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    ginn_3331

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    ginn_3331

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    リンハルト+マリアンヌ。士官学校時代。
    熱烈な恋愛要素はないですが仲良し(仲良し…?)です!
    過去や魔法について捏造あります。

    リン+マリ 小咄「ねぇマリアンヌ、ちょっといいかな?」

    どこからともなく現れた男は、脈絡もなく滔々と話す。
    「な、何でしょうリンハルトさん…」
    マリアンヌは当然馬小屋の戸口に現れたリンハルトに緊張し、梳いていたドルテの毛をきゅっと掴む。以前より彼の言動は危うさがある。特段危害を受けたことが覚えはないのだが、警戒するに越したことはないとヒルダに呆れて忠告されるほどだ。

    「これに氷魔法を撃ってくれない?」
    そして唐突に差し出されたのは鍋のような盥のような、鍋に盥を被せただけのような…金属製の筒状のものだった。
    「……??構いませんが……」
    突拍子のなさに理解が追いついていかないながらも、以前にリンハルトが紋章と得意な魔法の関係性を調べたい、などと話していたことを思い出す。マリアンヌが知らないだけでこの金属の筒は紋章学関係の器具なのかもしれない。

    ドルテ達に魔法が当たらないよう馬小屋の外に移動し、魔法を撃ち込むために集中する。リンハルトのいつになく熱心な視線を感じるが、悪意はないようだ。
    「はぁっ!」
    キン、と氷の甲高い声が鳴る。
    一瞬にして氷柱が出現し、筒を覆う。直接触れずとも近寄れば冷気をビシビシと感じる。しばらくした後氷柱はパキンッと鋭い音を立てて崩れ去り、筒だけが残った。

    手袋を嵌めたリンハルトが駆け寄り、そっと確かめるように金属製の筒を開けた。

    かがみ込んだ視線の先に現れたのは——シャーベットのようだ。華やかな盛り付けまではされていないが、盃のような器の中に、キラキラと凍る果肉が見て取れる。
    「よかった。うまく行ったみたいだよ。はい、君の分」
    ふたつ用意されていたシャーベットの片方を手渡される。
    「えっ?!あ、あの…これは…?」
    リンハルトの唐突さにマリアンヌが狼狽する。
    「桃のシャーベットだけど」
    「えっと…どうして?」
    「えっ君これ好きだよね?週に平均3.6回は食べているし、嫌いじゃないと思ったんだけど」
    さらっと付き纏い行為を認めておきながら、リンハルトはひどく純粋な目をしてはて?と首を傾げる。付き纏い行為には閉口するが、たしかにこれはマリアンヌの好物だ。贈られると嬉しいほどに。だがしかし、微妙に噛み合わない会話をしているように感じる。

    「ええと…果物はどこから…?」
    意図が読めず、マリアンヌもまた少し噛み合わない質問をする。
    「魚が大量に釣れちゃって、食堂にあげたらお礼にモモスグリをもらったんだよね」
    「はあ…」
    普段は合理的で行動に意味を求めがちな彼なのに、その実気まぐれなところも多いのかもしれない。完全に腑に落ちることはないが、なんとなく野生の猫のようだと思う。

    「君の魔法で作ったんだから、何か特別なことが起きたりするのかなあ。楽しみだなあ」
    普段見ないようなにっこりとした笑顔と興奮気味の声でリンハルトは言う。心底うれしそうに氷菓子を頬張る。

    変わった人。
    声には出さず思う。変わっているからこそ、私の不幸な紋章に関係なく、接してくるのだろうけれど。呪われた紋章持ちの魔法で作った食事なんて……不幸の紋章だと忌まれて、触れたものを捨てられて、焼かれた日をふと思い出す。この人は私にそういう怖がり方をしたことがない。それは妄信的な紋章が不幸を呼ぶなんてありえないという考えよりかは、不幸になっても構わないと言わんばかりだ。
    こちらを見つめる少し眠そうな瞳を見つめ返す。

    戸惑いながら受け取ったスプーンでシャーベットを口に運ぶ。触れた口先から冷たさと甘さが広がり、桃の香りがふわっと香る。

    「ふふ…美味しいです」
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