ぱちん、ぱちん。差し出された拓也の爪を切っていく。白い部分を残しつつ、肉を切ることなくなるべく短く、そして丁寧に。ぱちん、ようやく左手が終わった。熱くなった顔を上げれば、うっとりとした目線が向けられていた。
風呂上がり、先に入浴をすませた拓也に手招かれた俺は、頭上にタオルを被せたまま隣へと腰掛けた。
「どうした」
「なあ輝ニ」
「うん、なんだ」
爪、切ってくれる?
そう口にしながら差し出された爪切りを、横着しやがって…と思いつつ受け取った。
「また切るのかよ…こないだ切っていたじゃないか」
「先週の話じゃん」
「…十分だろ」
お前の細胞循環はどうなっているんだ。疑問を感じながら、視線をやった爪の先はほんの僅かに白い部分がある程度。これ以上やったら深爪一直線で、もう少し指先を労ってやれよとその手を押し返した。
「ここから短くする必要はないだろ、危ないって」
「…それ、本気で言ってんの?」
「ん?…まあ、そうだな」
なぜか呆れ顔を浮かべられ、更に疑問が深いものへと変わった。首を捻る姿をまじまじと見つめてきたと思ったら、次の瞬間にはふっと柔らかく、そして色香が乗った笑みを向けられる。
「この指先で、お前のナカ広げるんだぜ。傷つけらんねぇだろ」
「へっ」
「輝ニがしてよ。俺に抱かれる準備」
僅かに伸びた白い部分が唇へと立てられる。風呂場でふやけた唇はそれだけで簡単に歪んでみせた。背筋を駆け上ってきた期待が口から出てしまわないよう喉をこくりと鳴らす。
「っ、それは…」
「爪あったほうが、乳首引っ掻いてやれるし、ちんこの先もぐりぐりって出来るけどさぁ…傷、付けたくないだもん」
含みをもたせた笑みで再び爪切りが手の内に戻された。拓也の体温が移ったそれすら、ただの道具ではなく前戯の一旦にも思えてきた。
おずおずと左手を握り、向けられた指を一本ずつ支えていく。
「…切れば、いいんだな」
「うん、お願い」
「……」
ぱちん。
長くて深い夜の幕が上がる音がなる。