尾月♀妄想メモ現パロで同じ会社に勤める尾月♀
尾と一緒に出張予定だった同僚が急遽出勤できなくなり、月が代わりを務めることに。大慌てで仕事内容を共有する尾と準備する月。
突然のハプニングでバタバタしつつも、二人は出張先での重要な仕事を無事に終える。
「……なんとかなりましたね」
「ああ」
「2、3日しか経っていないとは思えないほど働きました」
「忙し過ぎてあっという間だったな。……腹が減った」
「同感です」
と少しやつれた顔で話す二人。二人とも体力があるとはいえ、予想外の事態による気苦労も重なって疲れたため、とりあえずホテルに荷物置いて落ち着こうという話になる。
事前に予約していたホテルに到着し、エントランスに入ろうというときにふと尾が立ち止まる。月島さん、あの、と何かを言い淀む尾の意図が汲み取れず首を傾げる月。
「どうしたんだ?」
「……すみません。失念していました」
「忘れ物か?」
「いや、ここのホテル、あいつと泊まるからと思ってツインでとってしまいました」
自分のミスだと謝る尾に気にしないよう声をかけるも、内心焦る月。それなりに親しくしている仕事仲間とはいえ、交際していない男女で同じ部屋に泊まるのは気が引けるし、仮に泊まったとしてその後会社でどういう顔をすればいいのかわからない。尾に気を遣わせてしまうだろうことも申し訳なく、何より、片想いしている相手と同じ部屋で寝る心の準備ができていない。
月が別の宿泊先をネットで探してみるも、今回尾月の二人も参加した企業イベ(展示会とか学会関連とかそういうやつ)の影響で近辺に空き部屋がない。カラオケかネット喫茶で一晩どうにかすると言い出す月に、だったら自分がと申し出る尾。
散々話し合うがなかなか埒があかず、最終的に月がなかば自棄になりながら「お前が嫌じゃなければ、予約してあった部屋に一緒に泊まろう」と提案する。
一方尾は、おずおずと、でも真っ直ぐと自分を見上げて同じ部屋で寝ようと提案してくる想い人に気持ちが揺らぐ。本音を言えばこのチャンスを利用したいけど、月に不安な思いをさせたくないし出来ることなら迷惑もかけたくない。なるべく紳士に振る舞おうとするが、本人から改めて提案されたならいいのではという気持ちが強くなる。何も言えずにいる尾を前に勘違いした月が「すまん、迷惑だよな、今のは忘れてくれ」と俯いて距離をとろうとするが、そんな月の腕を思わず掴む尾。びっくりして尾を見上げる月。
「俺は全然構いませんから、あんたがいいなら、一緒に寝ましょう」
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どさくさに紛れて失言かます尾が見たい。
あれ?もしかしてとんでもない発言した?って二人でじわじわ照れてたら可愛い
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覚悟を決めてチェックインし、部屋に入る二人。
それぞれ荷物を置いて身のまわりの整理をしていると、本当によかったのかと月が改めて確認する。それに対して、俺が必要のない世辞言うように見えます?と返す尾。確かに、本気で嫌なら尾ははっきり言うか意地でも他所で一晩過ごすかするだろうと考え直した月は、気持ちを切り替えることに。
「そうだな。お前が本気で嫌なら、もっとくどくどうるさいはずだ」
「どういう意味ですかそれ」
「ところで夜ご飯はどうする?」
「おい」
少しずつ緊張が和らいできた様子にお互いほっとしつつ、持ち出された夕食の話題に、尾はレストランやバーが付いているホテルを選ぶべきだったと後悔する。すると月が、鍋は好きかどうかと尋ねてくる。突然の問いに尾は驚きつつも肯定すると、月が「それならよかった。道中に美味そうな店があったんだ」と笑う。安心した様子で微笑む月を見て動悸が速くなるのを感じながら、尾も思い切ってひとつ提案する。
「この辺りは閉店が早いので、どこかでお酒買って夜部屋で飲みませんか」
「おお、いいな。明日は出席するだけだから気張る必要もないしな。少々気が早いが、無事に厄介事を乗り越えた自分たちを労ってやろう」
「それでは決まりですね」
「だな。つまみも欲しいところだ」
「好きなだけ買ってしまいましょう」
楽しげな様子で了承してくれた月に見惚れてしまう尾。月がふっと笑うので、急ぎ取り繕ってどうしたのかと尋ねると、「いや、お前とサシで飲むのは初めてだと思ってな。浮かれてしまってるんだ」と月が答える。
鼻歌混じりに外出の用意をする月と固まる尾。
***
鍋を食べ終え、ホテル近くのコンビニで買い物をする。
簡単に酒とつまみを買って帰るつもりが、二人とも楽しくなってしまいあれこれカゴに入れる。なかなか一人だと手を出しにくいよな、などと話してポテチや小分けされてないチョコ菓子にもつい手を伸ばしてしまう。これじゃあ修学旅行のおやつ選びみたいですねって笑いながら。
