俺灰俺灰
リンドと夜ご飯を食べる予定だった俺さん。でも前の打合せが延びてしまう。終わったのがリンドと待ち合わせの10分前。どんなに急いでもリンドと待ち合わせに場所までは車で30分くらいかかる。確実に間に合わないなと思った俺さんはリンドに電話かける。
一方のリンドはいつも俺さんが遅くとも約束の5~10分前には着いているから珍しいなと思いながら待っていると俺さんからの着信。
「もしもし?」
「ごめん、竜胆」
「え?なに?」
「打合せが今終わったから遅れる」
「あー別にいいよ。適当に時間潰してるから」
「本当にごめん」
通話を切ってから急いで準備をして車に乗る俺さん。信号待ちの途中で携帯を確認するとリンドから連絡。「××の●●にいる」と地名とコーヒーチェーン店の名前。「OK」とだけ返して捕まらない程度に飛ばしてリンドのもとに向かう。息を切らしながら指定されたお店に着くとリンドはコーヒーとサンドウィッチを食べていた。
「ごめん、お待たせ」
「いいって。俺も遅れることあるし、そんなに待ってねえよ」
「…サンドウィッチ食べてたの?お腹減ってた?」
「ちょっとな。でもこれ食ってもメシ食えるから」
そのまま俺さんも急いできたので休憩がてらコーヒーを1杯飲んで、リンドと目的のお店に向かう。カジュアルなお店だったから予約はしてなかった。
食事が始まってからも「遅れてごめんね」っていう俺さんにリンドがふざけて「お詫びしてもらうかな」って言う。
「いいよ。どうすればいい?」
困らせてやろうと思って高額のものを言うリンド。
「××のあたりでマンションほしいと思ってて」
「…マンション?……マンションかぁ…」
ふ~ん、って流す俺さん。高額すぎてスルーされたな…って思うリンド。その後は違う話題になったのでそのままリンドもその話を忘れる。
そしてそんなことがあった数日後。俺さんからリンドに「今日時間ある?俺の家来て」って連絡。
「何だろう」と思って俺さんの家に向かう。リビングには俺さんと俺さんの隣に座るラン。
「え?兄ちゃんもいるの?なに?どうしたの?」
ちょっと困惑気味リンドに「これ、好きなの選びな」ってローテーブルに紙を並べる。リンドがそれに目を落とすとマンションの資料。
「……は?なにこれ?」
「ッふ、ふふ…」
本格的に困惑するリンドに笑いが漏れるラン。
「この前、食事に遅れたお詫び。マンションほしいって言ってただろ」
「そ、…うだけど……」
「懇意にしている不動産屋に資料集めてもらってね。これがオススメらしいけど、どう?」
指を差された部屋は資料の中で一番高額だった。お酒の席で言った冗談に本気で資料集められるとは思わなかった。しかも時間に遅れたお詫びで何千万クラスのマンション。
固まっているリンドに不安そうな顔をする俺さん。
「…リンド?気に入ったのない?」
「ッは、あはは!!」
俺さんの肩に手を置いてその上に自分の額を当てて声を上げて笑うラン。
「?ランくん?どうしたの?」
「あー おもしろ」
「ちょっと兄ちゃん笑ってないでなんか言ってよ…」
「なぁ、将来的にマンションより土地のほうが絶対いいって」
「ちょ!兄ちゃん!!」
「ああ、そうだね。じゃあもう一度資料集めてもらうか」
「【俺】も!あんなの冗談に決まってンじゃん!」
ラン、笑ってるけど数年前に同じことやられているし、なんならそのときに本当にマンション買ってもらった。