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    じろぽい

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    ロゾ探求レッドゾーン

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    じろぽい

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    2023年ロゾ週間おめでとうございます!

    ※tr男の別世界ロゾに対するツッコミ集。
    ※2日目 海軍ロゾ VS tr男

    「コラさんがいくら応援していようが、おれとゾロ屋が付き合うわけねえだろ!」ふたつぼし




    次に目が覚めた時は、さすがのローもあんぐりと口を大きく開けて、マリンフォードの牙城を見上げた。なぜ、こんなところに。
    この世界がローの世界なのか、あのネジの外れたキャプテンの世界なのか、はたまた別の世界なのか、今の時点では判別がつかない。しかしこの突然の始まりから考えるに、また新しい世界なのだろうと、この状況に慣れつつある自分が厭になるローだった。いくら放浪が趣味と言えど世界を飛んで旅することはまったく望んでいない。

    マリンフォードが聳え立つ波打ち際、波に鍛えられた鋭利な岩場は海水が浸りまた藻や小さな貝類がさわさわ息をしている。ぬるつくブーツの裏を意識し転げ落ちないように気をつけながらローはこの場から移動した。悪魔の実の能力者と海との相性の悪さは実を食ったときから最早本能になってしまったのでこの碧く美し海から遠ざからなければならない。敵の本拠地であるため現状では能力は使わない方がいいと判断しローは徒歩で移動した。
    しかし綺麗に揃った足音が近づいてくるのを耳が掬い取り大きな岩の影に隠れた。
    「いたか?」
    「いやここにはいなそうだ。どこいったんだ?今日はお二人ともいないっていうのに」
    「今日は来訪か出動はあったか?」
    「元帥からは何も言われていないと思うが・・・」
    「とにかく探すぞ!」
    白と紺色の制服を身を纏う男達数人はまた足並みを揃えて何処かに消えた。
    ローが居る場所は海兵の総本山だ。海兵しかいない。この場所からどう抜け出すか頭を悩ませていると、「ふわああ」と場違いなほど暢気な欠伸が潮風に乗って聞こえた。
    どっと心臓が多量の血を全身に送り出した。ローが最近よく聞く音だった。潜水艦ではトレーニングか手伝いか昼寝ばかりしているゾロは、ああやってよく欠伸をして何処ででも寝ていた。
    まさか?ゾロまで別世界に飛ばされていたのか?ローは焦った。ゾロのことだ、ここが何処だかも知らずに騒ぎを起こすに違いない。ローは直ぐさま回収する必要性を感じ欠伸が聞こえた場所まで駆け寄ると、思った通りゾロがいた。


