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    Saha

    こんな辺鄙な所にようこそ(誰も来てないかも)
    らくがき置き場です。あと文字の練習。とってもお試し。

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    Saha

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    ソ生存IF世界⇔映画軸のリョ三③

    また続いた…。矛盾点いっぱいあるけどご愛嬌。
    書くのはとっても楽しい〜。
    しかしこれより元の筋の話を先に書きたいな…。入れ替わりじゃないやつ。
    ネタだけ色々同時進行しすぎて何も終わらなさそう…うぐぐ

    ソ生存IF世界と映画軸の三が入れ替わったリョ三③◆◆◆




    たまに夢に出てくる、『あの人』との出会い。
    ストバスのコートで、ハッとするような美しい3Pを決める姿。
    あの時もっと心に余裕があったら、今頃仲良くなれていたのかな。

    「ー-オイ、宮城」

    夢の中のあの人が、途端に目付きの悪い長髪に変わる。
    ……違う、アンタじゃねえんだよ。オレがずっと会いたかったのは。

    「オイ!」

    うるせえ。黙ってろよ。さっきのあの人を出せ。

    「起きろって!!」

    「あァ…?!」

    しつこく呼ぶ声にしぶしぶ目を開けると、ぼやけた視界に『あの人』が居た。

    「……『みっちゃん』?……」
    「ブハッ」

    目の前の男は、ソレお前に初めて言われたな、なんて言いながらケラケラと笑っている。
    あれ?これ誰だっけ。ここどこだ?
    あ、教室か。
    時計を見るとちょうど午前の授業が終わったところだった。
    昨日はなんか色々考えすぎて寝れなかったから、授業中に寝ちまったんだっけ。
    え、でも何コレ。まだ夢の中?

    「昼飯行くから一緒に来いよ」
    「アンタ……髪どうしたんすか」
    「ん?邪魔だから切った。あんな長いとバスケできねーじゃん」

    そう、三井サンはあの長い髪の毛を切って、オレの記憶の中にいた『みっちゃん』の姿になっていた。
    頭が混乱する。オレら、屋上で殴り合って、それから……

    「……まだ消えてなかったの、アンタ」
    「オウ。オレも寝たら戻ってるの期待したんだけどな」

    ふーん、まだ続いてんのかよ。
    別にいいけど。因縁つけられたり殴られたりしなければさ。
    連れ立って屋上に来たところで、ぼーっとして忘れていたが今日は昼飯を持ってきていなかったことに気づいた。

    「、ちょっと学食行ってきます」
    「いいよ、行かなくて。オレ一人じゃ食い切れねえし」

    言われて掲げられた三井サンの手元を見ると、弁当というにはあまりに大きすぎる包みがあった。
    聞けば、三井サンの母親が張り切って作ってくれたのだという。

    「お前が帰った後ちょっと大変でよ…いや、大変っつーか」

    母親に夕食は家で食べるのかと聞かれ頷くと、部屋に持ってこようとしたからリビングで食べると言ったら物凄くびっくりされた。
    夕食の席であからさまにギクシャクしている両親に居心地が悪くなり、
    ふと「明日バスケ部に入る」と言ってみたら二人揃って「えっ!!!?」と言ったきり固まってしまった。
    その後おそるおそる、「膝は大丈夫なのか?」と聞かれ、
    あちらの世界でも膝を故障した事があったからそれのことかと思い、「痛くねえけど一応明日病院行ってくる」と言ったら母親が号泣していた。
    いつまでも泣き止まない母親に動揺して、全くわからなかったが「悪かった」と言ってみたらますます涙が止まらなくなってしまい、
    父親は「よかったな」を繰り返すばかりで
    どうにも居た堪れず早めに寝たら
    朝この特大弁当ができていたそうだ。

