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    とろ_(:3」∠)_

    @torotoro_R18

    ねこティチに沼ってる文字書き兼絵描きです。💙くん(❓くんと)結婚してくれ!
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    「精神的に追い詰められたサムくんがティーチくんの目の前で自殺未遂して、ティーチくんが過去最大に取り乱す話。ティーチくん版き・づ・け♡みたいな感じ」ティチサム小説お待たせしました!ご依頼ありがとうございました!!
    本編軸、後半辺りのお話になります。微妙にリクエストに沿えてないの、申し訳ありません…

    まぶたのうら 青いうさぎは、虚ろな瞳で宙を見る。
     想い人に存在を気付かれもしない上に、その彼は自ら命を絶ってしまう。けれどこの電子空間では、死は終わりを意味しない。何度でも蘇るが――だからこそ、地獄だった。ひどく空虚で蒼白な死に顔に、何度も直面することになるのだから。
     それでも、うさぎの少年――サムは気丈に振舞っていた。不得手な文字を懸命に勉強し、手紙を書き、彼のことを励ました。けれども、その努力が実ることは、ついぞ無かった。少年は、あまりにも無力だった。
     そうして、何度目の死を見送った頃だろうか。張り詰めた糸がぷつりと切れるように、サムの心は限界を迎えたのだ。
     一歩、一歩と、処刑台へと登っていく。吊るされたロープを、細い首に巻き付ける。そして、すう、と息を吸い込み、
    「ティーチくん……愛してる」
     伝わらない想いを置き去りにして、椅子を蹴った。
     がくんと下がった頭から、青い耳がずれ落ちる。ゆっくりと宙を舞い、それが床に着いた時――青いねこが、かっと目を見開いた。
    「……っ!」
     声もなくあえぎながら、懐からナイフを取り出し、天井から吊られたロープを切断する。どすんと大きな音を立てて床に落ち、激しく咳き込んだ。
     見開いた瞳の中の、小さな黒目がちかちかと明滅し、は、は、と浅い呼吸を繰り返す。吹き出す汗でぐっしょりと毛が湿り、吸収しきれなかった水分が滴り落ちる。
     知らず知らずのうちに死にかけていたことは、青いねこ――ティーチにとっては、どうだってよかった。彼がいま、らしくもなく狼狽しているのは、頭の中を駆け巡る『誰かの記憶』のせいだった。
     ……青いうさぎ。想いを寄せる青いねこは、近くにいるのに届かない。声も、気持ちも、投げたボールは跳ね返って戻ってくるだけ。
    『ティーチくん……ボクにきづいて……』
     それでも、青いうさぎはめげない。死にたがりの想い人のため、手紙に言葉をしたためる。拙い字ではあるけれど、その言葉はしっかりと伝わった。……伝わった、はずなのに。願いは届かず、青いねこは首を吊った。
    『ティーチくん……どうしてなの……?』
     手紙なんかじゃ伝わらない。もっと近くで励ましたいのに、寄り添うことすら許されない。なにもできない。なにもかも、届かない。いやだよ。どうして。もう、なにも……なにも、見たくない。
    『ティーチくん……愛してる』
    「あ……」
     その瞬間、ティーチはすべてに『きづいて』――理解した。今更気付いても、とうに手遅れなのだと。
    「……サム、くん……」
     声が震える。全身から力が抜けて、白い床にへたり込む。
     どれだけ心を探っても、少年……サムの気配は感じない。観た記憶が確かならば、そこにいるはずなのに。ずっとずっと、傍にいてくれたはずなのに。
     ふと、床に転がるナイフが目に留まる。鈍い光を放つそれを、震える手で拾い上げ、手首に当てる。そして、思い切りナイフを引こうとした瞬間――凶器を持つ手が黒く染まり、ぴたりと動きが止まった。
    「やめろ!」