    思ったような、ゾロではなかった。
    「あ?なんだ帰ってたのか、ロー」


    釣りをしていたゾロは立ち上がりローを見上げながらしばし観察し、腕を組んで考える素振りをしたと思ったら、ローの腕を掴んだ。ローは咄嗟に腕を払おうとした。ゾロが正義の二文字を背負った制服を肩からかけているからである。
    「釣りは終わった。部屋に戻るからお前も来い。どこのどいつだかわかんねえが、ローには違いねえんだろ?」
    この世界の仲間たちがどこにいるかもわからない、ましてやロロノア・ゾロが海軍に属しているとんでもない世界だ。しかもゾロの口振りからして、ゾロはローを知っているし、恐らくローも海軍に属していると言うことだ。どんな世界だ?海軍と海賊が逆転でもしているのか?目星はいくつかつけてみても所詮知らない世界だ。見通しなど立つはずもなく、逃げる有効手段もないのでローはゾロに着いていくことにした。いざとなれば能力を使えばいい話だ。そして30分かけて辿り着いた部屋は、恐らく初めて訪れたローであっても5分で辿り着いた場所だった。ロロノア・ゾロ、世界が幾ら変わっても治らない迷子癖に、彼の船医が「おれ、ゾロのために馬鹿に効く薬を作るんだ!」と強い強い意志を持っていたことを思い出し哀れになった。この男の迷子はきっとどの世界でも治らない。きっと魂とやらが異常を来しているに違いない。
    椅子に座るよう促され、何やらゴソゴソしているゾロは放っておきローはぐるりと部屋を観察し能力で使えそうな物、またここまでの道のりで隠れられそうな場所など把握していた。
    「おお、あった」
    爺からの貰いもんだとローが座るソファの前にあるテーブルにゾロは煎餅を置いた。それからピッチャーから冷たい緑茶をグラスに注ぎながら電伝虫にて「しばらく部屋に籠もるから誰も入れるな」と伝えていた。「今まで何処行ってたんですか!!」「今日はどちらも居ないんですから、大人しくしててください!」とサニー号や潜水艦で叱られているゾロと大差なくあまりにも馬鹿馬鹿しくなって、ローは切れ味がいいほど張っていた緊張の糸を解いた。「悪ぃな。んじゃよろしく。」「了解いたしました、若大将!」と電伝虫の前でも敬礼していることが窺える真っ直ぐな声が、ローを引っ繰り返らせた。
    若大将?大将?!?!
    「大将?!お前が海軍大将なのか?」
    「ん?おれか?そうだな大将なんてやってるよ。」
    緑茶をローの前とゾロが座る前に置いて、ゾロは煎餅を一つとって席に着いた。驚くローを置き去りに、ゾロはぱりぱりと煎餅を砕く。
    ロロノア・ゾロが海軍大将。嘘だろ、おい。本当にどうなってんだ。さきほど見た正義の二文字があまりに重いものになった。
    「そう言うお前は、その驚きようだと海兵じゃなさそうだな。時間を遡ったとかじゃなくて、別の世界かどっかから来たローってとこか。」
    煎餅を咀嚼する目の前のゾロは、ローの世界のゾロよりずっと年上で、ローよりも年上だ。大人の貫禄を感じさせる精悍な顔立ちと鋭さと平静さを併せ持ちながら、笑えばまったくローの知るゾロと変わらなかった。幼さすらかんじる笑顔にローは胸が焦げたような匂いを覚えた。
    「そんな簡単に信じるのか?別の世界から来たってことを」
    「まあ悪魔の実なんて何でもありだし、新世界がそもそも何でもありだろ。なら事実をあるがまま受け止めるしかねえ。お前は確かに別のローだけどよ、ローに違いねえから、ま、しばらく此処に居たらいいぞ」
    言ってからゾロは、ロー本人が帰ってきたら煩そうだなとも薄ら思ったが今は忘れることにした。
    ゾロがローに煎餅を促そうとして、太陽の光を燦々と取り入れていた窓硝子が突如ぶち破られ破片と太陽の光がキラキラ反射し、そこに同じようにキラキラした金髪の髪を揺らして青年が滑り込んできたと思ったらすってんころりと転んで硝子の破片を体中に刻むことになった。


    ローは息が止まった。瞠目したまま眼前の場面に目を凝らした。困惑と動揺とそして期待と狼狽がローの四肢を震わせた。心臓が異常な心拍数と音を発している。


    はああとゾロは頭を抱えた。
    「ロシィ、お前、おれの部屋に誰もいれるなって誰かから聞かなかったか?」
    「言ってたぜ!でもオレとゾロの仲だし関係ねえだろ」
    血をぴゅーぴゅー吹き上げながら親指を突き出すロシナンテにゾロは立ち上がり、机から救急箱を取り出した。「あ。ゾロいいって。おれが自分でやるから」「お前がやると3倍の時間が掛かる」「大袈裟な。ゾロの迷子じゃあるまいし」「お前のドジよりマシだ!!」互いに欠点を擦り付けあう二人は仲睦まじい。不思議な光景だった。現在同盟を組み同じ作戦を遂行しているロロノア・ゾロとローの恩人であるコラさんが、今、此処に居るのだ。
    焼けるような視線を感じてロシナンテがローに視線をやると、ロシナンテは目を見開き瞑って、また開き瞑って、を繰り返した。

    「ロー!お前!確かに会うのは久しぶりだけどよ、お前、めちゃくちゃカッコよくなったな!え?うちの子イケメンすぎねえか?ええ?貫禄ついたし、男前だし、何より強くなった!やっぱり恋の力は偉大だな!!うんうん」