    「いくら運動部ったって、こんなに食えねえよ」
    「……そんだけ親不幸したってことでしょ」

    やっぱりこの人全然取り繕えてなかったじゃん。不良息子がいきなり更生(?)したらびっくりするって。

    「んで、朝サボって病院行って、ついでに髪も切ってきたんだけどよ。
    教室入ったらすげーシーンとしちまってなんか居心地悪かったわ」
    「…でしょうね…」

    ロン毛の不良が1日でこんな爽やかスポーツマンみたいな頭してきたらそりゃあな。
    ていうか気にしてなかったけど教室までそっちの世界と同じなのか。
    この人対応力なさそうだから助かるけど。

    「そういえばさ、コイツの部屋、クローゼットには結構色々あってな。
    ボールとかバッシュとか段ボールに詰められてたぜ」
    「へえ」

    全部捨ててしまえないほどには未練があったのか。
    そりゃあ、あんだけ美しいフォームでシュートを打てるんだからもったいねえよな。
    なんでこの人不良なんかやってたんだろ。
    差し出された卵焼きは出汁が効いててすごく美味しかった。

    「オレの方の記憶とは色々違うと思うんだけどよ、バスケ部に赤木とか木暮っているのか?」
    「いますよ」
    「おっ、そうか!他の2年生は?」
    「2年は二人だけっすね」
    「ふーん…。今の時期ってもう3年は引退してるよな。じゃああいつらに認められたらバスケ部入れそうだな」
    「…本気で入るつもりなんスか」

    おっ、唐揚げも超うめえ。

    「たりめーだろ!せっかくお前がいるのになんでバスケできねーんだよ」
    「ぐっ、………え、オレえ?」

    そこで自分が出てくるとは思わず、喉に詰まりかけた唐揚げをどうにか飲み込む。

    「だって、お前と……あ、お前じゃねえけど。オレは、リョータと約束したんだよ」
    「はあ、何を」
    「一緒にバスケやって、ソータを悔しがらせるんだって」
    「…………」
    「親に膝のこと聞かれて思ったんだけどな、コイツ故障が原因でバスケ辞めちまったのかもって。オレも膝やったことあるからな」
    「へえ。アンタはなんで平気だったの?」

    ふと疑問を口にしただけなのに、びっくりするくらい柔らかい眼差しを送られてたじろぐ。
    何、その表情。

    「膝を故障して、スタメンが絶望的になって。
    もう3年だったソータとは一緒にバスケが出来なくなって落ち込んでた時に、
    リョータがオレと一緒にやろうって言ってくれてよ」

    そっか、ソーちゃんはこの人にとったら2個上だから被るのか。
    てか一緒の高校なのかよ。

    「すげーハッとした。そんな未来があるんだって思った。
    あん時は絶望しかなくてこの世の終わりって感じで、先の事なんて全く考えられなかったんだよ。
    でも、ソータが居なくなっても、リョータは湘北に来てくれるんだって。
    大事な進路そんなんで決めていいのかよって思ったけど。
    コイツと一緒にやれるんだって、それがオレにとってはすっげえ……希望の光みてーだった」

    愛しくて、たまらないって顔した三井サンが、キラキラした目で『リョータ』のことを語る。

    「オレはリョータと一緒にやるために、きついリハビリもバスケできない日々も乗り越えられた。
    でも、こっちのオレは違ったのかもしれねえ。
    絶望に呑まれたまま、戻ってこれなかったのかもな」
    「……ふうん」

    なんだか、すごいいい話を聞いてるのにとても微妙な気分だった。
    三井サンがあまりにもそっちのオレのことを嬉しそうに、特別みたいに語るから。

    「で、病院行って膝は大丈夫だったの?」
    「おお、全然問題ねーってよ!」
    「そっか」

    この人と、一緒にバスケやれんのか。
    あの時の続きができるのか。
    不思議な事がありすぎて実感がわかなかったけど、それはちょっと嬉しいかもしれない。

    「アンタ不良やってたのに体動くのかよ」
    「あー、どうだろな。朝軽くシュートしてみたらそこはあんまわかんなかったけど。持久力はどうかな」
    「へえ…」
    「ま、放課後なったらとりあえず入部届出してくるわ!楽しみにしてろよ」

