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    usi_plus

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    ●ゆあまい展示
    ❤️『休日デートする話』
    エース編/18:00更新分

    ・WEBアンソロ参加作品
    ・プリオンリー『Kiss Petit』参加作品


    アン〇ミラ〇ズをモデルにして書き始めていたんですが、その直後に店舗閉店のお知らせが…
    間もなく閉店してしまうとのことで…思い出を小説に残しておきます。

    エースとデート≪食事≫●18:00ー夕食



    監督生と付き合いだしてからデートは何回も重ねてきてるけど、これだけ長い時間2人きりで賢者の島を満喫したことはなかったから、朝(昼だったけど)から柄にもなくずっとテンションが高いままだ。
    ダセェから表には見せず必死にエスコートしようとしているのに、隣を歩くこいつがいちいち可愛くて、取り繕ったカッコ付け姿を簡単に崩されそうになって悔しい。

    例えば起きてすぐ。寝坊して焦るオレに「1日中一緒にいられるから寝坊も楽しいね」と笑う顔。
    例えば映画館。ポップコーンを奢ってやろうとレジに1人で向かったら寂しそうに引っ付いてきた、まるでウサギみたいな仕草。例えばバッシュを選んでる時。“その靴が好き”で良いのに“エースに似合うから好き”って伝えてくるいじらしさ。
    例えば雑貨屋。自分が欲しいものを我慢してグリムのプレゼントを真剣に選ぶ心の優しさと少しの自己犠牲。
    挙げたらキリがなくて、全部全部オレの心臓を握り込むように掴んで離さなくてたまらなかった。

    今日がずっと続けば良いのに、と考えてしまうくらいには楽しい。そして今日はまだ予定の半分が過ぎたばかりで、この後はもっと心躍っちゃうことが待っていると思うと、足取りも軽くなるってもんだ。
    さっき、照れ隠しなのかやたらと強く握られてまだじんじんと痛い右手を、軽く自分の方に引っ張ってその手の先にいる監督生の身体を引き寄せる。指先を恋人繋ぎってやつに変えてみたら、目線の少し下にある監督生の頭が揺れて、また愛しくなる。
    別の意味で腹が減ってきたけど、今向かっているのはカフェレストラン。まずは腹拵えしないとな。

    「わ、いっぱい並んでる!」
    「本当だ、やっぱ人気なんだなー」

    オレがチョイスした今日のディナーは“エースが好きなものを食べたい”という名前からのリクエストにより、ずっと来てみたかった有名なパイ専門店。昔は店舗もたくさんあったらしいけど今はかなり縮小されていて、その限られたうちの1つが賢者の島にあるってんだからラッキーだ。“パイ専門店”と謳っているだけあって味はもちろん最高らしいが、全盛期、この店が話題騒然となったきっかけはウエイターたちの制服らしい。すげーミニスカートのワンピースで、数多の男を虜にし、狂喜乱舞させたんだって聞いたけど、実際に足を運んでみてわかった。

    確かに男の目線が釘付けになる制服だわこれ。なんというか、ローラーシューズを履いたらピッタリフィットする感じのアレだ。正直めちゃくちゃ可愛い。惜し気もなく晒されてる太腿から何から魅力的すぎてどうにかなりそうなやつだ。
    それでも。確かに可愛いが、今オレが隣に連れて歩いているのは他でもない監督生で、オレのガールフレンドなわけで、どこの誰とも知らない店のウエイター達よりも遥かに大切な存在なわけで。
    彼女の前で他の女に鼻の下を伸ばしてたまるかとキュッと口を結んで堪えた。そして振り返って彼女の顔を見、

    「大丈夫、オレ予約してきたか「エース、今ウエイターさん達可愛いなって思ってたでしょ」…すみません」

    女のカンと観察眼は誤魔化せなかった。

    「いいよいいよ、私も可愛いと思ったし。というか予約してくれてたの?」
    「あ、うんそう。絶対混んでると思って」
    「そうなんだ、ありがとう!」

    ムッとしたのは一瞬だけですぐまた笑顔を見せてくれた監督生に安心した。オレが行きたかった店のはずなのに、オレ以上にウキウキしちゃって楽しそう。だって入り口付近にいる席誘導担当らしき男の人に近付いて、オレの予約があるか率先して聞きに行っている。
    自分がやろうと思っていたことだけど、楽しそうならまぁいいか。

    「すみません、18時から2名で予約入ってますか?トラッポラと申しますが…」

    気を抜いてその様子をなんとなく眺めていたら、突然爆弾が落とされた。
    その後、こちらに戻ってきたユウに顔を叩かれるまで、オレの意識は戻ってこなかったという。

    男性店員の誘導に従って、予約者向けの店の奥の広いソファ席に落ち着いた。まだ心臓はバクバク言っているが、いつまでもこの調子じゃ情けないので理性を総動員させてなんとか座っている状態だったりする。
    うん、結局情けないことに変わりはないか。

    「何にする?やっぱりチェリーパイ?でもそれだけじゃ足りないよね…」

    あーもう頼む。そんな風に無邪気に笑わないでくれ。オレの好み全部把握してくれてんの嬉しいな!オレのことは気にせずいっぱい食べてくれ頼むから。そんで気に入ったらまた来よう。
    本人に伝えるでもなく、頭の中がそんな言葉たちで埋め尽くされていく。恋は盲目とはよく言ったもんだな。こいつの話す言葉やふとした仕草、表情、何もかも全部が可愛くてしょーがねぇわ。

    「メインの食事に何かと、パイは絶対食べたいわ」
    「だよね〜!」
    「ユウは何にするか決まってんの?」
    「んー…ラザニアも良いしお肉も良いし…迷う…」
    「半分こする?」
    「えっ良いの?でもエースはハンバーガー食べたいんじゃない?」

