」
    「わっ……!」
     勢いに押されて、少年の身体が後ろに弾かれる。布団からはみ出しそうになって、身体を動かして整えた。腕の中では、オーガポンが優しい温もりを発している。その温かさは、人間と少しも変わらなかった。
     無意識のうちに、少年はオーガポンを抱き締めていた。恐る恐る腕を回し、小さな身体を包み込む。丸く見える身体も、こうして抱えるとかなり小さい。
    「ぽに……。ぽにお………!」
     腕の中で、オーガポンが鳴き声を上げる。言葉の意味までは分からないが、伝えたいことは察せられた。
     少年は優しく微笑むと、彼女の頭に手を伸ばした。頭から背中にかけてのラインを、手のひらで何度も撫で付ける。
    「大丈夫。僕はどこにもいかないよ」
     目を閉じると、少年の身体はゆっくりと眠りに落ちていく。微睡みの中で、オーガポンの温もりだけが、いつまでもはっきりと感じられた。
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