    ロシナンテの長身でローにぎゅうぎゅう抱きつきながらチラチラとロシナンテはゾロに視線を送る。ゾロは全くの無視だ。
    「これならゾロもメロメロだって!いやあ、こんなに立派に育ってくれてオレは嬉しいぜ!ロー!!」
    ピエロのメイクもしていないコラさんだった。海軍の制服も着用している。ローが幼き日一緒に旅したコラさんより若い印象だ。いや歳は分からない。今のコラさんは下手くそな笑顔じゃない笑顔がいっぱいで元気一杯で若く見えるだけなのかもしれない。分からないが、この世界のコラさんのことなど何も分からないのに、確かにコラさんで、心臓が痛い煩い喚いている。込み上げてくるものを抑えることなど出来なかった。上下の目蓋が熱に焼かれて溶けてしまいそうだった。
    たくさん話したいことがあった。
    ローはいつだって会いたかった。
    それなのに溢れてくるのは涙と嗚咽ばかりで、肝心の言葉は何一つ形にならず嗚咽とともに零れていく。
    「ええええ?!?!どどどどどどうした?ロー?!え?ゾロ、なんかあったのか?!ローの奴?!」
    慌てふためくロシナンテはゾロに助けを求める。ゾロは泣きじゃくるローの様子を眺め「こいつも色々あったんだよ」と目を細めた。ロシナンテはゾロの静謐な様子に落ち着きを取り戻してぎゅうとローを抱き締めた。
    「何があったか知らねえが、お前なら大丈夫だ、ロー。離れてようがオレが信じてるし、お前の頼りになる部下達もいる。それにオレの一番のヒーロー、ゾロがお前を信じてんだ、絶対に大丈夫だって!!ロー、お前はお前が決めた道を信じて進めばいい!」
    貰い泣きを始めたコラさんは下手くそな笑顔で笑っていた。この世界のコラさんは、ローに命を繋いでくれたコラさんではない。そんなことは百も承知だし、このコラさんに自分の思いを押しつけるのは違うのかもしれない。今コラさんが励ましているのはこの世界のローであって、おれではない。でも、おれは。ぐるぐる考えているローの背中から誰かが腕を回した。
    「ごちゃごちゃ考えんな、ロー。ロシィに言いたいことがあんだろ」
    暖かいゾロの体温と声に背中を押された。その時に思い出した光景があった。しかし今はコラさん伝えることが先だった。

    「コラさん、ありがとう。コラさんのおかげでおれは生きてる。コラさんが、おれを愛してくれたから、だから、ありがとう、おれ、コラさんに何も返せなくて、何も言えなくて、おれもずっとコラさんが大好きだっずっとずっとコラさんが大切だっから」

    「バーカ!捻くれたガキが一丁前に!男になりやがってっ!!ここまでデッカくなったのは、お前が頑張って生きてきたからだろ!オレだってローを愛してるよっ、オレの自慢の息子だろおおおおお!!!」

    わんわん泣きながらロシナンテはゾロごと抱き込んで潰し始めるのでさすがにゾロもローも苦しいと文句の声を上げた。
    「オレたちトリプルロロロは永久に不滅です!」
    「なんだ、それ」
    「おれとお前とロシィは全員ロがついてるからな。それらしい」
    「意味分かんねえよ!」
    「ほんとにな」
    ハハハッと声を上げて涙を浮かべて笑うローにゾロは目を細めて見守っていた。そんな二人を更に上から見詰めていたロシナンテはゾロに何か伝えようとしてはっと視線を移した。電伝虫が鳴き始めたからだ。
    「は!ゾロ!出るなよ!」
    「どうせじいさんからロシィがこっちに来てないかの確認だろ」
    「まずい!早く行って報告しねえと!またな!ロー!ゾロ、あのさ、ローもこんなに男前になったし、そろそろOK出してやってくれよ!おれはいつだってローの味方で、ゾロの永遠のモンペだから、大好きな二人が早く幸せになって欲しいぜ!じゃあ次は結婚式で会おうな!」
    「勝手に言ってろ。」
    「頑張れよ!ロー!あと一押し!ゾロは押しに弱ぇから押して押して押しまくれ!!」
    「ロシィ!じいさん呼ぶぞ!!」
    ロシナンテが旅立つ前にゾロの緑茶をゴクゴク飲み干し「今日も帰ってきたぜ!」と笑って手を振ってまた窓から出て行こうとして、すってんころろして、結局ロシナンテがセンゴクのもとに向かえたのは30分後だった。




