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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    TF主ルチ。TF主くんとルチが一枚のプリクラをきっかけに痴話喧嘩する話。モブにハニトラを仕掛けるルチ概念があります。

    ##TF主ルチ

    プリクラ リビングの中に、淡い光が瞬いた。その光は部屋全体を満たし、一点に集中して大きな輪を作り出す。真っ黒に穿たれた空間から出てくるのは、人間の男の子の姿だ。足が現れ、腰が現れ、最後に上半身が飛び出す。不思議にすら感じるこの登場も、僕には見慣れた光景だった。
     光が消えると、そこには一人の男の子が立っていた。しかし、その姿はいつもと大きく違っている。髪はツインテールに結ばれ、くりくりとした両目がこちらを見つめている。細くて小さな身体には、お嬢様学校の制服を纏っていた。背中には、ご丁寧に指定のリュックを背負っている。それでも男の子だと分かるのは、彼が僕の恋人だからだ。
    「帰ったぜ」
     にやにやと笑いながら、ルチアーノは帰宅の挨拶を告げた。甲高く上ずった、上機嫌な声である。いいことがあったときの態度だった。
    「おかえり。珍しい格好をしてるね」
     尋ねると、ルチアーノは特徴的な笑い声を上げる。くすくすと笑い声を漏らしてから、弾むような語調で言葉を続けた。
    「今日は、任務があったんだ。帰りが遅くなったのもそのせいだよ。寂しかったかい?」
    「寂しくはなかったよ。帰ってくるって分かってたから。待ってる間にカレーを作ったんだけど、ルチアーノも食べる?」
    「せっかくだからもらおうかな。君のことだから、味は大したことないと思うけどね」
     楽しそうに笑いながら、彼は両腕に抱えていたビニール袋を床に下ろした。ゲームセンターに置いてある、景品を入れるための袋だ。今日は帰りが遅かったから、寄り道でもしていたのだろう。ぬいぐるみの横に立てかけるように、背負っていた鞄を置いた。
     ルチアーノが手を洗っている間に、器にご飯をよそった。片方は大盛りに、もう片方は小盛りにする。生命の維持に食事を必要としない彼は、あまり量を食べないのだ。
     カレーを机に置くと、冷蔵庫からサラダを取り出した。ラップを剥がすと、カレーの隣に並べる。ルチアーノが戻ってくると、二人で並んで夕食を取った。カレーしか食べるものがないから、二杯をぺろりと平らげる。おかわりを盛り付ける僕を、ルチアーノは呆れ顔で眺めていた。
    「相変わらず、君はよく食べるな」
     呟きながら、食べ終わった食器を机の上に置く。僕が食べ終わるのを待ってから、彼はゆっくりとした動作で立ち上がった。
     浮き浮きした様子で歩き出すと、部屋の隅に置いてあった袋を手に取る。僕の前に戻ると、にやにや笑いを浮かべながら差し出した。
    「今日は、お土産があるんだ。ゲームセンターで取ったんだぜ」
     袋を受け取ると、中に入っていたものを取り出す。それは、ピンク色のスケープゴートのぬいぐるみだった。もこもことした素材で作られていて、人の頭くらいの大きさだ。いかにもゲームセンターの景品といった感じだった。
    「ありがとう。大切にするね」
     お礼を言ってから、ぬいぐるみを空いていた椅子の上に置く。袋を畳もうと逆さまにした時、何か薄っぺらいものが落ちてきた。
    「ん?」
     それはひらひらと宙を舞い、床の上に滑り落ちる。どうやら、小さな紙きれであるようだ。手を伸ばして拾い上げてみると、プリクラのシールだった。
    「あっ」
     ルチアーノの唇から、小さな声が漏れる。視線を向けると、焦ったように目を逸らされた。再び視線を動かして、手元のシールに目を凝らす。そこに映っていたのは、制服姿のルチアーノと、サラリーマン風の見知らぬ男だった。仲良さげに顔を近づけて、片手でハートを作っている。
    「何、これ」
     思わず、冷たい声が漏れてしまう。恋人が知らない男とプリクラを取っていたのだ。嫌な気持ちにもなるだろう。僕の声を聞いて、彼は気まずそうに顔を背けた。
    「これは、任務で仕方なく撮ったんだよ。情報収集しろって命令だったんだ」
    「だからって、プリクラまで撮る必要はないでしょう。しかも、こんなポーズまで取って!」
     僕は言う。感情が溢れて、言葉が強くなってしまった。
    「仕方ないだろ。あの男がこうしろって言ったんだから。僕はやりたくなかったけど、そうしないと収まらなかったからな」