    なんでわかった?ハンバーガーのセットとチェリーパイとコーラで揃えたかったのが正直なところ。でもこいつの食べたいものを食べさせてやりたいと思うのも本当。何とか妥協案がないかと迷っていたら、思いがけず監督生が自分で答えを出した。

    「それじゃあさ、今日は私ラザニアにする!それでエースはハンバーガーにしなよ。お肉はまた次のお楽しみにとっておくからさ!…だめ?」

    あぁもうまたお前はそうやってオレを喜ばせる!
    どこかで見たインターネットミームの画像が頭をよぎる。オレがさっき言いたくて言えなかった台詞をさらっと言ってきて、でも少しだけ不安そうな顔でこっちを見つめてきて、そんなおねだりなんされた日には。

    「ダメなわけねーだろ!」

    思わずちょいデカめの声も出ちまうってもんだろ。





    結局オレは1番食べたかったセットを。監督生はラザニアとマスカットのタルトを頼んでいた。テーブルに運ばれてきたそれらを見て二人でかなり興奮してしまった。
    さすがパイ専門店なだけあって、パイ生地はさくさくふわふわで最高だったし、そこに挟まったチェリーはてらてらと光り輝いていて、元々の赤色を更に強調させていた。フォークを入れるとソースと共に身が溢れてきて、食べる前から美味いのがわかったし、実際に口に運んだらマジでほっぺが落ちる!と大袈裟じゃなく思うほど美味かった。
    でもそれ以上に、監督生と食ってるから、うまい。食事もパイも一口ずつ交換して、小っ恥ずかしいと思いながらも監督生に差し出された「あーん」にも乗った。やっぱり馬鹿みてぇに美味かった。
    いつの間にか、最初に視線を奪われていたウエイターたちのユニフォームのことなんてすっかり思考からすっぽ抜けていて、目の前の好物と彼女のことしか考えられなくなっている気がする。
    好きなものに囲まれて過ごす食事の時間てこんなに幸せで美味く感じるのか。
    皿の上が空っぽになっていくのが名残惜しくて、まだパイを食べている途中だっていうのにもうその場で次店に来る日取りを決めた。
    お互い忙しくしている身でなかなか来られないけど、こんなに良い思い出が刻めるなら無理矢理にでも時間を作って何度でも来よう。

    ジュースも飲み干し、溶けかけた氷の水を啜りながらアレコレ雑談をしていた頃、店の中にオレたちよりいくらか歳上の大人のカップルたちが増えてきた。
    学生組はここらで退散するか、と席を立つ。それこそまだまだ学生カップルの身なので、デートでの食事は割り勘と決めている。会計のために2人並んでレジ前に立つと、まるで誘うようにレジの下のショーウィンドウに持ち帰り用のパイが、しかもホールで並べられていて憎い。
    でも今のオレたちは気分が良いからその誘いに流されてやることにして、さっき監督生がメニュー表を睨み付けながら迷っていたチョコバナナのパイ、ダッチアップルのパイ、それからグリム用にパンプキンパイを1ピースずつ包んでもらう。ホールはまた今度のお楽しみにしような。

    でも今は目の前のお楽しみが気になるお年頃。店を出る時、見送ってくれたウエイターさんのユニフォームをもう一度しっかり目に焼き付けておく。
    あぁ、監督生も足キレイだし着てみて欲しいな。
    頭の中でミニスカワンピを監督生に着せて、大好きなチェリーパイを監督生の手ずから食わせてもらう自分を想像しながら、ニヤつく顔を必死に抑えた。

    「はー食った!最高だったなぁ」
    「美味しすぎたねぇ…お腹パンパンになっちゃった」
    「お前いつもより明らかに量多かったね」
    「本当だよ!ポッコリお腹すぎる!これじゃたぬき〜…」
    「へぇ?油断してグリムみたいになんなよぉ?」
    「あっ!やめて!さわんなっ」

    意地悪く笑ってパンパンだと笑ってアピールしてくる監督生のお腹を軽く撫でる。スキンシップのつもりだけど割と本気で恥ずかしそうにしててちょっと罪悪感。確かにしっかり張ってたのは黙っとこ。
    繋いだ手をブンブン振りながら「なんで男の子って食べても太らないの!不公平!」とプリプリ怒っているこいつがまた可愛くて、悪いと思いながら吹き出してしまった。案の定更に怒りを買ってポカポカ肩口を叩かれた。でも、繋いだ左手は離さないままなんだから本当にオレもお前も素直じゃないよな。

    さぁ、食事が終われば、残された時間はあと僅か。外泊届けは出していないので寮の門限までに戻る予定ではある。でも正直、朝からずっとこの時間への期待値が高まっていて、いよいよ来たか、という気持ち。
    明確に予定を組み込んでいわけではないけど、監督生だってハーツラビュルの門限が何時かくらいは知っている。
    つまりまだ2時間以上は猶予があることもわかっているはずだ。それに大通りを抜けて少し外れた所にある目的地は、学園まで戻るルートの途中だ。オレにはしばらく縁がないだろうと思っていたそこは、もう後いくらか歩けばたどり着いてしまう距離にあるわけで。それを逃す手は今のオレの中にはなかった。

    「…エース」

    監督生も、多分もう察している。手の平から伝わる温度が少しだけ上昇した気がして、オレの熱を返すように握り返す。女に恥をかかせるわけにはいかない。ここは、オレから。

    「じゃ、食後の運動でもシにいこっか」

    覗き込んだ彼女の顔は、さっき食べたパイのチェリーよりも赤く染まっていた。
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