    「海賊ねえ、お前もおれも」
    ロシナンテがぶち壊した窓からは波音が続く。まあこれも悪かねえなとゾロは思い、新しいお茶を入れ直して二つ置きついでにローに濡らした手拭いを手渡した。緑色の手拭いだ。ローは手拭いで顔面を覆いながら、ローの世界の触りを話した。
    とても人に見せられた顔ではないので手拭いはありがたい。そのためゾロが何処か遠くを眺めながら肩にかけられたコートの下に手を滑らせ二の腕に捲かれた手拭い2枚を撫でた事を知らなかった。黒色と秘色。ゾロが幼き頃から切磋琢磨してきた道場の二人の形見だ。ローの世界に二人が居るかも分からない。鷹の目も師匠ではないのかもしれない。しかしどんな世界であろうと、ゾロは己が曲がることが心底不思議だった。
    「おれが、ほんとに海賊なんてやってるのなら、世界を揺るがすような最悪の事態でも起こったって事か。悪魔にでも会ったか?」
    茶化すゾロだったが、ローの心境は複雑だった。
    ドレスローザ、いやパンクハザードからルフィとゾロの絆を見せつけられてきた(本人達にその気が無いのも腹が立つ)ので、別世界に来ても遠回しにルフィとゾロの出会いがどれだけ運命的でどれだけの絆で結ばれているのか、言い当てられているようで面白くない。何故面白くないのかは、滝の涙で瓦解した思考は考えてくれなかった。
    「お前とコラさんはどうやって知り合ったんだ」
    「おれがロシィと、あとあいつの兄貴でドフィってのがいるんだが、色々あって拾った。しばらく鍛えてやって今じゃロシィはセンゴクのじいさんの右腕、ドフィはおつるのばあさんの右腕だからあの二人も立派になったが、おれに言わせりゃまだまだガキンチョだぜ」
    やはり年齢はゾロ、コラさん、ローの順番か。なぜそんなことに。おれはこの世界だと幾つなんだ?ゾロの対応を見ているとそれなりに離れてそうだ。現実世界でも5歳は離れている。ゾロが今30ぐらいだとすればローは25か24か?いやそうなるとコラさんとローの歳が近すぎるか。息子と呼んでくれていたから幾つぐらいが妥当なんだ?などと見立てていると、待てと働かなくなった頭脳がさすがに制止してきた。待て待て待て、今ゾロは衝撃的な事を言ってなかったか。は?
    「ロシィとドフィは、」
    「止めろ」
    「ん?」
    聞き間違いではない。ローは瞬間沸騰して手拭いをぐしゃぐしゃに握り締めてゾロと顔を合わせた。真っ赤な顔で激怒しているローの迫力は中々のものだった。
    「おれの前で!!お前が!その呼び方だけは絶対に止めろ!死んでもするな!!」
    ロシィと呼んでいてもローは普通だったので、別のローの世界ではドフィとローが仲悪いのか?とゾロは首を傾げた。まあこっちでも仲良しかと言われればそうでもねえけど、こんな拒絶していることは、なかった、よな?んー?
    別の世界で色々あってそれを乗り越えてきたことは、ローのロシナンテに対する涙から感じていたゾロは「おう」と素直に頷いた。それから顔を腫らしたローにニカっと溌剌たる笑みを向けて席を立った。

    泣いたあとに激昂までしたので息が切れた。ローは立ち上がった体をソファーに埋めて長い脚を組んだ。感情のコントロールが出来ていない。箍が外れてしまっている。自分の事ながらめんどくせえな、と思いつつも背を押したのはゾロなのだからいいかと投げやりになっていた。この年上のゾロに、甘えている自覚は、ある。己の失態にローは盛大な溜息を吐きだし、ぐしゃぐしゃの感情を再構築していくよう司令をだしていると、ゾロが戻ってきた。
    両手に酒瓶を持っていた。
    見慣れた姿に行儀悪く背もたれに沈んでいたローは起き上がり酒瓶を受け取った。

