夕撫-----年始-----
百八つの鐘が鳴る。おけら参りの火をクルクルと回す撫子を、まるでおもちゃを貰った子供のようだねと夕星が笑った。
「ふふふ、確かに楽しんでます」
「そんなに楽しいのなら、来年も来ようか」
「鬼が大笑いしていますね!」
元旦の早朝に、当然のように来年の話を始めるので撫子が声を上げて笑った。
-----冬至-----
一年は命のサイクルに似ている。
柚子の香りが浴室内に立ち上り、撫子の歓声が夕星に笑みをもたらした。
「今日から毎日、明るい時間が増えていくんですね」
小さな太陽を一つ手にして、撫子が笑う。
長くなる日中に何をしようか。失う時の事など考えず、喜びを享受しよう。
夕星が撫子にそっと触れた。