変身 彼女にとって、その日はいつもと変わらない日のはずだった。
いつも通り学校へ行き、いつも通り授業を受け、いつも通り部活に顔を出す。3年生が引退して以降は綾奈たち2年生が主となって活動をしているのだから気合も入るというものだ。それに、3年生になってしまえば今度は高校への進学の問題がちらついてくる。エスカレータ―式のためそうそう心配はないが、それでも意識せざるを得ないだろう。
それらを忘れるように部活に没頭し、帰路につく頃にはそらはすっかり暗く、吐く息に目を凝らせば白いものが混まじり始めていた。
冬の訪れを感じさせるものの、まだ多少の肌寒さを感じさせる程度だ。
足早に歩きながら、綾奈はふと、とおりかかった公演の時計を見上げた。
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