    「海賊だろうが、お前はお前のやるべきこと、腹に決めたことをやりきったんだろ。乾杯しようぜ」

    そんな瓜二つで笑うな、馬鹿が。
    かちんと硝子同士がぶつかり涼しげな音が響いた。ゾロが酒瓶を呷る。勢いが良すぎて口元から溢れている姿も、変わらない。
    「海軍と海賊が酒を飲むなんて世も末だな」
    「気にすんな、んな小せえこと」
    海軍大将と言うゾロは、この調子だとこの世界の海賊とも酒を酌み交わしてそうだ。ローは呆れ果てそしてかねてからの疑問を口にした。
    「こっちのおれは何してんだ。今幾つだ」
    「お前はおれの下についてるぞ。お前と、あとコビーってのがいてガープのじじいから預かってる。ローの歳は、たしか、20になるのか?なったのか?それくらいだ。」
    20?と思った以上に離れている年齢にローは改めてゾロをマジマジ眺めた。一回りは離れていると言うことか?20だと?クソガキもいいところだ。
    「こっちのお前の野望は大将になっておれを引きずり落とすことだってよ。」
    それはそれは楽しそうに語るゾロと、先程のコラさんの様子からしてローは察してしまった。きっと此方の世界では海軍だと言うローはゾロを自分の部下にしたいとか、自分のものにしたいとか、そういうことなんだろうと。「この世界も同じかよ」とついついツッコミだか恨み言だかが漏れる。きっと二十歳の自分はすでにゾロに唾をつけてんだろうなともローは思った。最悪だ。
    「ちなみに、お前とロシィは親子って程年離れてねえんだけどよ、ド、ロシィとあいつの兄貴が仲悪くて喧嘩ばかりしてっから、兄貴はイヤだ!オレはローの父親だ!って宣言したわけだ」
    ドフラミンゴを愛称で呼びそうになったゾロをギロリと睨み付けてきたローは抜かりなく、何処の世界のローも変わらないとゾロは苦笑した。
    「って言ってもお前とコラさんだってそんなに歳離れてねえだろ」
    「まあな。正直歳なんて一々数えてねえしな。12ぐらいの時からずっと海兵やってっから」
    ローの世界でゾロと酒の席でゾロから海賊を初めて3年、実質1年ということを聞きローは驚いたものだ。その短期間でヤラカシ続けてのし上がってきた麦わら一味の破天荒振りにローも呆れるしかなかった。そのゾロが海賊を始める前からこっちのゾロは海兵だったということだ。ローの世界のゾロも海兵になった未来があったということか?そんなタラレバを考えることは馬鹿のすることだと一蹴した。
    「ま、ガキの頃からおれは変わっちゃいねえがな。こうして正義なんて肩書きを持っちゃ居るが、困っているヤツがいれば助ける。それだけだ。だがよ、大将におさまるってんならこの文字を背負う覚悟がいるだろう。そうおれが決めただけだ。」
    だからゾロは海軍組織内の横暴、市民への謀略に対しては海軍内で一番厳しかった。守るべき立場の海軍が権力を維持したまま奪う立場になることは絶対に許されない。その取り締まりはコビーが中心となってあたっている。そして海賊方面の取り締まりはローが担当していた。ゾロは己の直感を信じヤバそうなところに行くので自由が過ぎるといつも二人から怒られているのだ。「ゾロさん!!せめて僕たちがいるときにしてください!一緒に行きます!」「ゾロ、今どこだ?!おれがそっち向かった方が早ぇ!」等々どれだけ叱られてきたか。二人に言いつけられた海兵たちも「お二人からキツく言われております!若大将!」などとゾロを監視する程だ。いやそもそもゾロは若大将と呼ばれる年齢でもなくなった。10年前ならいざ知らず今尚若大将と呼ばれるのはどうなのだ?ボルサリーノたちと比べれば若造に違いないが、ゾロとしては何時までも若大将とよばれることに抵抗があった。