辛口のお酒を適当に選んでいると、ふと月の視線が一箇所に向けられたまま動かなくなる。尾が彼女の視線を辿るとその先には、期間限定と記載された華やかなパッケージの甘いお酒が。何気なく「期間限定ですか。気になりますね」と尾が声をかけると、月は驚いた表情で振り返ってから声を弾ませ、それなら一緒に飲もうと言って可愛らしいパッケージのお酒を手に取る。
「お前も甘い酒飲むんだな」
「あなたと飲むお酒ならなんでも美味しく感じられそうです」
「は、」
「ほら、早くそれカゴに入れちゃってください」
なんて本音か冗談かわからない言葉を言いながら尾は、お前"も"ということは月島さんは普段甘いお酒を飲むのだろうか、今度また飲みに誘えばお酒の好みが分かるかもしれない、とあれこれ考えてる。
夜食がある程度選べたところで、月は翌日の朝食も買わねばと気がつく。「明日の朝食はどうする。何か食べたいものはあるか?」と訊ねてくる月に、同棲気分を噛み締める尾。
「どこかに食べに出るのもいいが、折角お前と一緒なんだ。今日は思う存分飲んで明日はぎりぎりまで寝ていたい」
と、続けて月がそう言うものだから
「あんたが寝坊したら俺は一人で朝食べに行っちまいますからね。月島さんがそんな寂しい思いをしないよう何か買っていきましょう」
尾は熱を持つ耳を隠すようにして髪を撫でつける。
※※※
ホテルに戻り、今日は一日よく働いたからと晩酌前に風呂を済ませることに。
身体が冷えているだろうから先に入ってくださいと言う尾と、自分は長風呂だから後で入ると言う月。美味しい食事と楽しい買い物によってすっかり緊張を忘れていた二人は、風呂の話題によって再び相手を意識してしまう。
正直尾の入った後の風呂ではゆっくりできる気がしないと感じていた月は、「自分はシャワーをささっと浴びるだけですからお先にどうぞ」という尾の言葉に甘えることにする。風呂を沸かす間、月は早速風呂に入る準備をし、尾はなるべく彼女の方を見ないようにしながらコンビニで買ったものを整理する。
「尾形すまない。洗面台も少しの間使っていいか?」
「ええどうぞ。その辺色々好きに置いてもらって構いませんよ」
「ありがとう、助かる」
声色に不自然さが滲みでないよう気を付ける尾。冷蔵庫の整理を終えてベッドに腰かけると、上に置かれているパジャマの存在に気がつく。「月島さん、ここパジャマ用意されてますよ」と報告を受けた月はベッドに駆け寄り、実物を確認する。折角なので着ようかなと呟いて風呂場に向かう月の背中を眺め、尾は彼女のパジャマ姿を想像してしまう。余計なことを考えるなと自分を叱責する尾。頭をからにしようと努めていると風呂場から水の音が聞こえてきてしまい、尾は慌ててテレビをつける。
それから数十分後、名前を呼ばれたような気がした尾はテレビの音量を下げる。
「お、尾形……」
「どうしました?何かありましたか」
「いや、その、」
珍しく歯切れの悪い月の言葉に、静かに耳を傾ける尾。すると、月はぽつりぽつりと用件を伝えてくる。風呂から出ようとしたところバスタオルが無いことに気がついたという。びしょ濡れのまま服を着るわけにはいかないうえ、何も着ずに部屋を探し回るなんて出来ないため、バスタオルを持ってきてほしいと申し訳なさそうに言う月。
「本当にすまない」
「いいえ、気にせんでください。風呂に入る順番が逆だったら、俺が月島さんに同じこと頼んでいたはずですから」
「……ありがとう」
「タオル見つけました」
「持ってきてもらってもいいか?」
「はい。ええと……そちらに向かっても?」
「あ、ああ」
なるべく平静を装って話す尾はバスタオルを片手に風呂場に向かい、扉の前に立つ。タオルを握る手に力が入る。扉の向こうには一糸纏わぬ月がいるという事実に意識が向きかけるが、思考を払うようにして静かに深呼吸をする尾。鬱陶しい心臓の音が月に伝わらないようにと思いながら、「月島さん」とそっと名前を呼ぶ。
ドアノブがゆっくりと引かれ、尾は思わず視線をよそへと向けてしまう。気配を感じたため改めて視線を戻すと、扉から月がひょこっと顔を出していた。扉の隙間からタオルを突っ込んで渡すのだと思っていた尾は、思わぬ月の登場に固まる。くりくりとした短い髪の毛から水が滴り、長風呂によって血色が良くなった顔で見上げてくる月をまじまじと眺めてしまう尾。ありがとうと言う控えめな声に尾ははっと意識を戻し、差し出された手にタオルを載せてやる。
「悪かった」
「いえ、お気になさらず。……じゃあ、また」
部屋に戻ってベッドに腰かけ、再びテレビをつける尾は、先程目にした光景とよく分からない挨拶をしてしまった自分を思い出して頭を抱える。
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力尽きた…!
この後にシャワー浴びる尾はむず痒い気持ちになるし、一方月は風呂上がりの尾を見ていつもと違う雰囲気にドキドキすると思う。可愛い。
多分もっと積極的な尾ならタオルを渡す場面で月の手をとって「無防備じゃないですか、あまりにも」とか言ってるかもしれない。
お風呂の場面を書きたくてあれこれ妄想を膨らませていたら、前置きに3000字以上かかってしまいました。でも妄想はちゃめちゃに楽しかった。
ここまで読んでくださりありがとうございます!