    ニカっと笑う無邪気なその顔に少しだけ鼓動が速くなる。
    いや別に、そんな楽しみになんてしてねーし…。


    ◆◆◆


    放課後になって、体育館に現れた三井サンはどうやら一年の時にバスケ部に入部していたらしい。
    退部はせずに席はそのままあったそうだ。

    「廊下で木暮に会ってよ、ダメ元で話かけてみたんだよ。
    オレのことわかるかって聞いたらめちゃくちゃ驚いてたわ」

    そりゃあロン毛の不良が以下略だな。

    「やっぱコイツ、膝の怪我が原因で部活来なくなったらしい。復帰するって言ったらめちゃくちゃ喜んでくれたぞ。
    もっと早く戻ればよかったのにな」

    それはオレもそう思うけど。
    でも長髪のアンタなんか色々拗らせてたみたいだし、素直になるの難しかったんじゃねえの。
    もしかしたら……オレの方がわかるかもしれない。
    誰もが今のアンタみたいにまっすぐ行動なんかできねえんだよ。
    一度暗闇に堕ちたら、明るい所が怖くなっちまう。

    「……キラキラしてて、眩しいよな……」
    「ん?」

    ねえ、その顔やめてよ。
    そんな顔でオレのこと見ないで。

    「ね、ねえリョータ!ちょっと!」

    不意に引っ張られて振り返ったら、真っ青な顔をしたヤスがいた。

    「リョータ!何があったの?!
    あれって2年の三井先輩だよね…?」

    そういえば、三井サンに絡まれた時ヤスが一緒に居たんだった。
    しかも屋上に連れてかれたのも知ってるかも。
    あー、なんて説明すっかなあ…。

    「お、安田じゃねーか」
    「ヒッ」
    「あ、そっか。しまった…」

    だあからアンタ、もちょっと考えて発言してよ。
    ハア〜っとため息をつくと、三井サンが明後日の方向を向いた。
    もういいや、何でも。

    「この人、バスケやりたいんだってさ」

    ニヤっと笑ってそう言うと、ヤスは「は?」と言ったきり固まってしまった。

    「おう、オレバスケ部だったんだけどよ。
    コイツとやりてーから戻ることにした」
    「えっっ」

    バカ、さらに混乱させるような事いうなっての。
    オレとやりたいとか訳わかんねーから。
    なんだよそのすげー爽やかな笑顔!
    手え差し出すなって。ビビってんだろヤスが。

    「…?あ、え…と。よろしくお願いします…??」
    「へへ。よろしくな!」

    ……ヤス、お前ホントいい奴だよな……。
    引き攣った笑顔で三井サンの手を握り返す友人の懐の広さには感動さえ覚える。

    「まだ練習にははえーよな。リョ…宮城、
    パスくれよ。
    ちゃんとバスケできるって見せてやるから」

    心臓が跳ねる。
    何度も夢にまで見たあの人のシュートフォーム。
    いや、待て待て。この人不良だったんだから。
    期待するなよ、そもそも思い出補正されてっかもしれねーし。
    いやされてる、絶対。
    わたわたと浮ついた思考を表に出さないよう、冷静を装ってパスを出す。
    受け取ったあの人はーーー

    あの時と同じ。
    いや、それ以上に美しいフォームで。

    「……わあ」

    隣でヤスが初めて空中ブランコを見た子供のような声をあげている。
    放物線を描いたボールは、少しもリングに掠らずに吸い込まれていった。

    なんなの、ホント

    夢見心地でパスを出し続け、
    その全てのボールがリングを通り抜けていく。

    「くそ…」

    動悸がおさまらない。
    なんだ、コレ。
    何なんだよ、アンタ……!