    ううんと見当違いの方向に悩み出したゾロに、なんでこんなに変わらねえものなのか、とローは心底不思議だった。

    若大将と呼ばれるほどだ。恐らく最年少という冠がつく年齢で大将に就任したのだろ。ローの世界のゾロも堅気に迷惑をかけることを避けていたし、困っている連中がいれば自分が迷子のくせに手を差し出している。ゾロも含め、本当に麦わら一味は海賊気質ではないのだ。ルフィは特殊のため除く。サニー号に厄介になっていたとき毎日風呂に入る、頻繁に風呂に入るという連中に船の作りが他と違って豪勢で緻密だと言っても、お前らそれでも海賊か?真水に対する意識が一般人と変わらないとローは呆気にとられたものだ。海賊ならば酒より余程水が重要だと身に染みている。あまりに暢気な海賊もどき達がこの短期間でここまで世界を騒がしてきたと言うのだから、よほど船長が狂っているのだ。食事の際も同様なことを考えた。
    その麦わら一味の中でルフィとタメを張るほど好戦的で騒ぎを起こすゾロは海賊らしい一面もあれば、理由もなく謝礼も必要とせず人に手を貸すお人好しなので、まったくよくわからない男だった。そのゾロをまっすぐ立たせている精神と言うのか、この際魂と言えばいいのか、ローはその方面は詳しくないが、魂があるとすればそれはあまりに澄んでいて曇らないのだろう。常に風が吹いて滞らないような、そんな美しさをどの世界のゾロも持っていた。確かにそれは、守る側の気質に当てはまるのだろう。


    二人が物思いに浸っているとプルプルと電伝虫が鳴いた。あまりに隈がひどくあまりに目付きの悪い電伝虫を見てゾロは此処に居るローに視線をやった。
    別の世界からやってきたローは、こちらのローより大人で落ち着いている。目の下の隈の酷さはどこの世界も変わらないらしい。恐らく別の世界でローは命をかける覚悟を持って何事か成し遂げ、今を生きている強さがあるからだろう。その姿には、ゾロまで誇らしい気持ちになった。こちらのローにも見習って欲しいぐらいだ。いつまでもこんなおっさんを追っかけてねえで海に出てもっと活躍すればいいのだ。またローのお目に叶う可愛い子だってこの海の何処かにたくさんいるだろうに。しかしこちらのローから言わせればこんなに世話焼いてきてやったんだからゾロはおれのものだと思っているのだ。正当な報酬だと。あまりのローの執念にコビーや回りがいつも被害にあっていることを、ゾロは正しく把握していない。
    「いい男になったな、ロー」


    音がした。
    空から。

    鰭が海面を叩く音だ。
    星がふたつ叩かれ落ちていく。

    ローは天井を見上げて、コラさんと同じようにゾロのお茶を飲み干した。しかしあまりの衝撃に思わず舌を出して「うえっ」と吐き出しそうになった。
    「おいっ、これ、飲み物か?」
    「ハハ!なんか薄いと飲んだ気がしねえだろ??」
    「加減があるだろうが」
    このゾロの入れたお茶をガープは「下手くそ、二度と飲まん」と言って二度と飲まず、おつるさんもやんわり避けて、ドフラミンゴとロシナンテの兄弟は「クソマジィ!でもゾロのお茶飲むと帰ってきたと思えっから飲んじまう」と飲みに来ている。コビーも帰ってくると「ゾロさんのお茶だ-」と言うが美味しいも不味いも言わないところがコビーらしい。ローは突き抜けていて「おれだけに煎れろ」と催促してくるので、面白いものだ。
    「世話になった」
    まだローの口の中に苦みを突き抜けている刺激が残っているので男前は台無しだった。ゾロは笑い、ローはそっぽを向いた。そして手拭いをゾロに返した。
    「達者でな、ロー」

    送り出された瞬間、「ゾロ!なんで出ねえんだ!今何処に居る!?」と吠える自分の声がローにまで聞こえた。「色々あった」と答えつつすぐに硝子の破片の掃除をしようとしているゾロに「話聞いてねえな?」と自分の説教が始まっていた。それを聞くゾロがあまりに愛おしそうに微笑むので、結局此方の世界でも見せつけられたローは、咄嗟に目蓋を閉じた。





