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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。オスの飼い猫は子供っぽい子が多いというネット記事を見てルチだ……!と思ったので書きました。

    ##TF主ルチ

    ネコハラ 目の前の机には、綺麗に整列されたカードが並んでいる。上二段がモンスターカードで、その下は魔法カード、さらに下にはトラップが、レベルや種類ごとに分けられているのだ。隣には端末が置かれていて、並べられたカードの内容が、そっくりそのまま書き写されていた。
     視界を埋めるカードを眺めながら、僕は頭を抱える。ここに並んだデッキレシピは、二枚カードが足りなかった。空いた枠に入れるトラップカードを、どうしても決められなかったのだ。
    「うーん」
     机の隅に広がる空白を眺めて、僕は小さく呻き声を上げる。机の隅には、カードの山とひっくり返されたストレージケースが転がっていた。家中のカードを引っ張り出してみたのだが、しっくりくるカードが見つからなかったのだ。試しにルチアーノにも相談してみたけど、つまんないと言われて断られてしまった。
     こういうときに、パートナーが頼れないのは大変だと、僕は改めて感じる。ルチアーノはデュエルを戦闘手段として使っているものの、デュエリストとしてデッキを考えたりするタイプではないのだ。神から与えられたカードこそ完全だと思っているようで、あまり構築を変えたがらない。
     そんなこんなで、僕は一人で悩んでいたのだ。レシピ提出の締め切りは明日だから、今日中には内容を決めておきたい。そう思ってデータベースを開いたら、検索が止まらなくなってしまった。
     端末を片手に唸り声を上げていると、ルチアーノが近づいてきた。机の上に広げられたカードを見ると、呆れたようにため息をつく。
    「まだやってるのかよ。よく飽きないな」
    「カード一枚が、勝負を大きく変えるかもしれないからね。気を抜いたりはできないよ」
     答えると、僕は再びストレージに手を伸ばした。検索でヒットしたカードがないか、山の中を探そうと思ったのである。しかし、その手は、ルチアーノによって叩き落とされてしまった。
    「どうしたの?」
     不思議に思って尋ねるが、彼は黙ったままだった。冷たい目で僕を見下ろすと、向かい合わせに膝の上に座る。机と椅子の背に挟まれた僅かなスペースで、僕はルチアーノと密着することになった。
    「ルチアーノ……?」
     冷たい瞳で見つめている彼に、恐る恐る言葉を発する。しばらく待ってみるが、返事は返ってこなかった。怒らせてしまったのかと怯えていると、不意に顔を近づけられる。
     キスをされるのかと身構えたが、その推測は外れのようだった。ルチアーノの頭は僕の顔から少し外れた、肩と顔の間に着地したのだ。温かくてずっしりとした感触が、僕の肩へと伝わってくる。密着した身体からは、低く響くモーター音が聞こえてきた。
     動けない僕の身体に、子供にしては長い腕が回される。それは背中をくるりと回って、反対側の肩の辺りへと伸びてきた。触れ合う体温に触発され、僕の肌も少しずつ温度を上げていく。恐怖とは別の理由で、心臓がドクドクと音を立てた。
    「ねぇ、どうしたの?」
     再び尋ねると、彼は小さく身じろぎをした。少しの間を開けてから、震える声で口を開く。
    「……そんなに大事かよ」
    「えっ……?」
     耳を掠めるような小さな声に、思わず聞き返してしまう。何の話をしているのか、すぐには理解できなかったのだ。ぽかんとする僕を見て、ルチアーノはさっきよりも大きな声で言う。
    「そんなに、デッキが大事かよ」
     じっとりとした、拗ねたような声だった。つまり、彼は寂しくて僕の上に乗ってきたのだろう。そういえば、デッキを考えはじめてからはずっと考え込んでいたし、ルチアーノの言葉にも生返事で答えていた。僕のそんな仕草が、彼には不快だったに違いない。
     なんだか、猫みたいだ。不意にそんなことを考えて、口元が緩んでしまう。素直に甘えられないから、作業を邪魔して気を引こうとするなんて、インターネットで語られる猫そのものだ。最近読んだ記事に『ネコハラ』という単語があったことを思い出して、今度は声が漏れてしまう。
    「なに笑ってるんだよ」
     くすくすと笑みを漏らす僕を見て、ルチアーノが不満そうに顔を上げた。至近距離で合わせたその顔は、ほんのりと赤くなっている。こうして見ると、彼は年頃の子供のようだ。その無言の訴えが可愛らしくて、僕は口元を緩める。
    「なんか、猫みたいだなと思って。寂しいから膝に乗ってくるなんて、猫の甘え方でしょう?」
    「……誰が猫だよ」
     不満そうに頬を膨らませる姿は、やはり猫みたいだ。背中に腕を回すと、猫を撫でるように手のひらを滑らせる。
    「最近の飼い猫は、甘えん坊な子が多いんだって。飼い主が家で仕事をしてると、机に乗って邪魔してくるんだ。オスの猫の方が甘えん坊になりやすいみたいだよ」
     語りながらも、僕は微笑みを浮かべていた。この記事を読んだとき、僕はルチアーノを思い出したのだ。甘えん坊で、自由気ままで、子供っぽい男の子。僕の邪魔をしてくるのに、素直に寂しいとは言えない男の子。そんな彼のことが、僕は好きでたまらないのだ。
    「誰が、甘えたがりなオス猫だって……?」
     僕の言葉が気に入らなかったのか、ルチアーノは低い声で言う。明らかに眉を吊り上げると、鋭い瞳で僕を睨んだ。
    「そんなことを言うやつとは、もう遊んでやらないよ。今日は一人でデッキでもいじってな」
     吐き捨てるように言うと、膝の上から立ち上がった。とことこと足音を響かせて、どこかへと向かっていく。家から出ていってしまうのではないかと思ったが、浴室へ向かっただけだった。
     お風呂に入っても、ルチアーノの機嫌は治らなかった。僕がお風呂に入り、寝室へと移動してからも、背を向けたまま何も語ろうとしない。沈黙に耐えられなくなって、僕の方から話しかけた。
    「ルチアーノ」
     声をかけても、隣からは何も聞こえてこない。布団の中に沈んだ小さな背中が、目の前にちょこんと横たわっているだけだ。いつもならかわいいと思うその後ろ姿も、今は寂しさだけを感じさせる。
    「ごめんって。機嫌治してよ」
     謝ったところで、何も反応はなかった。捨てゼリフを吐いた以上、簡単に許すのはプライドが許さないのだろう。厄介な性格ではあるのだけど、かわいいから許せてしまう。
    「ルチアーノってば、返事してよ」
     重ねて声をかけるが、返事は返ってこない。彼のプライドは、寂しさよりも強いのだろう。こうなったら、明日の朝まで触れさせてもらえそうにない。
     やっぱり、ルチアーノは猫みたいだ。寂しがり屋で、甘えん坊で、気まぐれで、構ってほしいときは邪魔をして来るのに、機嫌を損ねると返事すらしてくれないのだから。でも、僕はそういう彼が好きだから、何も文句は言えそうにない。今だって、寂しさを感じながらも愛おしさを感じているのだから。
     明日になったら、改めてルチアーノに謝ろう。一晩経って気持ちが落ち着けば、彼も話くらいはしてくれるはずだ。布団に顔を埋めると、僕はゆっくりと目を閉じた。
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