    「 三井 」

    たった一言なのに、体育館に響き渡る重厚な声。
    赤木のダンナ。と木暮さん。
    そして入りづらかったのかその他1年のメンバーが入り口から覗いていた。

    「…なんのつもりだ」
    「赤木」

    三井サンが投げようとしていたボールをバウンドさせて手に収め、クルクルと回した。

    「バスケ部戻ろうと思ってよ」

    ニヤッと笑った三井サンに、ダンナがツカツカと歩み寄る。
    2人が対面して並ぶと、やっぱりダンナってめちゃくちゃでけえよな。
    ヤスをはじめ一年生達が呼吸を忘れたようにシーンと見守っている中、木暮さんだけがニコニコしていた。
    そして、

    ゴツン!!!

    「「「!!!!!??」」」

    「………ッッッ!!!」

    三井サンの頭に特大のゲンコツが落ちた。
    うわあ、イタそ〜〜〜〜。

    「ちょ、赤木!?」

    さっきまでニコニコしてた木暮さんも一年も真っ青になってワタワタしている。
    そうだよな、あの人不良だし。

    「てェえええええ!!!何しやがんだテメエ!」
    「遅い!!!!!」
    「………あ?」
    「大遅刻だ。バカもんが」
    「……遅刻したの、オレじゃねーし……」
    「何?」
    「なんでも、ねーよ」
    「宮城っ!」

    え??
    今の流れでオレを呼ぶの?殴られんの嫌だよオレは。

    「…三井に殴られたっていうのは本当か」
    「え、と」
    「事と次第によっちゃ、コイツを復帰させるわけにはいかん」
    「っ赤木!」

    そっか、どこまで伝わってるかわかんねーけどオレと三井サンってまだ揉めてる最中みたいな感じなんだよな。
    慌てているのは三井サンと木暮さんだけで、その他のメンバーは是非ともそうしてくれ、という顔をしていて笑える。

    「……そのヒト、大丈夫っスよ」

    視界に入った三井サンはぶすっとしていて、でもオレの言葉に安堵の表情を浮かべた。
    ねえ、三井サン。
    あのシュートを見せられてから、なんかオレ、おかしい。
    殴られた過去なんかどうでもいい。
    アンタとバスケできないなんてありえないって思ってる。

    「宮城…」
    「バスケできないとグレてしんじゃうって言うから、カワイソーなんでやらせたげてください」
    「おいコラ!」

    何言ってんだお前!って赤い顔でつっかかってくる三井サンにひひっと笑い返す。
    だって本当のことでしょ。不良のアンタ、目が死んでたもん。
    そんなに、キラキラしてなかったもん。
    険悪じゃないじゃれかたをしているオレたちに、皆ホッとしているようだった。

    「宮城が何とも思ってないなら、いいじゃないか赤木」

    渋面を作っているダンナと三井サンに木暮さんが優しく助け舟を出す。
    ダンナはフーーっと息を吐き、三井サンを眩しそうに見つめた。

    「…あまり、無理はするなよ」
    「………っ!、おう」

    不意にかけられた労りの言葉に、三井サンは驚きながらも嬉しそうに返事をした。
    なんだ、ダンナも心配だったんじゃん。
    ……アンタ、ちゃんとここに居場所あったよ。
    もうバカなことすんなよな。

    そういえば、不良の三井サンってどうなってるんだろうな。
    目の前の事にいっぱいいっぱいで今までそんな事すっかり飛んでいた。
    もしかしてこの三井サンの世界に行ってるのかなあ。
    そしたらソーちゃんと会ってるってコト?なんかこの人ばっかりずるい。
    あっちで変な事してねーだろうな。
    ていうかなんかもう、三井サンが別世界からきた、なんて突拍子のないことも半分受け入れちゃってて怖いなオレ。

    「どうした?宮城」

    だからさ、その優しい顔やめてって。
    何だか変になりそう。
    いや………もう、なってる。


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