ホールエンドは叫びたい!「じゃんけんぽん!」
「あっ、負けちゃった〜」
「まどかがダンス担当な」
……
どうしてこうなったのか。俺は絶望した。ようやくパフォーマンスができると思ったのに…
「おい、『全員で踊ってほしい』って言ってたろ。それが令嬢の要望だったよな?」
「そうだっけ」
「そうだよ!踊れよ!」
「あんな服着て踊れるの、お前くらいだよ」
「馬鹿にしてんの?」
「円夏くんダンス上手だからさ。格好良いし、見たいからやってほしくて」
「あ、ありがと…じゃなくて!」
あぶねえ。流されるところだったぜ。藍はすーぐ、おだてて調子に乗らせて、嫌なことは他人に任せる。ここは俺が強く言ってやらないと。
ゴホン…
「藍、周りを頼ってばかりじゃいけねえ。任されたことはちゃんと自分でやれ。それとも、踊れないのか?まさかダンスが下手とか?」
「そうだね。得意ではないよ。しかし人を煽ってご満悦なんて…まだまだ子供だね、円夏くん」
ホストとしていかがなものかな?と嘲笑う
「む…むかつく!」
挑発に乗ってくれよ。そういうとこ、まじつまんねえ。
「まあまあ、喧嘩するなって」
「海」
颯爽と現れたオーシャン(びーふねーむ)もとい白老海。
「ここは自分の得意分野を披露するべきじゃないか?ご令嬢を楽しませるのが俺らホストの役目だろ」
「お前踊らなかったくせに」
「まあまあ…」
「ヤジ飛ばしてたくせに」
「ははっ。まあ」
俺を無視して海はステージに上がる。なんだそのドヤ顔。
「ご令嬢、本日はご来店いただきありがとう」
「きゃー!海くーん!」「かっこいいー!」
「はは、ありがとうありがとう」
「ウザ…」
サーレーがショートケーキを食べながら毒吐く。
「皆に愛のプレゼントをあげる!」
「キザの丸焼き、尾びれを添えて」
「胸焼けがしそうな高級料理」
「そこ!うるさいぞ!」
⚪︎
①ファンサ講座
「実は…オレファンサが得意なんだよねえ」
「解散」
「ちょまってまって」
海が藍をひきとめる。皆嫌そうな顔をしている。
「何?」
「クソどうでも良い話に付き合ってる暇ないんだけど」
「そんなことより早く帰りたいです」
「オレたち、仲間だよな…?」
「はは。ええ。それじゃ」
「ちょままま…話ぐらい聞いて!」
彼をひきずってマイクを手にとる。藍がステージに立つと、ガチ恋女子が歓声をあげる。
「あっそうだ。オレが手本見せたげるから、スプーもファンサやってみなよ」
「そのあだ名、悪魔を思い出すからやめてもらっていいかな」
「まずはウィンクして投げキッスね!」
海が手本を見せる。
「…」
「ね!オレめっちゃ上手いでしょ。スプーもかましちゃって!」
藍がため息をつく。完璧なファンサをする
「これでいいの?」
「カボ、この写真いくらで売る?」
「一枚二千円ですかね」
「そこの坊や、ちょっといいかな」
⚪︎
「まったく躾のなってないガキですね」
サーレーとカボが説教されている。写真も没収された
「ご令嬢相手に売買や取引をするなと言いましたよね」
「強制じゃないし」
「お姉さん達 自ら手を伸ばしてきたし」
「言い訳は聞きたくありません」
机を叩く。「いいか、よく聞け」スマホを取り出して、2人に見せる。
「俺の写真を撮って良いのは円夏だけなんだよ」
「え?」
「円夏の写真を買い占めていいのも俺だけなんだ」
「え?」
「だからこれは売っちゃいけません。分かった?」
「はあい」
「怖!!」
こいつ何で平然としてんの?ずっと何言ってんの?
「円夏くん、どうしたの?具合でも悪いの?」
お前のせいだよ。海の核心をついたネーミングセンスに驚かされてるよ。伝説の悪魔・スプーが目の前にいるよ。
「その…アルバムはなんなの」
「?俺が撮った円夏くんの写真集」
「ああー…え、三万枚……」
「ごめん。これだけじゃ君の魅力は引き出せないよね」
「いやそういう問題じゃなくて。じゃあさっきの狂言はなに?束縛系彼女?」
「円夏くんこそ何言ってるの疲れてる俺が円夏くんを観察するのは当たり前のことでしょ。そういう特権だもん」
「壊れた?」
話が通じない。だめだこいつ。
「そういうことだから、今回の件はオーナーに伝えますね」
「ちっ…あまカス。これあげる」
「…これは?」
「円夏が寝てる写真」
「良い値で買い取りましょう」
「バカヤローッ」
藍とサーレーの闇取引は俺が全力で阻止した。藍が困った顔をして俺を見る。そんな目で見るな。
「海くんの特技、案外簡単に真似できるね」
「えっ」
その発言に海がショックを受けている。
「これって誰でもできるんじゃないかな」
「えっ…そんなこと。あ!ほら、かぼち。かぼちはキョドッてできないじゃん!な!」
「なぜ私に振るんですか」
「えっと…舞台慣れしてなさそうだから」
「つまり私はコミュ障インキャ野郎ってことですか?」
「そこまで言ってないけど…」
舞台に上がってくる。黄色い歓声が響く。
「分かりました、その挑戦、受けてたちましょう」
「お前の度胸、どこからやってくるの?」
「見て畏れおののけください。これが私のウィンクです!」
ぱちっ。
…
「全然できてないじゃん」
「できてます!これが私の全力なんです!」
「弱」
「う、うるさい!」
「でも令嬢にはウケてんぞ」
俺が肩を組むと眉間にしわを寄せてうざがられた。なんで?
「ほら、やっぱオレの特技ってことでいーよね」
「思うところもあるけど、まあ頷いておこうか」
⚪︎