     いつもからは信じられないほどの小さな声で、ルチアーノは言葉を返す。開き直るような態度に、さらに怒りが増してしまった。
    「仕方ないって、そんなんじゃ済まされないよ。ルチアーノは綺麗なんだから、万が一のことがあったらどうするの?」
     問い詰めると、怒ったように顔を上げる。僕を睨み付けると、尖った声で捲し立てた。
    「そこまで怒ることないだろ! 僕は神の代行者なんだ。襲われたとしても返り討ちにできるんだからな」
    「そういう問題じゃないでしょう! ルチアーノがしたことは浮気なんだよ。いつもは僕を責めるのに、ルチアーノは堂々と浮気するの?」
     真っ直ぐに目を見つめると、彼は少しだけ怯んだようだった。困ったように目を逸らしてから、再び僕を睨み付ける。
    「こんなの、浮気の内に入らないだろ! 僕は任務で男から情報を引き出してたんだ。疚しいことなんてひとつもないんだぞ!」
    「僕が同じ状況の時にも、ルチアーノは怒ったでしょ! 自分のことは棚に上げるつもりなの?」
     真正面から睨み合ったまま、しばらくの間黙り込む。言い過ぎだとは思ったが、もう止められなかった。ルチアーノだって、時には理不尽な理由で僕を責めるのだ。僕にだって言いたいことがあった。
     彼も、後には引けなくなったらしい。僕をじっと見つめたまま、険しい表情を浮かべている。彼は彼で、僕に信じてもらえないことが気に入らないのだろう。それくらいには、彼のプライドは高いのだ。
    「……もしかして、嫉妬してるのかよ」
     不意に、ルチアーノが口を開いた。消え入りそうな小さな声で、それでもはっきりと言葉を告げる。
    「君は、あの男に嫉妬してるのかよ。僕を奪われたと思ったから、そんなに怒ってるのか?」
     それは、真正面からの問いだった。これだけはっきり尋ねられたら、答えるより他はない。彼に向かい合うと、言葉を選びながら答えた。
    「嫉妬はしてるけど、ルチアーノを奪われたと思ったからじゃないよ。ルチアーノが、僕に内緒で知らない男と会ってたからなんだ。ルチアーノが僕とシグナーの密会を恐れるように、僕もルチアーノが知らない男と密会することが怖いんだよ」
    「別に、密会なんかじゃねーよ」
     呟くような弱々しさで、ルチアーノは反論する。それすらも無意味だということは、彼にも分かっていただろう。困ったように下を向くと、相変わらず小さな声で謝った。
    「…………悪かったよ」
     彼にしては珍しい、真剣な謝罪だった。こういうことを言うのも失礼だけど、ルチアーノは謝罪というものが苦手なのだ。謝ったとしても、笑い半分だったり、渋々といった様子であることが多い。ここまで真剣に謝ってくれるのは、僕の言葉を真剣に受け止めてくれている証だと思った。
    「こっちこそ、怒ってごめんね。ルチアーノに浮気するつもりがないってことは、ちゃんと分かってるよ」
     言葉を返してから、僕はルチアーノの頭に手を伸ばす。つむじがはっきりと見える頂点に、手のひらを添えて撫でた。抵抗されるかと思ったが、彼は大人しく受け入れてくれる。ちらりと見える頬は、ほのかなピンク色に染まっていた。
    「…………そんなに羨ましいなら、今度プリクラを撮ってやろうか。同じことをすれば、君も満足するだろ」
    「いいの?」
    「いいよ。それくらいなら」
     恥ずかしそうに俯いたまま、ルチアーノははっきりとそう言った。それが本心なのか疑ってしまうのは、彼がたまに言葉を撤回するからだ。表情を見ればある程度は分かるのだけど、今は俯いていて見えなかった。
    「撤回はなしだよ。ちゃんと、撮ってもらうからね」
     念を押すように口にすると、彼は小さく頷いてくれた。ここまで言っておけば、後から撤回されることはないだろう。もう一度髪を撫でると、彼に背を向ける。
    「じゃあ、僕はお風呂の準備をしてくるね。洗いものは後でやるから、そこに置いておいて」
     リビングから出ると、廊下で立ち止まる。お風呂は既に洗ってあって、スイッチを押すだけになっていた。口実をつけて出てきたのは、ルチアーノに一人の時間を作ってあげたかったからだ。
     ここまで大きな言い争いをするのは久しぶりだ。僕にもルチアーノにも、いい意味で遠慮というものが無くなった気がする。気持ちをそのまま伝えられる関係じゃないと、恋人関係は長続きしないのだから。
     部屋に戻る頃には、彼はいつもの調子に戻っているだろうか。そんなことを考えながら、僕は浴室へと足を運んだ。
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