     頭の中に声が響く。その声は、もうひとつの人格であるコバヤシのものだった。
    「早まるなティーチ、アイツはまだ死んじゃいない」
    「え……」
     コバヤシの言葉に、虚ろだったティーチの瞳に光が戻る。穴だらけの心を必死に探って、……見つけた。深い深い、真っ暗な穴の奥。そこに眠る、青いうさぎの姿を。
     けれど、まだ喜ぶには早かった。サムの呼吸はか細く、いまにも途切れてしまいそうだ。両頬には涙の痕、細い首にはロープの痕が、くっきりと、痛々しく残っている。青白い顔は、まるで死人のようだった。
     ――僕のせいだ。
     こんなことになるまで、まったく気付きもしなかった。存在も、言葉も、気持ちも、なにもかも。果たしてこの少年は、今までどれだけ傷ついて、涙を流したのだろうか。垣間見た記憶の裏に、どれだけの苦悩があって――自ら『終わり』を選んだのだろうか。
    「死なないで……お願い……」
     ぎゅっと目を閉じ、まぶたのうらに浮かぶ姿に、手を伸ばす。
     そっと、頬に触れる。涙で濡れそぼった毛を、指先でゆっくりと撫ぜる。……指に絡みつく毛は、生き物みたいに動くのに。固く閉じられた目は、ぴくりとも動いてくれない。
    「……僕の、せいだ……僕、ぼくが、」
     もっと早く、気付いてあげられていれば――……
     後悔と自責の念にふるえる言葉は、ひりつく喉の奥に飲まれて消えていく。涙を流すことは許されない気がして、ティーチは唇を噛み締めた。その肩に、そっとコバヤシの手が置かれる。サムの存在も、その気持ちも認知しながらただ傍観していたコバヤシには、項垂れる彼にかける言葉が見つからなかった。
     ティーチの手が、サムの細い首を撫でる。指先で毛を掻き分ければ、鬱血により変色した皮膚が現れる。横一線に刻まれたそれを、ゆっくりと指でなぞっていく。
     ――ティーチくん……愛してる。
     声、が。頭のなかを鈍く揺らして、視界が歪む。息が詰まる。潰れそうなほど胸が傷んで、痛くて、いたい。
     ……たったひとこと遺されたのは、愛の告白なんかじゃない。永遠の別れを告げる言葉だ。
    「だめだよ……だめ、死んじゃだめ……!」
     僕は気付いた。君に気付いた。だから、今度は君が――君に気付いた、僕に『きづけ』。
    「きづいて……きづけ、きづけよ……!」
     衝動のままにサムの両肩を掴み、がくがく揺さぶる。止めにかかったコバヤシの手を払いのけて、サムの身体を胸に抱き、
    「僕も……愛してるから……っ」
     青白い唇に、自らのそれを押し付けた。
     ――お願いだから、目を開けてよ。君に会いたい。声が聞きたい。顔を見て、お話がしたい。ねえ、サムくん。
     膨らんだ想いをぶつけるうちに、堪えきれなかった涙が溢れて、頬をぐしゃぐしゃに濡らしていく。ぎゅうっと目をつむると、なみだの雫が滴り落ちて、サムの頬と繋がった――その時だった。
     サムの瞳が、ふるりと震えて。ゆっくりと、開かれていく。
    「おい……、おいティーチ! サムが……!」
     最初に気付いたのはコバヤシで、その声にティーチはハッと目を開ける。
     ティーチの目に映ったのは、同じ黄色の瞳の中の、黒い月。ぼんやりと揺れるそれが、ゆっくりと、ティーチに向いた。目が合う。存在を、認識する。互いに『きづいた』、その瞬間。
    「……ティーチ……くん……」
     ひどく掠れた声は、けれど確かに、青いうさぎの声だった。
     ティーチは声もなく涙を流して、ぎゅうっとサムを抱きしめる。戻ってきた体温を、もう逃がさないように。

     真っ白な部屋の中には、いっぴきの青いねこが住んでいる。
     けれど、彼は独りではない。いつだってまぶたのうらに、黒いねこと……青いうさぎが、共にいるのだ。
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