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    さめはだ

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    さめはだ

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    拓二、大学生ぐらい

     大きな音を立てて扉が開かれる。ノックもなしに開いたこともだが、押し黙ったままずかずか近づいてくる輝ニに驚き、目を瞬かせることしか出来なかった。

    「えっ、あれ…どったの、」

     椅子に腰掛けた状態の首元を掴まれ、ぐぇっと変な悲鳴をあげた俺はそのまま側のベッドへと放り投げられた。
     なにか、怒らせることでもしたのか。いやそれはない。怒らせるもなにも、最近タイミングが悪く会えてない状態だったから思い当たる節なんて全くない。ここで「なんかしたっけ」と問うて逆鱗に触れたら最後、ボコボコにされるか下手したら男としての息の根が止められる。そんなことはなんとしても避けたい俺は、情けなくもまな板の上の鯉の如く、無表情で跨ってくる輝ニを見上げることしか出来なかった。
     どくん、どくん、ゆっくり大きくなる鼓動。筋張った指がとんとその鼓動へと添えられた。

    「………」
    「………」

     なんだ、こいつは本当にどうしたんだ…。午前中に送られてきた『今日の予定は?』に『夕方までバイトで、そこから家』と返信したのを思い出した。時間、作ってくれたのかな…俺に会いに来てくれたんかなとニヤけそうになるが、その端麗な顔面になんの色も浮かんでないのを見てそんな感情は引っ込んだ。変な汗が出てくる。やっぱり聞いてみよう、「俺、なんかしたか」って。
     決意し、口を開こうとした瞬間、輝ニが息を吸い先に言葉を発した。

    「もう限界だ」

     無駄に瞬きを繰り返す。それは、なにが、どうして、どのように。ぐるぐるぐると回る頭じゃ上手い返しが出てこない。怒らせること、したのか…してないよな過去の俺…。無意味な自問自答を繰り返す中言葉が続いた。

    「準備してきた」
    「…へ?」

     間の抜けた声を出した俺に注がれる目線が、見覚えのあるものへと変わる。

    あ、これ…あれだ。

     ニヤつきそうになる口角を引き結ぶ。ふうと息を吐いた輝ニが再び口を開いた。

    「いいから、さっさとヤるぞ」

     潔いその一言にふはっと笑いをもらす。我慢せずに綻んだ顔は色艶の良い黒のカーテンが覆い隠した。

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    Replies from the creator

    さめはだ

    DONE成長拓2♀
     これが何度目のデートなんてもうわからない。ガキの頃からの付き合いだし、それこそ二人で出かけた回数なんて数えきれないぐらいだ。良く言えば居心地の良さ、悪く言えば慣れ。それだけの時間を、俺は輝二と過ごしてるんだしな。やれ記念日だやれイベントだとはしゃぎたてる性格はしていない。俺の方がテンション上がっちまって「落ち着け」と宥められる始末で、だからこそ何もないただのおデートってなりゃお互いに平坦な心持になる。

     でもさ……。

    『明日、お前が好きそうなことしようと思う。まあ、あまり期待はしないでくれ』

     ってきたら、ただの休日もハッピーでスペシャルな休日に早変わりってもんよッ!!



     待ち合わせは12時。普段の俺たちは合流してから飯食って、買い物したけりゃ付き合うし逆に付き合ってももらう流れが主流だ。映画だったり水族館だったり、行こうぜの言葉にいいなって返事が俺たちには性が合ってる。前回は輝二が気になっていたパンケーキだったから、今日は俺が行きたかったハンバーグを食べに行った。お目当てのマウンテンハンバーグを前に「ちゃんと食い切れんのか」と若干引き気味な輝二の手元にはいろんな一口ハンバーグがのった定食が。おろしポン酢がのった数個が美味そうでハンバーグ山一切れと交換し合い舌鼓を打つ。小さい口がせっせか動くさまは小動物のようで笑いが漏れ出てしまった。俺を見て、不思議そうに小首を傾げる仕草が小動物感に拍車をかけている。あーかわい。
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    さめはだ

    DONEモブ目線、成長一二。
     鍵を差し込んで解錠し、ドアノブを回す音が聞こえてきた。壁を隔てた向こう側の会話の内容までは聞こえないが、笑い声混じりの話し声はこのボロアパートじゃ振動となって伝わってくる。思わずついて出た特大のため息の後、「くそがァ…」と殺気混じりの呟きがこぼれ落ちた。

     俺の入居と入れ違いで退去していった角部屋にここ最近新しい入居者が入ってきた。このご時世にわざわざ挨拶に来てくれた時、俺が無愛想だったのにも関わらずにこやかに菓子折りを渡してくれた青年に好感を持ったのが記憶に新しい。

     だが、それは幻想だったんじゃないかと思い始めるまでそんなに時間はかからなかった。


    『あッ、ああっ…んぅ…ぁっ…!』

     
    「……」

     ほーら始まった。帰宅して早々、ぱこぱこぱんぱん。今日も今日とていい加減にしてほしい。残業もなく、定時に帰れたことを祝して買った発泡酒が途端に不味くなる。…いや、嘘です。正直、めちゃくちゃ興奮してる。出会いもなく、花のない生活を送っている俺にとってこんな刺激的な出来事は他にない。漏れないように抑えた声もたまらないけど耐えきれず出た裏返った掠れた声も唆られる。あの好青年がどんな美人を連れ込んでるのかと、何度想像したことか…。
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    Lemon

    DONE🎏お誕生日おめでとうございます。
    現パロ鯉月の小説。全年齢。

    初めて現パロを書きました。
    いとはじイベント参加記念の小説です。
    どうしても12月23日の早いうちにアップしたかった(🎏ちゃんの誕生日を当日に思いっきり祝いたい)のでイベント前ですがアップします。
    お誕生日おめでとう!!!
    あなたの恋人がSEX以外に考えているたくさんのこと。鯉登音之進さんと月島基さんとが恋人としてお付き合いを始めたのは、夏の終わりのことでした。
    一回りほどある年齢の差、鹿児島と新潟という出身地の違い、暮らしている地域も異なり、バイトをせずに親の仕送りで生活を送っている大学生と、配送業のドライバーで生活を立てている社会人の間に、出会う接点など一つもなさそうなものですが、鯉登さんは月島さんをどこかで見初めたらしく、朝一番の飲食店への配送を終え、トラックを戻して営業所から出てきた月島さんに向かって、こう言い放ちました。


    「好きだ、月島。私と付き合ってほしい。」


    初対面の人間に何を言ってるんだ、と、月島さんの口は呆れたように少し開きました。目の前に立つ青年は、すらりと背が高く、浅黒い肌が健康的で、つややかな黒髪が夏の高い空のてっぺんに昇ったお日様からの日差しを受けて輝いています。その豊かな黒髪がさらりと流れる前髪の下にはびっくりするくらいに美しく整った小さな顔があり、ただ立っているだけでーーたとえ排ガスで煤けた営業所の壁や運動靴とカートのタイヤの跡だらけの地面が背景であってもーーまるで美術館に飾られる一枚の絵のような気品に満ちておりました。姿形が美しいのはもちろん、意志の強そうな瞳が人目を惹きつけ、特徴的な眉毛ですら魅力に変えてしまう青年でした。
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