    コラさんに会えたことは奇跡だった。言いたいことの百分の一も伝えられなかったが、少しでも話せてよかった。ありがとう、コラさん。おれはおれが決めた道を信じて進んでいく。この運命について、おれは知りてえ。

    と言っても。

    おれもゾロ屋も海軍などと言う世界は何度考えてもありえねえな。
    しかもなんだかそのうちおれとゾロ屋がくっつきそうな雰囲気まであり、コラさんがいくら応援していようが、おれとゾロ屋が付き合うわけねえだろ!
    やはりこんな世界、二度とごめんだ!



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    じろぽい

    DOODLE2023年ロゾ週間おめでとうございます!
    今日が最終日なら明日はつまり後夜祭!明日まで続きます!すみません!

    ※tr男の別世界ロゾに対するツッコミ集。
    ※最終日 帰ってきたtr男 vs いつものゾ vs dークライではなく別世界ロ's
    「愛しく感じろ!!トキメケ!!オレに!!!」むつぼし




    瞼を開けると太陽の光が目を焼き、潮風が吹き抜けた。デッキにはハートのクルーと麦わら一味と侍たちが外の空気と解放感に喜んでいる。
    始まりの時から変わっていない。
    戻ってきたのか?おれの世界に。ローは即座にゾロを確認した。
    ゾロはハートのつなぎを着ていないし海軍の制服でもない。子供でもない。片目だ。死んでもいない。
    あとはまたネジが外れた己が現れないかということか。
    ペンギンとシャチがデッキに出てきてベポやウソップたちに声をかけていた。それから二人はローのもとに来て報告を始めた。近海の様子やカイドウの情報を報告する姿に、ああおれの世界だと実感することが出来た。
    どっと疲れが体中を巡った。
    ローは二人に情報が足りない箇所を指摘し、30分以内に集まらないようなら出発すると告げ、その間ローは仮眠を取ることを伝えた。「アイアイキャプテン!」と敬礼するペンギンとシャチの後方にゾロが見えた。侍たちと麦わら一味とハートクルーたちも何人か混じって話をしていた。どっしり構えた姿と合わない視線にローは安堵を覚えていた。
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    じろぽい

    DOODLE2023年ロゾ週間おめでとうございます!

    ※tr男の別世界ロゾに対するツッコミ集。
    ※5日目 ゾがハートクルーのロゾ VS tr男
    「もうこれ以上何も見せつけるな。いつもの、ゾロ屋に会いてえ。」いつつぼし




    もとの世界に戻らせてくれ。
    せめて、ゾロ屋が生きてることを確認したい。


    『ローさんが信じられねえのもわかるがな。おれもまさかこんな感情を持つなんて思ってもいなかったぜ』
    『世界が変わっておれが海賊になっていたとしても、変わらねえもんは変わらねえだろ。そんなにほいほいと自分を乗り換えなんてできねえから、必死に足掻くしかねえんだろうよ』
    『麦わらのところのロロノア・ゾロと言えばあの鷹の目も目をかけていたそうだ。世界一をかけた決闘を見てみたかったから残念だよ』


    『映画を見てるみたいだな』


    青空の海原には幾つもの星が浮かんでは沈んで、草臥れたように浜辺へ辿り着くと星の砂の一つ一つとなっていった。赤、青、白、橙と色んな色の星が混ざりあい目を焼く程の光源となる。黄色い巨大な鯨は青空を跳躍し美しい鰭で海原を掻き分け世界を掻き混ぜていく。ローは劇場の狭い椅子に長い脚を余らせながら腰掛け、巨大なスクリーンを見ていた。雑誌を指さしてこれが映画館だと笑っていたのは片思いを胸にひた隠しにしていたゾロだった。映画についての詳細はクソガキが面倒くさそうに続けた。『実はおれも映画館行ったの、こないだ先輩と行ったときが初めてで。それなのにおれ寝ちまって』と悪がるゾロを愛しそうに見詰めるクソガキに『こいつの調査と計画不足だ』と指摘してやれば、クソガキが喚いてきた。
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